繊研新聞 アーカイブ/就職・採用関連記事

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2009年 連載 目指そう!自律型 アパレル人事担当者座談会

2009/11/25
〈連載〉 目指そう!自律型 アパレル人事担当者座談会―1 求めるのは自分で考え動く人

ミキハウス人事部部長 辻寛さん
山喜人事総務部マネージャー 中田一裕さん
ワコール人材開発部人材開発二課長 坂井眞一郎さん
(順不同)

 10年春入社の就職戦線も山場を越えた。リーマンショック以来、経済環境が厳しくなるなか、内定はもらったものの、学生がかかえる仕事、将来に対する不安も大きい。ファッション業界の魅力、働く楽しさ、社会人になるまでの心構えなどについて、ミキハウス、ワコール、山喜のアパレル3社の人事担当者に語ってもらった。

とにかくスピード感
――簡単な会社紹介を。
 中田 ビジネスシャツ(ワイシャツ)やカジュアルのトップスを扱っています。ビジネスシャツの国内トップ企業でもあります。
 坂井 婦人下着を中心に扱っています。ランジェリー・ファンデーションの国内シェアはトップです。
 辻 子供服をメーンに、頭のてっぺんからつま先まで、トータルコーディネートしています。子供にかかわるアイテムはすべて揃っています。最近は海外の店舗も増え、アメリカの展示会にも出展しています。
――ファッション業界に求められる人材、一緒に働きたいと思うような人材は。
 坂井 昔なら上に指示されたことを忠実にこなす、体育会系でもよかったのでしょうが、世の中がめまぐるしく動く時代に必要な人材ではありません。必要なのは「自律型」と「自立型」です。自ら考え、動く人。指示待ちでは次の適正な行動を起こすことはできません。とにかくスピード感をもって仕事を回さなくてはなりません。考え、実行し、思いを伝える。それも自分だけ頑張るのではなく、人を巻き込みながら物事を前に動かすことのできる人が欲しいですね。ハートの問題もあります。失敗しても人のせいにはしない、ポジティブシンキングができることも、人材選びのポイントになります。

「売れる人で熟れる人」
 辻 5年前から自社のホームページには、求める人材として「売れる人で熟れる人」という表現をしています。アパレルですが、当社は直営店比率が高くなっています。商品のレベルだけではなく、「この人から買いたい」と思わせるような人がたくさんいなければなりません。お店のお客様は母親だけではありません。子供からおじいちゃん、おばあちゃんまでが来店します。そのため、幅広い客層とコミュニケーションができる表現力、アピール力が欠かせません。接客のテクニックだけで売るのは、ある程度の限界があります。幅広い客層とのコミュニケーションがあるのは、人間としてのふところも深い「熟れる」人です。「売れる」と「熟れる」の二つの要素を持つ人こそ求められます。
 中田 コミュニケーション能力の高さは「調整力」という言葉に言い換えることができます。当社はアパレルですが、企画・製造、営業、物流など業務は多岐にわたります。アパレルでもあり、メーカーでもあり、商社でもあります。仕事を円滑に進めるには、仕事にかかわりあるたくさんの人との調整力が必要です。全体の動きを見ながら、社内の調整も怠らず、物事を前に進めていける人が必要となってきます。

2009/11/27
〈連載〉 目指そう!自律型 アパレル人事担当者座談会―2 若くても評価されるのが魅力

アパレルの面白さ
――ファッション業界で働く楽しさ、魅力はどんなところにあるのでしょうか。
 坂井 金融や建築といった業界はベテランの経験・発言が優先されがちで、若い人たちの意見が採用されることは少ないのではないでしょうか。この点、アパレルは違います。若いうちからMDとして動けますし、百貨店の担当者にも自らのアイデアを話すことができます。つまり、自分の判断で仕事が回せるわけです。
 また物作りはオートメーションではできません。多くの人が介在して初めて製品となり、人の目に触れます。他産業にないアパレルの面白さはこの点にあるのではないでしょうか。
 中田 営業マンとして配属されたとしても、売るだけで仕事は終わりません。営業マンでも、顧客の声を聞いて、実際に企画に携わることができます。自分の得意先にあった企画を提案し、その得意先には商品を売るための売り場づくりの提案もできます。楽ではありませんが、自らの意思のもとに積極的に行動すれば、年が若くても認められますし、それが仕事をする楽しみにもつながります。楽しんで仕事ができ、成果がすぐ見えるのがファッション業界のいいところだと思います。
 辻 物を媒介に人、情報、数字といったことにかかわりを持つことができます。それは単にビジネスができるという喜びではありません。私どもでいえば、赤ちゃん・子供のお祝いや成長の場に、売るという行為を通してかかわれます。人間らしさを表現できると言ってもいいかも知れません。モバイルやパソコンでできる仕事もあります。マニュアル通りでOKという仕事もあります。しかし接客というのはクリックひとつでは何とかならない。何とかならないのが逆に魅力だと思っています。
資質見極めて配属
――入社後の企業サイドのフォローアップも昔と比べれば進み、個人の能力を最大限発揮させるように気配りしていますね。
 坂井 ワコールには3000人を超えるFA(ファッションアドバイザー)がいます。一番気にしているのが離職率です。一日でも長く働いてもらうことが本人にとっても、会社にとっても良いことだと思っています。研修期間中に適性を見きわめ、配属する時にどの売り場が良いかを決めます。規模や立地、店舗の同僚との相性なども考慮します。昨年7月に契約社員のFAの方の正社員化に踏み切りました。少しでも長く働いてもらうために必要と判断したからです。
 辻 人間関係は重要ですから、配属する店舗、部署は慎重に決めます。ショップなら店長やスタッフの資質を見極めてから配属します。会社という組織ですから社長、従業員という立場ももちろん大切ですが、できるだけそういう壁を取り払って、人間対人間の関係でうまく回る職場・会社づくりが当社の目指すものです。
 中田 自分の周り以外のところにどんな仕事があるのかを、実際に理解してもらえるようにしています。営業、企画、生産と仕事が分かれていても、目指す方向は同じなのですから。シャツ生地の産地である西脇に工場見学に行ってもらいますし、今後は海外生産・販売が増えてきますから、貿易の知識が欠かせなくなります。貿易の勉強会も開いたりしています。

2009/11/30
〈連載〉 目指そう!自律型 アパレル人事担当者座談会―3 待遇面よりもビジョンに関心

志望企業の研究を
――今年の面接試験に実際に立ち会われて、学生の変化のようなものを感じましたか。
 辻 待遇の面での質問が少なくなりましたね。何年か前なら、「産休制度はあるのか」「どのくらい休めるのか」という質問をする人が多かったのですが。増えたのは会社の将来ビジョンへの質問でした。「この会社の何年か後の姿は」や、「どういう方向に向かって走っているのか」という質問がどの人からも出てきました。
 中田 目的意識を持つ学生がいる一方で、何をしたいのかを明確にしていないまま試験を受けた人もいました。昨年までの売り手市場の影響が、どこかに残っているのでしょうね。自分が受ける企業の研究はしっかりとして欲しいという印象を受けました。
 坂井 ワコールで仕事をすることへの具体的なイメージを持って面接に臨む人が増えたのは確かです。自己アピールで、こちらが思わずうなずいてしまう人もいました。当然、そんな人ばかりではありません。インターネットを見て、ちょっと売り場をのぞいただけで、会社のことを分かったような気になっているケースも少なからずありました。ただ1年前の対象者たちに比べれば、危機感はありました。むしろ大学の方が危機感十分で、学生を指導した面もあるのでしょうが。

深い知識は後からで
――採用の担当者として、入社を希望する人に期待することは。
 辻 ファッションアドバイザー(FA)希望の男性がいました。この学生は200ある直営店のうちの80店を回り、デジタルカメラで写真を撮ってきたそうです。面接試験では「レイアウトを自分ならばこう変える」とアピールしていました。男性のFA希望はもともと少ないので、印象に残りましたね。ここまでしろとは言いませんが、自らアクションを起こしてアピールする姿勢は評価したいですね。
 ただ、入社試験はあくまでも入社試験です。最初から百パーセント分かってもらおうなんて考えていません。子供をキーワードにすること、モノ、コトに関心のある人ならばウエルカムです。
 中田 学生の中には「専門的な勉強をした人しか入社できない」と誤解している人もいます。そんなことはありません。試験、面接を通じて資質はある程度判断しますが、会社のことは徐々に分かってもらえばいいのです。日本のビジネスマンが着ているワイシャツの10枚に1枚が山喜のシャツということも知らない人もいます。深い知識は後からついてきます。ファッションに関心のある人は遠慮なく、試験を受けて欲しいと思っています。
 坂井 アパレル志望の人だけを採用するということはしません。アパレルに関心はなくても、ファッションに興味があれば、最初の接点としてはそれで十分です。逆に、初めから「御社だけに決めています」と言われても困ってしまいます。多くの人物を見てから決めるのが普通だと思います。会社や仕事に対する本当の愛情や誇りは、入社してからではないと養えませんから。まず門戸は広く構えます。

2009/12/01
〈連載〉 目指そう!自律型 アパレル人事担当者座談会―4 入社までにやり残しなくして

東西で内定者会
――入社まで4カ月ほどですが、会社としてのフォローは。
 中田 内定者同士のホームページでの交流を促します。就職活動への感想あれこれがテーマになるのかも知れません。基本的には自由にしてもらい、内容も自分たちで決めてもらいます。内定者会をすでに開き、掲載する中身を持ち合うように指示しました。内定式のあとに作業をしてもらい12月中には立ち上げたいと考えています。入社後の2週間は研修、その後、配属となります。仕事に慣れたころのフォローとして、昨年は縫製の現場を知ってもらうために、上海の工場に1週間行ってもらいミシンも踏んでもらいました。
 辻 7月に東西で内定者会を開き、10月初旬に1泊の内定者式を開きました。10月下旬に簡単な研修会も持ち、お店に立ったらこんな仕事をします、というのを教えます。1月には新年会を開催、その前後で配属を踏まえた個別面談を実施します。来年の入社式の前日には、もう一度研修会を開きます。新入社員は基本的には人事部付けで、売り場で研修をします。正式に配属が決まるのは7月です。フォローをやりすぎると、それが当たり前になってしまい、自立できない社員を生んでしまう恐れもあります。
 坂井 基本的には何もしません。東西で忘年会か新年会かを開く予定です。入社までには「ワード」と「エクセル」の通信講座を受けるように指示はします。この二つのソフトを使いこなすのは当たり前ですから。経費は会社の100%負担です。ただし強制はしません。事前にアドバイスするのは、それくらい。ワコールは伝統的に「あとは入社してから」ということになっています。
 総合職は3カ月間、人事部付けの研修で、社内をいろいろ回らせます。販売職は4泊5日で基礎的な研修を受け、あとはOJT(現場教育)です。

いろいろ経験を
――入社までの残された時間で、内定者にはどんな時間の過ごし方を望みますか。
 中田 ビジネスマン・ウーマンになるための知識、教養を積むことには異論はありません。ただ、学生だからできることもあるはずです。いろいろな経験をして、視点を変えていくことも必要でしょうね。
 坂井 学生の時しかできないことを一生懸命やってもらえればいいのではないでしょうか。バックパッカーでもなんでも構いません。「やり残してきたことはない」と言えるぐらいになって入社してくれれば十分です。
 辻 少し乱暴な言い方かも知れませんが「遊んでおけ、お金を使え」とアドバイスしたいですね。社会人になるからといって、急に意識が変わるものではありません。あいさつをちゃんとして、時間を守るといった基本的なことが守れていればいいと思います。それよりは、どれだけしゃべることのできるネタを蓄えておくか、引き出しをたくさん持つことのほうが大切だと思います。=おわり