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2010年02、3月の連載 「新外国人技能実習制度 依存の今と未来」
2010/02/24
新外国人技能実習制度 依存の今と未来―1 労働力確保に悩む縫製工場 建前と現実… 新制度に戸惑い
7月1日から、これまでの外国人研修・技能実習制度に代わって、外国人技能実習制度が施行される。旧制度の下で「人身売買」や「奴隷労働」といった厳しい社会的批判を浴び、事態の改善に向けた見直し作業がまとまった。座学を中心にした研修期間を設ける一方で、労働に携わる期間は約10カ月長くなる。外国人に労働基準法を適用して労働者として扱う期間が長くなることを意味する。時給300円や500円といった不法な残業代、休日や深夜に及ぶ長時間労働などは是正せざるをえない。ただ、「国際貢献・技術移転」という制度の建前と、労働力不足を外国人に依存するという本音の隔たりは変わらない。繊維産業、なかでも縫製業は、この制度と外国人労働力に依存して息をつないできた。新制度への移行が進む中、何が起き、これからどうなっていくのか。
「この不況下での募集でも、日本人の高卒者は来ない」――。地方の縫製工場が若い働き手を確保できないのは相変わらずだ。国内の縫製工場にとって「研修生・技能実習生は貴重な戦力」という実情は今も続いている。JITCO(国際研修協力機構)の統計によると、繊維・衣服製造の研修生の受け入れは08年から減少に転じている。地方の協同組合では、受注の減少や先行きの不透明感から受け入れを止めて廃業を勧めるところすらある。しかし、操業を続けようとする工場にとって、外国人労働力を抜きには成り立たない構造が出来上がっている。「制度を廃止すべき」という労働組合からの指摘もあるが、廃止すれば国内の縫製業は一気になくなるだろう。「型数、工程数が多くて生産枚数は200枚とか300枚。実習生の力にかかっている」「仕事は順調だが、毎日深夜12時まで残業している。住み込みの若い実習生でなかったら出来ない」。国内の縫製工場を支えているのは中国人やベトナム人だ。
昨年7月に入国管理法が改正され、年末には「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」がまとまった。JITCOや中小企業団体中央会は各地で新制度の説明会を開いたが、会場は大勢の聴講者で埋まった。「厚生労働省も運用の詳細が最終確定していないようだ」(大栗實日本アパレルソーイング工業組合連合会会長)との指摘を裏付けるように、JITCO主催の説明会でも、会場からの質問に答えられない姿が見られた。
流転の歴史
「この地方は、かつて学校を卒業して名岐(名古屋・岐阜)の工場に集団就職する労働力の供給地だった。その後産炭地振興に伴う企業誘致で、縫製工場が進出した」(大隈正巳佐賀県アパレル工業組合理事長)。戦後の日本の繊維産業は、絶えず労働力を求めて動いてきた側面を持つ。その名岐の縫製工場にしても、採算性と豊富な労働力を求めて東北や九州などに生産拠点を移転していったし、1980年代後半からは中国シフトを急速に進め、国内では「空洞化」が生じた。90年代初めに登場した外国人研修・技能実習制度によって容易になった人材の確保で、工場は息を吹き返した。ただ、そこで「恒常的な労働力不足問題を抱えた」(日本繊維産業連盟「外国人研修・技能実習制度に関する検討・中間取りまとめ」)、縫製業の構造が改善されたわけではなかった。岐阜では眠っていたミシンをかき集めて中国人に縫わせる工場も現れた。団体監理型の受け入れの急増と不正行為の続出も招くことになる。
根底には「満足に給料を払えない、労働環境が悪い縫製工場の問題」(市瀬和繁マイナック社長)がある。外国人労働力に依存しなければ操業していけない縫製業の現実に、新制度の施行に伴う経営者の悩み、戸惑いは尽きない。
稼げる魅力
「新制度で労基法の制限を厳密に守ったら大変だ」。ある工場では、残業時間を労基法の上限内に収めると、割増賃金を払っても3年間で75万円。「この程度では上海周辺から日本に来る訳がない」と漏らす。建前がどうであれ、日本に来る大きな目的は稼ぐことだ。中国の経済発展が著しい中、稼げない日本にわざわざ来る理由はない。
昨年、ベトナム・ホーチミンで元実習生を取材した。日本で貯めたお金で買った、若者のあこがれのホンダのバイクを飛ばす。稼げる魅力がなくなれば、労働力確保もままならない。
「来日する研修生のレベルが落ちているし、年齢も上がっている」という声が目立つ。「実習生の受け入れで、企業負担は1人当たり月額2万~3万円くらい増える」と見込む協同組合がある。「日本人を雇う方が安く済む」との声も漏れ始める。国内縫製に期待される品質や納期などを保ちながら、工場を継続していくのはますます難しくなっている。ある社長は「数年前に自分の報酬を月5万円にして、今はゼロ。年金が生活費。そうしないと会社を維持できない」と話す。日本人すら稼げない縫製工場とは一体何なのか。
〈きょうのキーワード〉 JITCO
外国人研修生・技能実習制度に関係する法務、外務、厚生労働、経済産業、国土交通の五つの省が主務官庁となって91年に設立された公益法人。受け入れ団体や企業に対する研修、送り出し機関・派遣企業に対する支援・援助、研修生・実習生の悩み相談や法的権利に関する助言・援助などを行うことになっている。会長は元・経済団体連合会副会長の金井務氏、理事長は前・福岡高等検察庁検事長の栃木庄太郎氏、専務理事兼事務局長は元・厚生労働省東京労働局長の佐田通明氏が務めている。
2010/02/25
新外国人技能実習制度 依存の今と未来―2 受け入れ枠縮小に懸念 期間延長、再入国の要望かなわず
改正入管法に基づく「外国人技能実習制度」は、不正行為が多発した団体監理型の受け入れを適正化しようという狙いがある。「制度始まって以来の大幅な改正」(JITCO=国際研修協力機構)は、外国人労働力に依存する縫製業にとって、大きな影響を及ぼしそうだ。
事業規模の縮小
「これまで外国人に頼っていたところは(新制度で)人員減になり、影響は大きい。規模を縮小せざるを得ない工場も出てくる。場合によっては廃業するケースもあるだろう」(第1次受け入れ機関の役員)。
従来の制度では、団体監理型の場合、最初の1年間の研修生から移行した2年目、3年目の技能実習生を常勤者数にカウントできた。このため、研修生数が受け入れ企業の常勤職員総数を超えることはできないという規定があったものの、日本人従業員がわずかでほとんどが外国人という工場運営も可能だった。しかし、新制度では常勤者数から実習生を除外することになった。常勤者数が50人以下の事業所では、実習生は3人までと定められた。「研修生10人、実習生17人いるが、かなり減らした。仕事がないのと、制度変更で厳しくなると考えたから」。工場ではすでに新制度に合わせた対策を取り始めている。
常勤職員を増やすために日本人のパートやアルバイトを正社員化すれば、経費が膨れ上がる。縫製工場にとって人件費負担は重く、「福利厚生費を含め最低でも実習生1人当たり年間50万から60万円の負担増の試算もある」(受け入れ団体)。
技術力向上にも
このほか、実習生の保護を強めるために団体に対して入国後2カ月の座学講習を行い、専門家による法的保護に関する講義などを義務付けた。受け入れ企業が倒産した場合には、別の受け入れ先に移れるようにした。また、3カ月に1回以上団体役員が受け入れ企業を監査し、結果を入国管理局に報告すること(現行1年間を3年間実施)や、1カ月に1回以上、団体の役職者が企業を訪問し、指導を行うことも盛り込まれた。不正があった場合の罰則規定も厳しくなった。
昨年10月に法務省令案が公開され、パブリックコメントが募集された。今回の改正では、これまでと同じく3年後には帰国することとされ、帰国後の再入国も認められなかったが、縫製業からの要望は強い。
「パブコメでは5年への延長と再入国を求めた」と愛媛県縫製品工業組合の村上孝司理事長は話す。「縫製業にとって技術の継承が必要だが、日本人の雇用がままならない中、多少は緩和されると考えたから」というのが理由だ。「高級プレタやフルアイテムを扱うには技術力向上が必要。再入国の門戸を開いて欲しい」(市瀬和繁マイナック社長)など、優秀な実習生に再度入国してもらい、戦力化したいという声は絶えない。
〈きょうのキーワード〉 改正入管法
09年7月15日に「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律」が公布され、今年7月1日から新しい制度が施行される。在留資格として「技能実習」が創設されたほか、送り出し機関による保証金・違約金などの徴収禁止、専門的知識を有する者による講習、監理団体による指導・監督・運営透明化の強化、受け入れ欠格要件の新設、実習実施機関や監理団体の文書作成・保存などが決められた。受け入れ機関や企業は、施行日前後の入国や在留資格の変更、期間の更新申請で対応を迫られると同時に、7月以降の対策が避けられない課題となっている。
2010/03/02
新外国人技能実習制度 依存の今と未来―3 「職業紹介」への対応急ぐ 零細工場、広域組合に負担増
外国人研修生・技能実習生を受け入れている協同組合が年明けから、定款変更のための臨時総会の開催準備に追われている。7月から、実習生の受け入れは職業安定法の「職業紹介」にあたるとされたからだ。協同組合は総会を開いて職業紹介を組合の事業目的に加え、その上で代表者が講習を受けたり、法律に基づく届出や許可をえなくてはならなくなった。届出ならいいが、許可の場合は時間がかかる。組合の事務担当者はJITCO(国際研修協力機構)や都道府県の中小企業団体中央会などと連携し、日程から逆算して対応を急いでいる。
ハードル高く
7月以降、実習生は受け入れ企業と雇用契約を結んだ「労働者」として、日本にやってくる。協同組合の仕事は、中国など送り出す国の機関と受け入れ企業の間に立って「雇用契約の成立をあっせんするもの」とみなされる。
実習生の受け入れは「技術移転を通しての国際貢献」が大義名文。営利目的ではないので、協同組合などの場合は都道府県の労働局に届けを出すだけでいい。ただ、それには協同組合が10社以上構成されていることが条件になっている。そうでないと許可申請が必要となり、しかも500万円以上の資産を積んでいなければならない。家族経営や零細の縫製工場が数社で協同組合を作り、研修生を受けれている例が全国には数多くある。10社も500万円も高いハードルだが、「組合同士が相互に傘下企業の名義を貸す」ことで条件をクリアするところが多くなりそうだ。
それでも「専任の事務局体制がない小さい組合や異業種・広域組合は大変になるだろう」とある組合役員は指摘する。自社の社長業の片手間に理事長が事務処理している組合も多い。入管法が求める1カ月ごとの巡回指導、3カ月ごとの監査などと合わせて、職業紹介関連の帳簿類の整備や監査、講習などの仕事が加わるから「日常業務が煩雑で負担が増える」。東北に本部を置く広域組合から受け入れをしていた信越地方の縫製工場は「1社のために対応はできない」と派遣を断られたという。
整合性に批判
職業紹介については「いかにも思いつき。入管法と職業選択の自由をうたう職業安定法の整合性がない」という批判も強い。一方で、「条文上は、実習先が倒産した場合の新たな受け入れ先を他の組合にすることも可能になる。トラブルが減るかもしれない」と期待の声もある。
人口減少社会に突入した日本。今後の労働力不足の懸念から移民・単純労働の受け入れを求める議論も始まっている。ただ、単純労働を受け入れても縫製業にメリットがあるかといえば疑問符がつく。待遇改善が進まなければ今と同じで人材は来ない。
「移民を受け入れたら社会の在り方が変わる。帰国する実習生を活用した方が良い」という声も根強い。「国境を超えた集団就職」(佐賀西部アパレル協同組合の中井義郎理事長)といわれる実習生依存の構造だけが強まっている。
〈きょうのキーワード〉 職業安定法と職業紹介
公共職業安定所をはじめとする機関が労働者に就業の機会を与え、産業に必要な労働力を提供することを目的とした法律。職業紹介については「無料職業紹介事業」(許可制または届け出制)と「有料職業紹介事業」(許可制)がある。中小企業等共同組合法など特別の法律によって設立された法人は無料職業紹介事業を届け出だけでできる。
無料職業紹介の場合、どんな名義であっても手数料や報酬を受けてはいけない。だから監理団体は職業紹介を行うための費用を企業から徴収してはいけないし、講習のためなど職業紹介以外の目的で集めた費用を職業紹介に使ってもいけない。その点で問題になりそうなのが送り出し国で行う面接のための渡航費。各社が自前で行っていれば問題はないが、団体から出すと法に抵触する。
2010/03/03
新外国人技能実習制度 依存の今と未来―4 縫製業従事者の4割超す 2兆円産業守る取り組みを
「中国人を入れてから日本人は募集していない」――。地方の有力な工場でも受注減に工賃の下落が響いて、外国人の労働力に頼らないと操業できなくなっている。日本の繊維・縫製産業にとって、研修生や技能実習生への依存度は極めて高くなっている。
実習生が3割超
経済産業省とJITCO(国際研修協力機構)の統計から、縫製業の外国人労働力への依存度を推計した。
2月23日に公表された経産省の08年の工業統計(概要版)により、産業細分類「織物製成人男子・少年服製造業」(不織布製及びレース製を含む)と「織物製成人女子・少女服製造業」(同)「織物製シャツ製造業」を縫製業とみなすと、従業者数の合計は7万6317人。07年と08年に研修から技能実習に移行した「婦人子供服製造」「紳士服製造」「布はく縫製」の外国人技能実習生数(JITCO統計)の合計は2万5116人だから、縫製業の全従業員のうち32・9%を実習生が占めるとみられる。
07年の工業統計では、産業細分類「成人男子・少年服製造業」と「成人女子・少女服製造業」の合計従業員数は7万7333人。JITCO統計の技能実習生数が2万5988人だから、実習生の割合は33・6%。同様に06年は、それぞれ8万743人、2万5807人で32・0%、05年は8万4673人と2万4326人で28・7%となる。ただ、ここには研修生は含まれていない。研修生の職種は「衣服・繊維製品製造作業」のため、縫製業に従事する人数は不明だが、08年で1万2748人、07年1万3141人のうちの大半が縫製業と推測でき、これを加えると外国人は40%以上を占めることになる。07年までと08年の工業統計の分類が若干違うため、単純比較はできないが、この数年間では40%以上、年によっては50%近い部分を外国人労働者に依存していることが分かる。
出荷額減の中で
工業統計によると、繊維産業の製造品出荷額は90年に13兆9523億円だったのが、08年には4兆8779億5000万円と3分の1まで落ち込んだ。製造品のうち「衣服・その他繊維製品製造業」は90年が4兆7256億円だったのが、07年には2兆1748億円と半分以下に。日本繊維産業連盟は「金額ベースでは2兆円を超えて、一定の大きな存在感がある。(研修・実習)制度見直しによって縫製業の負担が増え、QRや付加価値機能が崩壊するのはまずい」と指摘する。繊維産業の大きな変化を縫製業へのしわ寄せだけでは乗り切れない。
2010/03/05
新外国人技能実習制度 依存の今と未来―5 日本人採用は「リスク」 低い工賃、不況が追い打ち
国内縫製業が労働力の面で外国人研修・技能実習制度への依存を深めざるを得ない背景にはアパレル産業の構造があり、不況がそれに拍車をかけている。
募集しても来ない
「日本人を採用するのは無理。募集しても来ないし、だいたい日本人を採ること自体リスクが高すぎる」。研修生の受け入れ事業を進める産地組合の理事長の言葉が実情を表している。
「募集活動をするだけコストの無駄」(大手工場の社長)。いくら募集しても応募がない事態は、一昨年のリーマンショック以降、失業率が過去最悪を記録するなどこれほど雇用情勢が悪化しても変化はない。
200人近い従業員を抱える有力婦人服工場の社長は「最低賃金に毛が生えた程度の賃金で、しかも20%の賃金カット、ボーナスなし、サービス残業ありで、日本人が来るわけがない」と話す。特別に技能や経験がなくてもその日から仕事ができるコンビニエンスストアやスーパーのレジ作業の方が、一人前になるのに時間のかかる縫製よりも時給が高いのが現実だからだ。
仮にうまく日本人を採用できて「教育や研修をしてもよくて半年、短ければ数日で来なくなる」(工場社長)。少なくない工場が「日本人の平均年齢は50代。あと10年、いけるところまでいってやめるしかない」という実態になっている。
「適正化」の逆方向
最低賃金は縫製業の多い県などではおおよそ630~640円前後。厚生労働省の毎月勤労統計によると08年度の製造業全体の月間の給与総額は37万4362円。対して衣服製造業は17万8107円、パートで比較しても製造業平均が11万1962円に対し衣服製造業9万3144円と、いずれも半分以下の水準でしかない。
背景の一つに加工賃の問題がある。日本アパレルソーイング工業組合連合会は07年、縫製業の窮状を訴えて加工賃の「適正化」を取引先などに要望した。それから2年。現実は全く逆の方向に向かっている。この2年で工賃は20%程度下がり、バブル時代の半分以下の水準に落ち込んでしまった。低価格指向が追い打ちをかけている。
「2年前は工賃引き上げの機運が多少あったが今は『イヤなら仕事をしなくていい』という感じ」と、ある社長。1000円前後低い閑散期の工賃も今や通年化しており、「量産に入って、ようやくとんとんになる」状況だ。
政府の中小企業緊急雇用安定助成金で多くの工場が息をつないでいる実態もある。3年間300日を限度に休業補償と教育訓練した場合に助成金が支給される制度だ。
ある有力工場の社長は「うちだと1人当たり1日の休業補償5700円、教育訓練6000円で1万1700円」と話す。昨年だけで4000万円の収入になったという。本業より休業した方が利益が出るのが実情だ。
2010/03/08
新外国人技能実習制度 依存の今と未来―6 進む小ロット、短納期 即応するには頼らざるを得ない
小ロット、短納期を追求するビジネスモデルの進展も、国内の縫製工場が外国人研修生・技能実習制度への依存を深めざるを得ない大きな理由の一つになっている。
受注の格差拡大
加工賃は、国内の下落と中国の人件費上昇とでかつてほど大きな差はなくなった。これまでにも増してアパレルメーカーが国内工場に求めるのは、店頭の売れ行に即応した生産、期近に引き付けたクイックな物づくりだ。発注は実需期に入ってからになり1回当たり100枚、200枚、中には20枚、30枚といった単位になり、短納期でリピートを繰り返す。
この結果、もともと大きかった閑散期と繁忙期の受注の格差がさらに拡大。「今日、明日はとりあえずいっぱいだが、ひと月先にラインが埋まっているかどうかが見えない」(ある社長)といった不安定な状況になる。そのため、人員は閑散期の最低限の体制にせざるを得なくなっている。短納期の受注が来ると「もうけられるときにもうけなければ」と、長時間の残業で対応する。素材や副資材メーカーも在庫を抱えていないため、最終組み立て段階の縫製工場の納期へのプレッシャーは増す結果になる。
こうした受注に瞬発力を持って対応するには、「バリバリ働ける」若年労働力である研修・実習生に頼らざるを得ない。ある40代前半の工場の社長は「昨年は2ケタの増収を達成した。それができたのは研修生たちが深夜まで残業してくれたおかげ」と話す。
アパレルメーカーは消費者ニーズに対応しようと付加価値の高い、手間のかかる、工程数の多い商品を増やしている。これも研修生・実習生の残業に依拠せざるを得ない作業の拡大につながっている。
市場対応への要
小ロット・短サイクルの市場への対応として工場は、フルアイテムをこなせる技術力・対応力を身につけようと動いている。その鍵になるのがやはり研修・技能実習生たちだ。「技術の伝承は、研修・実習生なら1年もあれば十分できる。年齢の高い日本人だけでではとても新分野には踏み出せない」からだ。
コストだけを見れば日本人のほうが安価な場合もある。ある工場は、全従業員を正規雇用から時給が地域別最低賃金のパートに切り替えた。労働時間は5時間半で社会保険はなし。そのかわり子育てのため短時間しか働けない従業員も雇用した。一方、研修生は8時間労働で社会保険に加入。コストだけをみれば、最賃パートの日本人に2時間の残業をさせた方が安価になる計算だが、それもできない。別の地域のある協同組合では「研修・実習生を受け入れて、これ以上事業を継続すれば、負債を増やすだけ」と傘下の工場に廃業を勧めているという。マーケットの変化に対応し、生き残りをかけてチャレンジしようとすればするほど、研修生・実習生に依存せざるを得ないのが実情だ。

