繊研新聞 アーカイブ/就職・採用関連記事
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2010年12月の連載 「FB初の専門職大学院 BFGUの5年間」
2010/12/24
〈連載〉 FB初の専門職大学院 BFGUの5年間―上 実務と理論両軸の教育実現
ファッション分野で日本初の専門職大学院として06年4月、文化学園(大沼淳理事長)が文化ファッション大学院大学(BFGU)を開学した。ファッション産業の高度専門職業人を育成する最高学府が誕生した意義は、国立大学でファッションを専門に教える学部がないことから国の高等教育政策の一環として大きいだけでなく、ファッション業界にとっても画期的だ。5年の節目を機に同校の存在意義や特色、ここまでの成果を振り返り、今後、期待される役割を展望する。
開学の二つの目的
同校は文部科学省が専門職大学院の設置を認めた03年度以降、急増した独立大学院大学の一つである。それは大学の学部など基本となる組織がない大学院で、研究者の育成だけでなく実務のプロの養成を目的とする点が特色。専門職大学院の代表的な分野は、法科大学院ほか会計・ビジネス、IT(情報技術)系などだ。ファッション分野では現在、唯一の大学院がBFGUである。
開学の目的は大きく二つある。専門学校の枠内でできなかった実務と理論を両輪とする教育を実施し、高度な専門性を備えた人材を育成することが一つ。もう一つが日本のファッション産業の地位向上だ。
これまで日本では、ファッション産業を支える人材の育成は、主に技術系専門学校が担ってきた。戦前は習い事のための洋裁学校、戦後は物不足の中で増設された生活必需品である繊維や衣料の縫製工場労働者の育成、供給という歴史を持つ専門学校が多い。技術的な教育が主体で、デザインやパターンを専門とするクリエーターや製造技術者を多数養成してきた半面、経営面の教育は弱かった。
生産者側の視点で
一方、大学でファッションを専門に教える国立大は日本になく、私立の女子大などの家政学部が手掛ける家庭や消費者視点での研究が中心。生産者側の視点でファッション教育を行う大学は皆無だった。
そこでBFGUが目指すのは、クリエーションとマネジメントの視点を備えた、次代を担う人材の育成である。1919年の文化学園創立以来、蓄積してきたファッション教育の実績とノウハウを結集して「ビジネスが分かるクリエーター」「クリエーションが分かる起業家」の育成を掲げた。ファッションビジネス研究科だけの単科大学院として設けたのはファッションクリエイションとファッションマネジメントの二つの専攻だ。教育内容はデザイン、テクノロジー、マネジメントの3領域に分けてそれぞれに応じた3コースを設け、コース別に比重を変えて各領域を連携させた教育を行っている。
同校の2年間の課程を修了すると、修士の学位が授与される。米国にはファッション工科大学、英国にはセントラル・セントマーチン美術学校があり、国際的にはデザイナーの学歴が注目されることも多い。そうした中で、日本のファッション産業界にBFGUができた意義は大きい。それは産業全体の地位向上にとってだけでなく、日本のFB業界をリードし、世界で活躍できる人材を育成する場がきた点でも重要だ。
本連載では同校の独自な教育内容と5年間の成果を紹介する。
2010/12/27
〈連載〉 FB初の専門職大学院 BFGUの5年間―中 高度な専門職業人の育成
BFGU(文化ファッション大学院大学)は、ファッションに関する高度で専門的な職業能力をもった実業家の育成を目指し、理論と実務を両輪とする教育を実践している。ファッションビジネス研究科の下に、ファッションマネジメント(1学年の定員30人)とファッションクリエイション(同50人)の二つの専攻を設置。3コースに分けて少数精鋭教育を行っている。
入門講義は10日間
マネジメント専攻は「ファッション経営管理」コースでファッションを事業化するためのマネジメントを研究。経営者や起業家、ブランドマネジャーを育成する。クリエイション専攻は「ファッションデザイン」「ファッションテクノロジー」の2コースで構成。独自のブランドで世界で戦えるデザイナーと、デザインを製品化するための技術者を育成している。
経営管理コースでは、アパレルからファッション流通業までを対象に、ファッションに特化した経営の理論やメソッドを教えている。4大卒などファッションを学んだ経験のない院生も多いため、入学直後にファッションビジネスの基礎や商品知識の入門講義を10日ほどかけて実施。カリキュラムでは、院生はデザインや技術系の科目も履修しながら、国際的なビジネスや生産、財務の理論、貿易、ビジネス法務などを学習。1年次の後期からブランド企画や店舗企画の演習も始まり、会計やロジスティクスなど経営者や店舗管理に必要な理論を広く学んで事業部レベルの運営手法を修得。修了年次には企業経営や財務の応用理論と並行し、必修科目のフィールドプロジェクトで(1)160時間以上のインターンシップ(2)企業・団体などからの受託研究(3)ベンチャー企業設立、のいずれかに取り組む。
独立・起業向けも
クリエイション専攻の2コースでも独立・起業のための講義が充実している。
デザインコースの教育内容は(1)デザイナーとして起業・経営するための広い知識・技術の修得(2)オリジナルブランド作りの研究活動の二つが柱。ファッション起業論やグローバルビジネス論のほか、ブランド起業の実務や計数管理、ビジネス法務を履修する。本業のデザイン領域では、入学時の技術的水準の開きを補うため約60コマの単位外の授業を行いつつ、1年次修了までに10~15点、2年次修了までに15~20点の作品提出を課す。
テクノロジーコースでは現場主義のカリキュラムを採用。経営系の理論と、素材特性や生産技術、生産原価、材料調達の座学の講義に加え、実習中心に製造・生産に関する知識と技術が修得できる内容とした。教授や講師もメーカーの技術部長や縫製・テキスタイルの工場長・経営者、モデリストら現場経験の豊かな実務家を揃える。学内にCAD(コンピューターによる設計)専用や縫製工場並みの実習室、超音波ミシンなど本格設備も整え、実践的な研究を行う。
専門的な教育内容にひかれ、各コースとも目的意識が明確で、留学や社会人、海外出身者ら多様な経歴の持ち主が集まっている。そのため教育目標通り、経営管理コースではフィールドプロジェクトの(3)起業を選び、すでに在学中に起業した院生も多い。デザインコースでも第82、83回の装苑賞ほか国際的なコンテストなどでグランプリを5年間で5人が受賞し、卒業時に15人近くが起業・独立している。
次回は、ここまでの成果を具体的に振り返り、今後の課題と方向性についても考察する。
2010/12/28
〈連載〉 FB初の専門職大学院 BFGUの5年間―下 社会への発信強め浸透図る
BFGU(文化ファッション大学院大学)は開学当初、知名度がなかったため、学生集めに苦労すると予想された。特に文化学園として実績のなかった経営管理コースが苦戦すると考えた。その他に国内でのパタンナーの減少もあってテクノロジーコースの入学希望も弱いと危惧(きぐ)されたが、5年間での3コースの応募者数は右肩上がり。予想外に多方面から学生が集まっている。
経営管理コースの入学者の出身校は旧帝大や地方の国立大や6大学、韓国や中国、台湾ほか海外の国立大学など。出身学部は経済や商学、法律、文学から理工系に医学部、美術系、家政学と幅広い。新卒者は3分の1で社会人や留学経験者が多い。デザインコースの入学者も、東京藝術大学や私立の美大出身者ほか、アジア中心に海外からの留学生も多く、経歴は多彩だ。
海外からの入学希望も
全学的に日本でファッションを勉強したいとする留学生も目立つ。現在までに在籍した留学生はマネジメント専攻45人、クリエイション専攻37人。中国ではCAD(コンピューターによる設計)パタンナーの需要が高いこともあり、テクノロジーコースも含めて海外からの入学希望者は増え続けるとみる。知名度向上に伴い国内の応募者も増加中で、内外からファッションを志す人が集まり、アジアのファッションを牽引(けんいん)する存在となりつつある。
すでに3回の修了生を送り出し、世界に向けた人材の輩出も始まっている。デザインコースでは5年間で168人の院生が在籍し、これまで延べ177人が各種コンテストに入選、その内5人が最高賞を受賞した。日本ファッション教育振興協会のパターンメーキング技能検定にも同コースとテクノロジーコースから5人が合格。高度で専門的な技術や職業能力をもつ人材を育成する場とFB業界でも認知され始め、大勢の修了生が有力各社で即戦力として活躍中。企業からの採用ニーズも高い。
進路をみると、デザインコースではコムデギャルソン、ヨウジヤマモト、イッセイミヤケの3社に10人が就職。繊維・アパレル大手への入社は全学的に多いほか、経営管理コースでは小売りの大手企業や留学生などがアジアやスウェーデンの企業に就職したり、内外で起業する例も目立つ。管理コース修了生の半数程は中途採用枠での就職で、起業する力のある人材と見込まれ海外の生産管理など実務をいきなり任される例も多い。
そのほか日本で唯一のファッション分野の大学院として急増しているのが、政府などからの依頼による国際的イベントへの代表参加だ。パリのプレタポルテ協会主催などの海外展への出展やファッションショーへの参加、教員への海外での各種審査員や講演依頼も増えている。
理論と実務をつなぐ
今後の課題は「大学院の社会的役割として、社会へのファッションの発信を強める必要がある」とする。その一環で09年に始めたのがBFGUファッションウィーク(FW)だ。知名度向上をもう一つの狙いとし、院生の修了研究の発表を兼ねて2月上旬の週に開催。第1回は4日間で約1800人、第2回は6日間で約2900人を集めた。
FWは教育の社会公開・還元活動と位置づけ、次代のファッションとFBの方向性を示唆する対話・議論の場とする目的でシンポジウムを実施。理論と実務を架橋するイベントとして産業界や教育界、政策立案機関でファッションにかかわる人を内外から集めてパネルディスカッションや交流会を行っている。
今後、知名度の向上や教授陣の拡充にも取り組み、FWの実施などで業界と同時に地域社会での存在感を高め、浸透させていく考えだ。

