繊研新聞 アーカイブ/就職・採用関連記事

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2011年01月の連載 「脱中国集中 ヤングアパレル生産新時」

2011/01/18
〈連載〉 脱中国集中 ヤングアパレル生産新時代―上 生産基盤再編 問われる安・早・小の先
 ほぼすべての商品を中国で生産してきたレディスヤングアパレル市場でも、生産体制の再編が重要課題になっている。中国だけに依存して短期に作り、売り切っていく手法は「もう限界」との認識が広がっている。アパレルメーカーからSPA(製造小売業)チェーンまで、各社こぞって高単価で売れる企画や、アジア全域での生産確立にシフトし出した。「生産こそブランディングの要になる」との切迫感がにじむ現状は、マーケットインと安さを突き詰めてきたこれまでと違う、さながらヤング市場新時代の模索のようだ。店頭だけでなく、生産地でも新しい競合が始まった。
今度こそ行く
 「不戦敗」――。昨年末、都心商業施設のヤングレディスフロア担当者はそう漏らした。11~12月、期待した防寒アウターがテナントで思ったほど売れなかった。中国の国慶節と尖閣諸島問題でのばたつきから、納品が大きく遅れたためだ。「あっても売れ残ったかもしれないが、そもそもなければ勝ち負け以前」と話す。
 「(納期遅れは)中国の人材不足から、すでに09年の旧正月頃から表面化していた問題」と言うのは、ファッションビルで人気のヤングブランド「ダブルクローゼット」を販売するウェアーズの上杉典正社長。枯渇する人材確保のため人件費も上がり、中国工場の出し値も09年より1・5倍ほどになっているという。
 ウェアーズは昨年から、平均1カ月だった商品生産の期間を1・5カ月に延ばし、アイテムによっては半年前から素材確保と企画を始め、納期と価格を安定させた。さらに年末からベトナム、ミャンマー、韓国などへ視察も重ねている。
 かつて大手商社などがチャイナプラスワンの開拓を始めたころ、ヤングアパレルは生命線の生産リードタイムが長くなることを懸念して、追随しなかった。しかし「今度は行く。高単価のトレンド物は韓国や中国、ベーシックで長く着る商品は東南アジアなど、ヤングアパレルも各地の特性に合わせて生産しないと危険」とみる。
店頭にも波及
 生産再編の動きはすでに店頭にも波及している。パルグループは昨年、全社で商品の40%を国産にする目標を打ち出した。同社で成長中のヤングカジュアル業態「ディスコート」では、「すぐに40%にはできないが、今月の段階ですでに5%ほどの商品を国産にした」(植原邦雄ディレクター)。早期に韓国・日本生産を全体の20%にする。
 「アパレルブランドだけが良い思いをしようとするこれまでの生産取引の構図も変えないといけない」とはエレガンスブランド「レッセ・パッセ」を販売するレッセ・パッセの針生茂樹社長。「中国の工場側も優良な企業は人材育成や設備投資を長くしてきた。日本側だけが安くて小ロットで品質にもうるさい注文を押し付け続けるのでは、社長だけが良い思いをしている企業のようなもの。これからのグローバル社会では通用しない」とみる。製造コストを抑えた商品政策では行き詰まるとみて、3年前にレッセ・パッセより価格を上げた「デビュー・ド・フィオレ・バイ・レッセ・パッセ」を作り、昨年はほぼ全店で月商2000万円にまで伸ばした。「本来ファッション産業がアイテムやMDに合わせて適地生産を考えるのは当然。(中国一辺倒の)今までその努力をしていなかっただけとも言える」(上杉ウェアーズ社長)。当然の“努力”が問われている。

2011/01/20
〈連載〉 脱中国集中 ヤングアパレル生産新時代―中 日・韓へシフト プロパー販売率がカギ
 中国生産だけに頼れた時代を終え、アジア全域での生産へ苦心の転換をするレディスヤングアパレル。今のところ日本と韓国生産に回帰するルートが有力だ。しかし2国とも製造原価は中国製よりも、さらに高い。東南アジアは、トレンドアイテムを生産するには、まだ品質と納期に難がある。中国にせよ他国にせよ、「前門の虎、後門のオオカミ」だ。焦点になるのは、製造原価が上がっても利益を上げられる有効な販売手法を確立できるかどうか。各社、プロパー販売率のアップと高品質ブランドとしての付加価値作りにしのぎを削る。
三つの戦略で
 アパレルメーカー、アイランドユニヴァースは昨年から企画・生産開始のタイミングを早め、今月の展示会では、韓国・日本生産を前回比40%増やす。「詳細は明かせないが、びっくりするくらい日韓の生産にシフトした」という。脱中国偏重へ向けて、三つの生産地戦略を組んだ。中国では、早くから作り込み、提案していくロングセラー品を作り、中国よりも2週間から1カ月早く生産できる韓国・日本製品はヒット商品の短サイクル生産、プリント品などのように日本生産ならではの表情が出せる付加価値商品の国産体制の三つだ。
 日韓生産が増えた分、必然的に製造原価率は上がる。主力のエレガンスブランド「CCクロス」全体で年間1・5%アップ、日韓産品に限ると10%は上がる試算だ。それでも市場環境から小売価格は春に10%落とす。
 「原価率は上がるが、ヒット商品を、日韓でこれまで以上に素早くQR生産できるので、店頭でのプロパー販売率を上げて補う」計画だ。韓国の工場とスカイプで回線をつなぎ、素早く生産計画や企画の意図を可視化できるようにした。日本の工場とも、直接取引をする。
 パルグループのカジュアル「ディスコート」の植原邦雄ディレクターも、「日韓生産で原価が上がり、粗利益をとりにくくなっても、販売機会ロスをするよりは良い。それくらい中国生産だけでは商品が揃わない」と話す。日韓生産比率は早期に20%以上を目指している。「今のレディスヤング市場で売り上げを取るには、値段以上の見栄えの良い商品を作ること、数少ないヒット商品を早く見極め、早く追加すること」と言う。これを「中国だけに依存せずにできたところが、これから勝つ」とみる。差別化できる商品を国産で作りながら、ヒット商品は、韓国で1カ月以内に供給していくことでプロパー販売率を上げて、粗利益の目減りを補う。「できるかどうかよりも、成功させるよりほかに道がない」からだ。
パターン変更
 多くのブランドが期待するアジア全域での販売と結びつけ、原価の高いものづくりを収益基盤に乗せる可能性もある。アパレルメーカーのエスシステムは今春から、エレガンスカジュアル「キスミス」の商品の7~8割を国産にする。パターンも見直し、前肩設計など高級ブランドが採用する仕様に再設計した。一方で平均価格は維持。初のアジア進出を主眼に置いた戦略だ。秋からアジアでの出店を始めるが「欧州のハイブランドも、主力の商品は自国で生産した価値を売っている。アジア市場を開拓するにはメード・イン・ジャパンの日本ブランドであることが武器になる」と判断した。国産にした分の製造コストアップも、アジア市場でのブランドステータスに還元できれば中期的に採算に見合う判断だ。

2011/01/21
〈連載〉 脱中国集中 ヤングアパレル生産新時代―下 長期的な戦略 企画から製造に投資
 中国生産にもっとも依拠してきたレディスヤングアパレルの変化は、「日中のアパレルビジネスが構造変化した」証しとも言える。売れ筋を中国でいかに安く、早く作るかだけでなく、各ブランドなりの商品企画とそれを具体化する生産体制をどのように、長期的な戦略を持って描き出すか――。生産問題は、そんなアパレルビジネスの核心にまで再考を迫っている。
 昨年、多くの企業が中国生産の問題に直面するなか、長期的な戦略を立てていたところは自信を深めた。アジア全域で販売を伸ばすアイアは「納期や品質の悩みはない」(森井城太ストラ事業部長兼MD)という。レディス4ブランドで生産は常に「横ぐしで」まとめて中国工場に発注してきた。1ブランドずつは小ロットのトレンド品だが、全社では年間を通して安定した生産基盤を確保できる。商品企画・生産管理も、常に自社で3カ月前から行ってきた。ヤングアパレルの平均よりも2~3倍ほど長く、「トレンドのQR体制には弱くなるが、安定した製造とオリジナリティーのある企画ができる体制を優先してきた」(萩島宏社長)。日本・台湾・中国で各ブランドが伸びている。
ラインを確保
 卸のバーンブリーズも、生産問題の悩みはないという。10年前から中国に出資工場を設けていたからだ。布帛の縫製工場を現地企業とともに設立し、年間を通して生産ラインを確保してきた。生産機能を持たない企業が大半のヤングアパレル市場だが、「中国の内需が成長するなかで、日本側がスポットで都合よく生産することはできなくなる」(武田達朗代表)と投資していた。出資工場を通じて、ニット・カットソー工場の生産背景も確保できた。「中国のインフレを日本の円高で吸収できたこれまでは良かったが、それも限界。生産への投資など長期の戦略がないとアイデアはあっても製品が作れない」と言う。
 今後も中国生産の高騰は収まらない。日韓への生産回帰も中国を代替できるほどの生産キャパはない。問題は単なるポストチャイナ探しでは済まない。
リアルに伝え
 「中国経済と繊維産業が構造変化したのだから日本も構造変化しなければならないということ」とヤングレディスアパレル、アリシアの伊達環取締役ページボーイ事業部長は話す。昨年、企画・生産の改革に全社を挙げて着手した。初めて中国の縫製から生地、加工、検品工場に物流まで、サプライチェーンにかかわる全企業とアリシアの担当者全員が集まった生産会議を発足させた。「商社を介して仕様書で中国工場に発注するだけでなく、アリシアのブランドがどんなイメージで、どういう企画をしているのかをリアルに伝えることで、ブランドらしい商品生産力をともに高める」狙いだ。「すぐに成果が見えるものではないが、5~10年後を見据えて勝ち残るのには不可欠の要素」と考えている。
 企画力強化のために、人材にも投資を広げた。企画やパタンナー、生産管理などの人材を大幅採用し、「各部門でこれまでの倍以上」の社員を揃え、自社企画・生産を拡大している。「これまでヤングアパレルにとってブランディングとは、店頭や販促への投資だった。これからは生産基盤の整備も含めてブランディングになる」と強調する。
 店舗運営や販促がうまく行っても、肝心の商品が計画通りに揃わなければ、売り上げは作れない。企画と生産と販売にバランスよく力を割いた、本当の製造小売り型のアパレル事業が今、求められる。