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「繊研新聞」掲載記事から就職・採用関連記事の一部を掲載します。文頭の日付は掲載日です。
【2007年07月 連載 販売職 FBの今と未来】
2007/07/09
〈連載〉 〈フォーカス人材〉 販売職 FBの今と未来―1 だから働く 企業の本気が試されている 「“好き”にどう応える」は待ったなし
「他産業に負けたくない。ファッションビジネス企業らしく、人材問題を解決したい」とクロスカンパニーの石川康晴社長は話す。
同社は人材難が話題になる以前から、販売員全員を正社員採用しており、接客コンテストや研修制度の充実、終身雇用のための制度づくりにも力を入れてきた。人材への投資の背景には「誇りを持って働いてもらえる会社にしたい」という理念がある。
誇り
昨年から始めたクロスカンパニーのロールプレイングコンテストは、接客のレベルアップが主眼だが、時間と資金をかけたコンテストの目的はそれだけではない。販売スタッフに、「ファッションビジネスの主人公という意識を持ってもらいたい」。こんな思いも込められている。
5月9日、都内のホテルのパーティー会場。正面のステージで接客の技術を競う参加者の顔には、緊張感とともに、本選に選ばれたという誇らしさも現れていた。2回目となる今年は、上位に選ばれたいと意気込むスタッフが多かった。
会場には第1回で優勝した店長の姿も。コンテスト後のパーティーでの立ち居振る舞いをみているだけで、優勝が励みとなり、彼女がこの1年で大きくステップアップしたことが分かった。
不利
販売職は、大学の進路指導担当からも人気がないという。小売業の労働組合の役員も、「小売りの販売職は、他産業と比較して圧倒的に不利」と話す。
ファッション関連の販売職は華やかそうに見えるが、実はハンディがいくつもある。立ち仕事で、おまけに営業時間が長い。土日はもちろん、年末年始やゴールデンウイークも、繁忙期だから仕事を休めない。その分だけ、報酬や待遇が良いなら人が集まるかも知れないが、この点でも他産業に劣っているところが多い。
ハンディを数えたら、きりがない職種だが、それでも売り場には元気いっぱいの販売員がいる。「ファッションが大好き」「販売には、他の仕事では味わえない喜びがある」「私にとっては天職」
ハンディを抱える販売の現場を支えてきたのは、こんな彼女たち、彼らの思いだろう。
励み
エゴイストの渋谷109店に勤める販売スタッフに、どこよりも忙しい店で、どうして働き続けるのかと聞いた。「エゴイストが大好き」それにつきる。「だから売り上げを伸ばしたい」。
ブランドネームを高めるためにがんばるという心意気がチームのみんなにあり、そのことが互いの刺激と励みになっている。顧客の笑顔を直接に見ることができるのも販売職だけだ。
ずれ
現場にはそんな思いを持った販売員がいっぱいいるのに、人が集まらない。何かがずれているとしたら、現場ではなく、経営者の意識だ。労組役員は、「人材は他産業との競争なのに、同業他社だけを見ている経営者が多い」と指摘する。
人材難を嘆く経営者は多いが、販売職の重要性を心の底からとらえている経営者はどれだけいるのだろうか。
かつて、新規採用のうち3年後に残るのは数パーセントという企業の社長が言い放った。「短期間でスタッフが入れ替わってくれれば、人件費が上がらなくていい」と。ここには「働き続けてもらいたい」「スキルアップしてほしい」という意識はまったくない。
今こんな暴言を吐く幹部はいないと信じたいが、意識はどこまで変わったのだろうか。販売職を本当に魅力あるものにするつもりなのか。
販売の現場も、就職活動をしている学生も、企業と経営者の本気度を見ている。
現/場/か/ら
有名なアパレルメーカーの就職試験を受けたけど、辞退しました。人事の人の話に真実味を感じなかった。ファッションが好きじゃないみたい。選んだのはずっと小さい会社。店長と会ってまぶしく感じたから。(ヤングSPAの新人販売スタッフ)
2007/07/10
〈連載〉 〈フォーカス人材〉 販売職 FBの今と未来―2 自慢できる会社 知名度より「続けられる」へ 働く側の店作り始まる
基幹ブランド「セシルマクビー」を運営するジャパンイマジネーションの木村達央社長は、販売員の定着率を高める要素を三つ挙げる。一つは自分が成長できる、スキルが身に付くと実感できること、二つはいい仲間がいるという信頼感があること、三つは友達に自慢できる会社であることだ。
セシルでも
セシルマクビーと言えば、知らない女の子はいない。渋谷109でトップを走り続けるブランドは、友達に自慢できる筆頭だろう。だが、知名度とは裏腹に「定着率は年々悪くなっていた」。人気ブランドであるがゆえの忙しさに耐えられず、安定を求めて辞めていくことは想像に難くない。
販売員不足は急速に浮上してきたとはいえ、年商200億円台から300億、400億円をめざす中で、克服しなければならない最大の課題でもある。1月末から約3カ月間、毎週開かれた会議、業務改善プロジェクト「ネクスト」は、マネジャー以上20人ほどが集められた。イメージ先行で人を集めてきたが、実態として働き続けられる職場作りに初めて焦点を当てたものだった。
販売員が最もやりがいを感じる接客に専念できるよう、接客以外の作業量を減らし、時間当たりの必要人員を精査し、残業時間を減らした。ローテーションは、規定の有給休暇も取れることを想定し、「ネクスト」での喧々諤々(けんけんがくがく)の議論を通じて、各業態のマネジャーがパソコンをにらみながら作ったものだ。
信頼の連鎖
このプロジェクトのもう一つの狙いは、下からのルール作りを通した会社への愛着や自覚を高めること。販売員の定着のカギは、あこがれや親しみを持てる身近な先輩がいるかどうかだ。意見を聞いてもらえた先輩を信頼し、その先輩が業務改善プロジェクトを通じて後輩の声を届け、経営の一端を担う。信頼の連鎖を生むための仕掛けでもある。
この4月の新卒採用は170人。かつてない人数をそろえた上でのネクストの本格運用を、「『これでどうだ!』ってな感じです」と木村社長。確実な内定確保のため、現場研修を1カ月近くやったのも初めてで、イメージと実態のすり合わせも済ませているメンバーだ。
売り上げのいい店には人材が集まるもの。しかし、集まった時のエネルギーを維持し定着させるには、自分が成長できることを実感するだけの時間的、精神的ゆとりが必要だろう。「商品も客に合わせるのだから、働く場だって働く人に合わせるしかない」。顧客起点の業態開発を進めてきたファッション業界だからこそ、働く人起点の店作りを迫られている。
現/場/か/ら
カリスマ販売員全盛期の渋谷109で働いていました。配属が決まった時は舞い上がるような気持ちでしたが、続けていくには、体力とお金、自分を磨く時間が必要です。ストレス太りで、そのブランドが着られなくなったら終わりですから。(今は個店の店長)
2007/07/11
〈連載〉 〈フォーカス人材〉 販売職 FBの今と未来―3 危機感映す研修 「定着」と「意識」自前で育てる 企業の将来像を描く
「ファッションは好きでも、店は買う場所であって働く場所にはならない」。そんな若者の増加を指摘する声が多い。ファッション業界=華やか、というイメージは崩れつつあり、あこがれの象徴でもあったクリエーティブな服はかつてほど売れていない。
つなぎ止め
人とのコミュニケーションが苦手、できれば人とかかわりたくないという気分も蔓延(まんえん)している。「ブランドタグ付け作業に10人集まっても、販売職となると、やっと一人集まるぐらい」。これが現実だ。
この間、ほとんどの企業が全社的な販売研修を始めたのも、薄くなった人材を自前で育てるしかない、という危機感からだ。さらにそうした制度がなければ、大手志向、安定志向の強まった新卒の確保も既存スタッフのつなぎ留めも難しい。魅力ある他産業にも競り負けるという認識がある。
サンエー・インターナショナルは、昨年からブランドをまたがる販売研修を始めた。
入社から店長までの成長過程を5段階にし、各段階で習得すべきスキルを設定した。ブランド共通であれば、対象顧客とのミスマッチにも対応し、ブランド間移動もしやすくなる。
ポイントも、2年前から店長、エリアマネジャー、バイヤーと各段階の研修を実施している。下期からは、自ら学びたい講座を選び、マスターすれば半額負担する制度も始める。人間力を高め、自らの成長を自覚できる人材を1人でも多く増やそうとする試みだ。
どこまで?
さまざまな制度が整えば、定着率は一定程度高まる。ただ、その段階で、販売員にどこまでの質を求めるのかという問題が浮かび上がる。「とにかく頭数だ」と焦る経営者は多いが、研修には会社の将来像が込められているはずだ。
10店ほどの専門店を運営するメンフィス(東京)は、相当額をかけて販売員研修を実施した。制度を売りにするためではなく、実地で販売力を上げるための取り組みだ。その中で意識の低い販売員が複数現場を離れていった。残った販売員は、新しいアイデアを生み出している。「経営者としてはかけだったが、将来を担える人材の定着が高まった」としている。
これまでも質を追求していたかと問われれば、疑問符が付く。量の確保が切実になった今、ここで質を高める努力を怠れば、企業の優劣は一層広がる。しかも「質」とは、新入社員に、とりあえず店頭に立てるだけの知識や技術を身につけさせることではない。人材の質とは企業の質であり、研修や育成は企業の未来をかけた取り組みだからだ。だからこそ手間とコストをかけなければならない。
現/場/か/ら
コーチング研修を受けました。新鮮だったし今でも現場で役立てようとしています。でも「それはうちにはできないでしょ」というのもあった。店長会議ではうちの中の改善点を洗い出し、「私はこうする」とアイデアが出せる。両方セットで意味があると思います。(セレクトショップ店長)
2007/07/12
〈連載〉 〈フォーカス人材〉 販売職 FBの今と未来―4 5年後の私 道を開くのは会社の使命 希望かなえば活力生む
「店長、エリア長までは見えるけど、その先がかすんでる」。販売が好きで意欲的に働いていても、このままでいいか迷い始める販売スタッフが少なくない。将来像をどう描くか。人材確保や働き手のモチベーション向上に影響があるテーマだが、実行できないところも多い。社員が夢を持ってがんばれる環境を整えることは会社の使命。業界として、制度の確立とその実施が急がれる。
複線型へ
これまで地域やブランドごとにバラバラだった販売職のキャリアアッププランや職種転換制度を統一し、企業として明確化する動きが出てきた。
イトキンは05年に、販売部門のキャリアアップコースを定めた「キャリアデザイン制度」を導入。アルバイトのパートナー社員から始まり、年次契約の専門スタッフ、店長、エリアマネジャー、スーパーバイザー、最終的には販売部長へと昇格する道を示した。各カンパニーやブランド内で別々に決まっていたキャリアアッププランを統一することで、契約社員でも将来像を描きやすくした。松場弘取締役執行役員総務本部本部長は「とかく販売員は、世界が店中心になりがち。目標が見えるようになればやる気を引き出せる」と話す。
同制度は複線型。新しい組織が立ち上がったり、欠員がでると社内公募により希望者に異動のチャンスを与えている。現場からの推薦があれば、販売からVMD担当やマーチャンダイザーなどへ異動もできる。また、店長職を極めたマイスター職の新設も検討中だ。現在の制度では、スーパーバイザーへ昇格すると店舗に籍がなくなる。みんなが販売から離れたくなるわけではない。販売一筋を希望する人が、店舗運営にかかわり続ける道を開く制度も不可欠だ。
よく見てる
「がんばっているのに希望が通らない同僚がいれば、周りもショックを受ける」とアルページュの桶田俊二社長。同社では5年前から職種転換制度を取り入れた。約100人の販売スタッフから、毎年5~10人が企画やプレスなどに異動している。入社初年度は、全員が販売の現場に配属されるとはいえ、店舗数が拡大する中でこれだけ多くが異動するのは驚く。定着率も当然高い。
この環境が成り立つのは、社員への希望調査と聞き取りを頻繁に行っているため。同社では2~3カ月に1回、ブランドディレクターが販売員と面談し、各自の状況ややりたい仕事を聞いている。桶田社長は「そして約束したことを実行することが重要。若い人は会社がやることをよく見ている」と強調する。希望がかないやすい風通しの良い職場環境も、活力につながっている。
現/場/か/ら
初めに配属されたショップの店長は、1年後に希望通り企画へ異動しました。その姿を見て、努力すれば夢がかなうと励みになったし、『次は自分も』と刺激にもなったんです。(「アプワイザー・リッシェ」の販売からプレスへ異動した佐々木絵里さん)
2007/07/13
〈連載〉 〈フォーカス人材〉 販売職 FBの今と未来―5 自分を磨ける給料 他産業と四つに組めるか 熱意生かす条件整備
あるデザイナーブランドの社長は「大学卒でも洋服が好きな子はいっぱいいる」とみる。そういう人材を取り込むには「彼らがやりたい仕事と思う賃金のアップが必要」と指摘する。
初任給は?
ファッションビジネスには「あこがれ」や「かっこよさ」が必要だし、「好きだから」という熱意も欠かせない。ただしその熱意を生かすには働く環境整備が前提だ。ファストフードの時給が1000円を超える時代にそれ以下では到底勝ち目はない。
他産業に劣らない生活ができ、自分を磨くことのできる賃金や労働条件があるか、結婚・出産した後、それまで築いたキャリアを生かせるのか。顧客と接する最前線でファッションビジネスを支える販売職だからこそ、その確保と育成のために、今、手を打たなければならないことがある。
専門店のハニーズは4月から初任給を上げた。商品企画または販売職で全国への転勤可能な「ナショナル社員」の初任給を、大卒で19万5000円から21万円に、同じく高卒で15万5000円から17万円へと一気に1万5000円アップさせた。年間200店を超える大量出店を継続する同社にとって販売員確保は成長戦略の根幹にかかわる問題だからだ。
50万円の差
ファッション業界専門の人材紹介会社、クリーデンスが登録者のデータから販売職を含めた職種別の平均年収まとめた。これを転職情報誌「デューダ」の「けっして高くはない」という外食やサービス・流通業界全体の「店長/販売職/SV(スーパーバイザー)」の年収と比較すると50万円もの開きがある。この格差はパート・アルバイトの時給についても同様の傾向だ。
販売の仕事は、土日に休みづらく、労働時間も長くなりがちだ。しかし、いつまでもそれを言い訳にしていても事態は変わらない。まずは結婚や出産した販売員を対象にした特別の休暇制度の導入が、先行企業で始っている。
専門店のポイントは育児時短、産前時短、産前休暇などの制度を導入した。保育料を就学前まで半額補助する仕組みもある。クロスカンパニーも女性既婚者を対象に1カ月前に申請すれば3連休が取得できたり、日曜日に休める制度を取り入れた。5月のゴールデンウイーク、お盆、年末年始も3連休できるというものだ。労働条件の改善は来春の採用活動に効果が出ている。
賃金を上げるにしても、休暇を増やすにしても会社にとってはコストアップだし、財務的にはマイナス要因だ。これをどうクリアするか、持続的成長をめざすなど選択肢はさほど多くはない。他産業とがっぷり四つに組んで、力負けしないためには、この難題に立ち向かわざる得ない。
現/場/か/ら
ブランドを刷新し、今秋は新たに5店以上出すのですが、販売スタッフが不足しており、事態は深刻です。事実上、スタッフが揃えば出店する、という状況。育成まではなかなか追いつかない。(大手アパレルのブランド担当)
2007/07/17
〈連載〉 〈フォーカス人材〉 販売職 FBの今と未来―6 雇用のカタチ 正社員化は地位向上の一歩 「あこがれの職」めざせ
年収が低いだけで不人気の要因となるのに、販売職はこれに不安定な雇用形態が加わる。
脱・調整弁
契約社員やパート・アルバイトは、契約期間があるから、どうしても安心して仕事に打ち込みにくくなる。企業側にとって人件費削減に便利な雇用形態だが、他産業がいっせいに新卒採用を増やしたあおりで、必要な人数を確保できない企業が多い。ある女子大の関係者は「うちは一般事務職、営業職狙いが第一。やはり正社員採用で。販売職について聞かれても困ります」と言う。
昨年から販売職の正社員化の動きはさまざまな形で広がっている。これらの施策が継続・発展すれば販売職の地位向上への一つの道をひらくことになる。
効果くっきり
コストアップを辞さず待遇改善に乗り出した企業の手応えはどうなのか。
ユニクロは、4月に導入した「地域限定正社員制度」で約1600人を登用。賞与コストは総額で約10%上昇したが、意欲向上などにつながった。採用は4月の入社人数が新卒を除いても昨年の倍。店舗増もあるが新制度の効果は明らかだ。
一方、サンエー・インターナショナルは、正社員化で離職率が半減。06年9月~07年2月の販売部門の離職率は前年同期より16ポイント低下し、12%になった。正社員化は昨年9月。以前は中途採用をかけると未経験者の応募が多かったが、導入後は経験者が増えた。待遇の良い職場を印象付けることで即戦力の獲得にも役立っている。
離職率は、ワールドストアパートナーズでも低下した。01年以前は50%台、昨年4月以降は20%台に。だが、「(今後の出店を考えると)まだ不足」(同)。同社は新卒採用に注力する一方、今月、販売員の事前登録制度「ワールドクラブ」を立ち上げる。企業の相次ぐ正社員化の動きをどう評価したらいいのか。
IFI(ファッション産業人材育成機構)ビジネス・スクールの尾原蓉子学長は、IFIの正式コメントではないと断った上で「人手不足だから正社員化という短絡的手法にとどまってはならない。人材への対応をすべて見直すべきだ」と話す。尾原氏は女子大での講演の際、「FBでは小売りの最前線での経験が何にも勝るキャリアになる」。すると、「嫌だと思っていた販売の仕事のイメージが変わりました」といった反応が返ってくるという。
問題は待遇改善を一時の対策に終わらせず、業界を挙げてキャリアアップの道を描き、モチベーションを引き上げることだ。それでこそ「ずっと販売の現場でがんばりたい」、そんな思いを自然に出せる職種にすることができる。業界、企業の本気度が試されている。
=おわり
現/場/か/ら
売り場はどこも悲鳴を上げている。ギリギリの人員で長時間労働では仕事をこなすだけで終わり。日々成長の実感はない。最低の待遇でも頑張っている仲間が夢の持てる職場に変えてほしい。(大手アパレルの元販売員)
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