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「繊研新聞」掲載記事から就職・採用関連記事の一部を掲載します。文頭の日付は掲載日です。
【2007年09月 連載 どうなるどうする 外国人研修制度】
2007/09/03
〈連載〉 どうなるどうする 外国人研修制度―1 貴重な戦力 国内縫製支える柱に
米国国務省は今年、人身売買などに関する年次報告書で、日本が受け入れている外国人研修生の実態を強制労働と指摘し、日本政府に制度の廃止を求めた。いま、外国人研修・技能実習制度が大揺れだ。きっかけは賃金未払いや人権侵害、不正な金銭の授受などの事例が、社会問題となったことだ。法務省が調査した不正行為には、ファッション産業を支える縫製業の事例が数多く含まれる。途上国への技能移転という制度の目的と、安い労働力の確保という受け入れ企業の実態―――。矛盾を露呈した現行制度について、政府は09年の通常国会までに改定案をまとめるとしている。
来日数急増
「外国人研修・実習生は、若い働き手が集まらない中で貴重な戦力になっている。制度がなければ国内の縫製業は存続が危うい」。日本輸出縫製品工業組合(輸縫連)の吉田育弘理事長は、制度の必要性を強調する。
輸縫連は92年から、他団体に先駆けて研修生を受け入れた。初年度は5社25人だったが、16年間を経過した段階で、受け入れた中国人研修生は7900人強を数える。組合加盟224社のうち、9割の企業が受け入れた。現在、輸縫連関係で来日中の研修・実習生の総数は1234人(110社)。その数は、年ごとに増加している。
外国人研修・実習制度では、残業代の未払い、パスポートの取り上げ、セクシュアル・ハラスメントなどの不正、不法行為が社会問題になっているが、輸縫連など外国人研修・実習生の受け入れ業務を担う団体は、これらの事例について、「一部がすべてのように語られている」と憤る。大阪服装縫製工業組合の岩崎靖璋研修生受入委員長は「劣悪な待遇で酷使している企業はごく一部であって、同じように見られるのは心外だ」と話す。
外国人研修・実習制度は、国際貢献を目的にしたものだ。制度に基づき、外国の労働者を受け入れることで、日本の技術・知識の修得を支援する。
受け入れ人数は年を追うごとに増えている。法務省によると、06年の在留資格「研修」での入国者数は9万人を超えた。06年の実習への移行者数は約4万1000人で、実習中の労働者は約7万人に上る。
産業別でみると、実習生の受け入れが最も多いのは繊維・衣服関係だ。このうち8割以上が婦人子供服製造業を中心にした縫製業となっている。05年の婦人子供服製造業での実習生移行者数は約1万人となっている。
地域別では岐阜県が最も多く、05年の段階で研修生3290人、実習生6960人を受け入れている。実習生の95%が中国人で、大半が20代の女性。彼女たちの約7割が縫製業で働いている。
労働力不足
深刻な労働力不足と高齢化に悩む日本の縫製業にとって、外国人研修・実習生は欠かせぬ戦力になっている。研修生は常勤職員数が50人以下の企業は3人、51~100人は6人など、企業の規模によって人数枠が決められているが、これに実習生が加わる。
国内の縫製業は「1工場の平均的従業員数が20~30人で、うち研修生3人、実習生6人の合計9人を受け入れているケースが多い。研修・実習生を除けば平均年齢はかなり高齢化している」(岩崎大阪服装縫製工組研修生受入委員長)という。
国内の工場といっても、現場は外国人「労働者」に支えられている。これがアパレル製品の国内縫製の実情といえる。
2007/09/04
〈連載〉 どうなるどうする 外国人研修制度―2 制度改定案 “門戸開放”論議に火
09年の通常国会に向け、制度の見直し論議も活発化している。軸になるのは厚生労働省と経済産業省がまとめた改定案だ。
研修見直し
日本政府は「外国人の単純労働者の受け入れは認めない」ことを原則にしており、両省の案もこの点では一致している。大きな違いは研修制度の評価と見直しだ。
研修生は「労働者」ではないため、労働基準法や最低賃金法などが適用されない。このことが過酷な労働の温床ともなってきた。米国国務省が強制労働と指摘したのも、研修生の実態だった。
この問題を解決するため、厚労省案は「研修制度を廃止」という方向を示した。1年目から雇用契約を結ぶ実習生とすることで、労働法制を適用する。一方、経産省案は、現行制度を維持しながら罰則強化で不正行為を抑制するとしている。
両案に対する業界団体の受け止め方はさまざまだ。厚労省案については「技術的にも、日本の生活にも未熟な外国人には、研修期間が必要」と反対の意見が多いが、「現地で内定する際、縫製技術が優れている人材を選んでいるし、以前ほど日中の技術力の格差もなくなっている。研修期間が不正行為の温床になるなら、廃止すればよい」との声も聞こえる。
在留期間延長
滞在期間については、両省案とも最長5年に延長という方向を打ち出した。ただし、厚労省案は在留期間が延長となる再技能研修は「企業単独型」に限るとしている。
外国人研修・実習生の受け入れには、企業単独型と協同組合が第1次受け入れ機関となる「団体監理型」の二つの方法がある。中小企業の大半は団体監理型だ。厚労省の延長案は、対象を大企業に限定したものといえる。
これに対し、経産省案は「対象となるのは、中小企業、大企業を問わず、優良な受入企業」としている。労働力の確保という受け入れ企業の要望をにじませた内容だ。
長勢案で白熱
論議をさらに白熱させたのは、長勢甚遠前法相が発表した「実習制度を廃止し、短期外国人就労制度を創設」という私案だ。期間を3年に限定、受入団体は許可制、出入国管理体制の強化などを前提にしているが、職種や労働者の技能水準などは問わない。受け入れの目的も「国際貢献」に限定せず、「国内で必要な労働力確保に資するものに転換」としている。
長勢私案は、事実上、外国人の単純労働者の受け入れに道を開く内容といえる。国際貢献を掲げているが、実態としては労働力確保の側面が強い――現行制度の抱える矛盾が、単純労働者の受け入れ論議にも火をつけることになった。
政府は09年の通常国会までに制度改定の法案を提出することを決めている。外国人研修・実習制度は厚労、経産、法務、外務、国土交通の5省にかかわるもので、制度改定のためには「少なくとも10数件の関連法案が必要になる」といわれる。
3省(相)案を軸にしながら、どのような理念と政策を構築するのか。09年通常国会までの1年半、白熱した論議が続きそうだ。
2007/09/05
〈連載〉 どうなるどうする 外国人研修制度―3 低い工賃 活用なしに残れない
生産のグローバル化が進む中、国内縫製業者は小ロット・短サイクルと工賃引き下げの要請にあえいできた。労働力も慢性的に不足しているため、外国人研修・実習制度を活用しないと生き残れないところも多い。
廉価な労働力
「工賃が下がり続けている」と国内の縫製企業は嘆く。縫製企業の全国組織、日本ソーイング工業組合連合会によると、「婦人服の場合、小売価格に占める加工賃の割合はピーク時で15%前後だった。しかし今は6~8%に落ち込んでいる」という。
海外で生産した低価格品が急増しているもとで、アパレル企業や小売企業から工賃引き下げ(原価率低下策)の要請が強まっているためだ。
発注側の要請に対応するため、中小・零細の縫製企業は、ほとんどが外国人の研修・実習生を受け入れている。制度の目的は国際貢献だが、ある縫製企業は「低価格工場から始まり、今や高付加価値品を生産している工場でも、この制度を活用しないと存在していけない危機的状態。外国人を使ってコストを下げるしかない」と本音をもらす。
実習生に支払う賃金の平均月額は14万4000円で、繊維・衣服関連は1万円低い13万4000円。全産業で最も低い賃金となっている(国際研修協力機構調査の05年賃金支払総額)。
無理も利く
商品の納期は、一段と短縮している。店頭の売れ行きに応じて、商品を短サイクルで供給する手法が強まっているためだ。納品までの期間が2週間、あるいは10日間といった発注も、今ではめずらしくない。また、サンプルをつくっても本生産に流れない中途キャンセルや急きょ注文が入るケースなど、「その煩雑さは半端なものではない」(縫製企業)。
こうした生産で戦力になっているのが研修・実習生だ。寮などに住み込んでいるため、無理が利く。小ロット・短サイクル生産の大半は、研修生を受け入れた国内の中小縫製業が受け皿になっている。
靴製造も疲弊
靴の製造は実習制度の対象外となっているが、「靴の生産でも外国人研修・実習はあってしかるべき」というのは、卑弥呼の柴田一会長。「何らかの手立てを講じないと靴の国内製造業は衰退の一途をたどる」と警鐘を鳴らす。靴の生産には裁断・製甲・底付け・仕上げという工程がある。このうち、製甲はほとんどを外国人労働者に依存してきたが、不法滞在の取締りが強化されたことなどから、国内での製甲が不可能に近い状態になってしまった。加えて、日本人の働き手は高齢化が著しく、後継者もいない。現在は同工程の大半を中国の工場に外注している。
「ブリッジゾーンや多品種・少量・高感度の商品分野は国内で担い、その他は海外でつくる。国内の製造業は付加価値の高い生産に磨きをかけながら、同時に海外にも進出する」。歴史ある産業を守り、発展させる立場から、この方向を国が支援すべきと柴田会長は主張する。国内での労働者確保については、「付加価値の高い生産だからといって、人手は日本人でなくても良いはず。条件を整備し、意欲と能力のある人材を受け入れ、活用すべき」という。
2007/09/06
〈連載〉 どうなるどうする 外国人研修制度―4 法令違反 現実が空洞化を生む
日本の縫製業を下支えする外国人研修・実習生制度。日本の製造業の現実に背中を押された制度は、猛烈な速度で当初の理念とは異なる方向へ走ってきた。その結果、法令違反や人権問題が表面化し、労働争議が頻発するなど、さまざまな問題点を露呈している。
時給300円
最低賃金を大きく下回る200~300円の時給、200時間を超す残業、残業割り増賃金の未払い、パスポートや通帳を取り上げて自由な行動を妨害、携帯電話を持たせない、セクシュアル・ハラスメント…。こうした問題を引き起こす受け入れ業者が、少なからず存在している。法務省の調査でも、06年の違反件数は229件と3年前の2・5倍に増えた。
研修生を送り出す側もこうした実態を問題視している。中国の191の送り出し団体を束ねる中日研修生協力機構駐日代表事務所の劉江首席代表は、個人的な見解として「低賃金などの問題がある。特に零細企業は労働力として扱うので問題が生じる。大部分は縫製業の事例」と話す。
技術レベルが低く、責任者の教育レベルも高くないから研修にならない。最賃も守れず、一部では人権侵害も発生する。日本の制度だからと慎重に言葉を選びながらも、「このままでは日本の縫製企業に対する印象が悪くなってしまう」と憂慮する。
ある労働組合関係者は「法令違反や人権侵害はまれではない。時給300円で働かせていたら、やがては労働者をその程度の人間と扱うようになる。長くいればセクハラ、人身売買につながる。研修・実習生制度は人間も、地域も、家族も壊す制度になっている」指摘する。
目的とかい離
法令違反、人権侵害が象徴だが、制度の目的と現実のかい離は深刻だ。建前と本音の使い分けが、国際貢献を掲げた制度自体を空洞化させつつある。
受け入れ団体の一つ、東京・江戸川区のファッション・ソーイング協同組合の赤崎等事務局長も「中小企業は働き手を求めている。当人たちは稼ぎが目的。これが実態」と指摘する。
岐阜県山県市で研修・実習生を受け入れる岐阜ファッションアート協同組合の辻泰是理事長は、労働争議が起こることに戸惑いを隠せない。「経営者として勉強不足な人がいるのは確か」と前置きした上で、「安価な人件費で雇えると誘われスタートした。契約時に中国人は残業をやりたいと言うのに」と話す。
「来日の大きな目的が賃金なのは明らか。業者の多くはこうした実態と労組の指摘のギャップが理解できずにいる」のが実情のようだ。
悩む経営者
研修生受け入れ準備を進めるある協同組合の事務局長は「受け入れはかなりリスクが伴う」とみる。「零細メーカーの社長たちには研修生を管理するノウハウもなければ、そもそも発想もない。ただ、協同組合が安い労働力を持ってきてくれ、管理もしてくれるとしか考えていない」からだ。
労働力を確保したい、しかも安価にという縫製業の現実。「賃金」を求めて来日する研修・実習生が多いという現実。残業を減らして基本給を増やすと、収入減になるため、かえって「脱走」が増えるという皮肉な結果が、現実を象徴する。この矛盾が事態を労働争議へと向かわせることになる。
1600人の研修・実習生を抱えるある協同組合は毎月、帰国直前に団体交渉になる。帰国日の朝4時、6時に妥結することもあり、ノイローゼになる経営者もいるという。また、ある経営者は、実習生から「毎日のように、最賃払えますか、払えなければ労基署に駆け込みますと言われる」と嘆く。
この現実の解決が急務になっている。
2007/09/07
〈連載〉 どうなるどうする 外国人研修制度―5 産業を残す 問われる構造的問題
「労働組合が押しかけ、労基法違反だ、きちんと残業代を支払えという。指摘は正しいかも知れないが、結果として、悪人扱いされたあげく、廃業に追い込まれた縫製業者がいくつもある」。縫製業の社長は怒りを隠さない。
対立と共通点
研修・実習生の働きなしに経営を維持できない縫製業者と、労働者や人間としての権利を主張する労働組合――対立は深いが、両者の主張には共通する点がある。
外国人研修生権利ネットワークの鳥井一平氏(全統一労働組合書記長)は「国や自治体に産業政策がないことが大問題。それがなければ何も解決しない」という。
地域経済を支え、雇用を吸収してきた縫製業に対し、いわば「勝手にやれ」と突き放してきた。そんな中で「生き残ろうと必死に動いてきた結果が今。中小の社長さんたちは基本的には良い人。それで人権侵害が起きるのは本当に不幸なことだ」と話す。
一方、研修・実習生を受け入れている側も、産業政策不在の問題を指摘する。ファッション・ソーイング協同組合の赤崎等事務局長は「要は日本の縫製業を残すのか、残さないのかという問題」と話す。研修・実習生が全員帰国したら、縫製業は壊滅する。「縫製業を残すのなら、研修・実習生が必要」との主張だ。
続く悪循環
縫製業者は低い工賃と短納期に苦しみながら、必死に頑張っている。競争相手は人件費がケタ違いに低い海外の縫製工場だ。現行の制度が抱える問題点を本気で解決しようとしたら、「まともな人件費を払うと経営が成り立たない」という縫製業の現実とファッション産業の構造にもメスを入れる必要がある。
岐阜一般労働組合の本間高道執行委員長は「時給が低くても、単価が切り下げられているから縫製工場はもうかっていない。最賃を払ったらつぶれてしまうのが現実。一番弱い縫製業にしわ寄せがいっている」とみる。併せて「アパレルメーカーの責任が大きいが、メーカーも安い時給を前提にした価格設定で青息吐息。繊維産業の構造の問題だ」と指摘する。
工賃の引き下げについていえば、縫製工場同士の過当競争がこれに拍車をかけた面もあるだろう。
八方ふさがり
岐阜ファッションアート協同組合の辻泰是理事長は「共存共栄の道を探らなければと思う。でも現実は八方、十六方ふさがり。一針一針縫っている立場としては、どうしたらいいか分からない。中国人がいなかったら廃業だ」という。これが現場の悲痛な叫びだ。
制度見直しの論議が始まっているが、縫製業者の側からも、労働組合の側からも「現場の声が反映されていない」という不満が聞こえる。論議が、こうした実態を踏まえていないからだ。
発注側のアパレル企業やSPA(製造小売業)企業、さらには小売業も、この問題とは無関係ではいられない。コンプライアンス(法令順守)の観点から、自社が販売する商品が時給200円、300円の「労働」によって支えられているという現実を直視すべき時期にきている。
政府は09年の通常国会に制度改定の法案を提出スケジュールで準備を進めている。ここに向けた論議は、日本の縫製業の存立に関わるだけでなく、発注側の生産戦略の根幹を揺るがすものになりそうだ。=おわり
(研修生取材班)
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