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「繊研新聞」掲載記事からネット関連記事の一部を掲載します。文頭の日付は掲載日です。

2006年1月の連載 - 「個別最適から業界標準へ 百貨店協会のIT白書」

2006/01/19
〈連載〉 個別最適から業界標準へ 百貨店協会のIT白書‐上 量的拡大が質的向上に
 今月、日本百貨店協会が5年ぶりに発刊した「06年版百貨店IT白書」は、業界全体として「IT活用が量的変化と質的向上」を伴う急激な変化があったと、この5年間を総括している。白書は、IT活用の各分野について、現状と課題、今後の方向性・対応策を示しており、ここでは、まず5年間の変化の特徴をみていく。
SKU単品管理は4倍
 表は先の白書の基になった00年実施の実態調査と、昨年夏の調査の結果を比較したものだ。
 表によれば、色・サイズ別のSKU(在庫最小管理単位)レベルの商品管理を実施している百貨店数は5年前の1・3倍に増え、SKUレベルの単品管理の規模は平均で4倍に拡大している。この単品管理を支援するEDI(電子データ交換)により商品マスタ情報や発注情報、支払い明細情報などを取引先とやり取りしている百貨店も1・3倍に増えている。
 EDIにより取引先が百貨店にASN(事前出荷明細)データを送り、出荷段ボールなどにSCM(出荷梱包マーキング)ラベルを張り、このラベルを読み取り、ASNデータと照合する手法は流通過程での検品業務の重複をなくし、ペーパーの伝票を削減するもの。物流関連業務効率化の効果は大きいが、百貨店、取引先双方の単品管理が高い水準で実施されていなければ実行できないし、効果も薄い。EDIでもハードルが高い分野だ。このASN/SCMを実施している百貨店は、5年前の2・5倍に広がっている。
業界を挙げた活動に
 値札レスは百貨店独自値札を廃止し、ブランドタグにJANコードを付ける。百貨店値札取り付け業務の削減は取引先の業務効率化、さらには納品リードタイムの短縮に効果が大きい。これもJANコードのソースマーキングや商品マスタ情報共有などがないと、実現できない。この実施百貨店は1・9倍となった。
 百貨店協会は、03年に「百貨店における値札合理化ガイドライン」をまとめ、JANソースマーキングによる値札レス拡大に向けたモデルを提案している。単品管理やEDIの広がりもさることながら、業界を挙げた標準モデル検討や業務改革のための活動が、値札レスの広がりの背景にある。
 白書の冒頭「はじめに」で平出昭二協会専務理事は、かつては「各社各様のホスト中心主義」が常識で、「自社個別最適の中で企業機密として改善を重ね」てきたと評している。これに対し、この5年間を「業界標準に道筋をつけた時代」と名づけている。
 この5年間でIT活用は、大手百貨店を中心とする先進企業から業界全体に広がった。コラボレーション取引のモデル化、その実施など、ITを活用した協業の取り組みも広がっている。量的拡大が質的向上を促した格好だ。さらに、この間のITベンダーによるEDI基盤のASPサービスがスタートし、EDI普及を促進し、ASN/SCMや値札レスなどで物流業務を効率化する取り組みや他の分野での業務連携が広がっている。
 部分最適から全体最適に向けた標準づくりの業界を挙げた活動が、この5年間の変化の底流にはある。

2006/01/20
〈連載〉 個別最適から業界標準へ 百貨店協会のIT白書‐中 インフラ整い連携進む
 06年版百貨店IT白書は、活用分野ごとに、現状と課題を分析している。今回はMDの分野を中心に見てみる。
 今回の調査によれば、衣料品で単品管理を実施しているのは12・8%にとどまっており、大半(82・3%)が品番レベルのダラー管理だ。消化取引が衣料品で57・4%を占めるなど、取引先が品揃えする売り場が増えていることを反映している。しかし4分の1を占める買い取り商品の単品管理の実施は、MD改革の基盤となることはまちがいない。前回書いたように、単品管理を実施する百貨店とその規模はこの5年間で着実に増えている。
不満の多い単品管理
 単品管理システムのさらなる充実も求められている。導入アプリケーションの満足度調査では「単品管理(MD)/分析」が「やや不満」「不満」計で67・2%と不満度の高さが際立つ。
 単品管理の阻害要因としては「商品マスタ整備などシステム運用上の作業負荷」(71・6%)や「単品発注・仕入れ計上などの作業負荷」(55・4%)、実施効果を上げる「業務ノウハウ、スキルの不足」(50・0%)などが挙げられている。
 これらの回答からは、単品管理にかかわる作業負荷の軽減に必要なEDIの実施など、トータルなシステムの未整備、単品情報活用ための社内体制・人材がない状況がうかがえる。
 単品管理実施でさらに重要なのが、取引先の協力体制やシステムの整備だ。その点で、百貨店と取引先のEDI実施に大きな力となっているのが、複数のITベンダーによるEDIインフラのASPサービス。EDIを実施している百貨店は5年前の32社から1・3倍の42社に増えたが、対象の取引先数の増加はさらに顕著だ。これは、これらのASPサービスによるところが大きい。その利用状況は表の通り。料金課金の仕方など課題はあるが、各サービスの相互乗り入れも徐々に実現している。このサービスによって、販売情報や支払い情報、マスタ情報、ASN情報などがやり取りされている。これらによって、単品管理のためのシステム運用上の作業の軽減や取引業務の効率化が図られている。百貨店独自値札を廃止する値札レスを実行する百貨店も広がりつつある。業界の標準的EDI基盤として定着しつつある。
新ビジネスモデルも
 白書は、この5年間にIT活用の取り組み領域が、インフラ整備や業務効率化から営業力強化、戦略的情報活用の分野に移りつつあると総括し、取引先とのEDIによる情報共有や業務プロセス連携が進展していると指摘する。さらに定着しつつある情報共有基盤を土台にした新たなビジネスモデル創出を期待している。
 一方、業界全体としてはIT活用が大きく進展していながら、企業間格差が拡大する現状も指摘する。同時に、この5年間に「業界標準に道筋をつけた」活動が百貨店業界のIT活用を加速したのも事実だ。今後さらに、標準化・共同化の取り組み推進が求められている。

2006/01/21
〈連載〉 個別最適から業界標準へ 百貨店協会のIT白書‐下 共同の領域広げ収益力
 01年1月に発刊した「百貨店IT白書」は冒頭で「百店百様といわれるような各企業の業務体系が、非常に不利な状況をもたらしている」と、百貨店業界のIT化の問題点を指摘した。それから5年、今月発刊した06年版白書は「IT活用が量的に拡大するとともに、質的にも向上し、取り組みの領域はインフラ整備や効率化から、営業力強化、戦略的情報活用分野へと転換しつつある」と分析している。さらに「5年間で構築してきたITインフラをいかに活用するかが、次の5年間に求められている」として提言をまとめている。
方向性に三つの軸
 白書は、今後の方向性として「インフラ整備からビジネスモデル創出段階へ」の取り組みの高度化、「業務効率化から営業力強化へ」の活用領域の拡大、「独自構築から業界全体で共同開発・利用へ」という協業化の推進という三つの軸を提示している。これらの方向性を踏まえ、「顧客力」「商品力」「販売力」など、IT活用の重点領域それぞれの活用のポイントをまとめている。
 取り組みの高度化では、百貨店・アパレル間のIT活用のボトルネックとなっていた取引問題にメスを入れ、新しい取引モデルを示したコラボレーション取引が先駆的だ。明確な文書契約を土台に情報を共有、商品力を強化し、双方の収益を高めるモデルだ。白書によれば、05年度は30・3%の百貨店が、534社の取引先と826ブランドを対象に292億円のコラボ取引を実施する目標だ。
 活用領域の拡大では、百貨店業界の特徴である高品位の接客を行う顧客接点での、百貨店ならではIT活用が他業態との差別化の強力な武器となり得ると指摘している。白書が先進事例として紹介している、三越の婦人靴売り場でのICタグ活用による客を待たせない楽しい売り場づくりは、接客プロセス変革の事例だ。販売員の付帯業務効率化にとどまらず、接客時間拡大や問い合わせ情報の品揃えへの活用が販売力強化につながったケースだ。05年4月からの半年間で、前年同期比2ケタ増の売り上げとなっている。
 協業化の推進では、SCM(サプライチェーンマネジメント)の分野で取引先との協業、標準化や標準システムの開発・利用で百貨店間の協業と垂直・水平、二つの軸を示している。百貨店業界のIT活用を推進するうえで、白書が特に強調しているのが、業界が一体となった標準化・共同化、標準情報基盤の整備だ。
情報の活用が焦点に
 これらの取り組みに当たっては、各企業固有の領域と業務プロセス共通化や情報共有によって業務効率・収益向上が図れる共同の領域、そして、消費者に対し企業の独自性を発揮した取り組みを実行する競争領域、の三つに領域を分け、共同領域に対し業界を挙げて取り組むべきと指摘している。この共同の領域で仕様を共同策定し、共同利用すれば、取引先にもメリットが大きい。「百貨店における値札合理化ガイドライン」策定を背景に、EDI標準基盤のASPサービスを使い、百貨店独自値札を廃止する動きが広がっているのが、その好例といえる。
 かつてはIT活用自体が競争領域だったが、今は、IT活用で得られた情報をどう活用するかに競争の焦点が絞られようとしている。これが5年間の最大の変化かも知れない。(監物敏充)


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