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「繊研新聞」掲載記事からネット関連記事の一部を掲載します。文頭の日付は掲載日です。
2006年2月の連載 - 「理想と現実の狭間(はざま)で ITはビジネスを変えたか」
2006/02/02
理想と現実の狭間(はざま)で ITはビジネスを変えたか‐上 動き出したTA取引改革 SCMは次のステップへ
IT(情報技術)時代の到来と言われて久しい。携帯ファッションサイトが注目を浴び、インターネット通販も着実な伸びを示す。テキスタイルや縫製業界ではSCM(サプライチェーンマネジメント)、BtoB、BtoCなどが話題を集めた。
ただ、現実はテキスタイルとアパレルメーカー間の取引改革をめざす「TAプロジェクト」の難航が示すように、「あいまいな契約慣行」などに阻まれ、当初の期待ほど成果はあがっていない。その間にも中国の繊維産業は日進月歩でレベルアップを続け、業界の規模縮小は一段と加速している。
存亡への危機感が高まるにつれ、今一度ITを活用しながら、真の意味でのSCM構築が叫ばれ始めた。一方で、BtoB、BtoCも試行錯誤の時期を終え、新しいビジネスモデル構築へと歩みを進めている。
週単位で染色指図
「期近のアパレル情報と素材の生産を、何とかして連動できないか」。今や、QR対応は極限に近づき、かつてのようにシーズン前に生産の大枠を固めるやりかたは通用しなくなった。とはいえ、資産効率が問われるなか、QRに備えて余分な在庫を持つわけにもいかない。この課題にテキスタイルメーカーすべてが頭を抱えている。
東レのニット衣料・資材事業部は昨年4月、「テキスタイルQRシステム」を立ち上げた。期近になると有力スポーツメーカー3社から、アパレル情報が生地にブレークダウンされて1週間ごとに送られてくる。東レおよびニッター、染色企業は、この情報に基づき、そのまま1週間単位で染色の最終量を決め、本生産に移行する。情報は東レおよび3社ごとに組み立てる各生産チーム、アパレルの生産と営業、アパレルが持つ縫製工場までリンクし、縦の情報を共有化する。
アパレルからの情報が、そのまま染色量に直結する。いったん色を染めてしまえば、ストップはきかない。アパレル側の経営トップの理解を得て、初めて具体化したプロジェクトだ。在庫削減やQRの進捗(しんちょく)など、どの程度の効果があったか、間もなく1年間を総括する。確信が持てれば、他の事業部にも広げる計画だ。
情報インフラ整備
メーカー型商社を掲げ、SCMの構築を強く訴えてきたのが住金物産。中国での生産拠点の改装や集約、沿岸部での物流加工拠点設立、ITインフラ「WINDS」などをセットに、基盤整備を進めてきた。WINDSはセーター、布帛、カットソー、ホームファッションそれぞれの商品特性に合わせたシステムが軌道に乗りつつある。現地での検品物流加工もA品率アップ、返品等に伴う伝票レスなどに効果を発揮した。今年中に、縫製拠点の整備、大連や香港の物流拠点確立などを終了、ハード面の整備はほぼ完成する見込みだ。
それでも収益モデルはまだ確立しない。OEMをめぐる競合はさらに激化。競合他社も情報システム整備、現地での検品加工をいっせいに強化中だ。情報武装、ハード面の整備が浸透し、次の収益モデルが求められている。住金物産は4月から、グローバルな原材料調達を含めた素材からの提案、マーケティングや売り場のMDを提案できるようなソフト機能を加え、次のステップのOEM事業構築に挑む。
2006/02/03
理想と現実の狭間(はざま)で ITはビジネスを変えたか‐中 生地のネット販売へ動く 収益モデル確立はこれから
生地を消費者に
製品のインターネット通販に比べ、テキスタイルでのネット販売がどこまで進むのか。業界はこの間、生地在庫の検索システムなどを立ち上げ、様々な模索を続けてきた。
99年から無地・先染め、プリントで在庫照会を始めたニチメンファッションは、既に中国での現物生地見本帳「奔時代」の在庫照会も可能になっている。国内同様、1時間ごとに情報を更新する。
サンウェルはBtoBの生地販売「サンウェルネット」を開始して丸4年が経過、年間売上高は8億円規模と大きくなってきた。これまでも一般消費者からの問い合わせが多かったが、今春から誰でも購入できるシステムの稼働に踏み切る。
深夜会議に対応
メーカーでも動きが進んできた。ショーワは昨年10月から在庫確認システムを稼働。一番の目的は、アパレルメーカーに対し、深夜の会議でも在庫確認してもらうためだ。定番素材が中心で、最新素材はやはり営業マンが持って回る。「バーチャルな世界では、生地の本当の良さはやはり伝わりにくい」。
こうした思いから、ネットと実店舗を融合させたクリック&モルタルの流れも出てきている。第一織物は04年春からネット販売を開始。ヨットのセール向け織物など、専門的なエンドユーザー向けは好評だ。ただ、売上高は1年半で1000万円弱にとどまる。やはり、リアルマートが必要との判断から、昨年末に東京に小売りを兼ねる営業所を設立した。
マンパワーに加え
一見、こうした動きを横目で見ていた感のあったのが瀧定大阪だ。多くの婦人服卸が規模を縮小するなか、一時は「一人勝ち」と言われた。ただ、シェアの大きさは拡大余地の少なさにもつながる。過去はマンパワーや在庫リスクなどの強みが目立った同社だが、これに新たな組織運営面やIT(情報技術)活用などのパワーを加え、ビジネスモデルを改革しようとの思いは強かった。
03年にERP(全社的業務統合管理)を導入し、業務プロセス改革に本腰を入れる。ホームページなども一新、採用のページにあるゲーム感覚の面接体験「バーチャル・インターンシップ」などは秀逸だ。
昨年春には同社が70%出資する形でテクスタイルデポを設立した。ウェブ上のネット通販システムと恵比寿、北堀江にある展示ショールームを組み合わせ、登録会員は誰でも0・5メートルから生地が買える。会員は服飾専門学校からスタートし、現在4000人。文部科学省統計の服飾家政系の専門学生数は2万5000人だから、比率は高い。
現在の売上高はまだ月100万円。ただ、テクスタイルデポ設立の狙いの一つは若手クリエーター支援にあり、当面の目標である月商1億円の中でも学生関係は月200万円と見ていた。新興アパレルなど主力となる法人への販売はこれから。春までに法人向けの販売システムを構築、オリジナル素材の組み立てもこれからだ。IT活用に加え、社員構成も業務委託、アルバイト、インターンシップなど多様。月商5000万円で単月黒字が可能と見る。
各社とも数字を見る限りまだ収益モデルは確立していない。それでも既存販路の頭打ちが明確な今、こうした流れが後退するとも思えない。
2006/02/07
理想と現実の狭間(はざま)で ITはビジネスを変えたか‐下 調達コスト削減に効果 製品販売では模索続く
糸販売の環境激変
01年1月、東レ、帝人、日本電気のほか19社で設立されたファイバーフロンティア。合繊大手の経営トップの合意事業としても話題を呼んだ。主業務はネットを活用した文具、機械部品などの共同調達およびファイバー取引である。調達については、バイヤーが繊維以外を含む34社、サプライヤーが2700社にのぼり、会員の中には汎用品の購買コストが10%近く削減できたところもあり、一定の効果が出ている。
ファイバー取引は東レ、帝人、三菱レイヨン、ユニチカの4社が加盟し、機屋など約360社に販売している。定期的に購入する原糸などの納期把握面の容易さなどは評価されている。
両サイト共に日常業務の簡素化およびコストダウンという点での効果はある。ただ、糸販売はテキスタイル産地の疲弊など、規模の縮小がさらに進んでいる。00年から、業界に先駆け、「いといとドットコム」を立ち上げた伊藤忠商事も、新たな運営形態を模索しているところだ。IT(情報技術)化によるコストダウン効果など、狙いは良かったが、環境変化が激しすぎた。
糸販事業の厳しさから、東洋紡は量的拡大を止め、昨年春から顧客とのマンツーマンの対話でオリジナル糸を作る「INAMI」プロジェクトを立ち上げた。レナウンジャーヂ、福助などとの商品化が具体化。06年度で1000コリの販売を目指している。
今年春からは産地や百貨店との取り組みもスタートするほか、ウール糸でも同じコンセプトでヤーンブランドを作る考え。ただ、プロジェクト立ち上げ時は会員制のウェブで各種開発情報などの開示を行っていく予定だったが、オープンする情報のレベル設定が難しく、現在は開発の方向性を示すだけにとどめている。
収益確立が課題
テキスタイル業界でも製品化の動きが加速するが、多くはOEM(相手先ブランドによる生産)中心。アパレルメーカーのような最終製品までのネット通販は成功事例がまだほとんどない。
NI帝人商事が運営するネット通販「くらし@サイエンス」は、帝人グループのPRなどを狙ったもので、防ダニ布団や枕カバー、軽量寝具など190アイテムを揃える。女性活躍推進運動の一環として女性店長を起用、ターゲットも店長と同年代の30~40代の主婦層に絞ったアクセス数は順調に増加、知名度も上がりつつあるが、年商はまだ5000万円未満。今後は物販サイトとしての収益確立が課題になる。
一方、情報量の多さ、無線通信機能などバーコードに変わるものとして話題を集めているICタグ。店頭での顧客とのコミュニケーションツールや、靴などの単品管理システムとして活用が始まっている。
ネームタグなどの製造卸ナクシスは、先端情報工学研究所、東芝TECと組み、一連の導入業務「ICタグソリューション」の提案を始めた。住友商事の関西ブロック繊維部門も、業務用浴衣などリネンサプライ業者を組織化し、ICチップを使った事業を検討中だ。伊藤忠商事、住金物産、蝶理など各商社も事業を具体化しつつあるが、電波法の問題や導入コストなど課題も多く、活用の姿が見えてくるのは、まだ、これからだ。
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