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「繊研新聞」掲載記事からネット関連記事の一部を掲載します。文頭の日付は掲載日です。

2006年7月の連載 「ネットが小売りを変える 米国のマルチチャンネル」

2006/07/14
ネットが小売りを変える 米国のマルチチャンネル‐1 2000億ドル市場 ファッションの売り上げ138億ドル 実店舗と相乗効果
 オンライン販売調査で9年目を迎える米ショップ・コムとフォレスター・リサーチの調べによると、3年前まで1000億ドルだった米国のネット販売市場は今年、前年比20%増の2114億ドル、旅行関連を除くと1380億ドルになると予想している。伸び率は、既存小売りの4~6%増をはるかにしのぎ、実店舗と相乗効果を狙った「マルチチャンネル」として、小売業にとって欠かせないツールになっている。「将来、米国総売上高の30%はネットで買い物するようになる」との予測もある中、ネットが小売りのあり方を変えようとしている。
衣料は3位
 調査によると、06年の旅行関連を除くネット販売の順位は、第1位がコンピューターの器材とソフトウェアで168億ドル、第2位が自動車と部品で159億ドル、第3位が衣料品、服飾品、靴で138億ドルと予想、他にペット用品、化粧品、香水類は30%以上の伸びが期待できるという。
 05年のネット売上高実績は1764億ドル(前年比25%増)、旅行関連を除くと1136億ドル(28%増)。これは小売総額の4・7%にあたるという。
 サイトの中で、最もアクセスの多いのは、あらゆる物が売買され、衣料品販売も最大の第1位のイーベイ(1170万件)、第2位は書籍からスタートし、コンピューター、衣料品、化粧品などにアイテムを広げているアマゾン(560万件)、第3位はウォルマート(309万件)だ。
 イーベイとアマゾンは95年の創立で、いずれも00年から始まった「IT(情報技術)バブル」崩壊の波をくぐって生き残ってきた。
 特にアマゾンは、「持ちこたえられないだろう」といわれた7年間の赤字を投資家が支え、03年度から黒字に転じた。05年度売上高は84億9000万ドル、純利益3億5900万ドル。店頭で見つけられない本を分かりやすい検索で探し出し、しかも「低価格で送料無料」、25~35%のディスカウントで、出版前の予約も受け付ける。アマゾンの出現によって、街に古くからあった本屋が姿を消し、コーヒーやスナック売り場と本を読める場所を備えたチェーン店や特殊な本を扱う本屋が生き残った。
競争激化
 一方、「世界のノミの市」イーベイは、掲載料と手数料が収入源。05年度売上高は45億5200万ドルで、純利益は10億8200万ドル。何でも掲載でき、例えば靴が趣味の人は新しい靴を買うたびに、古い靴をイーベイで処分している。掲載料は500ドル以上で4・8ドル。手数料は売れない場合はなし。25ドルの場合は5・25%、それ以上はプラス3%。支払いは傘下のペイパルを使用すると、3・25%の手数料で済む。個人ばかりでなく、企業も商品をさばくのに利用している(企業の手数料は異なる)。
 サイトは中国はじめ世界23カ国にあるが、安穏としてはいられない。強敵は検索で50%のシェアを持ち、株式上場後、マイクロソフトも脅かすといわれる事業の拡大が進むグーグルだ。無料のEメールや掲載サイトなどに対抗するため、イーベイは5月末、ポータルで最大のヤフーと提携を発表した。今後、ネット販売は競争が激化する。

2006/07/18
ネットが小売りを変える 米国のマルチチャンネル‐2 サービスを売る 50%がリピート客
ギャップも参入
 5月末、最大手のSPA(製造小売業)、米ギャップが、今年のホリデーをメドにデザイナーからカジュアルまでブランドの靴を扱うネット販売に参入すると発表した。ダイレクト部門のトビー・レンク社長によると、既に顧客ベースができている3部門のオンライン・サイトを使用するという。靴のネット販売は年15%伸びており、10年までに55億ドル市場になる(フォレスター・リサーチ調べ)と予想される。背景には、ひざ元のサンフランシスコで成功を収めたザポス・ドット・コムの例がある。
 99年にスタートしたザポス・ドット・コムは、06年度に6億ドルの売り上げを見込む。元ノードストロームのバイヤーだったニック・スインマン氏が自分に合う靴を探すのに困難だったことから始まる。「米国の靴市場は400億ドル、うちカタログ販売はわずか20億ドル、Eコマース市場は、もっと大きいはず」というデータに、00年、トニー・シェイCEO(最高経営責任者)が1100万ドルの資金を持って参加する。
 ハーバードのコンピューター・サイエンス修士号を持つ彼は96年、インターネットの広告を扱う「リンクエクスチェンジ」を立ち上げ、98年にマイクロソフトに2億6500万ドルで売却。シリコンバレーで若くして成功した富豪の1人である。その後、アルフレッド・リンCFO(最高財務責任者、05年にザポスに参加)と立ち上げたベンチャー・フロッグはインターネット起業のインキュベーターであり、投資会社である。モンゴミュージック(マイクロソフトに売却)、テルミーネットワークなどいくつか会社を立ち上げ、ザポスもその一つとなった。
 「いつの日か、総売り上げの30%はオンラインになる。消費者は最もサービスが良く、品揃えが良い会社から買い物する」「目標はオンラインサービスのリーダーになること。もし、消費者がザポスはサービスが一番良いと言ってくれるようになれば、靴以外のカテゴリーに拡大できる。靴はそのための土台でもある」という。売り上げは、00年度160万ドル、01年度860万ドル、02年度3200万ドル、03年度7000万ドルで、ハンドバッグとアクセサリーが新たに加わる。04年の売上高は1億8400万ドルで、金融機関から6000万ドルの投資を受け、本社を住居費の高いサンフランシスコからラスベガスに移転。05年度売上高は3億7500万ドルとなった。
倉庫に200万足
 サイトには、500のブランド、9万のスタイルの靴、バックがのり、週7日・24時間営業のケンタッキー州の倉庫には約200万足の靴の在庫が揃っている。「選択肢が多いし、返品も自由。もう靴屋に行かなくて済む」と言う人もいる。50%はリピート客で、20%は口コミという。
 新入社員は4週間の顧客サービスのトレーニングとケンタッキーで1週間研修を受ける。30代前半の若い経営者たちは「サービスがすべて。私たちはサービスを売っているのです」と強調する。

2006/07/24
ネットが小売りを変える 米国のマルチチャンネル‐3 投資 新しい顧客を獲得
店舗も上向く
 ショップ・コムとフォレスター・リサーチによると、消費者は同じ商品の価格を比較したり、贈答品のアイデアを探すのに、より頻繁にネットを使用するようになっている。
 小売りのウェブサイトは商品を売るだけでなく、店舗売り上げも上昇させている。小売業の報告では、店の売り上げの22%がウェブのページを見て買い物し、ネット販売の38%は店の新しい顧客であるという。
 ネット販売参入が04年と、他の大型店より先行する大衆百貨店のJCペニーは今年1月、ネット販売額が毎年30~50%の勢いで伸びて10億ドルに達したと発表した。広報担当のティム・ライオンズ氏によると、「JCP・コム」のサイトは、普通の日で45万人以上がクリックし、13万の検索があり、1200万ページが開示され、米国の百貨店の中では最大という。
 600万平方フィート(1平方フィート=約0・09平方メートル)の倉庫にある30万のアイテムは、店に在庫できない特殊サイズ、色、品目などを揃える。例えば、子供用ベッドは通常の店で6種類ほどしか展示していないが、ネットには100種類ある。
 そして新しい顧客の獲得や店のイメージアップ、カタログと店を連動した「マルチチャンネル」構築に役立っている。  中産階級の顧客年収は3万5000~8万ドルで、平均年齢は店舗が49歳、カタログは50歳以上だが、ネットは45歳で、年収も通常顧客より10~15%高い。ダイレクト部門のジョン・アービン社長は「マルチチャンネルは、ネット販売を上昇させ、顧客サービスに新たなドアを開ける」という。
 店ではカタログを見ながらネットで注文でき、今年中に全店レジにスクリーンを備え、店で見つけられなかったアイテムをその場で注文できるようにする。配送先は各家庭か全米1017店で、返品はどの店でも引き受ける。新に加わったネットサービスに、注文で作るドレスシャツ、パンツ、自分のデザインが可能なウエディングリング、ギフト登録とパーソナル・アシスタンスのページがある。
普及率は65%
 一方、メーシーズ、ブルーミングデールズを持つ最大の百貨店フェデレーテッドも、向こう2年間でネット販売のインフラに1億3000万ドルを投資すると発表。ネット販売額を05年度の4億5000万ドルから、08年度には7億5000万ドル以上に上昇させる。
 ネット販売の急速な拡大は、家庭に普及した安くて速いインターネットによるが、皆が使用しているわけではない。『ビジネスウィーク』誌によると、06年の家庭のインターネット接続は、75%の予測を下回る65%で、09年までに67%程度という。これはテレビの100%、DVDプレーヤーの83%、携帯電話の78%と比べると低い。65歳以上の60%は全くネットを使用しないし、コンピューターを持つ家庭の31%がネットに接続していないという。
 今後、ネット販売が「壁」に当たるとすれば、普及率がその一つになる。

2006/07/25
ネットが小売りを変える 米国のマルチチャンネル‐4 活用 TVショップと連動
 ニールセンの調査によると、4月のネット販売におけるアパレルの売上高ランキングは、イーベイが449万9000ドルと断トツの1位だった。2位以下はJCペニーの62万3000ドル、ビクトリアズ・シークレット・ドット・コムの46万3000ドル、QVCの41万1000ドルと続く。オンライン、カタログ、店舗販売の三つの販路を持つ小売業はすでに一般化し、多くの消費者が店に行く前にオンラインでリサーチすることは周知の事実だ。では、テレビショッピングとネット販売の二つの販路を持つ企業は、どのように両チャンネルの恩恵を活用しているのだろうか。
見逃しても
 QVCの親会社であるリバティメディアコーポレーションによると、QVCの第1四半期(3月31日締め)で、QVCドットコムの売り上げは国内の売上高の20%を占めた。
 テレビショッピングは決まった時間帯に番組を見て注文するものだったが、95年末にQVCドットコムができてからは、お客はテレビ番組を見逃してもウェブサイトで商品を買うことができるようになった。
 また、QVCドットコムのカスタマーフォーラムのコーナーでは、お客たちが商品を買う前やショッピングの最中、買った後も商品についてチャットを通じて情報交換する。
 QVCの主な顧客は郊外に住む裕福なベビーブーマー世代の女性だが、友人や家族だけでなく、さまざまな人と情報交換しながらテレビショッピングすることで、よりエンターテインメント性が増したと考えられる。QVCによると、頻繁に買い物しているお客は、全米で700万人以上に達する。
刻々と変化
 QVCドットコムのコンテンツは、新しいプレゼンテーションがテレビに登場するのに合わせて刻々と変わる。すべての商品は、テレビで紹介されると同時にウェブサイトでも紹介されるからだ。QVCドットコムのロバート・マイヤーズ副社長は「24時間以内にテレビで紹介された商品が最も人気がある。お客は見逃したプレゼンテーションを見る場として、ウェブサイトを活用している」と言う。
 ウェブサイトではテレビで紹介した商品以外に、テレビで人気の出たQVCブランドの商品の品揃えをより多く見せたり、テレビではあまり見せないメンズ服や子供服を売ったりしている。
 QVCは、お客がプレゼンテーションを見て買うことに慣れているため、ネット販売でもビデオでプレゼンテーションするのが適しているとの観点から、6月5~10日、1時間のプレゼンテーションを6種類、ウェブサイトで試験的に見せた。現在、その結果を検証している。

2006/07/27
ネットが小売りを変える 米国のマルチチャンネル‐5 ソリューション Eコマースはデータの宝庫
独自の助言
 00年創立のイーファッションソリューションズ(ニュージャージー州セコーカス)は、ウェブサイトのデザインの他、オーダー処理、買い付け、データ分析などのソリューションを提供し、ここ3年間、売上高が平均300%伸びている。得意先はベビーファット、ファットファーム、ロカウエア、XOXO、DKNYなどで、中小アパレルメーカーが多い。
 今年のリテールシステムズ大会で講演した同社のエドワード・フォイCEO(最高経営責任者)は、同社ソリューションについて、「すべての分野で情報を収集し、生産量や工場、広告媒体、出展場所を決めたり、返品の原因を突き止めたりできる」と、幅広い利用価値が人気の原因と強調した。同社は週か月ごとに独自のリポートを顧客に提供する。すべてのデータを基に顧客の購買行動を分析、「こういうサービスを無料で提供したらもっと売れる」などの助言をする。
 得意先の一つのJLOバイ・ジェニファー・ロペスは03年、オンラインでもオフラインでも、高い返品率と値札の間違いに悩まされた。オンラインでの返品率は33%に及んだ。オンラインでの返品率を型別、工場別、シルエット別に分析した結果、返品の90%近くが同じ工場でつくられた製品だった。その工場にすぐ通知して生産をストップし、小売店にも通知した。返品率は10%台前半まで下がった。同CEOは「データが(得意先やお客との)リレーションシップを守った。Eコマースはデータの宝庫だ」と指摘する。
 「推定年商500万から1000万ドル規模のメーカー」(同CEO)のアップルボトムスは、人気トークショーの「オプラ・ウインフリーショー」で取り上げられ、売り上げが急上昇した。ところが、Lサイズの需要が一気に増えたにもかかわらず、従来のプリパックで小売店に納品したため、Lサイズは品切れし、小さいサイズが大量に返品された。この時も、ウェブサイトの売上高と在庫のデータを分析してプリパックのサイズ構成を変えた。その後、オンラインの売り上げは30%も伸びたという。
 リテールシステムズ大会では「ただ複数の販路を持っているだけで、マルチチャンネルリテーラーの特典を生かしきれていない」との声が聞かれたが、データを分析し、その結果をオンラインでもオフラインでも生かして売り上げを上げれば、マルチチャンネルの恩恵を真に活用しているといえる。
意欲生む特典
 同CEOは「特典は顧客の購買行動を理解するうえで、非常に重要な要素」と指摘する。さまざまな特典を試せば、どうしたら購入意欲をわかせられるのかを見いだすことが可能となる。

(サンフランシスコ=立野啓子通信員)


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