繊研新聞 アーカイブ/ネットビジネス関連記事
「繊研新聞」掲載記事からネット関連記事の一部を掲載します。文頭の日付は掲載日です。
(記事下部のリンクで同じ月の他の記事を表示できます。)
2008年6月の連載 「FBが変わる!? バーチャルワールド」
2008/05/08
〈連載〉 EC新時代 ネットコミュニケーション―1 進化するツール 広く、深く、密に 特有の価値を提供
08年2月、ネット販売の変化を表す出来事が起きた。ユナイテッドアローズ(UA)の公式通販サイト「リクリス」閉鎖だ。同サイトは07年4月にグランドオープンしたばかり。その短命さは、ネット販売の変化の早さを物語り、ある通販の幹部は「潮目が変わった」と表現する。ネット販売をやれば売れる、という時代はとうに終わった。販売チャンネルから情報発信するメディアとしての機能を備え、さらに先行く通販サイトでは、いかに顧客との関係を密にするかという、コミュニケーション化が進んでいる。新しいEC(電子商取引)の形、ネットコミュニケーション時代の到来かも知れない。
強力な支持基盤
3月20日、東京・渋谷109。言わずと知れたギャルの総本山に、半年前にモバイル通販だけで立ち上がったブランドが出店した。編集プロダクションのディーティーエルジェイが運営する「ブレス」だ。初めてのリアル店だけに、初日売り上げは目標に届かなかったが、ディベロッパーの東急モールズデベロップメントは「ほとんどのブランドが初日から売れることはない。むしろモバイル通販と連動した“新しい芽”を期待したい」という。
一方でブレスの通販サイトは渋谷109出店後、売り上げが急激に伸びた。開店告知の販促効果もあるが、「マルキューファッションはギャルの“民族衣装”のようなもの。渋谷109に店があることは大きい」と山崎みしえる社長。本当の意味でギャルの“仲間入り”を果たした瞬間だ。
「売れなくてもいいというブランドさえある。喜んでくれるのはメディアとして品質が高く、これだけプロモーションし、かつ販売してくれるところは他にないから」と岩本眞二スタイライフ社長。同社運営の通販サイト「ニュアン」は東京コレクションに参加するデザイナーやセレクトショップの商品を扱う。そのため写真のクオリティーや表現方法、コメントなどデザイナーの細かい要望に応える。「売り上げの割に手間がかかる。でも、妥協しないから顧客がしっかりついてきた」。一般的にネット販売では売りにくいと言われる、商品単価“2万円の壁”をニュアンの顧客は軽々と超える。ファッション好きに支えられ、事業は黒字転換を見込む。
個店に欠かせない
地方専門店が生き残るためには、ネット販売しかないと言い切る、あるオーナー。キーワードは顧客の囲い込みとコスト圧縮だ。社長自らシステムを組み、コストを抑え、先行メリットで得た、厚い顧客層を持っている。この顧客にどういう情報を流し、購買意欲をそそり、売り上げに結びつけるか。「それ自体がノウハウであり、生き残る道」とも。それだけにネット通販ができなければ、新たな取引口座は開かない。ネットの顧客はほとんど実店舗とかぶらず、時間と距離を超えて顧客作りにまい進する。
一方、自社通販サイト、リクリスを閉鎖したUA。全事業の見直しという事情もあったが、「自社通販サイトとして何をやるべきか。社内的にも、既存顧客が求めるものとも、ズレが生じた」のが原因だ。公式なのに「ゾゾタウン」店との差別化を意識するあまり、UAと異なるサイト名、品揃えになってしまった。このため認知のための販促コストがかかり、既存顧客からは、店で見たあの商品が欲しいとの声が多いなど、ギャップがあった。とはいえ同社はネットの重要性を否定したわけではない。将来、在庫やカードなどと連動した自社通販サイトの再構築もありうる。
時空超えて独自進化
ブランドやテイスト、趣味嗜好(しこう)、興味関心など仲間が集い、深化し、ファン化する。ここにビジネスのチャンスとサクセスが生まれている。ネットではブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)など情報発信する、もの言う消費者が影響力を高めている。カード会員という巨大な顧客を持つ商業ディベロッパーの参入も激しい。時間も距離も超えるネットの特有性は、海外の需要も取り込もうとしている。
ネット販売はどういったコミュニティーにどんな情報や商品を提供し、存在価値を高めるのか。ネットだけにとどまらず、クロスメディアで顧客に接触し、支持を得る必要性も高まっている。ネット販売は販売チャンネルからメディア化、コミュニケーションツールへと機能を付加しながら、価値を高めている。
2008/05/09
〈連載〉 EC新時代 ネットコミュニケーション―2 モバイル文化 旬な情報満載の服を買う
モバイル通販が急速に存在感を高めている。その主役は、ケータイ依存度が高いティーンズから20代前半のギャルやお兄系ヤング、若いOLなどだ。「読者モデルが着ていた」「友達が着ていた服がかわいい」「ストリートではやってる」そんなノリで手早く購入するから、ケータイとの親和性が高い。彼女や彼たちにとって重要なのは、ファッションをキーワードにした旬な情報と仲間意識。素材の風合いやシルエットなどの優先順位は低いから、ケータイで服が買える。市場としては成長過程だが、火がつけば爆発力のあるマーケットだ。
物販ではない
「モバイル通販は、販売チャンネルの一つではない」とは、モバイル通販を急速に伸ばすドリームビジョンの岡隆宏社長だ。すでにケータイは、ブログ、小説、音楽、ファッションなど情報が文化を生み出し、付加価値を高めたり、モノが動いているからだ。
モバイル通販だけでギャル系ブランド「ブレス」を立ち上げたディティーエルジェイ(DTLJ)の山崎みしえる社長は「物販という発想でケータイを使うとつまらない」と話す。今年3月、渋谷109に出店した時、東急モールズデベロップメントから「これからは、本格的な小売りですね」と言われ、ちょっとしたカルチャーショックを受けた。それまで、服を通して情報やコミュニケーション手段を提供していると考えていたからだ。「服を売っているという感覚はなかった」。
衝動を誘う
3月15日の東京ガールズコレクション会場では、来場者がモデルの着用する商品をケータイなどでリアルタイムに購入する。ショーの演出、モデル、広告などすべての情報が付加価値となって、購買意欲を高め、当日だけで売り上げが3500万円を超えた。
ドリームビジョンが仕掛けるポイントは「安・カワイイ」。品質は中程度だが、テレビドラマへの衣装提供、ブログ、広告など服に情報という付加価値を注ぎ込む。旬な情報を衝動買いするように「圧倒的な価格競争力、その気にさせるモデル、トレンド性、デザイン性」(岡社長)が大切だと話す。
DTLJも「雑誌を作る感覚」(山崎社長)だ。撮影のロケーション、光の演出、起用するモデル、ヘアメークなど、1枚の洋服を見せるために様々な演出で仕掛けている。「見てて楽しい、触っていること自体が楽しくないと、モノは買わない」と指摘する。
ケータイが進化したのは06年に第3世代携帯電話が登場したのがきっかけだ。通信速度が上がり、パケット定額制が導入されて通信料が低くなり、クレジット決済も楽になった。コミュニケーションツールのインフラが整った。
スタイライフの岩本眞二社長は「将来的にはモバイルですべてが完結してしまうのでは」とみる。店がなくて、不便だからモバイルやパソコンを使う時期は過ぎた。東京や大阪、名古屋など人口の多い都市に比例して売り上げが大きいという。今はヤング中心のモバイル通販だが、そのうち30代がターゲットになると指摘するIT(情報技術)業界の人は多い。若い世代のモノを買う場や買う目的が変化している。
2008/05/12
〈連載〉 EC新時代 ネットコミュニケーション―3 Fビルの参入 後発も施設の強み生かす
昨年6月の「パルコ・シティ」、今年3月26日の「アイルミネ」、4月1日にはラフォーレ原宿の「LPH」と、大手ディベロッパーのファッションビルと連動したネットショッピングモール開設が相次いでる。
高い知名度
「ネット販売が浸透し、実店舗とネットのどちらで買うか客が選ぶ時代になった。自社サイトを作れないメーカーを手伝う意味で、出店テナントの機会ロスを減らすのが狙い」とパルコ・シティ。ルミネは「ファッションビル開発は駅立地という制約があり、時間もかかる。遠方の客や時間的余裕の乏しい客のニーズの高まりも背景にあり、事業領域拡大を決めた」という。ラフォーレ原宿は春の改装で原点帰りし、「ブランド開発の下地作りが完了した」こともあってモールを開設。国内若手デザイナーブランドの登竜門と位置づけ、実店舗とともに新進ブランドの開発に取り組む。
「実店舗と表裏一体の運営で、オンリーワンの館を目指す」とラフォーレ。遅れての参入も「実店舗があるから後発でも入り込める」とパルコ。館の個性を生かし、認知度の高さを強みにする。
「館自体が広告塔」と話すのは、東急モールズデべロップメント(TMD)。04年秋に渋谷109の公式通販サイトをレディスで、メンズも渋谷109―(2)の2層化を受けて06年12月に開設した。「109にないブランドはやらない。やれば109に期待するお客様を裏切ることになる。サイトで忠実に表現することが差別化になり、最大の武器になる」という。
現在、レディスは物販系の6割の55店、メンズは9割の20店をネット上で販売する。各店の新作が次々に登場するメディア兼販売チャンネルとして、全国のギャル系やお兄系のコアなファンに支持されて2年目は前年比約50%増、3年目30%増と売り上げを伸ばす。
新規参入組も実店舗と連動した特色作りに力を入れる。アイルミネは20代の都心で働く女性を対象に、既存のルミネで人気のセレクト店を中心とした34店でスタート。LPHは原宿系カジュアル17、ゴシック&ロリータ11、新進ブランド系16の計44ブランドで構成。パルコ・シティは31ブランドで立ち上げ、現在は時計、自転車などアウトドア、洋書までの100近いテナントを揃える。
カードと連動
初年度売り上げ目標はパルコ・シティ9億円。アイルミネは10億円で、「将来は既存店並みの100億円以上を目指す」。カード会員という有力顧客を多く持つ強みを生かす考えだ。パルコ・シティは、リアル店舗と共通のカード会員で年間20万円以上の購入者には、通年で5%の割引がある。アイルミネも会員特典の5%割引やルミネカードによる「10%オフキャンペーン」など、実店舗と連動したサービスを実施する。
花崎淑夫ルミネ社長は「5月中旬の10%オフキャンペーンでは初めてアイルミネを連動させる。どれだけ反応があり、どうこなせるかが試金石になる」という。カードを顧客囲い込みの武器に、ネット市場でもシェア拡大を狙う。
2008/05/15
〈連載〉 EC新時代 ネットコミュニケーション―4 専門店の新販路 小さくても勝負ができる
ここ数年、ネット販売で収益を上げている専門店が増えてきた。実店舗との連携による集客やオリジナルブランドの開発といった取り組みが奏功している。実店舗の競合が加速する中、世界規模で顧客開拓ができる新たな販路として期待する。
海外から注文
直営2店を運営するステイゴールド(千葉・船橋市)は、専門店を始めた翌05年10月にネット販売を開始した。当初からネット販売を想定していた濱田忠洋社長は、従来型の実店舗だけでは5年先しか将来が見えなかったという。厳しい見方の背景には「輸出がほとんどない日本のファッション産業の構造に根本的な要因がある」と指摘する。
同社のネット販売の売上げは年間約1億4000万円。サイトには海外からも注文が来る。「今、日本ブームで世界中にニーズがある。四季の変化にとらわれず、セールなどの商習慣とも無縁なため、小規模でも勝負しやすい」と期待する。
一方、ヤングとミセス向け専門店を9店運営するフリーダム(川崎市)は、店舗の一形態としてネット販売を始めた。3年ほど前に楽天市場に出店したところ予想以上に売り上げ、ネット販売事業を強化、現在は別会社ペンズネックに移管した。売り上げは毎年順調に伸びており、前期(07年2月期)売上高は前年比2倍の10億円となった。
両社が売り上げを伸ばしている理由は、商品力と実店舗との連動にある。ペンズネックの商品はOEM(相手先ブランドによる生産)によるオリジナル。韓国と中国で生産し、ほどよいトレンド感を出し、低価格に抑えている。また、ネット販売ではシーズン初めの品揃えを除くほとんどを実店舗の売れ筋で構成しているため、返品率は1・7%と低く、消化もよい。
ステイゴールドは津田沼パルコに続き、昨年9月に渋谷パルコに2店目を出店。今年2月からは各店のブログも始めた。ネット客が実物を見に来店するケースは多く、「実店舗はその受け皿として必要」(濱田社長)という。サイト上では実店舗のイベント情報のほか接客では伝わらない部分やスタッフの思いを発信し、顧客との結びつきを強めている。
今後は東京にもう1店、地方での出店も検討している。
両社とも広告費をほとんど使わず、商品やサイト作成に回しているのが特徴だ。
商品開発急ぐ
一方で、ブランドの競合からオリジナル商品の開発も進んでいる。大手専門店やメーカーの参入やネット販売に制限をかけるブランドの出現で、仕入れによる品揃えだけでは厳しく、新たな商品開発が不可欠となっている。
仕入れ主体のステイゴールドは今年1月にワンピース主力の「スリーリングス」、今夏からはネット向けに「サーティーンブロンズ」を立ち上げた。将来的には5ブランドまで増やすという。フリーダムもオリジナル「ペンズネック」のほか、新たに子供服や雑貨、エスニックといった様々な切り口での展開を始めた。
今のところ両社とも取引先メーカーとのタイアップだが、ゆくゆくは自社主導による企画を強めるという。
2008/05/16
〈連載〉 EC新時代 ネットコミュニケーション―5 消費者発信 ブログにビジネスが乗る
インターネットと他媒体の一番の違いは消費者参加型であることだ。受身だった消費者がネットの出現で、もの言うようになり、共同体を作り出している。掲示板、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、ブログ。友人、知人止まりだったクチコミは、ネットコミュニケーションによって市場を揺るがす力を持ち始めている。
第三者目線で
「モノや情報があふれすぎるなかで、好みが似ている消費者が勧めているものは信頼できる」とは、個人ブログ「ボニータズルーム・別館」を運営するボニーさん(仮名)。普段はシステムエンジニアの仕事をする、ごく普通のOLだ。
洋服や雑貨を紹介するほか、旅行話や休日の過ごし方なども掲載。趣味嗜好がリアルに伝わると人気が出て、今では毎日3000~5000人のアクセスがある。「リアル社会では会えなかった人と仲良くなれて楽しいし、好きなものの話で盛り上がれる」という。ラインストーンなどで小物を“デコる”趣味が高じて、自作の“デコグッズ”を販売するサイトも運営するなど、ネットコミュニケーションを楽しんでいる。
ブロガーの影響力にビジネス価値を与えたのがアフィリエイト(成果報酬型広告)だ。ボニーさんもブログ開設当初からサービスを利用し、平均月収15万円を得ている。商品価格に換算すると、月数百万円を売り上げる有力販売員だ。
アフィリエイトを仲介するインタースペース(東京・新宿)は商品画像から直接、購入ページにリンクする「アイテムサーチ」サービスが人気で、利用するブロガーが増えている。「ブログを可愛らしく飾りつけする感覚で利用するユーザーが多い」(同社広報)。
セレクト大手のベイクルーズは直営通販サイト「スタイルクルーズ」で昨年12月からアフィリエイトの活用を始めた。現在、アフィリエイト経由の売り上げは全体の15%を占める。「ブロガーは自分の好きなものを多くの人に紹介したいという気持ちが強い」とみる。
楽しむ価値
「サイトを使う人をプレイヤーと呼んでいる。プレイヤーがサイトで何を得られるのかが、価値判断になる」とゾゾリゾートを運営するスタートトゥデイの前澤友作社長。
ゾゾQ&Aではサイトに来た人たちが1000以上の質問をし、2200以上の回答を寄せる。彼女のプレゼントにどんな包装がいいか、デニムの丈は長いままはくべきか切るべきかなど。普段の生活から商品情報、着方など時には思いもよらない、やり取りが飛び交う。例えば、太ももが太くても似合うジーンズは?には、「ユニクロ」のジーンズが良いとアドレスまで掲載して回答。ゾゾではこれを「良回答」と模範にしている。
顧客も、売る人(ブランドやショップ)も、語る人(ブログやSNS)も、「プレイヤーが健全に楽しめる場(サイト)を提供する。顧客を囲い込む意識はないし、実際は囲い込めない」と前澤社長。消費者情報は時に危うい存在にもなるが、価値観を共有し、多くの人が明るく楽しめれば、それはプレイヤーにとってさらに価値の高いものになる。
2008/05/19
〈連載〉 EC新時代 ネットコミュニケーション―6 海外へ売る アジア進出、さらに欧米へ
ネット販売は時間も距離も超える。その意味では世界単一市場だ。日本のファッションは“クールジャパン”として注目度が高まり、追い風が吹いている。日本人デザイナーのクリエーションやコレクション、雑誌情報を主体にした「カワイイ」ファッション。日本のカルチャーに関心を持つ人たちがネットを介し、集まってくる。
文化も発信
ただビジネス的には言語、サイズ、決済、配送などの問題が残る。中国では現地企業を介在させるなど国ごとの対応が必要になっている。
こうした販売国数、決済、商品内容で画期的なのが、今年2月からスタートした「アリカ」だ。元サッカー日本代表の中田英寿氏とゼイヴェルの大浜史太郎社長らがサポートし、世界121カ国に日本ブランドを販売、オンライン・マガジンによって日本の文化を発信する。日本語と英訳版のサイトで、クレジットカード決済により、ほとんどの国・地域を網羅した。アパレル出身の平本誠二郎社長が「今、日本が宝の“在りか”になっている」との思いから起業した。海外での販売価格は日本の1・5~1・6倍。配送料は一律1200円。仏、米、独、ロシアのアクセスが伸びている。「人」「アート」「場所」など8コンテンツでカルチャーページを作り、食の情報やコレクションの舞台裏などのほか、日本の老舗企業や職人などを取り上げているのが大きい。実購入では台湾や韓国などアジアが多い。サイズの関係や日本ファッションへの直接的なあこがれが起因しているのかも知れない。
スタイライフの岩本眞二社長は、今年を日本のネット販売の「海外進出元年」とみる。楽天市場が台湾に続き、欧州進出を表明した。ディー・エヌ・エーは米国に子会社を設立するなど動きが急だ。スタイライフも台湾、香港に続き、中国本土での販売を今年1月から開始した。出足は「一日数十万円ほどの売り上げで、波が大きい」が、客単価は1万3000~4000円と徐々に上昇している。「ゾゾ」を運営するスタートトゥデイも海外からのアクセスが10%程度あり「関心は高い。あわてることはないが、海外でのネットショッピングモールも検討したい」という。
巨大市場に夢
新興ネット企業では“日本ブランド”を売り物にアジア進出を目論む。ドリームビジョンは楽天市場の台湾進出に伴い、台湾でのネット販売を予定。続いて、香港、韓国へも進出する計画だ。岡隆宏代表は「赤文字系雑誌への広告や日本のタレントが着ていることがアジアではブランドになる」とみて、日本の表記のまま「インポート感覚で販売する」考え。他の新興ネット企業でも先行企業の動向を注視し、外国人スタッフの採用を開始している所もある。
「中国という巨大なマーケットを無視して、日本のアパレル業界の発展はない」と、スタイライフの岩本社長。実店舗でも日本ファッションのファンが相当数おり、「ブランドをネットで買う時が来る」と確信する。まずは体形、好みの似たアジア地区から欧米市場へ。夢は膨らむ。=おわり
(窪田勉、西崎史人、河邑陽子、高木慎二、金谷早紀子、小田茂)
2008/05/28
【EC新時代 ネットコミュニケーション】 求められる消費者との良質な関係 楽しい、得する、話題になる ネット上の“口コミ”利用 数千万円の初期費用節約
ネット販売は販売チャンネルからメディア化、コミュニケーションのツールや場として変化し、ネットコミュニケーション時代を迎えようとしている。消費者同士が情報をやり取りしたり、楽しむ、得する、話題になるなど、サイトの価値の高め方や情報の内容が変化している。消費者との良質な関係をどう築くのかが成長を占う重要な要素になっている。また、「ゾゾ」を運営するスタートトゥデイや物流会社などECを支援する事業が充実し、競合は激しくなってくる。今後、ネット販売は年齢の高い世代や海外といった新市場、モバイル通販などさらに拡大する。ネット事業の重要度が増している。
集客方法
インターネットの普及により、ネット上では日夜、人々の声が行き交っている。彼らは共同体を作り出し、企業をも脅かす力を持ち始めた。そういった消費者同士のコミュニケーションを生かして、集客力を高める取り組みが増えている。
連動性を高める
「スタイルウォーカー」(=SW)は、ファッションと女性に特化したSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)だ。ゼイヴェルとスクウェア・エニックスが共同出資で設立したスタイルウォーカーが昨年3月に開設した。会員数は50万人以上で、20代前半~半ばの女性たちが利用している。
「うちのユーザーは情報感度が高く、影響力を持っている」(石倉正啓ゼイヴェルプロデューサー)ことから、彼女たちのコミュニケーションの場を作ってファッションと結び付けることが目的だ。
ショッピングページ「ドールストア」がそれ。ネット販売のファッションウォーカー(=FW)と完全連動した商品を、アバター(ネット上におけるユーザーの「分身」「化身」)に着せ替えが出来るサービスだ。SWによるFWの売り上げは「まずまず」というところ。今後は更に連動性を高めていく。
アフィリエイトも
影響力のあるブロガーにビジネス価値を与えたアフィリエイト(成果報酬型広告)の利用者も年々増えている。
セレクト大手のベイクルーズは、昨年12月から、直営通販サイト「スタイルクルーズ」でアフィリエイトの活用を始めた。現在、アフィリエイト経由の売り上げは、全体の15%を占める。口コミの力は大きいとみて、優良ブロガーには通常以上の報酬額を支払うことも予定している。「今は受け身だが、これからは能動的にブロガーと取り組んでいきたい」と言う。
ゼイヴェル、ベイクルーズ両社は「メディアを使っていかに消費者に接点を持つかがポイントになる」と口を揃える。ブランドイメージを高めながら、一方では親しみやすさを与えてファンを増やし、購買に結びつけることが必要だ。
システム支援
ネット販売のシステムを自社開発すると小規模なもので1000万円前後、月商1億円を超す規模のものだと数千万円の初期費用が必要になるといわれる。保守費用も相当かかるし、携帯電話にも対応すれば、そのための開発費用も必要だ。そこで、強力な味方となるのが、パッケージでネット販売システムを提供する情報システム企業だ。
トータルで提供
インターネット事業のGMOインターネットと佐川急便が共同出資で設立したGMOソリューションパートナーは、ネット販売に必要なシステムを、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)を利用しトータルパッケージで提供する。
パソコンの基本的な知識があればホームページが作成でき、商品登録、受注管理、顧客管理、アクセス統計解析などの機能がある。佐川急便との合弁企業なので、配送や決済などのサービスもサポートしている。サイトに動画を掲載できたり、無料のコンサルタントや講座も受けられる。
同社は約1200社の顧客をもつが、そのうち20%近くがアパレル関連。ネット販売の平均月商は100万円程度と中小規模が多い。初期費用不要で、システム利用料が月額標準2万円前後、オプションを加えても5万~6万円という安さが強みだ。
大日本印刷、DNPデジタルコムが3月からスタートした「カートネクス」も、ASPを利用したトータルパッケージだ。ネット販売で年商1億~10億円規模をターゲットにしており、初期費用が800万円、月額利用料が50万円(パソコンと携帯に対応)という価格だが、「開発費数千万円規模の高機能・高セキュリティー」が売りだ。
もともと大日本印刷でメーカーや小売業のショッピングサイト構築の実績があったことからパッケージ化に踏み切ったもので、サイト作成の自由度が高く商品画像もかなり載せられる。アクセス解析ツールやメール配信機能も標準装備する。
物流管理に特化
ロジザードの「ロジザードプラス」は物流倉庫管理だけに特化したASPサービスだ。ネット販売で誤出荷は命取り。アパレルは商品の入れ替わりも激しい。「あの商品は倉庫内のどこに置いた」といったロケーション管理まで含めた細かな倉庫内作業を効率化する。
倉庫の在庫状況をリアルに把握するため、商品1点ずつにバーコードを付け、それをハンディーターミナル(HT)で読み取って単品管理する仕組み。ピッキングリストのバーコードを読めば、どこにあるというロケーションが出る。商品のバーコードを読んで付き合わせるので誤出荷が防げる。在庫状況は無線LANからASPのサーバーに送られる。受注管理システムとの連携も可能だ。HT3台レンタルの場合で初期費用95万円、月額8万8000円。

