繊研新聞 アーカイブ/ネットビジネス関連記事

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2010年05月の連載 「ネットが変える 米FB」

2010/05/18
 ネットが変える 米FB―上 5年後、消費者の半数は“ネットを見てから買う” 09年度売上高全小売りの6% 年10%増の勢い
 過去2年間続いた消費低迷の中、米国で急上昇したのがネット販売だ。09年度の米ネット販売高(乗用車、旅行関連、処方箋(せん)を除く)は1552億ドル(前年比11%増)と2ケタの増加となり、全米小売売上高の6%を占めた。調査会社フォーレスター・リサーチによると、米国のネット販売は今後5年間、年率10%の勢いで伸び、14年度の販売高は2490億ドルと予測。買い物客の53%がネットを見て、買い物をし、ネットで買い物する人の70%が、ネットで商品情報を見てから買い物をするようになるという。その売上高は1兆4090億ドルに達すると予想している。確実にネットがファッションビジネスを変えつつある。(サンフランシスコ=立野啓子通信員)
 NRF(全米小売業協会)によると、10年度の小売業売上高は前年比2・5%増の予測だが、ネット販売は11%増と2ケタの伸びを見込み、全小売り売上高の7%を占めると予想している。ネット販売は確実にパイを拡大している。
 ネット販売の典型的な成功例は、99年にスタートし、10年間で売上高10億ドルと、「米最大の靴売り場」になったザッポス・ドット・コム(09年度末にアマゾン傘下となる)だ。
店だけで買う客の2倍消費
 (1)24時間アクセス可能(2)店舗経費がかからない低コストによるディスカウント(3)送料無料、返品自由のサービス――が、伸びの要因だが、成功例はこれだけではない。
 消費が回復を見せた09年のホリデーセール(11月1日~12月24日)は、マスターカード・アドバイザーの調べによると、小売り売上高3・5%増(08年は2・3%減)に対し、ネット販売は15・5%増と大幅に伸びている。
 09年度は不況の波を受け、百貨店は売り上げが伸び悩んだが、メーシーズは全売上高が234億8900万ドル(前年比5・6%減)にもかかわらず、ネット販売は19・5%増と伸ばした。08年度は29%増(インターネット・リテーラー推定金額10億400万ドル、全売上高の約4%)だから、12億ドル近くに達したとみられる。
 同社のテリー・ラングレンCEO(最高経営責任者)によると、ネットを見て買い物する客は、店だけで買い物する客の2倍消費し、まさに「マルチチャンネルの時代」が始まっているという。同社は3億ドル以上をネットに投資し、テネシーとアリゾナ両州に5万5800平方メートルの流通センターを建設した。新しく開発した「服のサイズやスタイルを検索するページ」は、2カ月間にフェースブックで7万5000人がアクセスしている。今年に入って既存店増収に転じた同社は、ネット販売高が2月は前年同月比38%増、4月は40%増と高い伸びを続けている。
物流拠点など投資も積極的
 JCペニーは、ネットへの参入が93年と最も早く、05年度に米国で初めてネットのアパレル売上高が10億ドルに達した。過去2年間は頭打ちだったが、09年度売上高は15億ドルと全売上高の8・5%を占めた。全売上高が175億5600万ドル(5%減)だったのに対し、ネット売上高は前年並みを確保し、10年度はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)と提携するなど向こう5年間で、さらに10億ドルの売り上げを上乗せするため、投資をしている。
 「店に在庫していないスタイルやサイズが売り上げを伸ばした」というコールズは、ネット参入が00年と後発で、09年度ネット販売高は4億9200万ドルと、全売上高171億7800万ドル(4・8%増)に占める比率は2・9%と少ないが、伸び率は38%増と高い。今年は6月にテキサスに完成する流通センターを含め、顧客からのフィードバックやトレンドを、商品やマーケティングに反映できるSNSにも積極的に参入し、1億ドルを投資する。

2010/05/19
 ネットが変える 米FB―中 マルチチャンネルで客と連携
 小売りとネット、カタログ販売を連携させるマルチチャンネル戦略は、収益力の高い専門店のJクルーやアーバン・アウトフィッターズが先行する。
ネット限定の特典
 マルチブランド、マルチチャンネルのJクルーは、「ウェブサイトを通じて常に顧客とコミュニケーションを取る」とし、個人が新商品やセール情報を取得できるだけでなく、「店に置いていない限定商品や新しい商品のテストができる」特典を強調する。09年度のネット売り上げ比率は27・1%と高く、全売上高15億7804万ドル(前年比10・5%増)に対し、4億2820万ドル(4・7%増)だ。08年度のネット売上高は4億890万ドル(8・3%増)で、全売上高の28・6%を占めた。
 透き間市場の「ライフスタイル」を売るアーバン・アウトフィッターズは、09年度の全売上高19億3782万ドル(5・6%増)に対し、ネット売上高は3億2360万ドル(19・5%増)で、売り上げ比率は16・7%。08年度実績は2億7340万ドル(32・4%増)で、比率は14・9%だった。
 同社は「対象顧客の焦点を絞る」として10年度にカタログを増刷する。25歳以上の女性が対象の「アンソロポロジー」は1740万部から1840万部に増やし、18~30歳対象の「アーバン・アウトフィッターズ」は1210万部から1320万部に増やし、ネットと連携して「ブランドのイメージ伝達」を明確にする。
 2年間連続で既存店増収となり、収益力の高いアメリカンカジュアル専門店2社は、ネット販売伸び率も大幅だ。バリュー価格のSPA(製造小売業)エアロポスタルは、09年度売上高が22億3011万ドル(18・3%増)で、営業利益率は17・2%。ネット売上高は1億2100万ドル(53%増)と全売上高の6・4%を占める。08年度は7910万ドル(85%増)、シェアは4・2%だった。
国際進出の契機に
 デニムが軸の品揃え専門店ザ・バックルは、09年度売上高が8億9829万ドル(13・4%増)で、営業利益率は22・4%。ネット売上高は5230万ドル(45・2%増)と、全売上高の5・8%になった。08年度は3600万ドルで、全売上高の4・5%だった。
 一方、かつて業界屈指の収益力を誇ったアバクロンビー&フィッチは2年間、売り上げの低迷に苦しんだが、ネット売り上げは堅調で、ネットを通じた海外からの注文が、国際市場に進出するきっかけの一つになっている。同社の09年度売上高は29億2863万ドル(15・9%減)だが、ネット売上高は2億9010万ドルで8%減にとどまり、シェアは9・9%を占める。08年度は3億1500万ドル(5・7%増)、売り上げの8・9%だった。今年1月から既存店増収に転じた同社は、ネットと国際市場が増収の両輪になっている。(サンフランシスコ=立野啓子通信員)

2010/05/21
 ネットが変える 米FB―下 主購買層は40歳ミドルクラス
 米情報調査会社インターネット・リテーラーによると、ネットで買い物する米消費者は男性が44%、女性が56%。年齢は24歳以下が14%、25~34歳21%、35~44歳26%、45~54歳21%、55歳以上18%。年収は3万ドル以下が16%、3万~6万ドル21%、6万~10万ドル34%、10万ドル以上が28%という。
 ネットを活用し購買力があるのは、24~54歳、年収は6万ドル以上のミドル~アッパークラスになる。
強いブランド
 ネット販売参入は05年と後発のギャップは06年、三つの自社ブランドの他に、「ザッポス・ドット・コム」の成功に倣って靴主体のネット販売「パイパーライム」を設立した。サイトには、250の靴ブランドとともに、有力ブランドのハンドバッグ、ジュエリー、自社ジーンズと競合するプレミアムジーンズなども載せた。08年にはネット専業のウイメンズのアクティブウエア「アスリータ」を買収し、一気に市場を拡大した。
 同社の09年度ネット売上高は11億2200万ドル(前年比9%増)で、全売上高141億9700万ドル(2・3%減)の7・9%を占めた。08年度はシェア7・1%で10億3400万ドル(14%増)。米国では店数が減る中、10年度からカナダで三つのストアブランドと、英国で「ギャップ」「バナナリパブリック」のネット販売を始める。
 米小売業の寡占化が進み、大手アパレルメーカーの業態も変化した。大型店販路だけでなく、「強いブランド」を軸に国際市場、自社小売り、卸の総合化が進んでいる。
 不況の中でも高い収益率を上げている最大手VFコーポレーションは09年度、「ザ・ノース・フェイス」「ヴァンズ」「セブン・フォー・オール・マンカインド」など小売部門の売り上げ構成比が、前年度の16%から17%に上昇している。ネット販売額は発表していないが、「上昇率が高いネットは10年度から新しいサイトを開設する」という。
消費者に密着
 米小売市場は2年間低迷したが、地域と消費者に密着した在庫調整で、収益力はむしろ上がった。新しいIT(情報技術)の導入が、それを可能にしたといえる。景気は回復基調にあるものの「価格に敏感な消費者」は、多くの情報の中から最もリーズナブルな商品を選ぶ。情報はウェブサイトだけでなく、個人が情報発信するSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や、携帯電話を活用した発信も新たな開発が進んでいる。例えばショップキック社が開発し、既にメーシーズやベストバイが契約し、今夏から始まる携帯サイトは、消費者が買い物する前にショッピングモールでクリックすると、その日のバーゲン情報や割引クーポン券が出てきて、券のバーコードはカメラでスキャンができる。店にとって「消費者がいつ、どんな物を欲しがっているか」の情報になるという。
 加速されるネット情報が、どこまで消費者ニーズをくみ上げられるかが課題でもある。(サンフランシスコ=立野啓子通信員)