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奈良に生きる 奈良を活かす 中川政七商店という生き方 |
| <本書紹介> 奈良に本店を構える中川政七商店は、奈良晒(ざらし)と呼ばれる高級麻織物を代々扱ってきた創業300年の老舗だ。 近年、同社は奈良で育まれた伝統技術を生かした現代感覚の雑貨を扱う「遊 中川」「 粋更(きさら)」「 中川政七商店」を立ち上げ、新しい和のビジネスモデルを構築してきた。 その先頭に立っているのが、13代当主の中川淳社長だ。 本書は、彼の経営思想を軸に、成功の背景にある奈良の伝統や文化、美意識、そして同社の歴史や活動、作り手の思いなどをビジュアルとともに紹介している。 ブランディングやライフスタイルビジネスに関心のある方はもちろん、伝統工芸を扱うメーカーや小売りなど、文化と伝統をビジネスの視点で読み解きたい方にも興味深い内容となっている。 |
| 著者 プロフィル いなとみ のえ 専門誌「季刊きもの」(繊研新聞社刊)のフリーランス記者。 書籍の企画・編集なども手掛ける。また、一般媒体の雑誌や企業のPR誌の執筆や編集、ライティングも行う。ライフワークは国内、外を旅して手仕事を見聞すること。 主な著書「石見銀山 四季 暮らし ものづくり」(繊研新聞社刊) |
●column 1 奈良が育んだ美しいかたち
●column 2 奈良が育んだ美しい景色
●column 3 奈良が育んだ美しい文化 - 古梅園
「中川政七商店(なかがわまさしちしょうてん)」を知ったのは今から10年前。当時、素材好きには気になる店として注目されていた恵比寿(東京)の「遊 中川」に足を運んだのが最初だった。その後、「粋更(きさら)」が表参道ヒルズ(東京)に出店し、その清々とした美しい店と、センスが光る商品、丁寧なラッピングなど、落ち着きのある凜とした雰囲気が気に入りファンになった。
それは個人的な好みの視点だった。が、その後、中川政七商店という社名、13代当主、中川淳社長の名前が、生活者向けの雑誌ばかりではなく、ビジネス誌などにも目立って登場し始めた。「300年続いた奈良の麻のメーカーが小売り展開に注力し、伝統工芸のSPA業態を確立」「遊 中川、粋更、および中川政七商店という会社そのもののブランド力を高め、直営店の既存店ベースで28カ月連続前年比プラスに」「奈良の老舗を現代のブランドに改革」などという文字が誌面を飾った。時代が同社にスポットライトを当て始めた。
それは“伝統や文化だけではメシが食えない”という「定説」を覆し、新しい和のビジネスモデルの構築に成功したことを意味する。伝統や文化といったものに食指を動かす時代(市場)の機運をとらえた中川淳社長のブランディングが、その成功要因の一つと言えそうだ。
この本が企画されたとき、そんな同社の店や商品、そしてブランドの背景にある伝統や文化をこの目で見たいと強く感じた。
奈良に通って1年半。わかったのは、奈良の伝統や文化、奈良の暮らし、美意識、気質、そして多くの作り手の思いがこの背景にあったことだ。それが、同社の店や商品の魅力をつくっているのだと思い知った。一言で言えばローカリズムのパワーを感知することができたのである。
そして今、奈良を基盤にした物づくりを深く掘り下げていく過程で「日本の伝統工芸を元気にする」というビジョンも生まれてきた。それほどまでに同社の伝統、文化、物づくりに寄せる思いは強いということもさらに思い知らされた。
第1章では奈良晒と、その麻織物を支えてきた中川政七商店の歴史を紹介している。2章では奈良という土地を奈良女子大の寺岡伸悟准教授に解説していただいた。3章では「遊 中川」や「粋更」がどうして誕生し、今に至ったのかを追跡した。4章、5章では人、物、事、空間など、さまざまなテーマを切り口に同社を見つめてみた。6章では、今後の同社の挑戦について、エディター、アートディレクター、伝統工芸品の小売りの社長という身近な4人の方に、同社の魅力を交えて語ってもらった。
本書を通じて、奈良で300年近く商いを続ける、中川政七商店がもつ魅力の背景を感じてもらえれば幸いである。