繊研新聞掲載のコラム

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め・て・みみ/2009年07月

2009/07/31
 8月に入るというのに梅雨の明けない地域が多い。それどころか豪雨に見舞われ、被災している地域さえある。地球温暖化の影響だろう。
 長期予報では、気温は例年並みか例年より高い。昨年も「ゲリラ豪雨」が頻発し、都市部では商業施設の売り上げにも影響を与えた。景気悪化に加え、今年も天候との闘いになりそうだ。
 暑くて雨が多いといえば亜熱帯。本来の日本は四季折々の季節感を楽しむことができ、それに合わせたキメ細かなMDが発達した。今では1年の半分くらいが夏もしくは亜熱帯のような気候にあり、MDも大幅に見直す必要がある。
 東京スタイルの高野義雄社長は「今年の夏も長くなる。夏物をしっかり準備するように」と指示を飛ばした。しかし、同じように気候の推移を見ていても、夏物を構えるのは勇気がいる。セール明けのシーズンは夏休みで、秋物に切り替えるまでの端境期も短い。これに不況や気候の変化といった変動要素が複雑に絡む。「亜熱帯MD」の必要性が言われながら、なかなか定着しない理由でもある。
 最近はコストの関係で、QRよりも計画生産が重要視される。急な気候の変化には対応しづらい。それだけにトップの判断で思い切ったリスクを張れる企業が勝機を得るのではないか。

2009/07/30
 “ユニデコ”“デコクロ”が最近はやっている。ユニクロの商品を買ってきて、余った生地をワッペンにして張り付けたり、ビーズをつけたりして、自分でリメークするものだ。あれだけのマスブランドになると、電車の向かいの席に自分と同じ服を着ている人が座っていたりする。他人と同じなのは嫌という人がリメークを楽しんでいる。
 今年もTシャツ商戦は厳しい状況だが、メーカーによると、消費者の買い方に変化がみられるそうだ。店頭で簡単にプリント加工してくれる業者を通じて、個人やチーム、文化祭などのイベント用にオリジナルを作るパーソナルな需要が増えている。
 今年の秋は古着リメークが注目されている。古着は数に限りがあり、一点物として消費者に訴求しやすい。若者には女性も含めて古着への抵抗感が少ない。さらにリメークで手間をかけることで新品以上の価値が出る。
 ファッションは、他人と違った格好をしていたいイノベーターと、みんなと同じ格好でないと不安になるマスゾーンの人との追いかけっこ。しかし、最近マスといえる大きなトレンドがなくなった。売れない時代はいかに小さな流行を拾っていくかの勝負になる。これからますます個の方向に進んでいくのだろうか。

2009/07/29
 かれこれ30年以上続いているが、毎年、何日間を農業の手伝いに当てている。そんな時、昔どこにもあったような風景が確実になくなっていることに気づく。農地や森林をしっかり未来につないで行くことが21世紀を豊かに生きるための条件であるとは思うのだが、なかなかそうなっていない。
 農業の分野には新しい動きもある。JR東日本やイオンなどが農業分野の会社を興した。JRは茨城県石岡市の「JAやさと」と農業組合法人「みどりの線路」を設立。生産した野菜をJR駅構内のレストランなどで使い、残飯などは肥料としてリサイクルする。イオンも「イオンアグリ創造」を設立、茨城県牛久市の農地を賃貸借して農場を経営する。
 様々なパートナーの協力を得ながら生産から店頭まで一貫した仕組みを整えて小売業らしい農業分野への参入だ。ほかにも地元に残った若者が集まって法人化する動きやこれから農業の分野を開拓しようとする企業も続々出てくるに違いない。
 風景の様変わりは進むだろうが、農業分野に新しい風が吹き始めたことは確か。今度は森林だ。山仕事をする人が年々減っている現実に荒れた森林も多い。農業も森林も結局は、従事する人をどうつないでいくかにかかっている。

2009/07/28
 09年春夏を振り返ると、市場をリードするような新鮮な売れ筋が出なかったというのが一番の印象だ。毎シーズン、目新しいアイテムが出るレディス市場でも、前シーズンまでなかったものといえば、トレンカ、幅広ベルトくらいか。だから、ワンピース、チュニックにぴったりとしたボトムというスタイリングは変わらなかった。
 シューズ分野でも一番売れたグラディエーターは昨年も売れていたもので、鮮度はもう一つというところ。バッグも同様な状態で、服飾雑貨の勢いも感じられなかった。
 ある全国チェーンの社長はこう分析する。「エントリープライス商品など価格面に目がいき、ファッションのトレンド競争から逃げていた」。消費低迷、ファストファッション台頭などの影響を受けて、業界全体が価格志向に走った。その結果、単価が下がるだけでなく、市場にない新しいものを提供できなかったことで、価格が通りにくい悪循環を作ってしまった。
 幸い、6月に入ってから、ファッション消費で小さな光が出始めている。手応えを少し感じている経営者も出てきた。消費者の価格志向はまだ続くだろうが、年がら年中セール状態という店頭には嫌気が差している。ニュースになるような新鮮アイテム競争を期待したい。

2009/07/27
 日本でも大きな話題となったが、22日に中国の揚子江流域を中心に皆既日食が起こった。上海は雲の多い天気で目で確認することはできなかった。皆既日食が始まる3分ほど前から急に暗くなり始め、あっという間に夜のとぼりがおりた。そして約5分後には電気をつけたように急に明るさが戻ってきた。
 街中では10~15元で日食を見るためのメガネが販売されていた。翌日の新聞には溶接の時に使うマスク、自分の胸を写したレントゲンフィルム、ポテトチップの丸い容器を使ったピンホールカメラなど各自各様に工夫を凝らし観察している人たちのほほえましい写真が掲載された。
 その中でも上海證券報は、天では月が太陽を隠し證券市場では陽が陰をのみ込んだと報じた。日食の連続写真と株価チャートを合成した図表を見ると、株価が上がり続けているのが分かる。23日も株価は上昇し、上海総合株価指数の終値は3328と昨年6月6日以来、約1年1カ月ぶりに3300台を回復した。年初来の上昇率は82・8%と驚異的なペースだ。
 第2四半期の決算発表が始まっている。素材メーカーも市況の回復や原燃料高時の在庫がなくなり、業績が好転し始めている。このまま中国繊維産業は回復軌道に乗れるのか、動向を注視したい。

2009/07/25
 いよいよ総選挙に突入した。各党の政策はこれから出されるようだが、マスコミ報道は「政権選択」一辺倒。どの政党が政権を握るかは大きな関心事だが、深刻な不況の中、国民が望む最大の争点は経済政策だ。
 先日もM&A(企業の合併・買収)のコンサルティング企業の担当者から「アパレルに対する銀行の貸し渋り、貸し剥(は)がしの影響で大変なことになっており、一企業の力ではどうにもならない」という情報を耳にした。毎日のように倒産のニュースが出ており、大手の倒産が続いた春先よりも悪化している、と見る関係者も。
 政府の緊急経済対策は、家電や自動車などには一定の効果もあるようだ。しかし、ファッション業界にはほとんど恩恵を与えていない。
 業界の大半は中小企業であり、小売店で売れてこそ商売が成り立つ。とするなら、最も効果を期待できるのは消費税減税だろう。
 英国のように一時的でも消費税(付加価値税)を引き下げることで、消費を喚起し、価格転嫁が難しい中小企業の負担を軽減できる。
 政府の赤字財政や経済対策の「財源」問題もあるだろう。しかし、この業界は裾野が広く、地方を含めた雇用の面でも効果がある。他の消費財や小売業の業界とも連携して争点に押し上げてはどうだろう。

2009/07/24
 伊ディーゼルがブランド誕生30周年記念イベントに合わせて制作したキャンペーンビデオが、カンヌ国際広告祭サイバー部門の金賞を受賞した。80年代のポルノビデオを手描きイラストでアレンジ、つなぎ合わせたコミカルな映像だが、過激な内容のため動画投稿サイトでは削除されてしまったほど。
 これはバイラルビデオと呼ばれ、消費者に口コミで宣伝してもらい、様々な人の目に触れるように企画された。公開後2週間に満たないうちに600万ものアクセスがあり、600を超すサイトが取り上げた。
 日本ではユニクロの「ユニクロック」が世界的な広告賞を受賞したことがある。時計と女性ダンスチームの踊りが交互に映され、思わず見入ってしまった人も多いはず。ユニクロックの部分だけを自分のブログに張り付けることができる。
 ものが売れない時代に必要なのは、消費者に驚きや感動を与えること。携帯電話でファッション衣料を販売するあるサイトは、タイムセールでお客を集めるが、その30分、1時間の間にトップページの商品をどんどん入れ替えていく。お客がサイトの中を回遊しているうちに商品が変わるので、売れる商品が分散し、売り切れが減る。このサイトの売り上げは1年で10倍になったそうだ。

2009/07/23
 玉川高島屋SCは22日、小学生を対象にSC内の仕事を体験できる「夏休みこども教室」を開講した。SC内でどのような仕事が行われているのか、体験してもらおうという試みだ。
 授業の一貫として仕事の疑似体験を取り入れる学校はあるが、SCが主体的に取り組むのは珍しい。子供の教育という視点ばかりでなく、SCの仕事を早くから理解してもらい、将来の優良な顧客や働き手を生み出す良いチャンスだ。
 プログラムにはペットトレーナーや花屋、インフォメーションガールなどを用意した。実際の店舗スタッフを講師に、仕事内容を体験する職業訓練型の講座は、学校では学ぶことのできない貴重な体験に違いない。
 SCの競争激化の中で、新たな集客装置が問われている。「SCと子供」「SCとペット」という関係はこれからの集客装置として重要なテーマだろう。将来の顧客をどう創造するかにSC関係者は頭を悩ますが、子供やペットを積極的に呼び込もうという姿勢はまだない。
 レストランは子連れを嫌う。安全管理や衛生管理上から、キャリーバッグに入れたペット連れさえ遠ざける。大変な購買の機会損失と映る。マイナスをプラスに転ずる発想こそ、新たな顧客創造につながると思えるのだが。

2009/07/22
 丸井今井旭川店が、112年の歴史に幕を閉じて20日で営業を終了した。6月17日から約1カ月にわたった売りつくしセールの売上高は、前年同期比3倍以上に跳ね上がったという。同店に対する地元の愛着のほどが分かる。
 丸井今井は店舗の譲渡先を入札で選ぶ。今月末まで入札を受け付け、8月3日には交渉順位を決める。地元では西武百貨店と並ぶ中心市街地の核となる商業施設が後継となることを熱望する声が多い。
 丸井今井旭川店の閉店決定後に北海道労働局が実施した調査では、同店の取引先のうち販売員などの従業員を離職させると回答した企業は約55%と過半を占めた。同店と取引先の従業員を対象にした調査では、70%が早期の再就職を望み、90%が地元での再就職を希望したという。一方、再就職先の希望職種を決めていない人は57%、職業訓練を希望する人は5割に達した。回答した従業員の76%は販売職。職種を限定せず、広い選択肢で求職活動をしたい、またはせざるを得ない様子がうかがえる。
 百貨店は今、優秀な人材を確保するため、ES(従業員満足)の強化を掲げる。その一方、不採算店閉店のたびに、経験豊富な販売員のスキルが喪失されるままにしておくのは、業界にとって大きな損失だ。

2009/07/18
 中国国家統計局が発表した09年第2四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比で7・9%増だったと発表した。第1四半期の6・1%増より1・8ポイント改善した。その結果、半期の成長率は7・1%となった。固定資産投資33・5%増、社会消費品小売総額16・6%増(実質)と大幅に増加しており、収入も都市部では実質で11・2%増えた。
 成長率への貢献度をみると投資がプラス87・6%、最終消費がプラス53・4%、輸出がマイナス41%で、政府が4兆元を投入した積極的な政策の効果が現れている。ただ、政府は回復の基調は確かなものではないので、引き続き積極的な政策をとっていくとしている。
 貢献度をみても明らかなように、これまで中国経済を支えてきた輸出の回復が遅れている。それを懸念材料として指摘する関係者もいる。政府は民間にも構造調整や自主創新を求めている。
 上海は万博を控えていることもあるが、道路などの公共工事がいたるところで行われている。そのためか、スーパーやコンビニエンスストアのレジで100元札を出している人が増えたように思う。休日に商業施設へ行くと売り場は多くの人でにぎわっている。消費の力が着実に上がっているのを、今まで以上に実感する機会が増えている。

2009/07/17
 価格に対する消費者の意識が強くなり、供給側はコスト削減に躍起になっている。特に生産系の見直しは急で、バングラデシュ詣でが盛んと聞く。
 人件費や関税のメリットがあり、中国に比べ安く生産できるアイテムもある。しかし、コストだけを見ていては問題も起きるだろう。例えば品質問題はどうか。
 日本の品質基準は世界で最も厳しい。欧米向けが主力のかなり大雑把な品質管理のレベルで、日本向けは大丈夫かと心配になる。
 考えてみると、同じように作られているはずの海外ファストファッションで、品質問題が深刻化している、という話は今のところ聞かない。直営店販売で卸をしていない、という違いだけではないのだろう。供給側が考えるほど、消費者は品質に敏感なのだろうか。
 カシミヤ製品の品質表示や、原産国表示など消費者の信頼を裏切る事件が相次ぎ、改めて法令順守の姿勢が問われている。しかし、品質そのものの問題は別次元ではないか。虫眼鏡で見ないと気がつかないような織り傷など、首をかしげるものも多い。
 高級品ならともかく、中低価格品まで過剰な品質基準で縛ることが、消費者のためになるのだろうか。コストだけの問題ではなく、一度見直しを考えてはどうか。

2009/07/16
 ある大手のジーンズ洗い加工場を訪れて驚いた。受注の減少で約1週間、工場の操業を休止しているという。あるジーンズ縫製工場は6月の1カ月間休んだそうだ。「これまで週末も休みなく働くことはあっても、工場をこんなに休止したのは創業以来初めてのこと」。
 改めて不況の深刻さを実感する。ジーユーの990円に触発されるように低価格ジーンズが続々登場。イトーヨーカ堂のディスカウントストア「ザ・プライス」が980円ジーンズで追随し、ハニーズも990円ジーンズの発売を準備している。
 低価格の流れは海外生産を加速する。ジーユーのジーンズは中国製デニムをカンボジアで縫製。「1万5000円以下のジーンズは、すでに海外生産に移った」と加工場の経営者は話す。エドウインは6000円のジーンズでも国内で生産するが、工場への投資を続けた成果で、極めて稀(まれ)な例だ。
 前述の加工場の経営者の表情は決して暗くはなかった。同社は手作業にこだわった加工が得意だ。中国など海外に協力工場があり、そこへの技術指導を行っている。海外と国内の両方の生産をうまくコントロールすることで生き残りを図る。海外生産への移行は止まらない流れ。しかし、国内に工場を持つ強みは間違いなくある。

2009/07/15
 つい足を運んでしまう楽しい店が生まれている。那須ロコマーケットや遠州の駅だ。どちらもファッション関係とは異なるが、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさや、商品を探す喜びがある。店に入るのがこんなにワクワクするものなのか、どこかに忘れていた買い物の原点を思い起こさせてくれる。
 ロコマーケットは那須ガーデンアウトレットに昨年7月に、遠州の駅はららぽーと磐田に今年6月オープンした。両店ともTTC(旧東京宝〈静岡・熱海〉)が出店して多くの話題と客を集めている。いわば、商業施設の中の道の駅だ。
 商品は地場の特産物や農・海産物によるお土産需要にこたえるものが中心。地域の歴史や昔話、話題のキャラクターを生かした商品などさまざまだ。那須では周辺の約100軒の農家と直接契約して地産地消型の事業を展開しており、農家にとっては新たな収入源として重宝する。商業施設にとっても立派な地域密着であり、地域経済活性化の一端を担っているといっても過言ではない。
 スーパーは日常的なニーズにこたえた食物販業態だが、これらの店はお土産需要に対応する非日常型食物販の店だ。今後、こういったタイプの店が数多く誕生してくる予感を感じさせる。

2009/07/14
 人を動かすのは熱意だな、とつくづく思う。最近、こちらの感情に訴えるような手紙が2通届いた。
 一つはある専門店からの手紙。今時、300字詰め原稿用紙3枚に、手書きときた。上手な字とはいえないが、一文字一文字に理解してほしいという思いが、にじみ出ている。文面には、「昨今の不況の影響はすさまじく、私たちも今まで以上の努力をしなくてはいけません」とある。そこで他にはない新しいデザインの商品を取り入れるため、全国から作品を募集する企画を思いついたのだという。これが一方的なメールやファクスだったら、と考えてしまう。
 もう一つも丁寧な手紙だった。姉妹でプレタポルテのブランドを立ち上げ、都心にリアル店舗を運営してきたが、いったん店を閉め、ネット販売に軸足を移す。自分たちを客観的に見るため、昼間は百貨店で販売の仕事をするという。ダブルワークという厳しい環境になるが、物を売るということを自分の体で感じ、次の成長につなげていこうとしている。
 物事を成し遂げるには、情熱が一番肝心。世の中、不況の風はなかなかやまず、打てば響く状況ではない。だが、こんな時でもあきらめずに、前を向いていけば理解されるときが必ず来ると信じたい。

2009/07/13
 日本百貨店協会が会員全店の店長を対象に実施した調査で、百貨店の7割の店舗が、営業時間延長は従業員の実労働時間の長時間化に影響を与えていると回答した。現場マネジメントや従業員間の業務連絡に営業時間が悪い影響を及ぼしていると回答した店舗も半数を超える。
 過半の店舗が現在の休業日数に「問題がある」とし、休業日を増やせば、販売サービスや職場のワークスケジュール、従業員間のコミュニケーションなどの問題が改善出来ると、60%以上の店舗が考えている。
 営業日数と時間が増えたことへのマイナス影響を、店頭現場が強く感じていることが浮き彫りになったといえる。休業日が多い地方店への聞き取り調査も同時に実施したところ、営業日を増やしても増収効果は必ずしも見られず、休業日増で増収に転じた事例も多かった。
 対象店舗からは、「休業日を増やした月は社員のモチベーションが高い」「営業日数を増やすと固定客への対応が十分できにくい」という声があったという。
 全国百貨店の年間休業日数は平均で91年に39日だったが、08年は3日。今回の調査で、問題の改善に必要な休業日数はどの程度かとの問いに、回答の平均は13・8日だった。すぐには無理でも、それに向けた試行は不可避だ。

2009/07/11
 上海でタクシーに乗ったら運手席の後ろに、日本語で「運転手と言葉が通じなかったら、相談無料の上海コールセンターまでお電話ください」というシールが張ってあった。英語も併記してあり、シールの脇には上海万博のマークが刷り込んであるところみると、万博を前にした国際的なサービス充実の一環として始まったようだ。
 上海に来て多くの人が気が付くのは、外国語の通じる場所が思いのほか少ないことだろう。空港内の施設やホテルでは大丈夫だが、タクシーの運転手で日本語や英語の通じる人はほとんどいない。そのため出張の時に目的地へ行くのに苦労した経験を持つ人が多いのでは。レストランも外国語が通じるところは少ない。
 主要幹線道路沿いの建物でお色直しが始まっているが、最近は乗り換え駅、歩道、地下道などでも工事が進められている。市の中心部では、ちょっとした距離を歩くのにも細心の注意が求められる。
 万博に向けて着々と準備が進んでいるが、一つ気になっていることがある。上海に限らず中国は案内板が少ない。これは街中だけでなく地下鉄駅や商業施設も同じで、初めて行った場所で迷うことが多い。外国人が気軽に上海を楽しめるように案内板の充実もお願いしたい。

2009/07/10
 深刻な消費不況の中、業界では価格だけでなく、価値にも目を向けた議論が起きている。
 百貨店向けアパレルの製造や仕入れの原価率は、小売価格の20%程度を占めるといわれる。ユニクロは30~40%と見られ、同じ価格ならユニクロの方の価値が高くなるという考え方だ。両者の価格帯が違うので、あくまで同じ価格の商品であればという前提だが。
 これはユニクロに限らず、SPA(製造小売業)やセレクト店などが商業施設に出店する際の家賃と、百貨店の場合の納入掛け率との差が影響している。価値を上げるために原価率を見直すのは当然のことだが、その道は険しい。お互いに利益率を下げるか、百貨店がSPA化する部分を作るしかない。
 ラグジュアリーブランドや海外のファストファッションでは、必ずしも「原価率=価値」という考え方は通用しない。ブランドの付加価値や生産・調達の仕組みが根本的に違うからだ。
 利益率を削ってでも価値の高い商品を供給する努力は必要だ。しかし、アイテム特性も考えずに「小売価格に対して一律○%の原価で調達・仕入れ」という手法は通用しなくなった。一つひとつの商品が消費者にとってどれほどの価値を持ち、どうすれば実現できるか。真剣に考えなければならない。

2009/07/09
 ブックオフコーポレーションの中古書店「ブックオフ」成功の要因は、特殊な目利きの能力が必要な古本の業界に、マニュアルを導入したことだといわれる。誰でも古本の査定ができるようにし、チェーン店化を成功させた。
 洋服やバッグの中古品業界でも、ネットとシステムを駆使して伸びている企業がある。デファクトスタンダードは、洋服やバッグなどを買い取り、オークションサイトに出品するというビジネスモデルを構築した。価格の査定は、過去のオークションの落札価格からシステムが自動的に割り出す。
 質屋は高級ブランドしか引き取らないし、何となく入りづらい。リサイクル店は買い取り価格が安い。ネットオークションに出品するのは面倒という人も多く、デファクトスタンダードはそのすき間を突いた。
 アパレル・雑貨の仕入れサイトを運営するラクーンは、問屋の機能をネットを介して行う。問屋はメーカーと小売店の間に立って情報伝達、物流、決済を担う。「問屋は日本独自の業態。ネット問屋のビジネスモデルも日本で生まれた」とラクーンの小方功社長。
 デファクトスタンダードとラクーンは不況下でも成長を続けている。従来からの商売でも、その仕組みやビジネスモデルを見直せば成長できる好例だ。

2009/07/08
 チェルシージャパンの09年3月期の売上高は1735億円と前期を約210億円上回った。アウトレット専業ディベロッパーとして順調な成長振りである。対して三井不動産のアウトレット売上高は1597億円。この2社で「5000億円」と言われる市場規模の7割近くを占める。今後もこの「2強」が国内アウトレット市場の軸になることは間違いない。
 これからは単に「もうかった、損した」だけの経営姿勢でなく、ファッションビジネス全体の成長発展に大きな影響力を持ってきたということを2強はもっと自覚することが大事になる。アウトレットがファッションビジネスの「縁の下の力持ち」としての役割を期待したい。
 500万~600万人以上の市場で成り立ってきたアウトレットが300万人市場にも出てきた。仙台がその例だ。2強がほぼ時を同じくして昨年秋に開設。まだ1年を経過していないが、「認知されるまで時間がかかる」というから、決して順調なスタートとは言い切れない。仙台の両施設は300万人市場でのアウトレットのあり方、運営の今後の試金石となる。
 とはいえ、アウトレットが単に物売りだけの施設では面白くない。「ワクワク・ドキドキ感」や「宝探し」の要素がないと飽きられる。

2009/07/07
 中国で、温州の4人の実業家が仏著名ブランド「ピエール・カルダン」の中国での販売権を2億元で購入したことが話題になっている。どちらかと言えば、「高すぎるのでは」との指摘が多い。同ブランドは80年代に市場参入し、中国国内でも知名度が高い。しかし、「同じ金額を出すなら国内のブランドに出資しては」との声が上がっている。
 中国では消費の拡大が続き、国内の大手ブランドは積極的な出店を行っている。香港証券取引所に上場した、靴を主力とするスポーツ用品製造・小売りの361度国際有限公司も調達した18億1000万香港ドルを2、3級都市での販売ネットワーク構築や生産能力の拡充に使う。
 上海美特斯邦威服飾が手掛けるカジュアルの「美特斯邦威」は、5月に入ってから全国に5000平方メートル前後の旗艦店を立て続けに出店。今後も50~100の旗艦店開設を計画する。不動産価格が下がり、買い時と見て自社物件の購入も増やしている。
 政府の調査によると、1~5月の固定資産投資は繊維産業全体で6%増、アパレル製造業では12%増加した。その一方で、衣類の消費者物価は下がり続けており、1~5月の累計ではマイナス2・4%となっている。慎重な対応が求められる。

2009/07/06
 「今年の中元はどこまで落ちるか予想がつかない」。ギフトセンター開設前後に取材した百貨店店長は全員、危機感をあらわにした。昨年の歳暮商戦も厳しい中で迎えたが、今の状況から見れば、個人のギフト需要への影響はまだ、さほど深刻ではなかった。しかし、今回は底が見えない。
 大手百貨店の6月の売上高は、セールの開始時期で減収幅に差が出た。実質的に期末セールを前倒ししたJ・フロントリテイリングや高島屋は減収幅が改善したが、7月まで我慢した三越伊勢丹ホールディングスは2ケタ減だった。6月商戦の共通項もある。早期割引などの優待効果があった中元の健闘だ。
 期末セールが6月末に始まった07年。全国百貨店は6月に5・5%増収、7月は4・3%減だった。中元も6月の貯金を7月に取り崩し、締めて見れば前年並みから微減だった。百貨店を取り巻く環境はこの1年で一変。中元がどれだけ7月に落ち込むか見えないし、セール早期化の反動が7月にどれだけの影響を及ぼすかも不透明だ。
 早期割引もセール早期化も、経費率の上昇が残ったという見方もできる。リーマンショックから1年後の10月以降に向けて、収益を安定させ、増収につなげる芽を今からまいているか。そこが重要だ。

2009/07/04
 日銀短観6月調査で、大企業製造業の業況判断指数が2年半ぶりに改善となった。「最悪期は脱した」とされるが、消費という点では、光明を見つけるのが依然難しい。
 それでも、5月までの落ち込みぶりに比べると、6月は回復の兆しが出てきたようにみえる。ある服飾雑貨チェーン店は、5月までは全社売り上げが前年比マイナスだったが、6月はプラスに転じ、既存店ベースでも前年並みを確保した。特に日傘、紫外線対応の手袋など季節商品が好調で、客数の回復が明るい材料という。「これ以上景気は悪くならないだろうから、もう買ってもいいだろうと考えたのでは」と見る。
 久しぶりに、既存の枠にとらわれない青年経営者に出会った。この業界では、すきまを縫って新たな市場を開拓する経営者が出てくるのが常だったが、最近はあまり多くない。その彼が言う。「普通にやっていたら勝てる気がしない。知名度を上げるには相当な資金がいる。保証金を払って駅ビルなどに出店するくらいなら、海外に店を出したほうが安いし、リターンも大きい」。だからロサンゼルスに店を出し、現地に住むと決めている。
 閉塞(へいそく)した状況を突破する、フロントランナーが次々出てくることを期待したい。

2009/07/03
 毎年この時期、アパレル業績アンケートに取り組んでいる。個別企業の状況だけでなく業界全体の動向を知る上で貴重なデータだ。昨年秋以降の急速な景気悪化で、今回は回収が難しくなると予測していたが、今のところ順調である。
 回答を拒否する企業で一番多いのが外資系で、多くは「本国の方針」を理由に挙げる。中には「外資系なので」と、半ば当然のように拒否する企業もあり、疑問に感じてしまう。
 外資系であれ、日本で企業活動を行っている以上、社会的な責任を負うのは同じ。業績の開示拒否は法律違反ではないが、百貨店に大きなインショップを作ったり、目抜き通りに大型直営店を開設するなど、国内の企業とビジネスを行っている。信用を得る努力を行うのは当然だろう。
 こうした高飛車な姿勢が、いつまでも続けられるとは思えない。高級ブランドがブームの時代ならともかく、今はまったく振るわない。契約途中でも本国の方針で突然売り場を閉めるブランドもある。最近は、本国で倒産したり、業績悪化でリストラするブランド企業も目立ち始めた。
 今後は、取引や契約の際に、日本での業績開示や中長期のビジョンが明確なブランドを優先する。そうした機運を業界の中から盛り上げていく必要がある。

2009/07/02
 今年、生誕35周年を迎えたサンリオの「ハローキティ」がなぜこれだけ長期間にわたり人気を持続できたのか。80年からデザインを担当してきた山口裕子さんは「口を描かなかったから」と答えた。
 確かにキティの顔には口がない。自分が悲しい時はキティも悲しんでいるように、自分がうれしい時は一緒に喜んでくれているように見える。感情移入しやすく、癒やしを与えてくれる。
 80年代にキティのアニメを作った時、「口がないとしゃべれない」とアニメーターに言われた。仕方なくアニメでは口を描いたが、ファンから「キティらしくない」とクレームがきた。
 ハローキティも最初から順風満帆だったわけでなく、山口さんが着任した頃は不振に悩んでいた。山口さんは「以前買っていて、その後買わなくなった人に理由を聞いてみよう」と、サンリオショップでサイン会を始めた。いろいろな意見を聞いて、その時は辛かったがどんどんヒントになっていった。
 5年後には社内で売り上げトップのキャラクターになった。消費者の声がすべて正解ではないが、すごくヒントになる。自分の好きなものを作るのでなく、みんながどうしてほしいのかを考える。山口さんは今も店頭に立ち続けているし、今後も続けていくと話す。

2009/07/01
 投資ファンドによる企業のM&A(企業の合併・買収)や再編話は一時に比べると、沈静化したようにみえる。世界的な不況で、ファンドの資金繰りにも影響が出ているからなのだろう。とはいっても、M&Aや企業再編話が少なくなったわけではない。企業の体力や効率的な経営が一層問われる中で、そのニーズはむしろ高まっているともいえる。
 M&Aや企業再編は、事業基盤を強固にするための規模の追求型から、バランスシート(貸借対照表)の傷んだ企業の再建支援型へと変化してきている。その中で最近は、事実上の製販同盟ともいえる、企業間の連携が目立ってきた。資本提携までには至らなくても、特定取引先との関係強化を通じて、商品を供給する側は最適な生産計画を組み立て、売る側からすれば販売の機会ロスや在庫ロスを最低限に抑制することで、互いに効率的な企業運営をするのが最大の狙いだ。
 商品を供給する側にとっては、自らの生産機能や物流の稼働率を安定化させることも可能となる。一方、売る側にとっては売り場に経営資源を集中的に投下し、販売力を強化できるという思惑もあるのだろう。
 不況下ではバランスシート重視の経営が求められる。それだけに、製販同盟を通した無駄の排除は欠かせない。