繊研新聞掲載のコラム

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め・て・みみ/2009年11月

2009/11/30
 「外商は売り上げ目標があって大変です」。百貨店の幹部が、若手社員からこう言われたと嘆いていた。その若手は最近、婦人服の店頭から外商に異動した。外商に配属されるのは初めてで戸惑いも多く、この消費環境では実績を上げるのが困難なのは想像に難くない。しかし、幹部がショックを受けたのは、自分に与えられた売上高の目標を意識し、そのプレッシャーを感じたのが初めてと聞いたことだ。
 店頭現場にも予算はある。しかしそれは個人別に割り振られているわけではない。実際に商品を販売しているのは大半が取引先から派遣された販売員だからだ。自ら売ることが少ない若手から、ノルマを達成しなければならないという意識が薄れたとしても、それは環境のせいでもあるだろう。
 「好きで販売の道に入ったが、そのうち嫌いになってしまう人が少なくない。百貨店はその要因をしっかり分析する必要がある」。別の百貨店はこう指摘する。百貨店が仕入れと販売でリスクを回避してきたことと無関係でない気がする。
 百貨店は今、生き残りに向け、新たな事業モデル構築を急いでいる。ただ、責任をもち、苦労を重ねて自ら売ることで、現場が小売業の魅力を実感できる。そんな風土がなければ、どんな事業モデルも絵に描いた餅になりかねない。

2009/11/27
 上海で日系企業の現地法人設立が続いている。中国国内販売の拡大、中国への生産機能や技術の移転と日本や東南アジア、欧米などへの輸出の拡大、日本・中国と世界各地にある生産拠点や事業所・現地法人との連携による新事業創出をめざすのが狙いだ。現地法人の開業式も熱気が伝わってくる。
 25日には上海のホテルで倉紡貿易上海有限公司開業式が開かれた。井上晶博倉敷紡績社長は「上海に根を下ろし、価値ある企業として発展していきたい」、同公司の藪雅次董事長・総経理は「中国を起点に世界に向けて事業を展開する」とそれぞれ決意を述べた。
 先月22日に上海で行われた瀧定大坂商貿上海有限公司の開所式では瀧隆太瀧定大坂社長兼瀧定大阪商貿上海董事長が「中国での生産は今後さらに強化していきたい。中国・上海の現地法人と本社との密接な連携をもとに日本で培ってきた企画力、リスク力を発揮しながら、中国の生産工場との円滑なコミュニケーションを促進し、トータルな品質の向上に取り組む」とあいさつしている。
 日系企業の上海への現地法人設立の動きは、来年さらに強まりそうだ。上海を足掛かりに世界に飛躍するには、本社や他の事業所との連携や必要な経営資源の迅速な投入が前提となる。

2009/11/26
 新生ボブソンが営業を開始した。人員、取引先、直営店を大幅に減らし、縮小均衡によって採算を改善し再スタートをきる。「ずっとジーンズ業界で育ってきたため、マーケットが変化しているのに従来のやり方にとらわれ、変われなかった」と吉田浩二会長。
 「ジーンズ村の競争は甘かった」とある業界人はもらす。70~80年代のジーンズ拡大期に、デニムメーカー、ジーンズメーカー、ジーンズ専門店という縦の流通構造が形成された。特殊な生産設備が必要な産地の存在ともあいまって、ジーンズはジーンズメーカーしか作れない商品となった。新規参入がなければ競争は弱まる。
 90年代の半ばごろから、ジーンズ村の垣根は壊されていく。ユニクロなどSPA(製造小売業)の成長が、ジーンズ業界にも大きな影響を与えた。プレミアムジーンズブームの時も、大手ジーンズメーカーはほとんど恩恵を得られなかった。そんな中で、NBの一つだった帝人ワオが解散した。
 同じNBの中でも、ブルーウェイは国内生産にこだわり7900円以上の価格帯に絞り込むことで生き残りを図る。ベティスミスはベーシックでなくデザインものに特化する。「何をやるかではなく、何をやってはいけないか」。バブル後にある経営者が語った言葉を思い出す。

2009/11/25
 山登りが若い女性にまで広がっている。週末になれば都市近郊の山をハイキングする姿が目立つようになった。しかもおしゃれな服装をしている。ファッション業界には「山ガール」という言葉まで登場したことを考えると、冷え込んだ衣料品市場に刺激を与えるきっかけになってほしいと願う。
 そういえば「森ガール」という言葉も話題になった。「森ガール」はソーシャル・ネットワーキングサービスのミクシィから派生した言葉だ。ファッション業界でも自然素材で作ったゆるいレトロな花柄ワンピースに、タイツとペッタンコな靴を合わせたスタイリングを「森ガールファッション」として売った。伊勢丹本店で「森ガール」のファッションを特集した催事は大きな反響を呼んだことも記憶に新しい。
 「森ガール」も「山ガール」も癒やしや優しい雰囲気、ぬくもり、クラフト感などを持ち不景気の中で、女の子らしく、自分らしく、毎日を楽しむような理想像を求めている現れと映る。
 今の時代は「自分らしく生きる」がキーワードの一つ。アラフォー世代に人気の、自分好みに服をアレンジした“プチ・デコ”やユニクロの商品にビーズやワッペンなどを飾りつけた“デコ・クロ”も自分らしさを表現する現れだ。「自分らしさ」の提案にこそ好機が潜む。

2009/11/24
 日本百貨店協会は12月1日から、全国の百貨店17社、81店で「友の会買物券利用促進キャンペーン」を実施する。協会によると、友の会会員に還付された買物券のうち、未使用残高は約1800億円に達する。タンス在庫となっている買物券の使用を各社が特典をつけて促し、年末商戦の集客と売上高拡大につなげる狙いだ。
 協会による全国規模の共同販促はこれが3回目。10月にはリーマンショック後の業績の落ち込みが一巡する時期に業績を下支えするため、積み立ててきた自前の事業拡充資金1億数千万円を使い、来店促進を軸に会員企業の営業を直接支援する共同販促を初めて実施した。今月は未使用残高が2800億円ある全国百貨店共通商品券の利用促進キャンペーンを実施している。
 百貨店の減収に歯止めが掛からず、共同販促の効果もかき消されてしまった形だが、協会が会員企業の営業に直接、資する施策に本腰を入れたことの意義は大きい。基本は個別企業の努力だが、業界でまとまることで高い効果が得られることもある。
 半面、来店促進キャンペーンだけでは根本の問題が解決しないのも事実だ。新たな事業モデルを築かなければ生き残りは難しい。それも個別企業の努力だが、協会がそうした面で後押しできることがあるかもしれない。

2009/11/20
 現地化では商品企画や営業面だけではなく、幹部人事も重要である。上海を拠点にした長江三角流域では幹部人材の現地化に積極的な日系企業も出てきた。
 中国人スタッフを経営陣に参画させたり、2年後に取締役を登用させる日系企業もある。現地法人の総経理以外は中堅幹部も含めて全員現地スタッフという日系企業では、中国人留学生を日本で採用し、日本で教育して中国の現地法人の中堅幹部に登用するケースも。店長クラスに日本の有名大学卒の若手を採用している企業もある。
 人事での現地化が進んできたのは、海外市場の開拓、例えば中国での内販拡大に力が入ってきた証拠だろう。特に新興国では固有の商習慣や流通慣行が存在する。流通のどこに危険な落とし穴があるか、現地の幹部人材でなければ気づかないことも多い。その落とし穴を避けて経営マネジメントを行うには経営陣に現地の幹部が加わっていた方が、より実効性のある決定が可能だ。
 海外現地法人の取締役クラスの経営陣に現地スタッフ登用も現実味を帯びてきた。ただ、日本企業で外国人を経営陣に登用する例は極めて少ない。グローバルな市場を攻めるには、日本の本社経営陣に外国人が加わることも必要かも。現法幹部の現地化の先には本社幹部の多国籍化という課題もある。

2009/11/19
 料理教室のABCクッキングスタジオが若い女性の支持を集めている。「ターゲットが合う」と商業施設からの出店要請が多く、すでに教室数は100カ所を超え、「200カ所を目指す」と横井啓之社長。調理器具の実演販売をしていたときに、何人ものお客から「どうやって作るの」と聞かれたのが、教室を始めたきっかけという。
 「料理教室に行ったら」というと、「料理ができないから行けない」という返事が返ってきた。料理のうまい人の中に入っていけない人が多いなら、できない人の教室を作ろうと考えた。ABCの名前は基礎から学べるという意味だ。
 料理のうまい子がいたら「月謝はいらないから次から講師をやって」と先生になってもらう。みんなで一緒に作って一緒に食べる。楽しくおいしくがコンセプト。教室はガラス張りで外から中の様子が見える。生徒も先生も楽しそうに料理をしているところをみれば、通りがかった人も「ここなら安心」と思う。
 「女性は誰かに背中を押してもらいたいと思っている」と横井社長。教室に生徒が入る。その人が誰かを誘ってくる。教える、勧めるという循環ができる。売った、買っただけの話ならネットの中で完結するし価格競争になる。料理教室の付加価値とは、お客の声を聞くことと強調する。

2009/11/18
 育児中の親子が一緒になって楽しめる親子カフェが人気だ。東京や大阪といった都市部から地方都市や郊外の商業施設にも広がってきた。このほどララガーデン長町(仙台)のサンマルクカフェ内に設置されたほか、東京・銀座のモザイク銀座阪急にはパイオニア的存在のベイビーオアシスが11日に開設。
 商業施設のトイレ環境が多機能を持つオアシスとして激変しているように、親子カフェも新しい集客装置ばかりか、施設価値を高めるブランディング効果が期待できるものとして注目されている。
 親子カフェは子供をプレイルームで遊ばせながら、近くで親がゆっくりくつろげる癒やしのスポット。平日の日中に満席も珍しいことではない。保育士を配置しているところもあり、育児ママの生活価値の拡充はもとより保育士の新しい活躍の場としても期待できる。育児情報に乏しく育児に悩む女性も少なくないと聞く。情報を交換できる格好の場とも言えるだろう。
 「子供と一緒」という環境の提供は、新しいビジネスのチャンスの場としても映る。子供関連企業やママを対象にした商品開発や広告宣伝、モニターにも十分に活用できるに違いない。少子化による子供関連市場の縮小は避けられないだろうが、新しい価値や環境を創造することで高い収益につなげることも可能だ。

2009/11/17
 ヤングブランド「オリーブ・デ・オリーブ」の新しい体制が順調なスタートを切っている。先日はユニークな中期計画を発表した。かわいくてガーリーなブランドとして知名度があるという資産を生かす形で、顧客の幅を広げようというのだ。
 OLやキャリア女性ばかりか、70歳以上でもオリーブのテイストを好む人は顧客にしていくという。子供服はライセンス供与という形態で以前からオリーブブランドがあり、子供から年配までオリーブワールドでくくっていく。
 日本のファッションブランドは市場を細分化し、それに応じたブランドを投入する手法が主流だった。だから、大手になるほどたくさんのブランドがあり、常にニッチ市場を新ブランドで埋めていくということを繰り返してきた。ただ、逆の見方をすると企業名と同じコーポレートブランドがあまり育っていないということだ。欧米ブランドはコーポレートブランドで世界市場に出て行っている。日本ブランドは近隣の中国ですら、なかなか根付かない理由が、ここにある。
 海外でゼロから知名度を上げるのと、世界的知名度のあるコーポレートブランドを投入するのでは、スタートラインが全く違う。オリーブの目指すところは、すべての世代の女性に愛されるグローバル企業という。

2009/11/16
 「若い世代の来街者は非常に多いが、これに対応する売り場がなかった。アメリカ村や堀江と一緒に心斎橋に若い世代を呼び寄せたい」。大丸大阪・心斎橋店北館が14日開業した。売りは、百貨店から離れている世代を取り戻すべく、百貨店初登場のショップを多数導入した地下1、2階のヤングファッションゾーン。本多洋治店長は新顧客開拓に向け、こう意気込む。
 そごう心斎橋店だった物件が大丸に引き渡されたのは9月25日。ファッションビルを主戦場とするショップを導入するため従来より緩い取引条件の契約も取り入れた新規取引先開拓に時間の制約も加わり、難しさもあったが、本多店長は「品揃えのウイングを広げることができた」と自信を見せる。
 J・フロントリテイリングは同店を「新百貨店モデル」具体化の1号店と位置づける。緩い条件の契約を取り入れれば差益率は下がるが、大丸の山本良一社長は「益率よりも益高」という。新規顧客を開拓して売上高が上がれば「益率が低くても利益はとれる」。増員せずに新館を開業できるまでに低コスト運営を徹底したことが背景にある。
 百貨店のにおいを消したゾーンを作った挑戦が成功するかは「未知数」(本多店長)だ。ただ、常に次の手を打ち続けることが生き残りの条件であることは間違いない。

2009/11/13
 09年もGDP(国内総生産)が8%前後で市場も広がる中国には新規参入をめざす企業が多い。経済産業省が支援する「トウキョウアイ」展示商談会と日本生活美学極品展が10日から、インテリアライフスタイル展も上海市で始まった。
 トウキョウアイは日本のファッションブランドの海外展開を支援するプロジェクトで、来月からは消費者向けの販売も始まる。日本生活美学極品展は繊維や皮革製品の優れた日用品を紹介、販路を開拓する。日本生活美学極品展ではプレス内覧会やレセプションも行われた。
 出席した後藤芳一経産省製造産業局次長は「人は自然の一部として存在しているという自然感は日本と中国に共通した感覚。ものづくりも千~2千年間、中国から学び、根っこには同じものがあるが、日本独自の自然やくらし、歴史の中で磨き上げられた生活製品は中国の生活製品とは、多くの共通項と共に異なる感性も有している」と指摘した。
 日本の「極品」がどこまで中国で受け入れられるか。中国での内販を伸ばすためには、この共通項と差異に注目する必要がある。ものづくりの品質の高さや優秀なデザイナーの創造力など、日本の強さをさらに伸ばすことが成功の鍵。強みがなくなれば、日本のものづくりの魅力もなくなる。

2009/11/12
 副資材メーカーのフクイが架空ブランドの展示会を開いている。織りネームや下げ札などのデザイナーが、架空のブランドを立ち上げ、コンセプトに沿った副資材をデザインし、限られた予算の中でブランドの世界観をディスプレーするというもの。9人のデザイナーが腕を振るった。
 ミリタリーやモーターサイクル系のブランド、架空の生物をイメージした遊び心のあるものや、琥珀(こはく)をテーマにしたブランドなどを立ち上げた。服そのものはないが、ネームや下げ札、シール、ショッピングバッグまで含めて、トータルで表現している。
 副資材の仕事は、まずお客のブランドありきなので受け身になりがち。今回は自らのブランドを立ち上げることで、主体性をみせた。お客は決まったデザイナーと仕事をすることが多いので、付き合いのないデザイナーの発想に触れられる。デザイナーも普段はコンピューターに向かいぱなしなので、デザイナー同士が刺激を受け合ういい機会になった。
 「店舗設計の参考になる」という評価もあった。来場客には1社2時間くらいかけて説明する。すぐに決まるわけでないが、次のきっかけになる。「この不景気によくやりましたね」といわれるが、不景気だからこそ余裕をもってやりたいと社長は話す。

2009/11/11
 古くはあからさまに口にすることがはばかれることから「はばかり」と言われたトイレが「もう4K(汚い、臭い、暗い、怖い)とは言わせない」ほど日進月歩で進化している。集客装置としての効果はもちろんのこと、今では施設のブランディングにもなっているという。
 日本ショッピングセンター協会が共催する「第5回トイレ連絡会議」が仙台市で開かれた。SCのトイレにかかわる担当者が集まった本格的な会議で、180人近くが2日間にわたって情報交換や勉強会を行った。
 「用を足す」トイレと思いきや、中にはコーヒーなどを飲みながらのくつろぎ空間や化粧品や電気器具の試供品を自由に使える環境へと形を変えたトイレもある。こうしたメーカーにとっては格好の広告宣伝の場としてとらえていることも事実。
 例えば、「着替える場所」や「ゆっくりメークを直したい」「携帯の充電やパソコンの無線LAN機能」など、これまでのトイレにはおよそ考えも及ばなかった機能を求める女性が増えた。この声を素直に反映させたのがJR横浜駅ナカの「リフレスタ」やJR大阪駅ナカの「アンジェルブ」、東京メトロのエチカ池袋にある「クリュスタ」だ。いずれもエンターテインメント型のトイレで、集客にも大きな力を発揮している。

2009/11/10
 「約9兆円の百貨店の総売上高は6兆円ほどに縮小し、その時点で百貨店は三つほどの企業グループに収斂(しゅうれん)されている可能性がある」。伊勢丹は00年に発表した「10年ビジョン」で、日本の百貨店業界の10年後の姿をこう想定した。その10年後が間近となった今、この見方に現実が限りなく近づいている。
 単独で長期的な成長戦略を描くことが難しくなったことに加え、ファンドによる敵対的買収の脅威が背中を押して業界再編が急速に進展し、百貨店は四つの企業グループを軸に生き残りを競う構図となった。
 市場規模縮小も加速している。10月も大手百貨店は2ケタ減収基調。08年11月~09年10月の12カ月間の百貨店の総売上高は速報値で約6兆8000億円。年間でさらに下がるのは必至だ。年間売上高の7兆円台割れは24年ぶりとなる。
 今後も市場規模縮小と、業界再編は不可避とみられる。ある小売業幹部は「百貨店の中だけで組み合わせを作っても限界がある。新しい仲間と組んで新しい消費の舞台を作っていく必要がある」とする。異業種との合従連衡や異業種からの人材招聘(しょうへい)が重要と指摘する声は強まっている。百貨店の強みを発揮し、存続させていくには、業種の垣根を超えた連携で新たな仕組みを築く必要があるかもしれない。

2009/11/06
 上海では来年5~10月開催の「上海国際博覧会」に向けて、至る所で工事が行われている。上海万博開催に合わせて、今から千年以上前に、幾多の危険を顧みず海を越えて日中交流の架け橋として尽くした鑑真和上と弘法大師の座像を日本から上海博物館に持ち込み、来年9月29日から11月23日まで展示される。
 鑑真は753年12月に来朝、759年に唐招提寺を創建した。空海は804年に入唐し、唐代密教の巨匠恵果に学び、806年に帰国、日本に正統的な密教を教えた。奈良の唐招提寺、空海が恵果に学んだ中国・西安の青龍寺はともに古来の日中の深いきずなに思いをはせさせる。時代の最先端の思想・文化・学問をわずか2年間で習得した空海の天才ぶりには驚かされる。空海の書も秀逸である。
 繊維・ファッションの分野でもシルクロードに代表される長い交流の歴史がある。今週前半も09年度A・D・O(全日本デパートメントストアーズ開発機構)上海研修が実施され、将来の日本の産業を担う若手バイヤーたちが日系や中国系有力企業や上海市場を視察した。とんぼ返りで尾州でも研修を行っている。
 上海との比較で日本のものづくりの強みや市場創造の方向性を探る。この複眼的な視点が閉塞(へいそく)感を打破するのに必要かも知れない。

2009/11/05
 最近の若者は車にあまり興味がないそうだ。20年前ならほとんどの大学生は車が大好きだった。今の大学生に聞くと、興味のある人は半分程度だという。「所有や消費に喜びを感じる感覚が薄いのではないか」と松村太郎慶応義塾大学SFC研究所上席所員は伊藤忠ファッションシステムが開いた「マーケティング・アイ・フォーラム」で述べていた。
 猪子寿之チームラボ社長は「あこがれよりも、共感されることをめざすべき」と、今の消費を語る。自分が作曲した曲を歌ってくれるバーチャル歌手の初音ミクや動画投稿サイトは支持されている。
 フォーラムの中で「共感」ということの一つの例としてネット天気予報のウェザーニュースが紹介された。気象庁ですら予測が難しいというゲリラ雷雨の観測の仕組みを作っている。「隊員のみんな、観測たのむ」というメールが流れると、メンバーが携帯で雲の写真を撮って投稿する。それらの情報を分析することで、限られたエリアの天気まで予測する。隊員はみなボランティアだ。
 昔あるラグジュアリーブランドを取材したとき、担当者は「ブランドものを着るというのは、あこがれを着るということです」と胸を張っていたのが印象的だった。今は「消費しないことをどう味方につけるか」。発想の転換がいる。

2009/11/04
 就職難は日本だけでない。中国では来年600万人以上の大学生が卒業するが、就職できるのは7割程度と見られている。大学生が増えすぎた問題は数年前から表面化しており、昨年秋からの世界的不況でさらに深刻化している。
 大阪のある小さな靴メーカーが今月下旬、北京大学で会社説明会を開くという。日本企業5社とともに出るもので、ファッション関連は同社だけ。権威ある大学と認められた中国国家重点大学の学生が1500人ほど来場する。靴メーカーの社長は「日本に来ている留学生は富裕層(の子弟)が多く、もっとやる気が前に出ているような学生を採用したい」と話す。
 採用するのは2人だけだが、先をにらんだ戦略がある。来年秋にも上海に独資法人を設立し、中国で本格的にビジネスを始める。そこで中核的人材となって活躍してもらおうと考えている。もう一つは、企業、ブランドの知名度の向上。同社のブランドは若い女性を対象とし、ファッション誌と連動した販売を特徴としている。会社説明会に来る女性は対象客層と重なる。格好の宣伝の場という発想だ。
 この会社は来年春、大阪を代表する歴史的建造物、中之島中央公会堂を借り切って、会社説明会を開く。採用するのは数人だが、1200人の来場を見込む。

2009/11/02
 中華料理店の店主が「これを食べればインフルエンザにかからない」と、カボチャの種を出してくれた。免疫力を高めるベータカロチンを多く含み、ウイルスが体内に入っても防御してくれるのだという。カボチャはカゼの予防に効果があるとして冬至に食べる習慣があるが、今年は冬至に食べていたのでは間に合わない。新型インフルエンザの患者は冬至の2カ月前に100万人を超えた。
 会社の受け付けや飲食店の入り口で消毒薬を見かけることが当たり前になった。強要されているわけではないが、マナー違反を恐れて消毒スプレーを手に吹き付ける。外から中にウイルスを持ち込まないのが今の時代のマナーになった。危険な“外”に対して安全な“中”。外への恐れがこれまでになく高まっている。
 食品スーパーに聞くと、期待メニューは今冬も鍋。一昨年はカレー鍋が一気に浸透したが、今年はトマト鍋が注目だという。種類が広がり、家で鍋を囲む機会はますます増えそうだ。キッチン雑貨ではタジン鍋が売れている。北アフリカ原産のこの調理道具は蒸気を外に逃がさないから野菜や肉のうまみが凝縮される。家での料理のバリエーションを増やしてくれる。
 衣料品でも注目はルームウエア。今年の冬は危険な外に出ないで安全な中で楽しむことになりそうだ。