繊研新聞掲載のコラム
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め・て・みみ/2009年12月
2009/12/28
町なかで電気店を営む友人が、仕入れ値よりも大手家電量販店の店頭価格の方が安いと嘆いている。価格では勝負にならないと、老人世帯などニッチな市場に生き残り策を探す。
大手も同業間の競争はし烈を極める。「他店よりも1円でも安く」をうたうが、競合店も同業の価格は調査済み。価格差は是正され、どの店も店頭価格は地域最安値に収斂(しゅうれん)されていく。
昨年の今ごろに比べ安くなったと思うのは薄型テレビやデジタル家電だけではない。家庭用品も衣料品も安くなった。全国消費者物価指数は11月も下落し、これで9カ月連続のマイナス。政府の見通しによれば来年も下落傾向が続く。不況、低価格、企業収益の悪化というデフレのスパイラルは止まりそうにない。
デフレに耐えるために生産地も移動を始めた。製造コスト低減のため日本からアジアへ脱出した生産拠点は、アジアの中でさらに低コストを求めていく。アジア最安値に行き着くまで、この動きは止まらない。しかし販売価格の低下スピードは製造コストの低減速度を上回る。物流や流通の各段階が低価格実現のため利益を削る。販売価格と製造原価のギャップが減少し、日本とアジアの商品価格は接近してきた。
デフレの行き着く先はアジア価格。アジア価格に収斂されるまでデフレは続く。
2009/12/25
今日は年賀状の元日配達締切日。年々とりかかるのが遅くなる傾向だというが、できずに焦っている人も多いことだろう。
送り先を確認しようと整理していたら、友人から届いたばかりのはがきに「13年飼っていた犬が秋に亡くなりました」とあった。そばには本人が描いたのか、元気な頃の愛犬のイラスト。普通の喪中はがきでは味わえない深い悲しみが伝わってきた。
喪中はがきを出すほど、ペットを人生の伴侶とみなすコンパニオンアニマル化が進んでいる。子育てを終えた年代の女性に多く「この子がいなくなることなど想像できない」と平気で言うのを、これまで何度も耳にした。
最近わが家の犬を散歩させるとき、ウエアを着せていないと引け目を感じるようになった。出会う犬ほぼすべてが着ていて、飼い主と「こんにちは」のあいさつは交わすものの、視線に冷たさを感じるのだ。数年前まで、こんなことはなかった。
節約モードで服を買わなくなった女性も、可愛いペットのためには支出を惜しまない。本来“毛皮”の上に服を着せても意味はないと思うが、長生きを願う飼い主にとってウエアは必需品になった。
ニーズがファッション性から機能性になったとき、市場は拡大する。ペットウエアには大きな成長性がある。
2009/12/24
スポーツ卸といえばメーカーの販売代行であり、見方を変えるとスポーツ小売店の仕入れ代行でもある。メーカーから仕入れた商品を小売店に納品した商品の販売差益が利益の源泉であるのは言うまでもない。
大手スポーツ卸のトップに販売差益が限りなく小さくなっているという話を聞いた。メーカーと直接取引する大型小売店の台頭に伴う“中抜き”、カテゴリーによっては直営店の出店でSPA(製造小売業)化するメーカーなど、中間流通の卸を取り巻く環境は逆風にも近い。加えて、デフレと過剰供給によるコストダウン圧力が、さらに小さくさせているというわけ。
スポーツ市場は健康志向の高まりなどで、一般のアパレルに比べると、落ち込みは小さいようにみえる。それでも、人口減や若者のスポーツ離れなどから、国内市場規模の安定拡大は見込みづらい。いまの企業数では過剰供給は解消せず、生き残りをかけた“いす取り”ゲームが激しくなる。
卸企業にとってはメーカー機能の強化も一つの手段だが、消費者のスポーツ参加を促すイベントや施設の紹介、さらには物流機能など、物販だけにとどまらない多様な機能武装が欠かせない。トップいわく「手数料や使用料を加えた収益源の複合化」による質的転換が中間流通には求められている。
2009/12/22
「日本で売っているのは本物。それに中国より安い」。都内の百貨店で買い物していた中国人女性の言葉だ。彼女が手にしていたのは中国製であろうライセンスブランドの商品。「日本人が生産管理し、企画した商品は好き」と話す中国人が増えている理由は単に品質が良いということを超えているようだ。
品質を裏づける技術や管理の理論は普遍的で、世界共通である。中国でも技術や理論が浸透していけば、品質は向上していく。同様に低価格競争も文化性や独自性とは無縁のもの。中国で大量消費を背景にして量産体制が発展していくと価格では勝てなくなる。
しかし、「日本で買いたい」という中国人ツアー客の気持ちは「品質」や「技術」「価格」ではなく、日本の商品やファッション全体への信頼につながっている。そうした信頼や文化性は技術と違い普遍的なものではない。日本の特有の想像力や創造性、感性価値の上に成り立っているもの。だからまねすることが難しい。
しかも、今の世界的な日本ブームはエキゾチックに象徴される未知なるモノ、異質なモノの発見ではなく、「既知の再発見」、つまり生活の中に新しい価値を及ぼすものだ。日本のモノ作り、創造、価値観の独自性が日常の中で取り込まれている。
「メード・バイ・ジャパン」にビジネスチャンスがある。
2009/12/21
ディスカウントストアの目玉商品としてファー付きのダウンジャケットが1円で売られていた。安売り競争もここまできた。
激安商品に群がるお客。しかし、買い叩かれる生産者は安値に泣く。店も販売コストを引き下げるために人件費を切り詰める。激安商品がいくら売れても生産者も販売員も豊かにならない。ということは消費者も幸せにならない。激安価格は劇薬価格。安さが過ぎると毒になる。
三重県津市に松坂牛を扱う精肉店がある。高級な松坂牛を安く売り、平日でも一日中にぎわい、年末は正月用のまとめ買いのお客が店の外にまで長い列を作る。この店は同時に、松坂牛のチャンピオン牛を高く競り落とすことでも知られている。毎年11月に松坂で行われる競り市では、1992年から連続でその年の最優秀の松坂牛を落札し続け、今年も2009万円で競り落とした。少しでも高く値をつけることは店主から飼育農家への感謝の気持ちだ。
高く買って安く売るのがこの店の商売。肉牛を直接仕入れ、自社で解体・精肉することでコストを引き下げている。大切に育てた牛を高く買ってもらえた農家の喜び、そして安くておいしい松坂牛で食卓を囲む家族の団らんが目に浮かぶ。人の心を温かくさせる演劇のような価格。みんなを幸せにする安さがある。
2009/12/18
ポストから朝刊を取り出し、チラシを抜くと「緊急割引・値下げしている品もさらに30%オフ」(ダイエー)、紙面を開くと「ダウンジャケット半額」(ジーンズメイト)。いくら「安い!は愛だ」(西友)といっても、そうしないと売れない小売業の苦悩が透けて見える。
今は「過少消費」の時代と良品計画の金井政明社長は言う。ボーナス減額など将来不安が消費者を襲って、「前提は買わない。どうしても買わなければならない場合は最も『安い』もの」。従って消費者の向かう先は、ニトリなどプライスリーダーに集中する。
無印良品が登場した1980年は第2次オイルショック直後で、同じように節約マインドが国中を覆っていた。余分な装飾や華美なものを省いてリーズナブルに――当時このコンセプトは新鮮に受け入れられたが、買うこと自体が余分な時代になっては、無印の神通力も通用しない。
価格競争に陥ることを避け、過少消費の収束する2、3年後に備えるのが無印のスタンスで、その間は海外の伸びで収益を支える腹づもりだ。
競争するランナーにも次の一手が芽生えている。イオンの岡田元也社長は「カネを出しても買ってくれる。そうした商品を開発することがGMS(総合小売業)改革だ」と。当然、消費回復が前提ではあるが。
2009/12/17
第40回繊研合繊賞が決まった。新素材開発などが低調だった一方で、目立ったのはSCM(サプライチェーンマネジメント)構築に向けた取り組み、いわゆる「出口」論にかかわる動きだ。東レの製品事業とも連動した最終製品と結びつけた素材開発、繊維リソースいしかわを軸に進めてきたテキスタイルメーカーと大手アパレルとの取り組み、フランドルと帝人グループ、クラボウなどによるSPA(製造小売業)新会社などが受賞対象となった。
「出口」論を巡っては東レ合繊クラスターが昨年、営業企画分科会を設置、輸出分科会との両輪でモノを流していく出口を探っている。北陸3県繊維産業クラスターでも「出口」論が重要なテーマとなり、特に輸出先市場問題が議論の焦点となっている。帝人ファイバーがSPA対応の営業部署を明確にするなど個別企業ごとの動きも活発だ。
「どれだけいい糸、他社にない素材を作っても糸や生地を百貨店では売ってくれない」のは当然のこと。輸出市場開拓、国内外の店頭で売れる製品を意識した素材開発、販路作りの遅れは反省点だ。
売れるビジネスモデルというと即ユニクロの名前があがる。しかし、世の中の「出口」がすべてユニクロになったわけではない。出口探しとそこへのルート付けが焦眉の課題だ。
2009/12/16
円相場が1ドル90円を突破し、ここしばらくは80円台後半で推移している。円高になればなるほど業績が下振れしかねない輸出企業にとっては気が気ではない。
逆に輸入品が圧倒的な繊維・ファッション業界にとっては、円ベースの購入原価が安くなり、円高メリットは決して少なくない。百貨店や量販店では円高還元セールを実施しているところもあり、円の価値が上がれば海外旅行も行きやすくなる。
もっとも、急激な円高は輸出に頼る企業の収益を圧迫し、雇用不安や景気後退をさらに加速させかねない。繊維・ファッション業界も最近は海外事業の拡大に積極的に取り組んでいるところが多いだけに、円高は外貨建債権を目減りさせることにもなり、国内輸入による円高メリットを相殺させる。仮に、外貨建債権を目減りさせないために、商品価格を引き上げて海外で販売すれば、競争力の低下につながる。メリット、デメリットは企業によって差こそあれ、ともにつきまとう。
これまでは日本からの輸出を中心に中国で販売していたが、欧州からの輸出を増やそうというブランドもある。グローバルブランドの強みといってしまえばそれまでだが、日本の企業が所有する欧州ブランドのなせるわざ。円高は日本企業の海外ブランド買収につながっても不思議ではない。
2009/12/15
いつも駅前でティッシュを配っている不動産屋が最近はマスクを配るようになった。この冬はティッシュよりもマスクの方がありがたい。新型インフルエンザの患者数は12月に入って大きく落ち込んだとはいうものの、全世界での死者数は1万人に迫っている。本格的な冬の到来を前に油断できない。
感染が怖くて外出が減っているとは単純には思えないが、外食産業の苦戦が続いている。飲み屋街の人出も例年に比べると少し寂しい。家庭でも外での食事を減らし、ケータリングやグルメの取り寄せなど、内食にお金をかけるようになった。
新型インフルエンザの流行が選考に影響を与えたのか、今年の世相を表わす漢字に「新」が選ばれた。新政権の発足や、事業仕分けのような新しい手法も行われるようになったが、身の回りをながめるとむしろ「衰」や「退」の字の方がふさわしいような気がする。経済も政治も行政も、出口の見えない閉塞(へいそく)感が漂う。だからこそ、リセットして白紙に戻してやり直したい。そういう気分を反映しての「新」なのかもしれない。
夜の付き合いなどこれまでの消費行動をリセットして、親しい友人や家族に囲まれて家庭で楽しむ消費者が増えている。買い物も既存業態が苦戦しネット販売が躍進する。個人消費の分野は確実に「新」に移行しているようだ。
2009/12/11
イオンの「過去最大のセール」が始まった。何か、前日発表した米タルボット売却を連想してしまうのが皮肉である。
株価は上昇したが「反省してほしいのは、売るタイミングを逸したことだ」と流通評論家の鈴木孝之さんは指摘する。本業と相乗効果が小さいから売却も有効だと、鈴木さんが最初に著書で述べたのは03年。タルボットが増収増益を続けている時期だった。
イオンがタルボットを買収した88年当時、米国株式市場は大暴落してTOB(株式公開買い付け)の標的になる企業が続出していた。その1社が、食品出身で当時タルボットとエディ・バウアーを保有していたゼネラルミルズ社。本業と関連性が薄い2社を売却して、得られる資金を買収防止策に充て「一足先に“本業回帰”に目覚めた」と「ジャスコ30周年史」は記述している。正に歴史は繰り返す。
イオンが回帰する業態の一つが改革中のGMS(総合小売業)だが、鈴木さんは「解体すべきだ」と主張する。正確には解体・分社化だが、要は衣食住すべてを統括するのではなく、分社化してプレーイングマネジャーを、それぞれの頂点に置けと。
ファーストリテイリングやニトリのような創業者パワーと比べたら、大サラリーマン組織はひ弱過ぎるというのだが。さて、イオンの次の手は。
2009/12/10
第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)が7日からコペンハーゲンで始まった。97年のCOP3で取り決めた先進国全体で08年から12年までに90年対比で温室効果ガス排出量を5%削減するという取り決め、京都議定書に続く20年までの数値目標を設定すべき会議だ。
欧州諸国は20~30%の削減目標を示し、米国も政権が変わり、不十分とはいえ、温室効果ガスの削減目標を発表した。日本も麻生内閣の90年対比20年に8%削減の数値を25%削減へと引き上げた。
ところが、この25%削減案には経済界から大きな反発の声も上がっている。温室効果ガス削減の対策によるコストアップが企業の国際コスト競争力を奪うことや目標を達成できなかった際の排出権の購入のコストがのしかかるためだ。
しかし、温暖化対策のコストと「コスト・オブ・インアクション」といわれる何もしないで発生するコストを比べると、後者の方が断然大きい。
日本企業はすでに環境対策ではこれ以上の削減は難しいとの声も聞く。日本は公害対策では世界トップレベル。資源の少ない国として省エネも進んでいる。ただ、いずれも受け身。もっと攻勢的な環境対策、環境ビジネスの構築へと発想を広げ、世界に誇れる環境と産業、経済の共存共栄の道を探れないか。
2009/12/09
商社の機能が大きく変わりつつある。金融機能をとっても、物の売買を仲介し口銭を稼ぐトレード主体の時代には、売掛金や受取手形などの売掛債権が買入債務を上回る形で、取引先に資金を融通し、商取引を拡大してきた。
ところが、トレード主体の収益モデルが過去のものとなり、最近はOEM(相手先ブランドによる生産)を軸にしたアパレル機能や投資による配当、持分利益などの比率が高くなっている。
金融機能も株式の取得や出資による関係会社化、子会社化、運転資金や設備資金の貸付、債務保証などへと多様化。有望な与信先企業を選んで関係を強化し、取引を継続、拡大する手段だ。総資産に占める売掛債権の比率は減少し、株式の取得や出資金など事業投資型に姿を変えつつあるところもある。
事業投資にリスクはつきもの。それだけに、出資するにしても将来的に価値の増大が見込める企業の株式を安く手に入れ、逆に見込みのない株式を売却するなど、資産の入れ替え、リスク管理には敏感にならざるをえない。言い換えれば、経営資源の戦略的な再配分が一層、求められる。
リーマンショック以降、投資ファンドによるM&A(企業の買収・合併)は目立たなくなっているが、商社を軸にしたM&Aを含めた事業投資は、さらに加速されそうだ。
2009/12/08
書籍をインターネットで検索し、購入することが増えた。それでも本屋や古本屋に足が向く。
あのにおいがたまらないと話す友人の古本フェチほどではないが、ずらり並んだタイトルを追うだけで好奇心が刺激される。何気なく手にした一冊との出会いも楽しいし、脳をトレーニングする時間も生活には必要だ。
そんな思いを確認できる本屋を見つけた。中目黒の目黒川沿いにある「ユトレヒト」だ。オンライン書店から立ち上がり、予約制のセレクトブックショップとして開店した。二つのデスクがある小さい店内で、ビジュアルブックが主体だが、本を選ぶためにスタッフと会話し、新しい情報も得ながら購入するため、滞留時間は長くなる。
ちょっと戸惑ってしまったが、これが究極のセレクトショップの一つという気がした。ファッションにもこんな店がもっとあってもいい。同時に、前々から抱いていた疑問が少し解けた。それは毎年、数千軒の本屋が消えている出版業界の苦境が活字離れやネット販売の影響だけではないという点だ。
世界で一番のブログ好きな日本人が本当に活字離れしているといえるのか、苦境の中にある本屋はネットよりも読みたいと思う本を分かりやすく並べ、興味をそそる情報を提供できているのだろうか。ファッションの売り場や売り方にも通じる。
2009/12/07
仕事でもパソコンや携帯電話のEメールを使った連絡が増え、郵便などでビジネスレターを出す機会がめっきり減った。
どこにいてもリアルタイムで送受信できるメールは短時間で何回もやりとりできるから、文面がくだけていくのも速い。気をつけていても、メールを何回かやりとりしているうちに、親密になったように、人間関係を築けたように思えてしまうからだ。
店が顧客に出すサンキューレターは、顧客との関係を構築し、次の来店につなげるための欠かせないツールだが、「書いたことがない」「書き方が分からない」と敬遠する販売員が多いという。レターに代わって増えているのがサンキューメール。手軽でスピーディーで、特に若いスタッフは手紙を書くことは苦手でも、メールを打つことへの抵抗はない。
気がかりなのは言葉遣い。抵抗がない分、知らず知らず文章がくだけていく。同世代の顧客には友達言葉になりがち。しかも送信と操作するだけですぐに届く。まだ家に到着する前の、買い物帰りの電車の中とかでメールをもらっても余韻には浸れないし、追いかけられているような息苦しさを感じてしまう。
手軽だから大量に送ることのできるメール。量は増えても中身が薄まっていないか。感謝の気持ちまでデフレになってしまっては効果はない。
2009/12/04
「新語・流行語大賞」の年間大賞に選ばれた「政権交代」。鳩山由紀夫首相は「流行になっちゃいけない」とジョークを飛ばしたが、真実味を帯びるような問題が起きてきた。
その一つが、急激な円高やデフレの進行である。これによって景気回復途上にあると言われていた輸出製造業の業績予想に急ブレーキがかかり、いっそうの値下げで利益を減らすと判断された小売業の株価が下落した。今後の経済政策は、GDP(国内総生産)の6割を占める個人消費=内需拡大に舵(かじ)を切るべきだ。
同じく流行語に選ばれた「こども店長」。コマーシャルをみて「『減税、補助金も』なんて子供に言わせるせりふじゃない」と不快感を持つ大人もかなりいるという。自動車や家電製造業にはエコの後押しがあったが、節約意識が高まった消費者の標的にされている観がある衣料品には、今のところ何の恩恵もない。
ある百貨店が福袋に「こども店長」企画を取り入れたが、減税も補助金もアピールできない百貨店の店長に、あこがれを持たれるよう経済環境を改善してほしいもの。一番早いのは消費者への減税だ。ボーナスの減少を補う規模で早急に実施すべきだ。日銀が1日、発表した金融緩和策に続いて、家計を温める策が「政権交代」を死語にする早道かも知れない。
2009/12/03
2週間にわたって行われた行政刷新会議の「事業仕分け」。廃止や縮減などを求めた事業の削減総額は7000億円にのぼり、国が財源を拠出する独立行政法人などの基金や特別会計の積立金などからの国庫返済要求額と合わせると1兆7000億円の財源が捻出(ねんしゅつ)される。
短時間の内に事業廃止や見直しの結論を言い渡す仕分け人の姿が連日報道され、注目を集めた。鳩山首相プロデュース、シナリオ財務省、主演女優蓮舫議員のパフォーマンスとしては一定の成果を収めたと言えよう。
様々な反論も出ている。科学技術分野の予算削減には歴代ノーベル賞受賞者や大学の学長が名を連ねて厳しい批判を加えた。
繊維、FB産業も東京発ファッション・ウィークの予算が3分の1削減されるほか、ものづくり中小企業支援や経済産業人材育成、商店街・中小市街地活性化事業費などの削減や見直しなど影響は少なくない。
数字だけを見て、赤字だからとか効果が出ないからと予算削減や事業廃止を行うことは将来に禍根を残す。かつて「経営の鬼」とも称された宮崎輝元旭化成社長は企業は「健全なる赤字事業」を持つ必要性を説いた。前田勝之助東レ名誉会長は「不況期の好況対策と好況期の不況対策」を強調した。事実と道理に基づいて分別ある判断が必要だ。
2009/12/02
先週はドバイショックで株式市場が低迷。今週に入って多少、反発しているが、企業の経営者からすれば懸念は消えない。売買目的で保有している株式の株価が下がれば、評価損を出さなければならないし、「持ち合い株」も時価が半分以上になれば減損処理を迫られるからだ。
昨年秋のリーマンショック以降、ファッション業界では投資ファンドによる企業のM&A(合併・買収)が鎮静化しており、自社の株価が低迷していても、買収される懸念は多少、薄らいでいる。
それでも、低迷が続けば、持ち合い企業同士は減損処理で、互いの財務に影響がある。持ち合いのリスクは決して小さくない。
リスク解消のために持ち合い株を手放せば、株価の低迷は続くだけに、経営者にとっては頭の痛いところ。昨年秋の金融危機まではファンドや事業会社による企業の買収、株式の取得が過熱していたのがうそのよう。買収金額も高値というのも決して珍しくはなかっただけに、一転した感がある。
前期の09年3月期決算では、「のれん代」の減損処理を迫られた企業も多かった。買収した時点の金額が高額で、買収された企業の株価が大幅に下がっていれば「のれん代」の減損処理も必要になる。バブルは決して望まないが、株式市場の回復を望まない経営者はいない。
2009/12/01
政府は11月の月例経済報告で、日本経済がデフレ状態にあることを明らかにした。デフレは06年6月以来のことだ。不況が続き、企業の業績悪化、賃金・ボーナスカットによる購買力ダウン、物価の低下を繰り返すという、デフレスパイラルの危険性も指摘される。
ファッションビジネスでも同じような現象が起こっている。価格引き下げ、ポイント還元セール、下取りセールなどさまざまな値引きが広がっている。ところが、値段を下げたから、客数やセット販売率が上がり、売り上げが伸びたという話はほとんど聞かない。むしろ「値引きした分だけ売り上げが落ちている」との嘆きも聞く。
あるキャリア女性向けブランドは、冬物コートの売り上げを前年より2割伸ばしている。しかも、一点単価を3000円以上上げている。顧客は物の価値を理解して購入したわけだ。
別のレディスブランドは来春から一点単価を引き上げ、来秋には平均一点単価を今より3割上げるのが目標という。単価を下げても客数増やセット率アップが見込めないとして、残された手段は一点単価引き上げしかないと判断した。
消費者の価格志向は続くが、価格だけがニーズではない。品質を落としたものは要らないという不満も募ってくる。自らデフレに巻き込まれていくことはない。
