繊研新聞掲載のコラム

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め・て・みみ/2010年01月

2010/01/29
 未来都市への大改造か。内外メディアに公開された上海万博会場と関連施設は、規模と先進性の両面で目を見張る。
 上海万博の会場の広さは愛知万博の約1・9倍。万博までに開港する虹橋空港第2ターミナルは、万博会場や浦東空港、将来には上海~北京間を約3時間半で結ぶ新幹線が発着する虹橋駅と地下鉄で結ばれる。
 今年は上海の浦東開発20周年にも当たる。上海万博の開催は浦東開発の契機にするというのも目的だった。浦東にある中国系アパレル企業で働く日本人デザイナーは「この7年間で周囲の環境が全然違う。日本の10年から20年ぐらいが7年間でぐっときた感じ」と感想を語る。上海万博はそれ自体の集客力や経済効果とともに、交通網の整備により中国内の流通・サービス業の発展も加速させる。
 日系の繊維・アパレル・小売業はこの好機をどう生かすか。上海万博日本産業館の代表で総合プロデューサーも務める堺屋太一氏は助言する。「流行を作ること。大阪万博の時はカジュアルを提案し、それに乗ってきたブランドは一世を風靡(ふうび)した。上海万博では日本がリードしてベターゾーンのファッションを作り出し普及させることが大切。“ベターライフベターシティー”という上海万博のコンセプトにも合致する」。

2010/01/28
 「ファッションビジネスは消費者に始まり消費者に終わる」。尾原蓉子IFIビジネス・スクール名誉学長が約40年前に米国で学んでいたとき、こういわれたそうだ。当時、日本のアパレル業界は合繊メーカーがリードし、マーケティング部署が花形の時代だった。
 尾原さんによると、価値創造の主要プレーヤーは、70年代はアパレル流通業、80年代はデザイナーやブランド企業、90年代は垂直型小売業へと10年ごとに交代していった。そして、2000年代から生活者の時代に入ったという。
 ファッションの意味も大きく変化した。流行から個人のライフスタイルへ、身に着けるものから信条や共感・エモーショナルなものへ、モノからモノ・プラス・モノだけでないものへ、所有から感動・体験へ。個の時代、モノからコトへ消費のスタイルが変わった。
 だからといって、企業は一人ひとりに合わせて商品を作れない。自分の顧客はどういう個人なのか、典型的な一人をみつけて、その人の価値観を徹底的に調べて対応する。そうすれば、その人と同じような人はたくさんいるはず。顧客志向ではなくて、顧客を真ん中に置く顧客セットニングなのだという。そして企業に必要なのは、ビジョン(夢)、ミッション(社会的な存在理由)、パッション(情熱)だと強調する。

2010/01/27
 最近何人かの経営者から不況を吹き飛ばすためにも中国思想用語の「気」を集めることが肝心だ、ということを聞いた。「気」は「目に見えない自然の働き」と理解しているが、気で景気が少しでも良くなるなら意識して鍛えたいもの。
 JR九州の唐池恒二社長は「九州に気を満ちあふれさせることが繁盛につながる」として、持ち前のユーモアたっぷりの口調で気と繁盛する店や街づくりについて熱心に説いた。
 唐池社長は気を満ちあふれさせるために四つの極意を会得したと言う。一つは動き。空気が動いているところに気は集まり、店や街が繁盛するためにはスタッフや人が動いていることが大事と説く。二つ目は声。明るく大きな声を出すことが元気のもとになる。明るい声を発して動きが素早い店は活気があり繁盛店も多い。
 三つ目は隙(すき)を見せない緊張感。そのためには気づきが必要だと言う。客の存在や行動、心に気づくことがもっとも肝心とか。客を迎える段階から客のことを考える緊張感が気を集める。そして四つ目は貪欲(どんよく)さだという。最後まであきらめないこと。黒字と赤字の違いは「2人の客に入ってもらうか、2人に逃げられるかで決まる」と説く。JR九州が経営する飲食店で8年間右肩上がりの繁盛店を持つが、その原動力が「気」なのだ。

2010/01/26
 今、人気を博している「フォーエバー21」「イケア」で共通しているのは、最初の日本進出はうまくいかなかったことだ。2度目の進出はおそらく、相当用意周到に準備しただろうし、何よりもタイミングが抜群だった。
 あるネット販売会社はもともと製造卸業態だったが、徐々に卸を絞り込み、ネット販売にシフトしていった。急激に変えると卸先の反感を買いかねないと注意も払ってきた。いける、と自信を持った時、販促にお金をかけ、知名度を上げることで軌道に乗せていった。
 テレビ通販を主力とするメーカーは今年から、テレビ局から来る依頼はすべて受けることにしたという。企画・生産、物流、販売、在庫処分にいたるノウハウを確立したことが支えになっている。「他社が消極的になっている今、絶好のチャンスが来ている」というわけだ。
 ただ、多くの企業は悩んでいる。主販路をネット販売やテレビ通販にしていきたいと考えているメーカー、卸はかなり多いだろう。90年代になり、アパレルメーカーがSPA(製造小売業)に転換していったように、10年代はメーカーのネット販売シフトが予想される。通販サイトは無数にあるから、知名度を上げるのは簡単ではない。あらゆる手段を講じつつ、どのタイミングで打って出るか、問われる。

2010/01/25
 全国百貨店の年間売上高が24年ぶりに7兆円を割った。日本百貨店協会加盟企業の09年の総売上高は前年より8000億円近くも減り、6兆5842億円となった。ピークの91年比で百貨店売上高は3兆円以上が消えたことになる。
 「百貨店は、クリスマス商戦の盛り上がりを自らそいでしまった。かつてプロパーのコートが最も売れるのは1月だったが、それもなくなった」。百貨店婦人服の主力取引先の首脳がかつてこう嘆いていた。セール早期化が、季節や歳時記に即したプロパー商品の提案を弱めることにつながったという指摘だ。
 百貨店の月別売上高で最大なのは12月。ただそのヤマは崩れつつある。その傾向は衣料品に顕著だ。衣料品の年間売上高に占める12月の構成比は09年には9%まで下がった。かつては衣料品も12月の売上高が最も大きかったが、期末セールで幕を開ける1月や7月がすでに12月を上回っている。市場規模縮小の中で、セール比率が高い月の比重が増している。
 09年12月は衣料品も1ケタ台の減収にとどまったが、先行したセールの効果が大きい。取り巻く環境は今年も引き続き厳しくなりそうだが、仕入れのリスクを負うことを含め、プロパー商品で毎月新しさを提案するという基本に、百貨店は改めて立ち返る必要がある。

2010/01/22
 上海YKKジッパーの臨港工場開業式が先週行われた。同工場の外壁には淡いトーンの大気浄化機能タイルが張られている。このタイルは雨が降ると掃除がいらないだけでなく、ポプラ980本分の大気浄化効果があるという。YKKの吉田忠裕社長は「この20年間で環境対策が段々重要な問題になっている。臨港工場は、環境配慮型の象徴的な工場。製品や製造プロセスが環境に配慮されているかどうかが大切である」と強調した。
 20日に行われた上海国際博覧会日本館の展示概要発表会でも、環境問題への対応が大きなテーマになっている。特に20年の未来都市「ゼロエミッションタウン」では、発電床や発電窓など20程度の最先端環境技術が紹介されるという。
 経済産業省の片瀬裕文大臣官房審議官は「水資源問題対策の環境技術などを含めると今回初公開の技術が相当数ある。最先端技術だけでなく、技術だけでは解決できない問題を解決に導く人々のつながりと活動も紹介したい」と語った。
 ともに地球環境問題の克服に意欲的に取り組んでいる。ゼロエミッションタウンの映像を見て、では20年の未来都市でファッションはどうなっているのだろうかと考えた。その形を繊維・ファッション業界はどのように描くのだろうか。

2010/01/21
 最近は山に行く若い女性が増えるなど登山が注目されている。中高年が手軽にできるスポーツとしても人気が高いが、それにつれて増えているのが遭難。多いのが道に迷ったり、転落などの事故。山ではどんな低山であろうと、転べば死につながる可能性がある。
 クライミングインストラクターでガイドの菊地敏之氏は「“危険”が最も危険なのは、その危険を察知できないことにある」と著書の『最新クライミング技術』で述べている。何が危険なのかわからない、危険をシミュレーションできない、危険なことを危険なことだと考えられないことが問題と指摘する。
 これは企業の経営にもそのままあてはまる。アパレル業界の法律問題に詳しい早川明伸弁護士は「まずリスクがあると気づくこと、とにかく事前にリスクを発見しておくこと。それで80%は回避できる」と話す。契約書に捨て印を押したがために数字を書き換えられ、倒産したケースがある。捨て印を押せば自由に書き換えられると知っていれば、捨て印など押さないはずだ。
 5000人以上の個人情報を持つと個人情報保護法の規制をうける。これぐらいの会員を持つ小売店はいくらでもあるはず。もし情報漏えいが起きれば企業は信用を失う。経営者は常にリスクを頭に入れておかないといけない。

2010/01/20
 「今、大変な順風の中にいます」と、ルミネの花崎淑夫会長は先ごろ開かれた賀詞交換会であいさつした。日本経済は出口の見えない状況にある。多くの経営者は「逆風」を口にする。
 消費者は心の豊かさや意義ある生き方を求め、背伸びをやめて賢い身の丈消費に回帰している。ラグジュアリーの縮小やファストファッションの台頭という環境に、消費者は「等身大+α」の真の価値を求めていることも確かだ。ルミネにとっての「風」とは、顧客が求める豊かさや意義ある生き方への期待や要望ということだ。ルミネは一貫して等身大+αの消費を提案して支持を得てきた。「順風」と映る理由はここにある。「だからこそやるべきことはたくさんある」と花崎会長。
 心の豊かさの提案にはCS(顧客満足)のたゆまぬ追求が欠かせない。SC間の情報交換や交流・研究の場であるCSトリニティも1月で5周年を迎える。CS向上に大きな足跡を残し、参加SCからの評価も高い。
 「逆境を好機に」と、きょうから「日本ショッピングセンター全国大会」が横浜で開催される。ファッションビジネスの発展に大きな役割を担うSCが、逆風に立ち向かい新たな時代を築くための大会になる。顧客に心の豊かさや意義ある生き方をSCがどのように提供できるか。

2010/01/19
 今回のJFWインターナショナル・ファッション・フェア(JFW‐IFF)で印象的だったのは、百貨店バイヤーの来場が急増したことだ。「こんなに百貨店の人がブースに来たのは初めて」という出展者も少なくない。
 もう一つ出展者が驚いたのは、百貨店関係者の態度。これまでは上から目線だったが、熱心に商品を見るとともに、姿勢が低いのだという。低くなったのは納入掛け率だけではないですね、と笑う経営者もいる。
 大丸が百貨店の構造的弱点の改革に着手してから、劇的に百貨店が変わり始めたことをアパレル、雑貨メーカーが感じ始めた。大手アパレルメーカーがようやくSC販路を本格的に開拓しようとする一方、SC育ちのブランドはいっせいに百貨店に目を向けている。象徴的なのはヤング向けブランド。百貨店がこぞってヤングを強化するのは、80年代のDCブランドの時以来。
 あれから20年以上が経ち、ようやく立地の良さ、規模の大きさ、良質な顧客、さまざまなサービス機能が生かされる時がきたというわけだ。あるブランドは「百貨店は駅ビルより少しくらいなら(不動産コスト)が高くてもいい。リスペクトフィーと考えている」と話す。
 今度は駅ビル、ファッションビルが、どんな戦略を取るのか注目される。

2010/01/18
 高島屋大阪店は3月に2万2000平方メートル増床、売り場面積は7万8000平方メートルとなる。大丸心斎橋店が昨秋、増床を機に値ごろなヤング向け商品導入で話題を呼んだが、高島屋は改装で「特選衣料雑貨を始め百貨店らしい上質な品揃えを前面に出す」考えだ。
 大阪地区百貨店の激烈な競争が幕を開ける。梅田地区では11年に大丸が増床、三越伊勢丹ホールディングスが新店を開業。12年には阪急百貨店梅田本店の建て替えが完成する。梅田地区だけで、阪急の建て替え工事前と比べ、百貨店の売り場は約9万7000平方メートルも増える。
 14年には近鉄百貨店阿倍野本店が、建築中のタワー館(仮称)を含む本館を今の約2倍の10万平方メートルに増床。これによって大阪主要地区の百貨店の売り場は計1・7倍近い規模に。
 売り場の過剰感はかなり強まる。三越伊勢丹HDの石塚邦雄社長は新店を「西の文化の拠点と位置づけ、美術展もしっかりやる」と意気込む。阪急阪神百貨店の新田信昭社長は梅田で、「文化的側面と百貨店業態のありかたをクロスオーバーさせる」と強調する。高島屋は11年までの全館改装で美術を「再強化」するという。
 物販の拡大だけでは価格競争による消耗戦は避けられない。文化やコトを切り口にした独自性の発信が重要になってくる。

2010/01/15
 新華網によると、「CNNアジア市場」のチャンネルに昨年11月23日から6週間「中国製造」(メードインチャイナ)の30秒間CMが流れた。「中国製造、世界合作」(メードインチャイナ、世界協力)をテーマに、例えばCMの中では運動選手が履く中国製の靴は米国のスポーツ技術を融合させた高品質な商品であることを紹介し、海外での中国ブランドの認知度向上をめざしている。
 CMを制作したのは、宏盟集団傘下のDDB国安広告制作公司。制作には中国商務部が支援し、中国広告協会商会、中国商務部機械電子商品進出口商会、商務部軽工工芸品進出口商会、中国紡織品進出口商会も協力した。中国政府がソフトパワーをPRするために海外向け広告にかかわるのは初めてのこと。将来の発展に向けて、長期的な宣伝を実施するものとみられる。
 「中国製造、世界合作」の流れがさらに強まるとすると(1)中国企業の海外ブランドや海外企業の買収や中国ブランドの海外進出が強まる(2)中国繊維製品への日本の技術やデザイン力の融合が進む(3)中国内販売を拡大する日本企業の中国小売業との協力が広がる、といった展開が予想される。
 となれば、日中連携による「世界ブランド」の創出も、実現可能なものになるのではないか。

2010/01/14
 アパレル・雑貨のBtoB(企業間取引)サイトを運営するラクーンには「他力本願王決定戦」という社内コンペがある。小売店がネットを通じて商品を仕入れることができるサイトなので、会員になっているメーカーや小売店からは、いろんな要望や不満がアンケートで寄せられる。これを社員に1人1枚ずつ割り振っていき、解決策を競った。
 解決のスピードや内容を問うのはもちろんだが、もう一つの評価基準が「いかに他人の力を活用したか」。だから他力本願王なのだが、最初は「自分の仕事が増える」と社員はブーブー言ったそうだ。
 「最近の若い人は他人に頼れない傾向がある」と小方功社長。借りができるのが嫌なのか、力を貸してと言えないし、年齢の違う人と接するのが苦手。「マネジメントとは他人の力を使いこなす能力」のはず。コンペを行うことで「これは社内の誰が得意なのか」と尋ねるし、社内の全員が他人の能力に気づくようになる。1人だと1週間かかることが、1日でできることもある。
 社長がこうしたねらいを語ったことで社内に浸透していった。結果、意外な人が優勝したが、その理由は「社外の人まで巻き込んだ」こと。優勝者には賞金と有給休暇が与えられた。昨年夏から始まった制度だが、「年1回続けていく」と話す。

2010/01/13
 業界団体や企業の賀詞交換会で、企業トップとの会話に必ず景気の悪さ、企業業績の落ち込みが話題に上る。経済悪化の二番底やデフレが進む懸念など明るい材料に乏しいことも事実で、こうした中での新年だけに経営トップから明るい話題を聞くのも無理な注文かもしれない。
 「国家のビジョンを示さないことが政治混迷の根っこにある」と、このところ多くの政治、経済評論家は言う。日本経済の成長を制約する多くの課題が山積しており、消費者が“巣ごもり”状態でじっと我慢しているのは先行きの見通しが立たないからである。縮こまりを緩めるには先行きに希望が持てるようなビジョンとそれに基づく諸政策を示すことだ。
 企業にとっても同じことが言える。小売業も大きな課題に直面しこの壁を乗り越えられるのかどうかさえ予測できない状況にある。新年を迎えて企業トップの今年の抱負や事業の方針が指し示されているが、社員や関係者に先々を期待させるような明るい話はほとんどない。足元の暗さに火をともす程度か、あるいは総論的な話に終始しているように思える。
 大事なのは、先行きのビジョンをきちんと示すことだ。大きくパラダイムが変わった時代に、社員や関係者を元気づけるような経営が求められている。

2010/01/12
 日本百貨店協会によると、今年は会員企業257店のうち33店が元日から営業した。前年までは2日からの営業だったが、今年から新たに元日に営業した店は5店。厳しい環境下で少しでも売上高を底上げしようと元日営業に踏み切る店舗がじわりと増えつつあるような印象も受ける。
 「運動会の翌日は売り上げも上がった」。百貨店協会が昨秋、営業時間短縮を主題に仙台市で開いた懇談会でこんな発言があったという。懇談会には百貨店の幹部や労働組合の代表らが出席。発言は、かつて休業日を利用して開いた社内の運動会のこと。そこで気分転換して英気を養い、翌日の業務に臨む元気な姿が目に浮かぶようだ。仙台のある百貨店の首脳は、2日連続の休業日があったころ、部署ごとに企画した1泊旅行が社内の連帯感を涵養(かんよう)する役割を果たしたと振り返る。
 厳しい中で迎えた今年の百貨店の初売りだが、初日はにぎわいを見せ、売り上げが良かった店も多かったようだ。しかしその勢いも徐々に沈静化しつつある。
 「月末で締めると元日営業のプラス効果はなく、従業員の士気が低下した」。かつて元日営業をしていた店の幹部がこう述懐するのを聞いたことがある。昔に戻ることはできないが、年の初めは百貨店が総営業時間を再考するいい機会かもしれない。

2010/01/08
 2月開催のバンクーバー冬季五輪、6~7月開催のサッカーワールドカップ南アフリカ大会と並ぶ、今年の世界的イベントの一つ上海万博が5~10月上海市で開かれる。来場者目標は7000万人で、入場券の前売り枚数もすでに1400万枚を超えた。上海万博事務局は上海万博の入場券のうち連休などを対象とする「指定日」は前売り販売のみとする方針を明らかにした。混乱を避けるため来場者を事実上避けるのが目的。上海万博の日本館も昨年末に完成している。
 元日、上海梅龍鎮伊勢丹は2階を改装オープンした。中国の百貨店では初めてのビューティー&リラックス売り場や靴の修理工房を創設したことなどが特徴。3月にはグランドオープンの予定で、上海万博への態勢も整う。上海万博期間中は「中国にない都市型百貨店スタイルを提案する」と同時に、日本の経済産業省や自治体と連携して、上海万博の日本館で開催される自治体イベントの第2会場として6階で物産展にも協力する。
 今、日本は「元気がない」という声をよく聞く。とすると、元気の出る場所でビジネスに挑むのも一手ではないか。元気の出る流れに乗って、元気をもらう。ただし、やみくもに飛び乗るのではなく、独自性を保ちつつ、関係先との連携も密にしながら。

2010/01/07
 とうもろこしや砂糖キビからバイオエタノールが作られることはよく知られている。ガソリンと混ぜて車の燃料となることから、バイオエタノールを奨励する国もあり、農産物価格高騰の原因にもなった。あまり知られていないが、綿繊維からもバイオエタノールを作り出すことができる。
 とうもろこし1トン当たりから作れるバイオエタノールは416リットル。これに対して、綿繊維からは718リットル作れるという。生産効率はとうもろこしよりも高く、本来食料になるものを転用するという問題も起きない。
 日本では年間約210万トンの繊維製品が焼却または埋め立て処理されている。このうち6割が綿製品だとすると、約54万キロリットルのバイオエタノールが生産できる。シンクタンクの試算によると、これを現在の取引価格で換算すると約514億円になる。ゴミの山が宝の山に変わるという夢のような話で、日本のエネルギー事情にも貢献する。
 CO2の削減効果は約30万トンになり、排出権取引価格に換算すると約126億円。合計すると約640億円にもなるという。問題はこうしたリサイクルのルートが確立できるかどうか。衣料品の廃棄量は現在、年間約136万トンで、そのうちリサイクル・リユースされているのは約30万トンに過ぎない。

2010/01/06
 順調に成長してきたSCも今年は正念場の年になりそうだ。本紙4日付にあるように、今年の新規開設は激減が予想され「90年以降で最低水準」となりそうだ。テナント企業は景気の先行き不透明から出店に慎重になって不採算店の閉鎖などを急ぐ。足元をしっかり見据え体力を温存しようという狙いもあるだろう。
 ディベロッパーも空き区画の増加に「かつて味わったことがない」危機感を募らせる。もっとも年に60カ所前後から100カ所近くの新設を続けてきただけに、「SCバブル」という言葉も生まれ、オーバーストアへの警戒感が強まっていた。
 しかし、SC増大でファッションビジネスが大きく成長してきたことも事実。ディベロッパーとテナントは大家と店子の関係以上に、新たな「結束関係」を創造しなければならない。“巣ごもり”の体力温存では先が開けない。
 空き区画を生かして次代につながるブランドやショップを生み出す絶好の機会でもある。資金力は乏しいが、意欲的に新市場を開拓しようとする者も少なくない。足元をしっかり見れば材料はたくさん転がっている。新市場開拓に意欲的な人や企業とディベロッパーが力を合わせなければ、消費者を豊かにする“宝物”を掘り当てることはできない。逆境こそ知恵の出しどころ。

2010/01/05
 昨年末2人の若手経営者に会った。どちらも創業オーナーで、業界に新しい風を起こそうと新しい手を打ってきた。その2人が全く反対のことを話すのが気になった。
 1人は「発展途上としての日本マーケットは終わった。成熟市場になり、伸びしろがほとんどなくなった。グローバル企業が世界的仕組みでファンを獲得するようになり、新人がデビューしていきなり成功することも難しくなった」と話す。
 もう1人は「ファストファッションでは絶対に買わないという層は必ず存在する。時間をかけて作った価値は人を通して伝わるし、人は仕組みでは動かない。だからこそわれわれの役割がある」という。
 09年はファストファッションに引きずられるように、業界全体が価格に走った。本来正価で売るべき時期に値下げしたり、他社に負けまいと値下げ幅を増やしたり、特に09年11、12月の店頭は異様な光景となった。その結果、客数が増えることなく、客単価が下がった分、売り上げが落ちるということになった。
 もちろん消費が凍り付いている状況を根本的に打破するには、国政レベルでの改革が必要だ。それにしても今年は、腰を落ち着けて価値あるものを次々生み出す努力が一番必要だと思う。消費者は店頭でもネットでも、一点ずつ吟味するわけだから。

2010/01/04
 毎朝、インターネットで会議を聞いて商品を作っている若手デザインチームと話して、改めて確信した。「好き」「情熱」こそ、時代を切り開くと。
 デザインプロジェクトチームのMILE(マイル)は毎朝6時半から7時半までスカイプで会議を開いている。メンバーは32歳の男性3人。筑波大学の同級生が在学中だった99年に結成。卒業後は全員が副業で活動してきたが、インテリアやデザイン雑貨の世界では海外からも注目される存在。活動を広げた一昨年からは並行して5、6件を手掛けるようになったため、1人が独立、他の2人は副業のまま。
 東京、大阪の3カ所をつないだ早朝ミーティングは毎日開催が基本。「学生時代の部活と同じ」と土日も欠かさず開いている。プロジェクトの中には一度も顔を会わすことなく、ミーティングだけで完成した商品もあるという。「本業は妥協や調整の連続。でも、こちらは何を作りたいか、その議論が楽しい」と。
 彼らが作り出した年20を超える作品の説明を聞き、次の構想を語る表情を見て、思わず熱くなった。「好き」を突き詰めると「唯一無二の商品」が生まれ、それが“ニューノーマル”となって次の時代を築く。
 好き、情熱は年齢が上がってもあせることはない。それを奮い起こせば、市場は変わるはずだ。

2010/01/01
 繊研新聞90年1月1日号の「繊維・衣料・小売業界100人アンケート」の見出しは「景気拡大基調維持し90年代入り」「衣料消費も高水準で推移」だった。90年はバブル景気の真っただ中。高級品が飛ぶように売れ、多くの繊維・ファッション企業の業績は増収増益。経営トップの表情も明るかった。
 平均株価の最高値は89年12月29日の大納会(最終日)の3万8915円。しかし、90年1月4日の証券取引所の幕開けは、いきなり下落。それからバブルはしぼんでいった。企業の好業績は91年度まで続くが、景気そのものは月を追うごとに下向き、92年度以降はバブルの後遺症に苦しんだ。
 今年の衣料消費も大勢は悲観的だ。しかし、昨年後半からファストファッションにはない、良質のファッションを市場で売ろうという動きが出ている。この動きに同調し、新しい企画、ブランド、売り場を作ろうとする流れは大きなものになりつつある。
 ズルズルと流れに身をまかせて長い不況を招いたのがバブルの教訓だとすれば、今こそ好転への兆しを読み取ることが大事ではないか。作り手、売り手が新しい商品を生み出すという強い意欲を見せなくては、消費者にその価値が伝わるはずもない。繊研新聞は業界に問う。「ファッションは燃えているか」