繊研新聞掲載のコラム

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め・て・みみ/2010年02月

2010/02/26
 本間ゴルフが中国企業の傘下に入ることになった。ウッドクラブではパーシモンで世界に名をはせたが、メタルの流行に乗り遅れたこともあって05年に民事再生法を申請。それでも「ホンマ」ブランドは不滅で、値崩れしない人気を現在でも誇る。
 中国系企業に買収された小売業の先輩は、家電量販店のラオックスだ。後発企業に競り負けて大量に店舗を閉鎖し、今は秋葉原に経営資源を集中して、中国人観光客にきめ細かい接客サービスを施している。さらにこのノウハウを中国に導入するのが、買収した蘇寧電器の狙いでもある。
 家電業界では、今もさくらやの会社清算とベスト電器の店舗閉鎖、ベストの筆頭株主であるビックカメラの店舗引き受けなどと、めまぐるしい動きが続く。ヤマダ電機を対抗軸とする一段の業界再編が予想されるが、ラオックスは一歩抜け出し独自の道を歩み始めたわけだ。
 撤退店跡の多くを家電量販店にゆだねた百貨店にも、こうした道が開ける可能性がある。中国では、まねができない上質なサービスを移植。ラオックスを買収したのと同じ動機で、百貨店に投資する中国企業が出てきても不思議ではない。
 春節商戦で見せた百貨店人気の底力。資本注入はともかく、ブランド力はホンマ同様に健在であることを見せ続けてほしい。

2010/02/25
 トヨタ自動車の米国での大規模リコール問題で、とうとう豊田章男社長が米下院の公聴会出席を余儀なくされた。現地法人のトップの出席で乗り切ろうとしたが、かなわなかった。問題発覚後の対応策も日本を代表する企業としてはお粗末な限り。
 本来の品質にかかわる問題もトップメーカーとしてのおごりを強く感じる。販売拡大への対応が最優先され海外生産を拡大する過程で、使用する部品も現地調達を増やしていった。報道によると「トヨタ基準」を満たせば、仕様の異なる部品も搭載していったとのこと。結果が大規模リコールにつながった。
 工業製品といえども、生産工場、極端に言えば同じ工場でもラインが違えば、品質に微妙な差が出ることがある。ましてや海外工場、しかも仕様が異なるものとなれば、一から製品を設計し直すぐらいの覚悟が必要だったのではないか。
 繊維業界でも高コストの国内生産を終息させ、海外に生産を移転する動きが進んでいる。同じ原料、同じ工程で作っているつもりでも、油剤やのりの種類や量で原糸や織物の物性は微妙に変化する。これが生地を染めた時のムラになったり、糸の巻き量や巻きの形態も異なったりする。安易に海外移転するだけでは、事業は守れない。下手をすると自社の看板も傷つけることになる。

2010/02/24
 春闘の時期を迎えた。繊維・ファッション関連の組合が所属するゼンセン同盟は、賃金が目標水準に到達している組合は、いわゆる賃金体系維持分である定期昇給の確保を要求するとしており、下回るところは定昇に加え、格差を埋めるためのベースアップを要求するとしている。
 ベースアップよりも定昇の確保を優先した形。企業側は、雇用の維持を優先し、定昇の見直しを示唆しているところもある。最近の賃金制度をみると、成果主義の導入などもあって春闘の役割も変わりつつある。成果主義の下では、人事評価の結果で昇給額を決めるケースも多い。そこでは、最低保障額の引き上げなどの要求はあるにしても、定昇やベースアップはなじまないという企業側の考え方も。
 しかも、最近はベースアップを凍結してきたところも少なくない。仮に、ボーナス支給額が低く抑えられれば、定昇のない会社では、若い社員が先輩社員の生涯賃金に追いつかないといった事態も生まれかねない。
 労働組合にとっては派遣やパート、アルバイトなど非正規社員の広がりによる格差や貧困といった問題も大きな課題になっている。その一因になったともいわれる労働者派遣法の改正も、今の通常国会で予定されている。春闘における労働組合の新たな役割、機能の強化も問われているようだ。

2010/02/23
 閉塞(へいそく)感を突破するためか、幅広い分野・市場で業際・業態を超える必要性が強調されている。
 経営戦略で良く目にするのは「インテグレーション」(統合)や「コラボレーション」(協業)だ。情報システムの世界で使われる「エンベデット」(組み込む)は従来はハードとソフトの結合の意味だが、それが発展して「異質なモノの結合・融合による新しい価値の創造」を指すと、概念が広がっている。
 だが、ファッション分野では協業は目新しいモノではない。すでに市場の活性化を目指して数々の協業が実現されてきた。ただ、既存のコラボはデザイナーとブランド品、ブランド品と有力店、店と店などが主体で、業界の枠を超えたものは少なかった。ところが、今、強調されているのは業際・業態の崩壊という今の時代に適応したものだ。
 一つの業種・業態・分野の枠の中で考えても、次の成長路線は見えてこないということなのだろう。発想を一新するためにも業際を超えた取り組みは有効だ。今後の協業は「環境」や「観光」「食」「農業」、さらに「社会保障」や「教育」などが登場することも考えられる。
 成否は、どれだけ生活者の気分をつかんでいるかだ。その点で時代の風をつかみ、暮らし方ビジネスであるファッションビジネスに対する期待は高い。

2010/02/22
 自宅近くの農地に、白い大きな見慣れない鳥が飛来している。タンチョウヅルだという。シベリアから朝鮮半島に向かう途中で強い偏西風に流されて日本に来たのだろうと専門家は話す。北の国で暮らす鳥が迷い込むほど厳しい寒さが続いている。
 仕掛けてヒットを飛ばしたアパレルメーカーや専門店チェーン、SPA(製造小売業)もあるが、全体的にはコートの不振が目立った。冷え込みの遅れ以上に、適品不足による機会損失が指摘されている。作っていないから奥行きが浅い。売れてもフォローできなかった。
 気象庁は長期予報で暖冬と予測していた。深刻な消費低迷もあって、単価の高いコートにリスクをかけることはできないという空気が広がった。素材を備蓄する機能が弱まっていることに加え、素材から製品まで時間がかかり、店頭の動きを見ながら修正することは難しい。消費低迷と暖冬予想では危険すぎると、どこも手控えた。しかし、この寒波である。予想だけが一人歩きして実体経済に影響を与えた。
 今週からは寒さも緩み、もう1カ月もすれば花見の季節。年に1回、花見で会う友人がいる。開花予想をもとにいつ集まろうかと連絡を取り合う。今年から気象庁は桜の開花予想を取りやめてしまったが、こんな予想なら外れても楽しいのだが。

2010/02/19
 東京メトロ東西線。かつては毎朝のように5~10分遅れていたが、最近になって改善された。人海戦術による乗り降り促進策が奏功したのかと思っていたら、「スジ屋」の存在があることをテレビ番組で知った。
 列車運行表を作成する専門家をスジ屋という。列車に見立てた斜めの線がスジで、何本ものスジを描いて運行管理する。すご腕スジ屋の秘密は、スジは必ず現場で引くという鉄則だった。
 問題が起きそうな駅を訪ねてラッシュ事情を観察。解決策をスジに生かす。見ていてあるディベロッパーを連想した。
 資本が同じ兄弟ディベロッパー。SCの外観だけでは区別できないほど似ているが、テナントによる企業評価はAとC。C評価をされた企業の中堅幹部に聞くと「うちのマネジャーは、売り上げ一覧表だけみてテナントを指導する。あっちは、会社まで訪ねていって話し込む」。見えない現場の違いが、評価を分けた。
 逆に、現場に入り込み過ぎると懸念されているのが、新興ディベロッパーとしての百貨店だ。無類の現場好き百貨店マンは、テナントの商品やMDについ口を出してしまいがち。消化仕入れだったら自社の商品だから問題はないが、賃貸借契約だったら内政干渉にあたる。
 いずれにしても、スジ違いと言われないディベロッパーが求められている。

2010/02/18
 トヨタ自動車のリコール問題が深みにはまってきた。米国ではかつてこんな冗談話があったそうだ。自動車通勤で会社に遅刻した部下が「車が故障してしまって」と言い訳をしたところ、上司が「そんなはずはない。君の車は日本車だろう」と叱責(しっせき)した・・・。日本車が故障するはずがないということから来る「神話」的な話だ。それだけ日本車の「品質」への信頼が厚かった。その日本車の代表選手トヨタへの信頼が揺らぎ始めている。
 昔見たアメリカ映画のワンシーンで、機械が故障した時、カメラが即座に「MADE IN JAPAN」と映すシーンがあったことを思い出す。第2次大戦後、日本の工業品が米国に大量に輸出された。当時の日本品は「安かろう悪かろう」だった。それが、60年代の高度経済成長期を経て、日本の工業製品は世界中で高品質の評価を得ていく。家電、自動車、もちろんその先陣を切った繊維製品もである。
 信頼とその証であるブランドを構築していくことは並大抵のことではない。そのブランド力を維持していくことにはさらに労力が必要となる。そして失われたブランド力を取り戻すにはその何倍もの努力が必要となる。日本を代表する企業として、ブランドが地に落ちる前に適切な対応することが求められる。

2010/02/17
 7月施行の新しい外国人研修・技能実習生制度が、日本の縫製現場にどういう影響を与えるのだろうか。ある受け入れ機関の予想では、工場の労働力確保がままならず、廃業する工場が出てくるかもしれないという。今回の改正では、中小企業団体などの事業組合が受け入れ機関となる団体監理型の場合、従来なら常勤職員に入れていた2年目、3年目の実習生は常勤者数から除外されるため、受け入れ人数が減るからだ。
 1年間で最大限受け入れ可能な研修生・技能実習生の数は、常勤職員301人以上でその5%、201人以上300人以下で15人以内。50人以下は3人以内となっている。実習生を常勤者としてカウントしなければ、実習生に頼っていたところほど、労働力不足になりかねない。
 常勤者数を増やすためにパートやアルバイトを正社員化すれば、コストアップにつながる。一般的には、在留資格「技能実習」の創設で、従来の研修手当から最低賃金法の適用に変わるのも人件費負担になるといわれているが、それ以上に労働力の確保を懸念する声は多い。
 改正は、一部で低賃金労働者として外国人研修生を扱っていたなど人権問題にもなっていただけに、法的保護は当然。中での労働力不足は、日本の縫製現場の現状を象徴しているのかもしれない。

2010/02/16
「生活」や「暮らし」という言葉を使うときには多くの形容詞が付く。「甘い生活」「豊かな生活」「おしゃれな暮らし」といった具合だ。かつて「おいしい生活」とうたったのは西武百貨店だったが、現在の生活観や暮らし方を表す修飾語は何が最適なのだろう。
 デザインとライフスタイルを考える会で議論になったテーマである。環境問題を意識する人は「もったいない生活」というキャッチコピーがいい。大量生産大量消費に疑問を感じて暮らし方を変えた人なら「不便な生活」だろうか。先行きの見えない毎日に自分を見失わないようにしたいと願う人は「丁寧な生活」。ブログやSNSを駆使する今どきの若者たちはさしずめ「つながる生活」といったところか。
 一方、日本で5日に1人のペースで出ている餓死者には「苦しい生活」などという余裕さえない。豊かな社会があるはずなのに何とも悲しい現実だ。
 ファッションビジネスが発展する土壌は「豊かな生活」「平和な生活」であり、形容詞が多いほど、発展の条件が広がる。ニーズは細分化するので作り手や売り手にとっては厄介だが、その中に時代の風や消費者の気分を読み取ってこそ、業績を伸ばすことができる。あなたの店、商品はどんな生活を提案したいのか、形容詞は一致しているだろうか。

2010/02/15
 バンクーバー五輪が開幕した。フィギュアスケート、ジャンプ、モーグル、カーリングなど楽しみな競技は多いが、注目はスノーボードハーフパイプの国母和宏選手だ。選手団出発時の腰パンやインタビューでの態度に大人たちが眉をひそめた、あの選手だ。「自分のドコがいけないんスか」とでも言いたげな悪びれない表情には、今時のおとなしい草食系男子にはないものがある。見掛け倒しでなく、ブーイングを沈黙させるような結果を出してほしい。
 ただ、ズリ下がったスラックス、緩んだネクタイ、外に出したシャツを国母選手の個性表現と弁護する声もあるが、ファッションとしては頂けない。基本のTPOができていない。オリンピックへの出発は間違いなくハレの場。フォーマルに決めてほしかった。
 成人式の男子は2通りだ。すぐに就活に行けるような濃紺のスーツに白のドレスシャツの子か、ショッキングカラーのスーツや羽織袴のちょっとやんちゃな格好の子。初めて大人として認めてもらえる人生のハレの日なのだが、大人のおしゃれで決めている子は本当に少ない。
 ファッション雑誌は着こなしのテクニックは教えてくれるが精神までは伝えない。ファッションを文化として育てるために、根底にある精神や哲学を伝え続ける努力が求められている。

2010/02/12
 「最大の課題は素材を探すこと」とは、ある産地企業の経営者の弁。素材の種類を問わず、国内の大手素材メーカーの生産の縮小、撤退が産地企業の物作りはおろか経営にも重大な影響を及ぼしかねない事態になっている。
 繊維製造業は原糸、原綿から糸の加工、織り、編み、染色、縫製、検品の機能分担の中で、労働集約的要素が高い後ろの工程から順に、海外移転が進んだ。そしてリーマンショックは、原糸生産メーカーの多くに最後の決断を迫り、紡績業はナショナルミニマムを割り込む水準までシュリンクし、合繊も40年以上にわたって続いてきたポリエステル8社体制が崩れ去った。
 大手の素材メーカーは海外で低コストを追求することや非繊維に軸足を移すことで収益力を回復し、生き残ることはできる。しかし、産地に立脚し、地場の経済や雇用の基盤となっている産地企業にとっては、海外移転で企業を守るという選択肢は大きな意味をなさない。常に生き残るか、転廃業するかの厳しい経営を強いられている。
 縦、横、斜めの様々な連携、海外糸の調達ルート確保、狭いながらも販路の開拓など生きる術(すべ)を模索する。淘汰(とうた)はあるだろうが、長年業界を支えてきた産地の企業を守れなければファッションビジネスも生き残れないと思う。

2010/02/10
 あるディベロッパーのつぶやきだが、大阪市内の一等地の商業施設でも、思い通りのテナント誘致が難しくなっているという。大阪の場合は、百貨店などの新設・増床が出揃う“11年問題”を抱えているうえ、景気の後退が出店投資にブレーキをかけているというのだ。
 大阪では市内の一等地にある中央郵便局の局舎建て替え問題で、日本郵政が昨年5月に新ビル開業時期の先送りを明らかにした。40階建ての超高層新ビルを12年に開業する予定だったが、テナント不足を理由に時期は遅れる見込みという。民間調査機関による大阪ビジネス地区の1月末の平均空室は10%台半ば。新築ビルの影響もあるが、上昇傾向は続いており、テナント誘致競争は厳しさを増す。
 商業施設の場合は、銀行の貸し出し姿勢もテナントの出店に待ったをかけている。ファッション関連より飲食関連が新規出店にはより慎重という。飲食店の場合、厨房などの設備投資の法定耐用年数は長く、初期投資もかかるからだ。
 商業施設からすると、物販だけのテナント構成では、顧客の滞留時間を含め、施設の価値、魅力といった点からも不十分。飲食店は欠かせないが、ファッション関連に比べ費用のかかる飲食店にとっては銀行の姿勢も無視できない。不況下ではリーシングも金融機関頼みか。

2010/02/09
 友人の栄養士に無農薬・有機栽培の食材を使ったメニューをリクエストしたところ「体に悪い」と一蹴された。無農薬・有機栽培の食材が体に悪いわけではないのだが、そうした食材は生産量が少なく、流通量が不安定で、時期によっては入手できる種類が限られる。食材が片寄ると、栄養も片寄る。健康を維持するには多様な食材から多様な栄養素を摂取しなければならない、と。多様性こそ健全な食の根源なのだ。
 COP10が10月に名古屋で開かれる。温室効果ガスの排出量削減を巡って各国が論議した昨年のCOP15に対し、COP10は生物多様性条約の締結国が集まって、多様な生き物や生息環境を守るための国際的な枠組み作りを話し合う。食物連鎖と生態系を維持するには、多様な生物が繁栄していなくてはならない。環境の健全性は生物の多様性が守られていることが根本にある。
 国内の製造業に目を転じると、産地の分業構造の崩壊が迫っている。紡績や撚糸、糸染めに始まり、子機、出機と呼ばれる賃織り、補修など、多くの業種で転廃業が続く。糸から生地になるまでの長い連鎖が途切れてしまった産地は多い。
 国内製造業の品質も技術も、分業の多様性の上に成り立っていた。その多様性が失われるとき、健全性も損なわれる。

2010/02/05
 本紙連載中の「甦(よみがえ)れファッションビジネス」。イオンモールの村上教行社長に「今の若い人は、そもそも百貨店を知らない」と言われた。共に“ポスト百貨店”を目指しているだけに、牽制(けんせい)意識もあるかと半信半疑でいたが、後輩記者と話しているうちに、自分の思い込みだと痛感させられた。
 九州出身の記者は、遠くの百貨店へ行くより郊外SCの方が便利と、ギフトも含めて郊外SC一辺倒という。
 東京都内に住んでいた子供の頃、日曜日は都電で伊勢丹本店に買い物に連れていってもらうのが楽しみだった。お目当てはVANブランドで、手に入れたときの興奮は、今でも鮮やかに甦る。百貨店は郷愁である。
 そんなに思い入れがあるのなら、ずっと百貨店を利用しているのかと後輩たちに質問された。答えは「ノー」だ。陳腐化したVANに飽きて、郊外部に引っ越してからは、専門店を使うようになった。そのうち自立して可処分所得は低くなる。自分で支払って初めて百貨店は「高い」と思い知った。
 考えてみれば、郷愁とは過去に思いをいたらせること。継続して百貨店を利用していたなら、郷愁にはならなかったはず。百貨店閉鎖で、同じ思いをしている人がいるに違いない。

2010/02/04
 1月28日、日清紡ホールディングスが島田事業所の紡績工場の閉鎖などを発表した。これによって同社の国内紡績設備は1万2000錘、織機は20台、連続漂白加工設備は月産25万平方メートルにまで縮小する。10年ほど前まで紡機47万錘、織機は1500台ほどの国内紡績トップメーカーだったが、21世紀に入り急速に生産設備の縮小が進み、国内設備は技術開発拠点に特化することになった。
 同社に限らず紡績の工場閉鎖、設備縮小の動きが止まらない。昨年もクラボウやユニチカが工場閉鎖、設備縮小をしたばかり。今や、国内の運転可能な紡績錘数はかつての大手紡績1社分に満たないほど減少した。
 「日本の紡績産業はもはや経済単位として成り立たなくなった」と日清紡首脳。産業としてのナショナルミニマムを割り込んだとの認識を示したものだ。それはボリューム品だけにとどまらず「特殊品が残るかというと、それすら難しい」とみる。
 09年の国内綿糸生産量は前年比30%減の4万7000トン程度となる見通し。これは46年をも下回り、戦後最低の水準。
 紡績だけが例外ではなく、日本の繊維製造業は今まさに存亡の危機を迎えている。繊維産業、ファッションビジネス、そして国を挙げて今この問題を考え、対策を打たないと手遅れになってしまう。

2010/02/03
 問屋無用論、中抜き論というのは、今に始まった話ではない。メーカーや小売りが巨大化する中で、両社の直接取引が増え、結果的に問屋が排除されるというものだ。その中抜き論をスポーツ業界で改めて耳にする。海外有力ブランドによる代理店の絞り込みがきっかけ。
 スポーツ業界は、大型店の台頭による地域密着型専門店の疲弊が進んでおり、メーカーと直接取引する大型店のシェアが高まっている。市場も低迷。人口減や少子高齢化、若者のスポーツ離れなど構造的な問題を抱えている。そのため、売り上げ増は見込めず、デフレ圧力の中で単価は下がり気味。流通の効率化は至上命題だ。在庫増、消化率の低下などはメーカー、小売りにとって命取りにもなりかねないだけに、「仲介マージン」に依存する問屋の存在は見直しの対象にならざるをえない。
 もっとも、その中抜き論にこそ問屋の存在意義もあるようにみえる。メーカーの販売代行、小売りの仕入れ代行でもある問屋には金融、物流、情報などの機能が求められる。流通を効率化するには、問屋のこうした機能が生きるはず。決して、仲介マージンを削ることだけではない。
 メーカー、小売りが抱える問題を解決するうえで、問屋の機能を最大限発揮していけば、問屋の存在意義は一層、高まる。

2010/02/02
 今の消費性向の一つには「ヨクヨウ消費」と呼べる傾向があるのではないか。電車やコンビニでの中高生の会話や、居酒屋の隣の席で盛り上がっている若者の話から、そう思った。
 誰かが発した一つの話題に、次々と友人たちがからんで会話が弾み、内容が広がっていく。それが日常のコミュニケーションだが、彼らの会話はまるで盛り上がるためだけにしているのかと思えてしまう。
 というのは言葉のピッチや音量の変化が主体だから。まるで音の濃さ=抑揚を楽しんでいるよう。突っ込みのタイミングや擬音の使い方も重視されている。突然の話題転換もポイントらしい。ともかく過激に進んでいく。過激さを競う消費傾向はファッションや化粧にも見られる。典型例は「盛る」だ。他人との違いを求めて「もっと濃く」、過激になっていく。その変化=ヨクヨウを楽しんでいるように映る。
 ヨクヨウ消費は一見すると消費の退化に思えるが、価格以上の価値を求める消費の一面かもしれない。消費の多様性に応えきれていない供給者が生んでいる現象とは言えないだろうか。ひょっとすると、売り手や発信者から押しつけられる商品や情報に対する消費者の抵抗心かも。
 市場調査だけでなく、日常の何気ない会話の中からも“時代の気分”や消費ニーズは見えてくる。

2010/02/01
 「『等身大OLの店』といってきたが、それだけでは若い顧客に支持される発信性がない。何かに特化して特徴をはっきりさせ、存在感ある店にしなければいけない」。阪急阪神百貨店の新田信昭社長は、有楽町阪急の課題をこう語る。同社は有楽町店で改めて、若い消費者への発信性を強める店作りを進めるという。
 有楽町阪急と軒を並べる西武有楽町店が今年12月に営業を終了する。セゾングループを象徴する情報発信の拠点として84年に華々しく開業したが、90年代以降は効果的な改装ができず、年商はピークからほぼ半減した。
 昨年は西武札幌店が閉店した。西武の札幌店と有楽町店には、若い女性向けファッションに特化し、食料品売り場を廃止したという共通点がある。一方、セブン&アイ・ホールディングスは百貨店の旗艦店と位置づける西武池袋本店のてこ入れを、まず食料品売り場から始めた。
 阪急阪神百貨店もヤングファッション専門の四条河原町阪急の営業を終了する。ある百貨店幹部は「専門業態でも消費者はフルラインの百貨店と同じ機能を期待する」と特化型店舗の難しさを指摘する。百貨店は今後さらに店舗閉鎖などで経営資源を集中させるとみられる。その中で面積の制約がある店舗をどう活性化させるかも焦点になりそうだ。