繊研新聞掲載のコラム

 繊研新聞掲載のコラムです。随時更新しております。(別の月のコラムはコラムのトップページから移動してください)


め・て・みみ/2010年03月

2010/03/31
 4月1日、東京・池袋にルミネ池袋、東京・吉祥寺にアトレ吉祥寺がそれぞれ誕生する。ルミネはメトロポリタンプラザから、アトレは吉祥寺ロンロンからそれぞれ名称とコンセプトを新たにして生まれ変わる。二つの商業施設とも駅に付帯し、街の玄関口に立つことから街のイメージを変えたり、なじむか期待が膨らむ。
 「おしゃれな若いカップルがこれほどいるとは思わなかった」とエチカ池袋に出店する経営者は言う。エチカ池袋が副都心線の池袋駅構外に開業したのが09年3月26日。1年を経過して池袋駅西口に若いカップルが増えおしゃれに変化したことは確かだ。09年11月末にはエチカと地下で連動して地上9階建てのエソラ池袋が開業し、20代から40代の女性が昼夜に渡って回遊する。商業施設の誕生が変化への大きな起爆剤になった。
 池袋駅西口にルミネの参入は競争に拍車をかけることはあるにしても、それまで街にはなかったモノやサービスの提供が期待できる。
 吉祥寺も同じ。アトレは駅と街とをつなぐ「おしゃれな玄関口」としての役割を果たしてきた。「住みたい街」の上位にランクする吉祥寺では、文化・教育の街を背景に大学との連携による文化的なイベントを仕掛ける。
 商業施設が街のイメージ作りに大きな影響を持つ時代になった。売り上げ競争にとどまらず、街作りの視点に期待したい。

2010/03/30
 業界歴56年、ニットにかかわって50年を超えるモードラサの那須健次常務が31日付で引退する。小泉(現・小泉アパレル)で量販店ルートを開拓し、モードラサに移ってからは、専門店向けブランドを育てるなど、ニット業界ではだれもが知る人物である。
 最後の取材の時、「リスクを張らねばリターンはない」「人より一歩先を行き、努力に応じた正当な価格で売ること」という言葉が印象的だった。
 卸売りを主体とするアパレルメーカーの長期低落が続いている。市場環境や消費者が変わってしまったから、昔ながらのビジネスモデルは通用しないと言われる。もちろん、このことを正面から否定するものではない。小売店、消費者に価値を認めてもらえる商品が提供できていない根本問題が大きいのではないか。また、ファッションビジネスの本質は価値ある商品を武器に、市場を開拓することにある。那須さんが業界の後輩に言いたかったのは、そういうことだろう。
 でも、新たな胎動もある。全国のアパレル、小売り関係者の目を東京・恵比寿に集めようと5月、EBISU FESTAが開かれる。期間中、恵比寿各地で展示会が開かれ、街はバイヤーでにぎわい、お祭り状態にしようと、たった一人の男が、リスクを張った取り組みに打って出る。

2010/03/29
 高島屋とエイチ・ツー・オーリテイリングが経営統合で合意したと発表したのは08年10月10日。リーマンショックから1カ月弱で、その影響が百貨店の経営環境を大きく変える直前のタイミングだった。会見では、救済合併の色彩がなく、「とりあえず今、困ることがない」同士が、「次の一手を模索していたときに話があった」と背景が語られた。
 その席上、H2Oの椙岡俊一会長は、阪急電鉄と阪神電気鉄道の統合に伴い百貨店も統合した経験から「経営統合は膨大な作業の塊」であり、進行中の事業計画に支障が出ないよう準備を進めることが重要と指摘。そのため、企業風土の違いのすり合わせを含め統合まで約3年の助走期間を設けた。
 「山でいえば頂上を目指すが、その道筋ややり方が今の時点で一致している必要はない。違いを是として統合に向け作業を進める」とも強調した。
 その後の景気悪化は百貨店に事業計画練り直しを余儀なくさせた。企業風土の違いもあるが、環境の激変が統合に向けた青写真を狂わせた一面もある。両社は基幹店建て替えや増床、新店開業など当面の大事業に経営資源を集中し、成功させることが至上命題だが、その難度は、以前より高い。それを乗り切った先に、どのような事業モデルを独自に築くのか注目したい。

2010/03/26
 上海万博開幕まであと36日。街の話題は日本産業館でキッコーマンが出店する料亭「紫」の1人3000元の懐石料理、27日から登場するLPガスやガソリン・電気両用で走行し万博会場内にも入れる4000台の新型省エネタクシー、上海市内地下鉄全駅で始まったセキュリティーチェック、3月中に開始される地下鉄1日乗り放題チケット(20元)の販売、万博向けオーガニック野菜の販売など。家族・親類・友達に配るため個人で万博のチケット100人分を用意している市民もいるそうだ。
 ボランティアも増えてきた。地下鉄のエスカレーターのかたわらには「右立左行」の看板を持った若者が大きな声を出してモラル向上を呼びかけている。日本産業館のアテンダントには上海外国語大学の学生130人が「自主授業」の一環で参加する。
 上海万国博日本産業館出展合同会社の代表兼総合プロデューサー堺屋太一氏は「日本産業館の工事は計画通り進行している。4月早々にはコンパニオンも入って訓練も始めるので、4月10日頃にはお客さんを迎えることが出来る。むしろ、運営上の規則が決まっていない。問題は荷物の運搬、パレードの規則、大道具の通関をどうするかなどだ」と指摘する。
 期待と未知数を包含しつつ、上海万博の開幕が迫っている。

2010/03/25
 日本のアパレル業界は依然厳しい状況が続くが、世界的には回復の足取りが強まっている。リーマンショック以降の世界同時不況で、昨年夏頃までは非常に悪かったが、「9~10月頃から、まずアジア地域が下げ止まった」と世界のファスナー市場で約45%のシェアをもつYKKは話す。
 米国でアパレル在庫の調整が進んだことから、11月からはボトム、カットソーなどの受注が一気に入った。今年に入ってからは、米国の大型小売店の売り上げが前年を上回り始めた。メーシーズ、サクス、ノードストローム、ニーマン・マーカスも3カ月連続で既存店増収となり、回復の兆しが見えてきた。
 専門店はギャップ、アメリカン・イーグル、エアロポスタルが既存店増収、1年以上減収の続いたアバクロも既存店売り上げが増加に転じた。「09年度はトータルではマイナスだが、前半と後半ではずいぶん様相が違う。今年に入ってさらに足元は強い」とYKK。
 最も厳しいのは日本。アパレル業界は、景気が悪化すると最も早く悪くなり、景気回復は最も遅れると誰かが嘆いていた。バブル崩壊以降、ほとんど好況期を経験したことがない。仕掛けて売れたという成功体験を持たせてあげられないと、店員が自信をなくしてしまうと、ある専門店の店長はため息をつく。

2010/03/24
 繊研新聞社が毎年実施している「ディベロッパー大賞&テナント大賞」で、ディベロッパーとテナント双方に「期待すること」を聞いている。ディベロッパーに対しては「集客力」「明確なコンセプトを基にしたテナント編成」などだ。
 テナントに対しては「接客力」への期待が最も高い。続いて「価格訴求に頼らない」「店長のマネジメント力とスタッフ育成」「ブランドへのこだわり」という順。
 百貨店の閉店やSC化と専門店の導入、ネット販売などSCをめぐる環境変化は著しい。ディベロッパーの中には、集客力を高めるために販促・宣伝手法を見直す動きも出てきた。販促・宣伝費を、改めて効果的、効率的に展開して高い集客力に結び付けようとしている。
 ハウスカードによる割引セールやポイント割り増し付与など、これまで効果的だった手法も開催期間中の前後に客数、売り上げとも落ち込む傾向。しかも、百貨店を含めて多くの商業施設が参入し、バーゲンセールに近い様相になっている。テナントに対する「価格訴求に頼らないで、商品力と接客力で勝負」という期待も今ひとつしっくりこない。。
 多くの消費者は「ライフスタイルに合う身の丈消費」に変化、価格が優先順位ではなくなった。ブランドの価値をきちんと伝える新しい販促・宣伝が求められよう。

2010/03/23
 2月の全国百貨店売上高は前年同月比5・4%減となった。09年12月以降の3カ月累計も5・4%減。24カ月連続減収だが、水準は改善傾向にある。ただ、09年2月は11・5%減、08年12月~09年2月は9・8%減と大幅に落ち込んだ前年との比較であり、依然、状況は厳しい。
 大手百貨店の経営統合が相次いだころ、地方百貨店を含む業界再々編がありうるとする見方が広がった。しかしその後、その気配はしぼんだ。
 「もうひと段階の再編には行きにくい。大手も自分のことに手いっぱいで、どこかと一緒になってさらに大きくなる気はない。まして行き詰まった地方百貨店を救う余裕はない」。ある百貨店の首脳はこう言う。厳し過ぎて再々編どころではないというわけだ。
 天満屋、藤崎など地方百貨店4社が、オンワード樫山と組んで婦人服の共同開発ブランドを立ち上げる。各社の基幹店で販売を始め、初年度売上高は各店1億円を見込む。これは小さい一歩だが、大きな一歩になる可能性を感じさせる。
 4社はすでに、仲間の地方百貨店を増やすことと共同開発商品のフルライン展開を視野に入れる。地方百貨店が独力でシステム構築や商品調達の課題を解決するのは極めて難しい。共通する課題を抱え、ビジョンを共有する同士が手を組む意味は大きい。

2010/03/19
 8日は国際婦人デー(国際女性の日)。この日の午後2時から4時頃まで中国・瀋陽市にある瀋陽伊勢丹百貨では「女性客ばかり」になったという。上海市の百貨店、上海新世界城は6、7日の2日間は深夜12時まで営業、8日までの3日間合計40時間営業で前年(38時間連続営業)並みの1億元の売り上げを達成。北京の当代商城では当日の化粧品の売上高が平日の3倍に当たる百万元となった。各百貨店で売れたのは婦人服、婦人靴、肌着、化粧品など。
 上海の町で聞いたところ、この日女性は会社が休みか半休になり、会社によって100~2000元前後の手当てが出るので「買い物に繰り出す」のだという。男性は女性に花を贈る。「なぜ、男性の日がないのか」と、やっかむ男性もいるとか。
 日本では商機として母の日はある。国際婦人デーは一部の婦人運動の日として認知されているだけ。一方中国では商機として盛り上がっている。女性はもともと買い物好きなのに、婦人デーで休みと「お小遣い」が保障され、買い物をする、お楽しみの日となっている。
 国・地域によって商機は異なること。是非はともかく、世界の女性人口の約4分の1を占める中国の女性が自分の意志でショッピングが出来ることは、ある意味で幸せなことである。

2010/03/18
 上海の久光百貨を先日訪れたとき、ずいぶんと日本のブランドが増えていることに驚かされた。日本の人口が今後減少する中で、海外、とりわけ中国に販路を求めるアパレル企業は多い。そのときにまずトライアルする売り場の一つが久光で、日本ブランドを海外に売り込む経済産業省の委託事業「トーキョーアイ」がコーナーを設けていた。
 現地の日本人駐在員に聞くと、中国ではまだまだ日本のブランドの認知度は低いという。中国で知られているのは「ユニクロ」くらいで、多くの中国人は欧米ブランド、特にイタリアブランド好きなのだそうだ。
 経済発展の途上にある新興国では、そのブランドの商品をもつことがステータスとなるような高級ブランドに人気が集まる。かつての日本もそうだった。しかし経済が成熟段階に入り、ものが行き渡ると消費者の価値観に変化が起きる。ちょうど今の日本がそうだ。
 尾原蓉子IFIビジネス・スクール名誉学長はマズローの5段階欲求説と重ね合わせて、物が不足している経済状況のときは、他人に認められたいと思う承認欲求の段階、物が充足したときは、その上の自己実現欲求の段階に入ると話していた。自分にとって「特別」なものが価値をもつ国と強いブランド力が必要な国では、おのずと方法論も異なる。

2010/03/17
 栃木県那須町の商業施設、那須ガーデンアウトレットを主会場に4月2日から「ナスハク」が開催される。同施設や地元の商工会や観光協会などが集まって実行委員会を組織し、那須、黒磯、塩原地区の観光やレジャーなどの魅力を凝縮した博覧会にするという。しかし、ここまでの道のりは大変な苦労があったようで、SCが地域貢献活動でますます重要な役割を担っていることを改めて感じさせる。
 これまでは地元観光協会同士は連携・連動にあまり意欲的でなかったようだが、08年7月の開業を機に首都圏などから観光客を呼び地域活性化しようと立ち上がった。施設を運営する西武プロパティーズの奮闘もあった。
 ナスハクでは地域の土産店や飲食店など約50店が出店するバザールや那須のホテルに協力を仰ぎ、施設内で結婚式も執り行うという。こうした地域ぐるみの話題作りが地域活性化の目玉になる期待がある。
 多くのSCが様々なイベント開催などで街や地域にかかわりを持ち、社会的責任を果たそうとする姿が全国的に広がっている。価値を上げ、地域に根ざしたSCとして消費者に支持されるには、当たり前だが、地域貢献活動に真剣に取り組む必要がある。そうすることで「わたしたちのSC」という最高の呼称がつく。

2010/03/16
 10年以上前、アウトレットモールを計画していたディベロッパーに聞いたことがある。「どうして、わざわざ平日でも渋滞する道路の近くにつくるんですか」と。
 すると、「あえて道が込むところを選んで決めたんですよ」という答えが返ってきた。詳しい理由は教えてくれなかったが、渋滞するようなところだとにぎわい感が漂い、「せっかく来たのだから、ゆっくり見てたくさん買おう」「空いていそうな平日や時間帯にも行ってみよう」と、消費者が考えることもあるのだろう。
 あるアパレルメーカーの展示会はバイヤーと営業担当者でいっぱいだった。会場が狭いので、通路を通るのも人に触らないように気をつけねばならないほどだった。聞いてみると、「あえて狭いところでやってるんです」との答え。その効用は(1)にぎわっている雰囲気が出る(2)動きにくいので手元にある商品を良く見てもらえ、発注漏れが減る(3)大きな声で発注してくれる人がいれば、さらに好影響が出る――といったことらしい。そのため、ハンガーに掛ける服の数や順番、壁面に掛ける服の選定など徹底して考える。2日がかりで決め、バイヤーの反応を見ながら次々と配置などを変えるという。
 確かに不況という状況には変わりないが、足元に見つめ直すことがあるのではないか。

2010/03/15
 東武宇都宮百貨店宇都宮店は2月末から、同店で買い物をしたかどうかにかかわらず、駐車料金を1時間無料にするサービスを土日、祝日にも広げた。昨年から平日限定で始めたところ、平日の入店客数の減少幅が縮まったことを受け、毎日実施を決めた。アウトレットモール開業や「1000円高速」の影響を受ける土日の集客のテコ入れを狙う。実施以降、土日の駐車台数は前年比約5%増と早くも効果が表れている。
 来街促進による中心市街地活性化効果も視野に入れる。駐車場無料サービスを始めてから、同店の駐車場に車を止めて周辺で買い物をする顧客もいて「商店街から喜ばれた」という。
 日本百貨店協会の駐車場問題研究会が先週まとめた中間報告では、駐車場を「単なる付帯設備ではなく、店舗のイメージを左右する重要なサービス施設」と位置づけ、現状の課題を指摘。同時に百貨店の駐車場は「公共性が高いインフラ」であり、「まちの玄関と見る」ことが「市街地のポテンシャルを上げる」とも指摘した。
 駐車場のサービス水準を上げるには、効率運営による収益確保の必要もあり、無料開放のような施策は無制限に広げるわけにはいかない。しかし客数増に向けた一つの考え方ではある。

2010/03/12
 上海梅龍鎮伊勢丹百貨が新装全館開店した。開店前の式典で梅龍鎮伊勢丹の森田章文前総経理は「開業13年目で1年かけて全館改装に取り組んだ。従業員一同、お客様の期待を上回るように努力していきたい」とあいさつした。
 新梅龍鎮伊勢丹はマーケットで最も注目の高いエリートホワイトカラーの女性をメーンターゲットにした、中国初のライフスタイル提案型の百貨店。品揃えも中国初登場の人気ブランドや上海での伊勢丹限定ブランドを増やし、中国初登場の日系ブランドは約30ブランドにのぼる。VIP向けサービスも充実した。圧巻は5階に創設した9ブランドの「ビューティーサロン」だ。化粧品を購買した顧客が利用でき、中でも「シャネル」のビューティーサロンは世界初。シャネルのサロンをのぞいてみたが、VIP気分になるゴージャスな空間だった。
 現在、中国及び上海の百貨店では大型化・同質化が進み、競合も激化している。梅龍鎮伊勢丹は店面積が1万5000平方メートルと小さい。
 「再開発」で目指したのが、個性化。今、上海や中国での消費意欲は高い。「日本では値段の安い物が売れるが、中国では値段の高い物が売れる」といわれる。消費意欲をさらに高める仕掛けや工夫が新梅龍鎮伊勢丹の随所に見える。

2010/03/11
 久しぶりに上海を訪れて驚いた。道にゴミが落ちていないし、タクシーの運転手はみな「ニーハオ」とあいさつする。上海万博を前にして、行政がお金も出し、大通りに面したビルは壁を塗り替えたりしたそうだ。しかし「マナーの悪さは相変わらず」と現地駐在の日本人は口を揃える。並んでいる列に平気で割り込んだり、禁煙タクシーの運転手がタバコを吸っていたりする。
 旧正月になると地方出身の工場労働者たちはみな帰省し、工場は2週間ほど休みになる。旧正月が明けてからも以前の職場に戻ってこない労働者が毎年何割かいる。今年は労働者の戻りが例年より悪く、70%ぐらいしか帰ってきていないそうだ。
 上海も今は不動産バブルの様相で、普通の労働者は家を買えないくらい高騰している。さらに上海の最低賃金は、昨年据え置かれていたこともあり、4月から15%ほど上がり1100元前後になる見通しだ。地価や賃金が上昇し、「上海周辺にあった縫製工場が地方に移転するケースが多い」と副資材を取り扱う日系問屋は話す。
 「これからは、中国から東南アジアに素材や副資材を出してそこで縫製し、再び持ち帰って中国で販売するケースが増えるのではないか」とみる人もいる。この国に来ると、成長を続ける国のダイナミズムを感じる。

2010/03/10
 小売業が転期を迎えている。百貨店や専門店、GMS(総合小売業)、SCがそれぞれ融合して新たな業態・形態が生まれつつある。百貨店の相次ぐ閉店の一方で、専門店の導入や百貨店とSCの複合化も始まった。こうした動きがファッションビジネスに新たな変化をもたらす。
 かつて「何が何でも百貨店」という強い思いを持つアパレル企業も、ここ数年来、SCやファッションビル向けのブランドやショップを企画・開発して新境地を開こうとしている。一方、元気な専門店はこのところ百貨店を出店先の一つに選び、話題となっている。SCやファッションビルも不動産賃貸業という枠を超えないまでも、テナントの商品計画から店作り、販売までをリードする小売業の形態にどんどん近づきつつある。
 業際の崩壊という岐路に立って、新たな業態や形態を生み出すことは容易なことではない。まして長引く消費不況の中にあってはなおさらのこと。それでも、消費者は自分のライフスタイルの価値に見合ったブランドや店、業態を求めている。百貨店へのあこがれ感、専門店のブランドへのこだわり、SCやファッションビルの利便性や収益構造、これらを融合した新たな業態・形態は消費創出の道しるべと思える。

2010/03/09
 5日に開店したバーニーズ・ニューヨーク神戸店のプレス会見で、中村直樹社長は低価格競争が強まる中で勝算はあるのかという質問に対して、こう答えた。「価格を意識してないわけではない。大事なのは進化している消費者のセンスやこだわりを先取りすることだ」と。今の市場は消費者のスピード感やセンスが支えていると分析し、価値ある提案をいち早くできれば売れると見る。
 繊維にしろ靴やかばんにしろ、国内の産地の状況はどこも厳しい。何とかしなくてはという気持ちはあっても、なかなか時代を先取りしようとする動きに出られないのが実態だ。
 そんな中、神戸の中小靴メーカーがユニークな動きを始めている。もともと革より安く、早く作れるケミカル素材が多いことを追い風にしながら、各社が競って自社ブランドを開発している。第3セクターの力を借りながら、百貨店でのイベント販売を強め、今春からは各社のブランドが揃ったBtoC(企業対消費者取引)サイトを立ち上げる。さらには、豊岡鞄、播州織、奈良の靴下、京都の傘といった産地と連携して新しい靴を開発しようとしている。
 これらの動きの先にあるのは、欧米の見本市に出展し、神戸シューズを世界に広めること。こうした志の高さが消費者に響く時が来るかもしれない。

2010/03/08
 またひとつ、JRと組んだ百貨店の目の前で、競合店が営業を終了する。松坂屋名古屋駅店が8月29日で営業を終了。入居するビルの建て替えに伴う退店だが、16年に開業予定の新ビルには再出店しないと表明した。
 07年には近鉄百貨店京都店が営業を終了し、昨年は西武札幌店が前身の「五番舘」からの103年の歴史に幕を閉じた。近鉄はJR京都伊勢丹との競合などで売上高はピークの約40%に減少。西武は大丸札幌店の影響もあり、ピーク時の35%まで減少した。松坂屋名古屋駅店もJR名古屋高島屋の影響などでピーク時の35%まで減ったが、改装効果やコスト削減で最近の2期は営業黒字だった。しかし新ビルへの入居条件が現店舗と同じ規模にとどまるため、収益確保は見込めないと判断した。
 百貨店の不振が続く中、JRと組んだ大型店の業績は堅調だ。例えば大丸札幌店は西武の顧客も取り込んで、2月の売上高は速報値で前年同月比11・4%増。10年2月期も増収増益を確保した。開業以来の連続増収を続ける。
 大阪で今後、大型店の増床、新店開業が相次ぐ。来春には阪急百貨店が新博多駅ビルに出店する。競合の構図は各地で異なるが、売り場の過剰感はかなり強まる。コトの提案を含めて、既存の百貨店の枠にとらわれない店作りへの挑戦が不可欠だ。

2010/03/05
 1日から上海で開幕している華東フェアで話題を集めているのが「在庫買います」との看板を掛けて会場内を歩いている米国系のバイヤー。景気の悪い米国市場に値段の安い商品を買い付けようとする端的な出来事といえよう。
 一方で、対日OEM(相手先ブランドによる生産)事業及び同関連業者にとっての課題はコストダウンや人材確保対策。日本からのコストダウン要請が厳しく、原料や最低賃金の上昇によるコストアップを販売価格に転嫁することは難しい。
 中国では内陸部への繊維産業移転政策が進んでいる。春節明けに上海など華東地域の関連工場に帰ってきた従業員数に一喜一憂している日系企業現地法人のトップも多い。あるトップは「上海地区の縫製工場でも優勝劣敗が進むだろう。中国で安く作ろうという考え方はやめてもらいたい。短サイクルで、そこそこの値段で作れるのは上海周辺しかない。考え方を変えてもらわないと、上海地区の縫製工場から従業員がいなくなってしまう」と強調する。
 一方で、中国の内陸部や東北地方、あるいはASEAN(東南アジア諸国連合)にベーシック商品を中心としたアパレル生産拠点を移転する動きもある。中国内需の拡大も強まる中でOEM事業は機動的なかじ取りが求められる。

2010/03/04
 今年はアパレルメーカーから、盛夏物の展示会の取材に来てほしいという依頼が多かった。不況のせいで、小売店が少量ずつ小刻みに発注するケースが増え、アパレルメーカーも展示会の回数を増やさざるを得ない。企画から生産までのサイクルが短いので、メーカーは納期に追われることになる。
 アパレル製品や素材の機能性などの試験を行う検査機関によると、最近はみんなもの作りに余裕がないために、堅牢(けんろう)度試験などを2次製品で行うところが増えているという。本来なら生地の段階で試験すべきなのだが、納期に追われてその余裕がない。2次製品を大量に作ってからでは、もし試験で不合格となっても後の祭りとなる。
 あるカジュアルSPA(製造小売業)は見本のサンプル生地の段階でまず試験し、次に量産段階の生地でも試験を行う。合格しないと次の段階に進めない仕組みで、2次製品では縫製に関するチェックしか行わないそうだ。さすがに売れているところは違うと関心する。
 刺繍糸の色が後加工で変色してしまうこともある。「企画から相談してもらえれば、どの糸を使えばいいとアドバイスもできる」と検査機関。低価格の流れに巻き込まれないために、機能性や価値観を重視するメーカーが増えているが、品質管理ももう一度見直してほしい。

2010/03/03
 SC協会の木村惠司会長は「新たな競争相手にインターネット通販が浮上」している危機感を持っている。野村総研が昨年末に発表した「生活者1万人アンケートにみる日本人の価値観・消費行動の変化」によると、ネット通販利用者の割合が10代から60代で30%を超え、20代から30代では40%強にまで高まってきた。
 この数字から「比較購買ができる」「届けてくれる」「いつでも、どこでも買える」など消費者は利便性を完全に享受している。今では「携帯電話で通勤途上に買い物」の光景も珍しいことではない。実際の売り場に行かなくても、必要なものは十分に手に入れることができる環境が整ってきたということだ。
 この光景にSCの現場では「買わなくても良い客を集める」仕組みや仕掛けの構築に真剣になってきた。ネット通販システムを持つルミネでさえ「買わなくても良い客」を売り場に来店させる仕掛けに余念がない。MDや接客力、店づくりなど、客を迎えるための最高の環境を整え、様々なメディア戦略を駆使して来店客を促進する。
 地方都市でもパークプレイス大分のように「お金を使わなくとも毎日来店」を促進するために、自然を生かした施設環境やファミリーが安心して施設内で過ごせる安全空間などの提供に注力する。実店舗への来店価値を上げる努力が、ネット通販と共生できる一因になる。

2010/03/02
 5月1日から中国・上海で万博が始まる。10月31日までの半年間で、万博としては史上最高7000万人以上の来場が見込まれている。有志企業による共同パビリオン「日本産業館」には帝人グループが展示出展し、三起商行が営業参加して物販店も出して、中国やアジアでの店舗展開に弾みをつけようとしている。
 日本では日本万国博覧会開催40周年記念事業が予定されている。70年大阪万博の来場者6421万人は今も万博の記録だ。当時、小学5年生だった筆者も三菱未来館のダイナミックな映像に驚き、何よりもどこへ行っても、人、人という熱気に圧倒された。
 13日、大阪・万博公園で、「EXPO70パビリオンオープニング記念式典」が開かれる。大阪万博の全貌(ぜんぼう)を紹介し、後世に伝えていく記念館として鉄鋼館を改装オープンする。当日はコンパニオンの制服などを復元したファッションショーが予定されている。万博やオリンピックなどの大型イベント時に製帽を提供してきたマキシンは帽子を再現する。同社の渡邊百合社長は大阪万博の時、VIPのエスコートガイドをしていたという。40年の時を経て、企業経営者として大阪万博に関わることになった。
 あの時のなんともいえない熱気が中国にはある。同じようにビジネスチャンスも。

2010/03/01
 誕生日が近づくと必ずハガキが届く。10年以上も前、開店したばかりの飲食店のアンケートに答えて以来だ。先方の義理堅さへの返礼に、年に1回、顔を出すことになる。売り上げ貢献の低い、あまりいい客ではないが、バースデーレターは一応、1人の客をつなぎとめている。
 「サンキューレターが書けない子が本当に多いんです」と販売トレーナーは嘆く。ペンを持つと文章が出てこない。まして、普段使わないかしこまった言葉遣い。便箋(びんせん)を前にして固まってしまう。ケータイメールは上手に使いこなせるのだが、メールは店と客の一線を越えて、友達ことばになりがちと敬遠するショップもある。ていねいに書かれたサンキューレターは、客との関係を深めることができるとレター重視の店は多い。
 何を書けばいいのか分からないという販売員には、季節のあいさつから始まって結びの言葉まで4、5通りのパターンでとにかく型にはめて書かせることだという。書き続けるうちに、心にある感謝の気持ちを強く意識するようになり、表現したいと思うようになる。そこから創意工夫できるようになり、相手の喜ぶ顔が想像できるようになれば楽しみに変わるという。
 ありがとうと言った数だけ人は幸せになれるらしい。サンキューレターは相手も自分も幸せにしてくれる。