繊研新聞掲載のコラム

 繊研新聞掲載のコラムです。随時更新しております。(別の月のコラムはコラムのトップページから移動してください)


め・て・みみ/2010年06月

2010/06/30
 商業施設の価値を測る物差しといえば、一つは家賃。テナント家賃は高ければ高いほど、施設の価値も高いということになる。ファッションビルなどの収益不動産の賃貸管理・建物管理などを受託するプロパティーマネージメント(PM)も、家賃の最大化が目的だ。もっとも、最近の商業施設の中にはテナント集めに苦労し、条件を引き下げざるを得ないところも少なくない。
 先日の紙面で、ファッション関連企業の本社移転が増えているという記事を掲載した。オフィスビル空室率の上昇と賃料下落が、コスト重視によるオフィスの統合、集約、借り換え移転を促しているようだ。
 賃料下落の傾向は、東京地区以上に大阪のほうが顕著なのかもしれない。オフィス仲介の三鬼商事によると、大阪のビジネス地区の5月の空室率は11・96%。前月比で0・1ポイント上がったという。
 梅田地区に限ると5月末の平均空室率は11・36%。前年同月比で5・1ポイントの上昇となった。今年の新規供給量は延べ床面積で37万平方メートルを超え、昨年の3倍強に増加。新築ビルのテナント誘致競争は激化している。
 梅田地区は来年、大阪駅新北ビルが開業し、商業施設間の競争がさらに激化するのが確実となる。オフィスビル、商業施設を問わず、周辺地区を含めた各施設のPM手腕が問われそうだ。

2010/06/29
 靴売り場のレジ脇に抗菌・消臭スプレーが売られている。今では当たり前の光景だが、実は抗菌・消臭スプレーは「コスト削減、低価格を追求した結果、誕生した商品」だ。
 本来、本革は呼吸するので蒸れないが、価格を下げるために別素材が使われ、雑菌が繁殖するようになったという。商品開発の源泉はニーズだが、これもニーズと呼べるのだろうか。
 新商品は消費者の問題を解決したが、職人や生産者、納入業者、売り手に厳しさをもたらした。誰の得にもつながらない商品は産業の発展、流通の進化とは無関係のものだ。
 ところが、現実には目の前の業績や「値引き競争」に対応するために商品のグレードや機能性を軽視する商品開発が多い。売り場では仕事が増えて、サービスの低下につながる低価格品の投入が続いている。みんなが損する悪循環は早期に断ち切りたいものだ。
 消費の潮目が変わったとされる今こそ、新しい流れに挑むチャンスである。ただ、品質を高めて高価格品を提供するだけでは単純過ぎる。品質や価格が消費の軸であるのは市場拡大期であり、成熟期には作り手や売り手の熱い思いや、買い手との共感こそが軸であるはず。
 ビジョンがない、目先に追われる売り場で、熱いハートを感じられない商品のセールは今夏で最後にしたい。

2010/06/28
 雨の中、建築資材を担いだ若者が建築中のビルのはしごを上っていく。濡れた足場で滑らないよう声をかけながら「1日、6000円も払ってやれない」と現場監督は嘆く。
 時給も、職場の居心地もコンビニにも勝てず、定着は悪い。「技術を教えてやりたいのだが」という監督も現場の掛け持ちで時間のゆとりはない。リーマンショックからの1年半、何とか持ちこたえやっと薄明かりが見えてきた矢先のギリシャショック。現場の苦悩は終わらない。
 新興国向けの輸出回復で景気は持ち直しつつあるというものの、足元の個人消費はおぼつかない。百貨店は27カ月も連続で前年を下回り、スーパーも18カ月連続で割り込んでいる。落ち込む客単価を客数増でカバーしようにも、もはや客動員の方策の引き出しは全開。消費者のマインドが改善しないことには本格回復は見込めない。
 企業経営者は足元の景気の弱さから、薄く張った氷の上を歩くように慎重だ。一歩間違えばたちまち冷たい水の中に転落してしまう。しばらくは足元の氷を踏み抜かないよう堅実に歩を進めるほかはない。
 リーマンとギリシャが薄氷にあけた大きな穴。これで消費税が倍になればどれだけの大穴があくのだろう。消費マインドは凍りつくが、足元の氷を溶かしてしまいそうだ。

2010/06/25
 長い間、特選フロアや特選ブティック街などと呼ばれていた百貨店の高級ブランド集積ゾーンの名称が変わり始めている。4、5年ほど前からだと思うが、大規模改装などを機に「インターナショナルブティック」と名付ける百貨店が増えてきた。
 国際的なブティックとは、高級ブランドに限らず世界で通用するブランドを集めている、という意とある百貨店。名称変更に伴い、従来からある特選ブランドに加えて国内外の新進コレクションデザイナーブランドなども含めてゾーン構成している百貨店がある。一方で、ブランド揃えは以前のままに、名称だけを変えたと思える百貨店もあるが…。
 高級ブランドは、中流層の広がりにより、これまで売り上げを伸ばしてきた。百貨店を中心に、国内50店程度のショップ網を構築したブランドも多い。アウトレットモールに出店するブランドも増え、「特選」と訴求する意味合いが薄れてきたのかもしれない。
 とはいえ、高級ブランドの集積は化粧品などとともに百貨店の強みと言われる。特選からインターナショナルへの変化は、その強みをより高める新たなスペシャリティーゾーン構築が狙いのはずだ。高級だけでなく、創造性であこがれを感じさせるなど、ファッション消費を喚起する売り場を望みたい。

2010/06/24
 6月は環境月間。91年に環境省が定めた。
 今や地球環境問題とビジネスは切り離せないと企業各社は事業計画や方針で環境対応を高らかにうたい上げる。しかし、実際には環境保全や対応と経済活動では相入れない部分も多い。昨年、当時の鳩山首相がCO2の25%削減を打ち上げた時も経済団体は反対の声をあげ、環境税の導入にも多くの企業トップが反対の意思を示している。
 「環境」のうたい文句が利益に結びつきにくいことも頭が痛い。水質浄化やフィルターなど直接環境保全活動に結びつくものはいいが、リサイクルや環境負荷が低い製造プロセスなどはコストアップ要因になるし、出来上がった商品の性能は従来品と同じで、コスト高分を価格に転嫁することは難しい。
 「環境経営宣言」を掲げる帝人ではかつて国内で生産するポリエステル長繊維を全量ケミカルリサイクルに切り替え、重合工程で重金属を使わない製法に転換することを掲げていたが、国内での原糸生産中止、タイへの移管の構造改革でこれらの環境対策は将来的な課題へと後退した。環境先進企業と自他共に認める同社でさえ「エコノミー」が「エコロジー」より優先されたわけだ。
 結局は法規制を強めることとセットでないと、環境対応は進まないのかもしれない。

2010/06/23
 「商売は笑売」「商人は笑人」という言葉がある。こびやへつらいの笑いはごめんでも、何気ない笑顔で接客されると、ついつい財布のひももゆるみがち。ビジネスに笑いは大切だ。
 笑いは健康にも影響を与える。免疫細胞が活発化するというのは承知の事実。笑い上手は生き上手ともいえる。
 もっとも、厳しい経営環境の中では、笑うに笑えないことが少なからずあるのもこのご時世。ファッション業界でいうと、歩引きや返品、末引き取りなどもその一つだ。担当者にとっては泣くに泣けない話。買いたたきや代金支払い遅延などの“下請けいじめ”が横行すれば、商売は「傷売」にもなりかねない。
 ノルマや予算のプレッシャー、厳しいライバルとの競争などで、いまの企業戦士はついつい笑いを忘れがち。企業社会に競争はつきものだが、周囲の協力や信頼関係がなければ、商売は広がらない。笑いはコミュニケーションの潤滑油ともいわれる。
 確かに、笑いで腹は膨れないし、欲しいものが買えるわけではない。それでも、豊かな人間関係を生めば財産にもなる。「笑う門には福来る」ではないが、宝船のえびす様や大黒様はいつも満面の笑顔。笑いがあれば憂いもどこかへいくはず。商売繁盛は「笑倍繁盛」でもある。

2010/06/22
 グローバル競争を繰り広げる巨大企業がマーケティングや商品開発で重視しているのがヒューマンスケールだそうだ。
 海外のインテリアやライフスタイル系の大型見本市では、天井を設けたブースが目につく。これもヒューマンスケールの一例だ。展示空間を日常生活に近いスペースにすることによってバイヤー自身が生活者の目線で新製品を体感し、選べるようにするための工夫だという。
 展示方法だけでなく、トレンドも“ヒューマンスケール”になっている。ここ20年間には強力なトレンドがめっきり減って「トレンドは探すから作るものになった」と大きく変わっている。
 「大きなトレンドは押さえておかなければならないが、大切なのは身近なトレンドを見逃さないこと」とも言われる。売り場作りや商品開発や発信などもヒューマンな生活目線が必要ということだ。
 「デザインは人の生活を変えるものだ」とする説がある。ヒューマンスケールが想定するのはビジネス生活の中で起こっている様々な問題を技術や論理を駆使して解消することだ。ソリューション型への進化である。
 商品に改良を加えて便利な生活を作り出すのは日本人の得意とするところである。今こそ、ヒューマンスケールに乗って世界に打って出るチャンスが訪れているのだ。

2010/06/21
 傘が手放せない季節になった。とはいえ、雨降りにはありがたいが、あがればじゃまになり、ついどこかに忘れてしまう。持ち主は本当に身勝手だ。それでもいざ雨が降れば身を挺(てい)して守ってくれる。
 戦後、安くて丈夫な化合繊が普及するまでは、日本で傘といえば和傘=からかさだった。材料は竹と紙。富と権力の象徴であり、ぜいたく品でもあった洋傘と違い、安くて庶民も手軽に利用できた。しかし、身近にある竹と紙が精巧な傘になるまでには竹を削る職人、竹を染める職人、柄にハジキを取り付ける職人、紙を張る職人など多くの人の手がかかわっている。
 かつて全国にあった和傘の産地のうち、最大で、今でも残っているのは分業が進んでいた岐阜だ。年間生産量が数万本に落ち込んだ今でも、内職などによる分業生産体制が成り立ち、技術が伝承されている。最盛期の年産1000万本には及びもつかないが、おみやげや舞踊、野点、芝居、花街、お祭りなど洋傘には置き換わらない和傘の市場が残されているからだ。
 存亡の瀬戸際に立つ全国のテキスタイル産地。輸入品との戦いは激しさを増し、この10年で戦線は縮小し、後退を続けてきた。正念場の10年代。輸入品には置き換えられない国産の強みが発揮できるかどうかにかかっている。

2010/06/18
 「求む男子。至難の旅。わずかな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証なし。成功の暁には名誉と賞賛を得る」。冒険家アーネスト・シャクルトンが南極探検隊員を募った20世紀初頭の求人広告だそうだ。ある地方百貨店の販売促進部長のつぶやきを聞いて、この広告を思い出した。
 初めて目にした時、求める人材が明確に伝わるメッセージが心に響いた。遠い道のりや苦難を想像するのに難くない。成功を保証されていないが、達成した時にわき起こるだろう感覚も感じることができる、とは思いませんか?。
 販促部長がつぶやいたのは「百貨店の魅力をもう少し伝えるべきではないか」。新聞やチラシに掲載する広告が、セールやイベント告知によりがちになっていることへの反省の思いがある。消費者がベネフィット(利益、恩恵)を感じるような告知によって、来店客を増やし、売り上げに結びつけることが広告の役割。それだけでなく、他の業態とは違う魅力をメッセージとして伝える必要がある。
 百貨店の売り上げ減少が続いているのは、魅力を感じない人が増えていることも要因のひとつだろう。「百貨店らしさ」とは何か。分かるようで分からない。百貨店を利用しない人、利用しなくなった人も振り向かせるようなメッセージを実体とともに伝えるべきではないか。

2010/06/17
 ダウケミカルは、ポリオレフィン系弾性糸「ダウXLA」事業から撤退する。旭化成せんいはポリケトンの長繊維糸について「基礎研究に戻す」とし、当面の原糸生産は断念。PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)繊維「ソロテックス」からも撤退した。
 ソロテックスは同社と組んできた帝人ファイバー(TFJ)が「継続の方向」との意向を示しているが、依然「継続」を決めきれない。原料供給、技術面などで課題を抱えているそうだ。TFJが長年手掛けてきたPEN(ポリエチレンナフタレート)繊維も拡大テンポは鈍い。
 新しい合成繊維の研究や事業化の動きは後を絶たないが、本格的な事業化には至らない。少量生産規模の設備まで進んでも、量産化して、収益を上げるまでの新しい繊維は見当たらない。
 それだけに3大合繊のポリエステル、ナイロン、アクリルの完成度の高さが際立つ。特にポリエステルは繊維だけでなく、PETボトルや各種フィルム材など展開分野も広く、20世紀に開発されたケミカル材料としては最高峰といっても過言ではなかろう。低コストで汎用性があり、作り方も簡単で、リサイクルも容易といいことずくめだが、唯一の欠点は「もうからない」こと。「新」合繊が出てこないのなら、既存素材でもうける作戦を考えないといけない。

2010/06/16
 8日に東京地裁から民事再生手続きの開始決定が下りたオリゾンティ。ライセンスブランド事業は興和が、「インタープラネット」を中心にしたSPA(製造小売業)事業はサンラリーがそれぞれスポンサー候補となり、事業再生への第一歩を踏み出した。
 興和とサンラリーは法的手続きに入る前の段階で、大筋合意に達していたとみられており、申し立て前にスポンサーを決めた上で法的整理に入るプレパッケージ型ともいえる。
 プレパッケージ型で記憶に新しいのが、企業再生支援機構が支援した日本航空のケースだ。民事再生法と会社更生法の違いはあるが、法的手続き前の事前調整という点では共通している。日本航空の場合、企業再生支援機構がつなぎ融資などで日本航空の資金繰りを支えることで、債権者は会社更生法の申し立て後も取引を継続しやすい。
 オリゾンティの場合は、興和が業務提携していた企業であり、サンラリーも仕入れ先の一つ。ともにオリゾンティの事業の中身を知っている立場。そうした企業がスポンサー候補になっているのであれば、債権者の混乱や事業価値の劣化にも歯止めがかかりやすい。
 企業の生き残りではなく、事業の再生という意味から、事前にスポンサーを確保するアナウンス効果は決して小さくはないはずだ。

2010/06/15
 人材育成に関する議論がにわかに広がっている。日本人材マネージメント協会が取り上げたのが「ソーシャル・スクール」だ。
 大手を軸に、個別企業による従来の自前主義の教育ではもはやカバーできないため、一定部分の教育や研修を外部に任せようとの動きである。ソーシャル・スクールの先行事例として取り上げられたのがIFIビジネススクール。渡辺省三学長の報告に注目が集まった。
 提唱の背景にあるのは深刻になる「労働における中間層の不在」だ。これまで、大手企業は「教育した後に退職する」のを嫌って自前主義を採用し、中堅中小は現場実践教育で人材を育成してきた。しかし、現在はトップと底辺の労働の二極化が際立ち、中間層の問題を個別企業で対応できない水準にある。
 「社内の範囲に限定される、刺激が少なく交流の幅が狭い」教育の自前主義の限界は明らかだ。ところが、現実には人材確保競争がますます激しくなっており、「教育の内向き傾向」や「青田買い」が目立っているという。
 人口減少に伴う日本の総労働人口は30年に今より1000万人以上減ると予測されている。加えて高齢化の進行で、若年労働者の確保も難しくなる。
 近年、増えている仕事のストレスによるうつ病を、これ以上広げないためにも、雇用や人材問題に真正面から向き合うことが必要だ。

2010/06/14
 6月の中旬になっても雨の日は数えるほどだが、アジサイは咲くべき時期を知っているのだろう。花壇に咲いた紫の大きな花は梅雨が間近に迫っていることを教えている。
 本紙で昨年10月に始まった「販売・接客のページ」には、優れた販売スタッフを紹介する「販売の星」というコーナーがある。これまでに10人が登場した。館やショップを代表するエース級の人材である。販売に対する姿勢も、技術も実績も申し分ない。
 10人に共通していると思うことがある。店を訪れて、スタッフに声をかけるとしたら、近くに誰かいたとしてもこの人たちを選ぶだろうということ。楽しませてくれそう、満足させてくれそう――そんな空気をまとっている。それはノウハウとかハウツーとかではなく、生まれながらに持っている素質、あるいは努力して到達した域なのだろう。それはマネのできるものではないし、教えたり、伝えることができるものでもない。
 もうひとつ共通しているのは自分なりのスランプ克服法を確立していること。どんな状況でもやるべきこと、何をすべきかがはっきり見えている。立ち返る基本を自然体で身につけている。雨が降らなくても咲くべき時期を知っているアジサイのようにだ。迷いのない姿勢が揺るがない空気を作る。

2010/06/11
 「京都と四条河原町阪急の歩み展」。8月に閉店する同店が、売り尽くしセール開始と同時に、6階に開設した。一角に、来店客が投稿した思い出メッセージが展示されている。読んでいて、小売業は人・モノ・器の三位一体で成り立っている、と改めて思った。
 同店にあるシースルーエレベーターから見える景色を楽しんでいたと書いた人が複数いた。随分前に購入した商品を大切に持っている女性や、販売員に忘れられぬ良き思い出を持っている人もいた。
 メッセージは、器(環境)にかかわること、モノ(商品やブランド)や人(販売員)にまつわるものと様々だ。思い出はたいてい、恋愛や青春、結婚など個々の人生における出来事とつながっている。その舞台が四条河原町阪急だった、ということだろう。
 店は、経営者や店舗運営責任者、従業員からすれば売り場に過ぎないかもしれない。来店客も買う場としか見ていない人も多いとは思う。しかし、ネット販売などが拡大していくなかで、わざわざ来店する理由は多岐にわたってあるはずだ。思い出に過ぎないかもしれないが、メッセージはそれを伝えている。
 どんな環境で、何を品揃えし、どのように来店客に伝えるか、あるいは応えるか。売り手側の意思、トップから現場までの人の力で店の存在価値は決まると思う。

2010/06/10
 日本の繊維製造業を守り、北陸産地の復権を目指そうと、クラスターが相次いで機関会議を開き、新年度方針を発表した。「官主導」で昨年発足した北陸3県繊維産業クラスターと「民」の呼びかけで04年に発足した東レ合繊クラスター。会長はいずれも中山賢一小松精練会長だ。
 北陸3県繊維産業クラスターは今年度、中国でのショールーム開設と独自展開催、パリのプルミエール・ヴィジョンやモスクワでの見本市への参加と非衣料分野のマッチング商談会などを通じ、10億円の成果を見込む。最終年には135億円の売り上げを目指す。
 一方の東レ合繊クラスターの10年度の目玉はクラスターとしての出荷額の目標値を定めたこと。年間25億円が目標だが、中山会長は「個人的には30億円は期待している」と高いハードルを示し、発破をかける。3年以内にこれを3~4倍に拡大するとの見通しも表明した。
 日本の繊維製造業、産地の危機が続く中、協業、企業連合はこれに立ち向かう武器となる。過去、その中心に座っていた合繊メーカーや紡績、大手商社などが事業の撤収や縮小を進める中で、クラスター活動が挽回(ばんかい)の決め手になるのか。世界規模での激烈な競争が続く中、企業間の壁や県境にこだわっていては、生き残れないという意識を広げることが大事だ。

2010/06/09
 先日、中国の日系縫製工場で火災が起きたが素早く復旧し、機会損失を最小限にとどめた。
 大規模災害に見舞われると、事業を継続できなくなるケースがある。阪神大震災や新潟県中越地震などでは、人命やライフラインへの被害の大きさもあって、事業停止を強いられたことは記憶に新しい。
 保険などでの損失補てんはあるにしても、事業停止をすれば、それ以上の機会損失、利益損失にもつながる。原材料から生産、流通、販売に至るサプライチェーンマネジメント(SCM)の各段階で、さまざまなプレーヤーが存在する繊維業界ではSCM全体が影響を受け、取引先や顧客へと連鎖する可能性さえある。それだけに、事業停止をできるだけ短くし、許される期間内に復旧させることは、企業の社会的責任ともいえる。
 最近は新型インフルエンザの発生など、新たな脅威も生まれている。財政基盤の弱い中小企業にとっては、難しい局面も出てくるだろうが、事業を継続すること自体、地域貢献や従業員の生活保障にもつながる。
 不測の事態に備え、優先して継続・復旧すべき事業の特定や調達仕入れなどの代替策などをあらかじめ策定し、事業継続を踏まえた従業員とのコミュニケーション、教育・訓練も欠かせない。

2010/06/08
 日曜の夜、ドレスシャツにアイロンを掛けると休暇モードが戦闘モードに切り替わる。シャツのシワと一緒に心のシワも伸ばされて、緊張感が生まれる。しかし失敗も多い。難しいのは袖口や襟など厚みのある部分。ピシッとならずシワになる。
 アイロン掛けの達人によると、たるみを逃がすように掛けるのがコツ。袖口はアイロンをカフスの中に滑り込ませ、両側からたるみを内側に逃しながらアイロンを掛ける。襟も胸ポケットも両側からたるみを逃がすように掛ける。一気に掛けたり、上から押さえ付けるから、たるみが逃げ場を失ってシワになる。
 中国での日本向けアパレル生産が揺らいでいる。春節明けの3、4月、納期遅れが多発し、大型連休に間に合わせるために、航空便やフェリー便への乗せ替えに追われた。春節の巡り合わせや労働者の戻りの悪さといった一過性の要因ではなく、日中間のアパレル生産の構造のきしみを指摘する声は多い。最短の納期、最安のコスト、最小のロット――これらを追求するあまり、生産工場に無理が集まっている。
 コストや納期に変動はつきもの。ブレを押さえ付けようとすれば無理が生じる。押さえつけるのではなく、逃がすような、柔軟な構造に切り替えないと、どこかにシワ寄せがいく。

2010/06/04
 最近、いくつかの百貨店の新しい売り場をみていて本質的な意味での売り場作りが進んできたように感じている。テイスト区分などが整理されたことで、買い回りしやすい環境になってきた。
 かつてのファッションフロアは、売れているブランドの好立地への導入を優先してきたこと、そうしたブランド入れ替えの繰り返しによって、配置がバラバラな売り場という印象を持たざるを得ない百貨店が少なくなかった。売り場配置の整合性よりも、ブランド優先というブランド頼りのMDがそのまま売り場に表れていた。
 嗜好(しこう)の多様化が進んだこともあり、多くの人が引き寄せられるようなビッグブランドは生まれにくくなっている。ブランド頼りのMDだけでは売り上げを伸ばすことが難しい、との認識も高まっているようだ。こうしたことから、ブランドの意思よりも百貨店の意思を優先して、複数のブランドをテイスト区分でまとめて配置した売り場作りを進める百貨店が増えている。
 ブランド間の買い回り促進を期待してのものだが、買い回りしやすい環境を整えたからと言って、すぐに効果は出ないかもしれない。ただ、無秩序に並べるだけでなく、明確な意思のもとに構成された売り場であれば、成果と課題、修正点なども分かりやすいだろう。

2010/06/03
 「潮目は変わった」。3月期決算発表の席上、この言葉をよく耳にした。08年9月のリーマンショックは、あらゆる業種業態を、一気に深刻な不況に落とし込んだ。繊維はもとより自動車産業、IT(情報技術)家電まで、文字通りの世界同時不況だった。
 流れが変わり始めたのは昨年夏以降。中国をはじめ成長軌道にあるアジア諸国の経済環境が好転、自動車やIT関連機器から回復、関連資材の需要も戻り始めた。繊維も資材用途がいち早く底離れし、需要は回復基調にある。
 素材メーカー各社の決算もこれを映したものだ。同時に、リーマンショック前の好況期と比べると「8割経済」規模にとどまっているのも事実であり、回復感に力強さが感じられないのはこのためか。
 ただ、経済規模が縮小したからといってこれに合わせて身を縮めているだけではジリ貧になる。09年度、合繊各社は 「聖域なきコストカット」を掲げ、設備投資を大幅に削減、研究開発費用も絞り込んだ。10年度は帝人が設備投資、研究開発費共にさらなる削減計画を立てているが、他社はわずかながらも投資や研究開発予算を増やす傾向。潮の変わり目をとらえて、成長へ向けて波に乗れるのか。10年度に打つ手が注目される。

2010/06/02
 東京ブラウスが2度目となる民事再生法の適用を申請した。03年の申請では再生計画の認可後、07年1月に再生を終結していた。わずか3年での“再倒産”となる。
 先日、帝国データバンクが「民事再生終結企業」の追跡調査結果を発表した。それによると、再生手続きを終結した企業3365社のうち4・2%が再倒産していたことがわかった。普通法人の倒産発生率の約10倍にあたるという。再生手続きを通じて債務免除による財務体質の改善や金利負担が軽減されるはずだが、業績そのものが上向かなければ企業の維持は難しいということなのだろう。
 債務超過や支払い不能に陥らなくても申請ができるうえ、経営者もそのまま残れることなどから、「入学は簡単」といわれるのが民事再生法。それでも、現実には申し立ての直後から計画認可までの資金調達ができず、手続きの棄却や取り下げなどに追い込まれるケースも決して少なくない。民事再生法を申請すると取引条件は厳しくなり、運転資金を確保できなければ、営業が継続できないからだ。申請の際には1、2カ月分の運転資金が最低でも必要といわれるのもそのため。手形の割引にすら難色を示す金融機関もあり、資金的な裏づけは欠かせない。
 手続き終結企業は、こうした課題をクリアしてきたはず。事業価値の向上は再生終結後も問われ続ける。

2010/06/01
 アパレルメーカーと専門店で、消化取引契約が進んでいるようだ。専門店は売れた分だけ仕入れたこととなり、在庫リスクはメーカーが持つ。百貨店インショップの多くと同じ取引条件である。メーカーとしては、完全買い取りで返品なし、代金回収も100%というのが理想だが、なかなかそうはいかない。
 ラピーヌの10年3月期決算で、販路別売り上げのうち唯一、前年実績を上回ったのは専門店。理由は、取引先を絞り込むとともに、消化取引を導入したことにあるという。専門店のうち約3割が切り替えた。ラピーヌは、シーズン末にどれだけ返品があるか分からない従来の取引形態より、在庫を把握しやすいことをメリットとしてあげる。この条件を希望する専門店も少なからずあるという。
 消化取引でビジネスモデルを確立しているのはキングである。同社の展示会に行くと営業マンが専門店のオーナー、バイヤーと一緒に品揃えを決める姿が見られる。不良在庫が出ることを避けたいから、ここに長年培ったノウハウがある。
 ある中小メーカーの社長は「従来型専門店には、粗利益を40%くらい保証して消化取引の条件にしないと生き残れないのでは」と話す。もっと専門店には自立してほしいと思うが、これも現実か。