繊研新聞掲載のコラム

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め・て・みみ/2010年07月

2010/07/30
 以前親しくしていた方から、退職の知らせをもらった。詳しい事情は分からないが、希望退職の募集に応じたようだ。最近は大手のアパレル企業も相次いで人員削減に踏み切っており、改めて業界の厳しい情勢を感じた。
 それでも以前なら、辞める前に転職先が決まり、待遇が良くなった方も多かった。異業種に転職して「改めてアパレル業界の給料の安さを実感した」と、しみじみ語る方もいる。しかし、今回のメールには「これから就活です」とあり、心配になる。
 多くの経営者は「アパレル業は人材がすべて」という。売れる商品を作り、店頭に届け、消費者に納得して購入してもらう。情報技術が発達し、データを蓄積しても、それを読みこなし、商売につなげるのは人の力。それを削減するのだから、経営者の苦悩も相当なはずだ。
 商社で聞くと、最近はアパレルの企画にまで人員削減の波が来ている、という。ODM(相手先ブランドによる設計・生産)を掲げる立場を考えれば、当然の流れ、と見ているのかと思った。
 しかし、実際には「企画は中枢業務。そこを削ってしまったら競争力が落ちる」と、逆に心配する。いくらODMが進んでも、発注側の企画力が弱ければ売れる商品は作れなくなるからだ。人員削減は別の問題を企業に課す。

2010/07/29
 先週東京ビッグサイトで開かれたJFWインターナショナル・ファッション・フェア(JFW‐IFF)。中国のコストアップなどを背景に日本のアパレル産業は東南アジアに注目している。こうした事情を背景にIFFも東南アジアからの出展が増えた。
 タイ、インドなどのOEM(相手先ブランドによる生産)企業が、中国企業と並んで数多く出展した。各社とも日本での受注を拡大しようと工夫を凝らしていた。中でもタイは事前に日本からファッションプロデューサーを招き、日本市場に合った商品を出品した。
 中国は沿岸部を中心にファッション産業に必要な産業チェーンが整っている。それが強みとなって日本のファッションビジネスと密接な関係を築いてきた。その関係が無くなってしまうことはないだろう。しかし東南アジア諸国も必死だ。
 タイ繊維産業連盟のピラン・タモンコル会長は、VVF(バーチャル・バーチカル・ファクトリー=仮想垂直連携工場)を紹介した。これはASEAN(東南アジア諸国連合)域内の企業が連携し、素材から縫製までの生産をあたかも一つの企業内での生産活動のように行っていこうという取り組み。東南アジアが日本のファッションビジネスにとって魅力的な選択肢の一つになろうとしている。

2010/07/28
 スイーツ売り場が新食感ブームにわいている。今度は「ぷるぷる・モチモチ」や「とろとろ」感のスイーツが大人気とか。「ぷるぷる」や「モチモチ」「とろとろ」の食感が子供から大人の女性ばかりか男性客をもひきつけて、売り場では1日に数百個を売り上げるヒット商品もあると聞く。
 「ぷにゅ・モチ」や「ふにふに・モチモチ」「ふにゃ・モッチリ」「とろなま」など、何やら意味不明のキャッチコピーが店頭やケースを飾りつけて食欲をそそる。これまで味わったことがない新食感についつい手が出る。言葉の持つ魔力は大きい。
 スポーツの世界も斎藤佑樹選手の「ハンカチ王子」に始まって石川遼プロの「ハニカミ王子」、今度は「腕立て王子」と来た。全国高校野球選手権大会で西東京大会を制したのが早稲田実業。2年生の安田権守選手が次打席で腕立て伏せをして待つ姿が話題を集めた。言い得て妙なニックネームがブームを巻き起こし選手たちもそれに応える力となった。
 ファッション業界にも意味不明な言葉やキャッチコピーが思わぬヒットにつながる。「ギャル言葉」に苦虫をかみつぶす大人が、日常的に使っているケースだってある。言葉を創造し、デザインすることで、風を起こして新市場を開くことを再認識したい。

2010/07/27
 だれしもほめられたら、悪い気はしない。最近、仕事用にラムレザーと見間違うような真っ白のトートバッグを持ち歩いている。社内では50男が持つバッグとしては「微妙」との評価だが、社外では大方、好評。バッグのデザイナーにほめられたりして、悦に入っている。
 あるミセス向けSPA(製造小売業)の社長は最近、店長や販売員向けに葉書を書き始めた。内容は「○○してくれてありがとう」「よくここまで売り上げを伸ばしてくれた」「あなたのおかげで私は社長をやっていられる」などほめることばかり。どんな小さなことでも良いところを見つけては葉書を書く。
 返事もよく来る。「通勤時間が長いので、やめようと思っていましたが続けることにしました」というようなこともあったという。不振店の売り上げが伸び始めたり、社員のモチベーションが上がり、好循環になってきた。
 一度に50枚から80枚書き、月間では200枚を超える。ポイントはメールでも封書でもなく、葉書という点だ。葉書は文面が見えるから、家族が読んでしまう可能性が高い。社員の大多数は女性で、家事をこなしながら働いている。職場で評価されていることが家庭でも話題になれば、モチベーションがさらに上がることは請け合いだ。

2010/07/26
 何年か前の暑い夏の夜、ある地方都市でファッションビルの社長と酒席をともにした際、その社長が唐突に、「一度やってみたいことがある」と言い出した。聞けばそれは「銀座三越の全館の運営」だという。「最高の立地にあるあの館全体を運営する権限を与えてもらえるならば、やってみたいアイデアは色々ある」。酔いもあって、何度も熱く繰り返す姿を思い出す。どんな構想かは、残念ながら聞き忘れてしまったが。
 三越銀座店が9月に増床する。先週の会見で三越伊勢丹HDの石塚邦雄社長は、増床は三越と伊勢丹の経営統合後の初の大型開発プロジェクトであり、統合の真価が問われると同時に、「三越にとっての長年の悲願だった」と強調した。「銀座4丁目の一等地にありながら狭く、お客様の要望に十分こたえることができなかった」。地元や行政との協議などを経て、ようやくこぎつけた感慨が伝わる。
 銀座で急増するファストファッションについての質問に石塚社長は、「百貨店のあるべき姿を追求する、その信念でやってきた」と、違いを明確にする考えを改めて示した。
 三越銀座店は、誰もがうらやむ絶好の立地に加え、十分な規模と環境を手に入れる。その成否は、百貨店という業態の今後を占う指標のひとつになるかもしれない。

2010/07/23
 適時適品とはよくいったもので、アパレル商品を海外で販売する場合にも当てはまる。日本のシーズンMDをそのまま持ち込んでも通用しない。
 現地の暦に合わせた商品企画、現地小売業の店舗スケジュールに対応した商品供給をする必要がある。実際、中国のシーズンMDの流れに乗れていない日本ブランドが少なくない。
 「シーズンの投入の仕方がまるでずれている。長沙は春と秋は1カ月ぐらいで、後は夏と冬みたいなもの。特に夏の商品は5月前から半袖の動きになる。日本ブランドは5月になっても7分の丈があったり、カーディガンみたいなアイテムがあったり、裏地がついていたりする」(湖南平和堂)とか、「日本ブランドは12月後半から冬物バーゲンに入り、1月中旬には春物を立ち上げるが、中国では春節前の冬物の売り上げが大きい」(上海久光百貨)とか、「北京や天津も上海に比べてサイズが大きいが、瀋陽はさらに大きいサイズ。冬になるとさらに着込む。サイズもテイストもデリバリーのタイミングも日本と違う」(瀋陽伊勢丹)などの声もある。
 こうした問題を解決するためには現地企画を充実するほかにない。現地と一体化したMD確立が日本ブランドが強くなるために不可欠である。

2010/07/22
 東レとユニクロが戦略的パートナーシップの第2期5カ年計画を発表した。会見の冒頭に柳井正ユニクロ会長兼社長は「誰もやっていないことがグローバルにできるのではと信じている」と切り出した。第1期の累計取引額は2400億円と当初計画を400億円上回った。第2期も5年間で4000億円の取引を目標に掲げるが「最低限これくらいやろうというもの」と柳井氏。
 東レは中期経営計画の中で目標としてきた縫製品事業の年間売上高2000億円を1年早く達成した。達成の前倒しに、ユニクロとの取り組みが大きく貢献したのは間違いのないところ。
 ユニクロは中国生産の位置付けは変わらないものの、リスク分散のため製品の調達先を東南アジア諸国に拡大している。東レもバングラデシュに編・染・縫製一貫生産の工場を新設したほかタイ、インドネシア、ベトナムに展開している工場を活用して対応する考えだ。
 東レは本体にある専任部署に加え中国の研究開発拠点東麗繊維研究所にも09年に「ユニクロ素材開発推進室」を設置した。ユニクロも生産部と研究開発機能を中国へ移すことを決めており、柳井氏が「どこかの国で製造から販売までもっと一緒に出来れば」と期待する、次のステップに向けた基盤作りが中国で進みつつある。

2010/07/21
 「SCはもっと女子のチーム力を活用すべきだ」と、百貨店やSCで女性の力を生かしてマーケティングや組織強化を行ってきた片山事務所の片山輝雄代表は、強調する。全国に3000カ所を超えるSCの成長ぶりに目を見張るものがある一方で、競争や消費環境にもろくも押しつぶされそうになっているSCも珍しくはない。
 このところ“花形”としてもてはやされてきたSCといえども、消費者の厳しい選択眼や賢い買い物傾向に安穏としてはいられないことを改めて認識しておきたい。
 多くのSCは男性中心に運営も経営も執り行われている。客の80%以上は女性であることを考えれば、片山氏でなくともSC運営はもっと女子力を活用して当たり前だと思うのが筋である。「百貨店の商売は問屋任せ、SCはテナント任せ。大体、SCは大家業なのか商業施設なのか、事業の根幹をなす認識さえも明確にされていない」とも。
 改めて購買の中心であり、様々なサービスを客目線でとらえることができる女子力の活用と組織化に期待したい。もちろん「SCは女子たちの新たな天職」として、女性もいっそうの女子力を鍛え、磨くことが次代のSCの幕をこじ開けると信じる。

2010/07/20
 今月の都内百貨店の期末クリアランスセール。第1週は売上高が前年を超えた店が多かったが、その後、失速し、前年割れの基調に戻った。第1週も、特別招待会やポイント加算などの施策を集中させて数字を作った側面が強い。値引きで売上高をかさ上げできる余地は少なくなってきている。
 個人消費が本格的に回復したとはいえないが、一方で、ファッション消費の潮目が変化してきているのも事実のようだ。繊研新聞社が今月実施した調査でも、繊維・ファッション関連企業の約80%が4~6月に消費の回復を実感したと回答した。5月連休を境に潮目が変わり、価格志向一辺倒から抜け出しつつあるという回答も多かった。
 価格志向が強かった紳士スーツでも、今春夏はイージーオーダーの販売が都心の百貨店や専門店などで好転した。カスタマイズされた価値ある商品への需要が戻ってきているという見方ができる。
 明日からのJFWインターナショナル・ファッション・フェア(JFW-IFF)。今回は、自社の得意技や日本の伝統技術を生かした脱価格志向の商品が増え、独自のメッセージを発信するクリエーターブランドが多数出展する。価格の勝負でなく、変化の兆しをとらえていち早く対応する。そんな動きが実感できる場にもなりそうだ。

2010/07/16
 エルメネジルド・ゼニアが8日行った創業100周年記念・上海旗艦店オープニングイベントは、ショーや野外パーティーなど4部構成からなり、6時間も続くラグジュアリーブランドならではロングランのスケジュールとなった。
 特に、同じグレーのスーツを着た数十人の男性モデルによるショーのフィナーレは、男の美学を感じさせる迫力があった。メンズのラグジュアリブランドでナンバーワンの地位を築き、中国でも成長を続ける理由は何か。
 「優秀な人材の確保と不動産業者とのつながりの充実、そして強い組織」とジルド・ゼニアCEO(最高経営責任者)は指摘した。強い組織とは「顧客の声を聞いて本社に伝え、本社が商品化して提供できるシステムをもっている」ことであり「このレスポンスが出来ていると、顧客はうれしくなって戻ってくる。それが成功の秘策で、お互いの刺激が重要」という。
 「レスポンス」は、この商売の基本を守りながら、顧客の刺激策を楽しんで行っていく。刺激策のアイデアには「ミスマッチ」「クロスカルチャー」など異質なものを融合させることも大切になる。今の閉塞感を打ち破るには、あらゆる手段を使ってレスポンス力を向上させることが必要だろう。

2010/07/15
 東レの日覺昭廣社長は「出来るか出来ないかではなく、やるしかない」と経済危機後の環境激変は、待ったなしの状況と指摘する。工業ミシンメーカーの担当者は、国内は部品の販売が他の国・地域に比べると多いと話す。さらに法定で定められている耐用年数の倍以上の年月を使っているところがほとんどとも。
 縫製業関係者は「最低賃金を決めるなら最低販売価格も決めて欲しい」と実情を説明する。中国の人件費高騰などの影響で縫製を国内に戻そうとする動きが一部にあるものの「工賃レベルは中国並み」というのが実態のようだ。
 大手企業を中心に事業の海外展開が進んでいる。前提は「国内に研究開発と生産の基盤をもっていてこその海外展開」と異口同音に話す。その国内の基盤が存続の危機にある。
 日本の物作りを支えてきた技術力のある中小企業が事業の撤退・停止を相次いで決めている。国内消費の冷え込みに加え、リスクに対する考え方にも問題がある。
 長年、繊維業界はコストをリスクの中に組み入れず、加工や縫製など弱いところに押し付けてきた。各社がやるべきことをやるのは当然のことだが、後押しするためにも業界全体でリスクと利益を共有する仕組みを構築する必要がある。国内の産業チェーンが切れてしまうのも時間の問題だ。

2010/07/14
 本紙13日付の「ファッションビジネスの景況・消費見通しアンケート調査」で「消費の潮目が変り回復に手応え」と、明るい兆しを予感させる話題が載った。
 一方で「本格的な個人消費の回復には至っていない」と手放しで喜べるような段階には程遠いが、消費者に「節約志向疲れ」が見え隠れしているのも事実だろう。「消費も気から」という言葉もあり、改めて客目線に立った物作りと顧客満足の施策に取り組んでもらいたいと願う。
 回答企業は大手が多いが、期せずして小規模の専門店経営者から電話が入り、企業規模にかかわらず、回復度合いに格差が開いている旨のことだった。その経営者も何とか資産を取り崩しながら当座をしのいでいると切実。回復に手応えといっても、小規模や地方都市の専門店にとってはまだまだ「よその話」なのかも知れない。
 「右に10分、左に10分、同業者の店頭を見て回るのが日課」とその経営者。「他店と同じ店頭飾りにしない」と、独自性追求の原点返りを始めた。「でも、店頭も売れ筋もどこも同じ」と嘆く。実際「店頭で独自性を発揮して顧客を引きたいが、そうした商品が少ない」とも。改めて独自性を発揮できるような物作りに期待を寄せている。

2010/07/13
 全国に65万人のメンバーズ顧客を持つストレッチパンツショップ「B3」の本部には毎月、2000から3000の手紙が来るそうだ。シーズン期末が近づくと、「B3はセールをしないのでいつも安心して買えます」といった便りが増える。ブランドを立ち上げて10年間一度もセールをかけていない積み重ねが、顧客に安心感を与えている。
 今でこそ全国に200近くの店を持ち知名度もあるが、当初はディベロッパーとの関係で苦労も多かっただろう。セールを実施してほしいという要請は何度もあったが、ポリシーを曲げずにやってきた。パンツというベーシック商品を年中売るのだから、値下げする必要はないし、セールをしてしまえば、正価で買った人を裏切ることになるということだ。
 考えてみればSPA(製造小売業)はユニクロのように素材開発からかかわるところは別にして、店頭情報をもとに期近や期中に企画生産して販売する業態だ。だから本来は企画が外れるという可能性は低く、正価できちっと時期に応じたものを売っていくことを前提にしている。どうしても残ったものは、感謝の意味を込めて値下げするというのが普通だと思う。
 セールをしないで運営できる仕組みづくりに着手したショップもある。こうした動きに注目したい。

2010/07/12
 07年に始まった東京マラソンが大きな契機になったといわれる今のランニングブーム。例えば皇居周辺を走る人は以前から多かったが、その頃から激増、官庁などが「ノー残業デー」となる水曜日夕方はさながら「渋滞」の様相を呈している。
 過熱気味にも見えるが、スポーツ業界関係者の多くはランニング人気は一過性のブームでなく、健康志向も背景に、続けやすい手軽なスポーツとしてすっかり定着し、競技人口増が今後も見込める有望な市場と見ているようだ。
 ホンダが9日発売した新型コンパクトミニバン「フリードスパイク」。ホンダとアシックスは、新型フリードの自在にアレンジできる広い室内空間を活用し、着替えもできるロッカーや化粧直し用のミラー、本物のシャワーユニットなどを備えた特別仕様のキャラバンカーを共同製作、「旅先ランニング」を切り口に共同販促を始める。
 今月の富士登山競走を皮切りに、アシックスがスポンサーをしている各地の競技会やイベントでのキャラバンカーの展示や体験企画を通じ、多彩なランニングシーンを提案する。
 健康や美容といったコト消費を切り口に、モノ消費を刺激することが有効といわれて久しい。消費不振が続く中、異業種との連携を含め、新たな動機づけの発信がもっとあっていい。

2010/07/09
 第7回アジアファッション連合会(AFF)大会が3、4日、中国・杭州で開催された。日本、中国、韓国、シンガポール、タイ、ベトナムの6カ国から約400人が参加。ファッションフォーラムでは「新世代とアジアのファッショントレンド」のテーマで相互交流したほか、AFFトップ会談も開かれた。
 トップ会談ではAFFウェブサイトやアジアデザイナークラブなどについて意見交換した。新世代ニーズの研究はファッション産業の発展には重要だし、AFFウェブサイトはビジネス展開に有効で、ともに時代の要請ともいえるテーマだ。
 アジアは消費市場としてだけではなく、ファッションの発信基地としても重要度を増している。東京のストリートファッションは欧州コレクションに影響を与え、中国ファッション市場では80年代生まれの「80后」や「ポスト80后」世代がリードし、今後の鍵を握っている。米国の影響を受けつつも独自の発展を見せる韓国のサブカルチャーやスタイルも見逃せない。
 AFFウェブサイトやアジアデザイナークラブは、アジアのファッションビジネスやデザイナー活動を支援するツールやプラットフォームづくりともいうべき挑戦である。形が見えた時、アジアの新世代と多様性はどのような発信をしていくのだろうか。

2010/07/08
 海外で企業のトップを取材すると、部屋に世界地図を貼っている人が多い。当たり前の話だが、その地図は自国が中心に位置し、その周りに世界が広がっている。
 日中、都内で地下鉄に乗っていると、ガイドブックを片手にもった外国人観光客に出会う機会が増えているような気がする。先日、欧米人観光客が、ガイドブックと地下鉄の扉の上に貼ってある路線図を一生懸命に見比べていた。優に二駅分くらいはにらんでいただろうか。
 私も下車する時に路線図を見て「あっ」と思った。乗っていた地下鉄は郊外から乗り入れている私鉄の車両だったため、路線図の中心は私鉄線で、地下鉄路線図は隅にあった。駅名は漢字に加え英語も併記されていたが文字は小さく分かりづらい。
 政府が6月に発表した「新成長戦略」には20年初めまでに訪日外国人2500万人達成をめざすとした。経済波及効果10兆円、新規雇用56万人が見込まれるとの試算も同時に示した。日本人の個人消費が縮小する中で、観光立国はファッションビジネスにも期待の大きい分野だ。
 1日には中国人観光ビザが緩和された。先週末のテレビでは各地域で展開される様々なサービスが紹介されていたが、外国人観光客に日本を楽しんでもらうために改善すべきところは、まだまだありそうだ。

2010/07/07
 北海道・千歳市のアウトレットモール・レラは、このほど北海道産品にこだわった大型ショップを開設した。新千歳空港に近接した立地を生かして、道内外客だけだなくアジアを中心にした海外客に対して積極的に道産品を紹介するねらいと、道内の経済活性化に少しでも役立てようという思いからだ。
 北海道新発見ファクトリーは、道内14の日本酒の蔵元や四つのワイン工場、焼酎の蔵元など、北海道の酒類にこだわった道内でも初めての大型ショップ。担当者が蔵元を一軒一軒歩いて口説いた苦労も大変だったが、蔵元には同じ土俵で自慢の酒をアピールし、新たな客と販売チャンネルを確保する利点もある。利き酒会や新作発表会なども予定しているというから、レラの新たな名物店となるばかりでなく、活性化にも効果を発揮するだろう。
 ファクトリー内には「ショップを出店したい」「試したい」と思う道内在住の個人や企業に対して、催事スペースや販売台を提供するユニークな取り組みもある。期間は2週間で出店料は売り上げの15%。施設の新たな魅力として注目したい。
 車で90分圏内・300万人を、二つの本格的なアウトレット施設がしのぎを削る環境に、新たな集客装置としての期待とともに道内経済活性化に役立つことを願いたい。

2010/07/06
 98~99年ごろ、独立デザイナーによるインディーズブランドのブームがあった。専門学校を出た学生がいきなり独立してブランドを立ち上げ、ファンをつかむといったことも珍しくなかった。全国的な現象だったが、神戸デザイナーコンポーズド、大阪コレクション・ワークショップといった場があったことで、関西からの流れが強かった記憶がある。セレクトショップばかりでなく、百貨店も盛んに取り入れ、受け皿となっていた。ただ、2000年に入るとブームは沈静化し、多くのデザイナーが売り場を失った。
 現在、大量の新進デザイナーを生み出しているのが、神戸のビジネスマッチング事業「ドラフト!」。02年から始まり、8回実施して182組が市場にデビューしている。最大の特徴は、著名セレクトショップがクリエーターの作品を見定め、行けると判断すれば、買い取り条件で販売することにある。
 クリエーターにとっては、売り場が確保できるとともに、代金回収の心配がなく、クリエーションに専念できる。神戸だけでなく、全国的に販売されるブランドも多くある。
 90年代末のブームはクリエーションを理解してくれる販路がなくなったことで収束した。9回目のドラフトも現在募集中で、8月末にはまた、新たなブランドが立ち上がる。

2010/07/05
 政府は今月から、中国人の個人向け観光ビザ(査証)の発給条件を大幅に緩和、富裕層に限定していた対象を中間層にまで広げた。百貨店業界ではこれを歓迎する声が多い。「ビザの発給条件緩和は弾みになる」。日本百貨店協会の外国人観光客誘致事業担当者はこう意気込む。全国百貨店の免税手続きベースの5月の売上高は前年同月比約1・6倍。国・地域別では中国本土からの観光客が最も多かった。この基調はしばらく続いている。
 都心店舗では中国銀聯が発行するデビットカード「銀聯カード」による決済が大幅に増加している。例えば西武池袋本店は3月以降、銀聯カードの決済の額と件数が前年比2倍以上。同店は昨年も、その前年に比べ約2倍だった。
 百貨店協会はこれまでも、外国人観光客との会話の手助けをする冊子の作成や、銀聯カード決済の普及などで会員企業を支援してきたが、こうした活動をさらに強めるという。
 中間層は富裕層ほど購買力はないとしても、発給対象が従来の約10倍の1600万世帯に広がったことで期待は高まる。当面の売り上げに加え、中国人観光客にアピールして店のブランド価値を上げれば、将来、中国に進出といったことが考えられるかもしれない。国内消費が不透明な中、外に商機を求める必要は高まっている。

2010/07/02
 6月12日から23日まで上海万博の会場で「コ・フェスタIN上海」が開かれた。コ・フェスタは世界最大規模の統合的コンテンツフェスティバルで、上海万博では合計47事業が実施され、うちファッション関連イベントは三つだった。特に屋外ステージで催された日本の“カワイイファッション”を紹介するイベントでは集客が多く、モデルたちも熱演して盛況だった。
 印象的だったのはカワイイファッションを着て参加したり、掲載している雑誌を掲げてモデルに応える観客もいるなど、中国にも根強いファンがいること。日本人モデルも中国人モデルもカワイイに差はないこと。観客には若者が多いが、年齢層がかなり広いことだった。
 カワイイファッションへの人気はアニメ、漫画、ドラマなども含めた、カワイくて洗練され、“人間を深くとらえている”日本のコンテンツやファッションの魅力。インターネットなどの発達で国境間の情報ギャップが少なくなると同時に、中国では80年代生まれの“80后”の世代が消費の中心になるなど、カワイイを受け入れる層が広がっていることが背景にあるとみられる。
 問題は日本のカワイイコンテンツやファッションの魅力を、最適な形でビジネスに結びつけることにある。

2010/07/01
 6月24日付本紙で09年度の小売業衣料品売上高のランキングを報道した。トップはユニクロの5280億円、2位はしまむら4060億円、共に前年比10%を超える伸び率を示した。第3位はイオンリテール、以後ワールド、そごう・西武、イトーヨーカ堂と続く。
 10年前の99年度を調べてみると1位はダイエーの5009億円、2位はイトーヨーカ堂で4254億円、3位ジャスコ4164億円とトップスリーを量販店が占めていた。ちなみに4位は高島屋、しまむらは13位1611億円、ファーストリテイリングが19位945億円だった。
 さらにさかのぼると、百貨店が上位に顔を出してくる。また、09年度4位だったワールドは、20年も前となると「小売り」部門ではなく、「アパレル卸」のランキング上位の常連だった。
 バブルの崩壊、失われた10年などを経て、繊維、ファッションビジネスの構造が大きく変わった。小売りを基点に見ると百貨店、量販店からSPA(製造小売業)へと主役の座が移った。
 製造、流通段階もこれに合わせて事業環境は大きく変化した。強いもの大きいものではなく、環境変化に対応できたものだけが生き残る。そしてその変化のスピードは速まっている。どの企業、どの業態が残り、発展するのか、5年後のランキングが楽しみだ。