繊研新聞掲載のコラム
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め・て・みみ/2010年08月
2010/08/31
中国やアジアに日本ファッションを売り込み、実績を築いてきた先達者たちが異口同音に強調するのは経営者の本気度や信頼の構築だ。
先日、開いた本社のセミナーでも「自らが尊敬されることが大切」「現地スタッフを信頼し、愛し、本気になって向き合うこと」「市場に根付く構えが必要」と強調された。「試しに進出して考えたい」と腰が引けていては取引条件や市場性・国民性、流通の違いを乗り越え、海外の競合企業との戦いでは負けるとも。
グローバルの時代は個々の強みや特徴を認め、生かす多様性の時代である。中国やアジアに売り込もうとするならば、日本市場だけでの評判ではだめで、ブランドのポジションを海外の人たちから見ても分かるようにしなければならない。
こうした非多様性を軸にして考えてしまうのはテクノロジーを背景に発展してきた近代工業化時代だからだ。技術が作り出した工業製品の基準は生産や販売の効率性だからだ。対して文化・カルチャーは多様性の産物であり、生活・文化の一部であるファッションも多様性を前提に成り立つものだ。
海外市場に売り込むのは非多様性のファッションであってはならなし、現地の生活者を見下したり、お試しの進出策であってはならないはずだ。
2010/08/30
今までが静か過ぎた。1ドルが84円台、83円台の円高になっても政府の目立った動きはなかった。政府の対応は静観に等しい。何もしてこなかった。具体策のない口先介入を市場は手詰まりと受け止め、一層の円高が進行した。日銀が腰を上げ、今週にも追加の金融緩和を決めると報じられると、85円台に値を戻したが、追加措置が市場の想定内にとどまれば流れは止まらない。
異常な円高は日本経済の回復基調に影を落とすどころか製造業を壊滅に追い込む。1ドルが200円を超えると安価な定番品が成り立たなくなり、150円突破で中級品が打撃を受け、100円を超えるとよほど特殊な商品か超付加価値品でなければ競争力を失う。すでに高付加価値商品でさえも海外に生産拠点が移り始めている。
製品の輸入浸透率が90%を超えるといわれている繊維産業にとっても、円高の定着、進行は大きな打撃だ。ただでさえ多品種・小ロット・短納期を要請され、採算ラインぎりぎりで操業している素材産地には、とどめの一撃にもなりかねない。
経営を維持できるかどうかの分岐点に立たされているメーカーは多い。一刻も早く円高対策に本腰を入れないと製造業が取り返しのつかない状況に追い込まれる。本気で円高に立ち向かう姿勢を見せて欲しい。
2010/08/27
「入館料を頂けるのなら、あり得るかもしれないな」。ある百貨店の営業責任者がつぶやいた。収益モデルや店舗運営のあり方について聞いていた時のこと。実際に検討している様子ではなかったが、この発想は一考の余地があると思った。
小売業は客数が大事。しかし、将来的にも客数増は見込めないと判断している百貨店は多い。客数増を目指さないとすれば、“顧客”に対象客層を絞るような店舗運営を進めれば、収益のベースとしての入館料が必要。営業責任者には、そういう思いがよぎったのだろう。
博物館など入館料のいる施設は意外と多い。年間2500万人強が訪れる東京ディズニーリゾートもそう。同施設を運営するオリエンタルランドによると、「ゲスト一人当たりの売上高」は09年度実績で9743円。うちチケットは半分弱の4206円。商品販売は3377円、飲食2160円。入館料を払い、買い物もしているわけだ。
現状の百貨店の品揃えで、入館料をとることは難しいかもしれない。とはいえ、ネット販売などショッピングの利便性がどんどん高まるなかでは、リアル店はわざわざ行くところと考える消費者が増えていく可能性が高い。入館料の有無は別として、入館料を払ってでも、と思わせるぐらいの魅力が問われる気がする。
2010/08/26
先日発表された7月の化学繊維の生産量は前年同月を22・5%上回った。これで8カ月連続で前年の水準超えだ。これだけ見ると化合繊の需要が大きく回復してきた感がする。
比較対象となる09年の前半はリーマンショックによる世界同時不況の影響を脱し切れていない時期だ。1~6月の上半期累計で見ると10年の化合繊生産量は48万6000トン、09年の同期は39万5000トンで23%ほどの増加である。しかし、リーマンショック前の08年同期の生産量は56万8000トン。10年と08年を比べると生産量は14・4%減少している勘定だ。合繊メーカー首脳が口にする「リーマンショック前の8掛けの回復感」が数字上でも立証される。
ただ、ことはそう簡単ではない。化合繊織物の主要産地である北陸3県の10年1~6月の織物生産量を見ると前年比13・3%減となっている。単月では6月にようやく前年の同月を上回ったが、累計ではまだ前年同期に追いつけない。これを08年同期と比較すると45・1%の減少である。
染色加工段階で見ても長繊維、短繊維とも10年上期の織物染色は前年同期比でも減少、08年対比では28・1%の減だ。大手の合繊メーカーと産地、テキスタイル企業との回復感への温度差は大きい。川中のテキスタイル製造段階まで生産が回復しないと、本当の明るさは見えない。
2010/08/25
消費税増税が話題になっているが、EU(欧州連合)では「ロビン・フッド税」と呼ばれる「銀行税」の導入論議が盛んだそうだ。
納税は義務ではあるが、低いに越したことはない。民衆の味方、プラスイメージのロビン・フッドを冠にした税金にはどんなイメージを持つのだろうか。
ロビン・フッドは英国中世の伝説的英雄というのはご承知の通り。シャーウッドの森に仲間と住み、横暴な貴族や役人から金品を奪い、貧しい人々に分け与えたといわれる。同じ勧善懲悪でも、将軍家につながる「黄門様」とは一味違う。米ニューヨークには、ロビン・フッドの名前を付け、貧困問題で活動する財団もある。
英国の労働組合や環境団体などが提唱しているロビン・フッド税は、投機目的の国際通貨取引にのみ課税、税収は貧困の削減や公共サービスの維持、環境問題などの財源にするという。日本でも、不良債権を抱えた金融機関救済の公的資金注入が、大きな議論を呼んだ。その是非は別にしても、投機目的の金融取引とそれに伴う不良債権処理が、中小企業への貸し渋りや貸しはがしにつながったことに、首を傾げた人は少なくないはず。
消費税増税は景気の行方に冷や水を掛けかねないが、ロビン・フッド税には舞台の大向こうから掛け声が聞こえてきそうだ。
2010/08/24
今秋は中国人ツアー客で売り場が埋まるかもしれない。というのは中秋節が9月22~24日、国慶節が10月1~7日と続くからだ。
中国人観光客の買い物は家電や雑貨、ファッション商品が引っ張っているが、その興味は日本の品質や健康、生活・ライフスタイル全体に及んでいる。この現象は70年代に日本人が米国文化にあこがれ、買い物したのに似ている。
国ごとの経済成長の不均衡が消費を生む。米文化にあこがれた日本が次に迎えたのは「1億総中流」と呼ばれた経済成長と消費の発展であり、対する米国では住宅バブルなどはあったものの、所得の二極化が進行した。
その図式は今の日本と中国の関係に当てはまる。つまり経済成長を背景に中流が拡大する中国と、中流が崩壊して所得の二極化が広がっている日本だ。
中流が引っ張る経済はモノが充足していない時期である。作り手や売り手は品質や価格を軸に中流層に高級感を打ち出すことがカギだ。しかし、二極化の成熟期には単なる豪華、ぜいたく、高額は通用せず、作り手や売り手の信念、こだわり、商品が発信する情報にポイントが変わる。
今秋の“中国人特需”を、中国人と日本人の買い物の違いを冷静にとらえる機会にして、次の一手を考えたいものだ。
2010/08/23
庭の片隅で作っている野菜に元気がない。朝、水をやっても夕方には葉がしおれる。実が付かないし、付いても大きくならない。成長しようという気力がなえてしまっている。今年の猛烈な暑さと強烈な日差しで、植物もバテたようだ。昨年は夏の長雨で根も茎も実も腐った。その前の年は厳しい暑さと雨不足で干からびてしまった。毎年、猛暑か冷たいかの極端な夏が続いている。ちょうどいい夏の記憶がない。
パキスタンでは大雨による洪水が下流域にまで広がり、パンジャブ、シンドという綿花の一大産地も被害を受けた模様だ。100万俵の減産も伝えられ、高止まりしている綿糸相場への影響も懸念されている。
ロシアでは100年ぶりの猛暑に見舞われ、干ばつ被害で1000万ヘクタールが壊滅状態となった。作付け面積の実に20%に当たる。小麦の予想収穫量は国内消費量に等しく、輸出に回す余剰分はない。世界有数の小麦輸出国が輸出を止めれば、08年の食糧危機の再燃が現実味を帯びる。
昨年豊漁だったサンマが今年は一転して不漁。昨年のように1週間に3日食べられるような価格ではない。スーパーの野菜も高値が続いている。石油の価格が収まってきた矢先なのだが、何かが下がれば何かが上がる。何もがちょうどいい状況は望めない。
2010/08/20
わざわざ行くこともあるが、たまに行く全国チェーン店ではない食品スーパーでは、かごいっぱいになるほど買い物する場合が多い。一方、日常的に利用する近所のスーパーでは、チラシ掲載の特売品ほか、目的のモノだけの購入にとどまりがちだ。
考えてみると、よく行く店は商品の配置が分かっているから、見る所や通る道が決まってしまっている。たまにしか行かないと、何か珍しい商品やお買い得品はないかと一通り店内を見て回る。すると、興味を引く商品が視野に入り、想定外の買い物をしてしまう。もっとも、食品の場合は一品単価が安いこともあり衝動買いを喚起しやすいが、衣料品はそう簡単ではない。
「大きくフロア改装したのに気付いていないようだ」「複数の新店を導入して半年たつのに認知されていない」。百貨店やファッションビルでこんな悩みを聞くことが増えた。館内の買い回り性向上を課題に挙げる大型店も多い。認知されない要因はさまざまだろうが、見るフロア、行く店、通る道を潜在的に決めている場合もある。
あるファッションビルは、今秋の新規ショップ導入に際し、エスカレーター付近の床にシールを貼って告知する予定だ。どのような内容にするかにもよるが、何もない床に描かれた“サイン”は意外と目立つ。
2010/08/19
先日内閣府が発表した10年4~6月期の実質国内総生産(GDP)成長率は前期比で年率0・4%にとどまった。リーマンショック後の世界同時不況、需要減退の影響を大きく受けた昨年1~3月のマイナスから一転、速報値だけをみると、09年4~6月に3・7%となって以降は3四半期連続で4%台後半の成長率を続けてきたが、一気に鈍化した格好だ。
エコカー減税やエコ家電ポイントなど政府の景気対策による消費の前倒しが一巡したことが原因か。春闘での賃上げは低調、夏のボーナスも低く抑えられたままで、雇用や社会保障の不安も募るばかり。加えて7月の参議院選挙へ向けて、与党党首が消費税増税を叫んだものだから、財布のひもは締めざるを得ない。薄々出始めていた景気回復感などすっ飛んでしまった。
7~9月は猛暑の影響で「夏物商品」が売れ、個人消費を少しは押し上げるだろうが、先行きは暗雲が広がる。
3月決算企業の第1四半期(4~6月)の業績は総じて好調。売上高は前年比2ケタ増も珍しくない。利益回復はさらに進み、リーマンショック前の水準に戻したところも少なくない。これを賃金引き上げや福祉施策充実など消費者が「安心」を実感できる個人消費に結びつけない限り個人消費が本格的に上向いてくることはない。
2010/08/18
「暖簾(のれん)」といえば、元々は防寒のために商家や旧家の中玄関にかける垂れ幕のことだったそうだ。それがいつか商店の軒先につるされるようになり、ちりよけや日よけにしたり、屋号などを染め抜いて看板として使われるようになった。居酒屋の縄暖簾に愛着を感じるサラリーマン諸氏は少なくないだろう。
「暖簾よく品物をはかす」ということわざにもある通り、暖簾は店のシンボルであり、伝統や信用を示すもの。手応えのないことを言い表す「暖簾に腕押し」では元も子もないが、年季を果たした従業員が独立する際に与える「暖簾わけ」は、信用や営業権の価値そのものを表している。暖簾は目に見えない店の収益力ともいえる。。
企業のM&A(合併・買収)が当たり前になった今、「のれん」という言葉を改めて耳にしたり目にする機会が増えた。通常なら、のれんという言葉は財務諸表の中に記述されないが、会社を買収した際に、買収した側の貸借対照表上に出てくるからだ。
買収された企業の純資産と買収価格が一致すれば「のれん代」は出ないが、買収価格が純資産を上回ればのれん代、下回れば負ののれん代が発生する。「暖簾にもたれるよう」は頼りにならないという意味だが、もたれる価値のある「暖簾」は企業の原動力でもある。
2010/08/17
売れ行きの悪化を食い止め、売り場に活気と明るさを取り戻そうと、販売員のロールプレーイングコンテストを行う小売業が増えている。どの会場も参加者の迫真の“演技”と応援団の熱気に包まれる。
接客・販売は野球の打率に似ていると言われる。打者(販売員)は毎打席(接客)、一球(ひと声)に全神経を注ぎ、相手バッテリー(客)と駆け引きして瞬時に球種、スピードを見極めて全力で一振りする。真剣勝負の瞬間の積み重ねが結果となって残るのが打率(売り上げ)だ。
客の好みは一人ずつ異なり、来店動機もまちまちだ。接客では瞬時には客の目線や手足の動き、なにげないひと言も逃してはならいと強調される。凡打が続くと、あっという間に落ちる打率と同じ。走者一掃のホームランや起死回生の長打の華やかさもないが、一打席も心を緩ませない心がけが必要だ。
ところが、イチローのような不世出の打者でも結果を出すために毎日、何百回も素振りし、バッティング練習で打ち込みに時間を費やすのに、販売では教育も、そこそこに実践の場に立つケースが多い。毎日、素振りを繰り返す習慣も見られない。
モチベーションを向上する効果は報酬アップが大きいと言えるが、もう一つのロールプレーイングの効果である、「日々での素振りの習慣」が浸透し、定着できる販売・接客はもっと高度化すると思えるのだが。
2010/08/16
戦没者の遺品などを展示してある記念館にモスグリーンの軍服が飾られている。ウールサージの上質な生地は65年以上がたっても劣化せず、元の姿そのままに置かれている。愛知県津島で片岡春吉がウールの和服用織物を織ったのが明治34年、大正期にはラシャやセルジスなど洋服用梳毛織物も尾州で量産するようになったから、日本製の生地だろう。品質の高さに驚かされる。
円高に歯止めがかからず1ドルが85円を突破し、最高値の更新も現実味を帯びる。振り返ると、プラザ合意の85年から円高の繰り返しだった。95年には史上最高値の79円75銭を記録した。
円高に振れるたびに製造業の海外移転が加速する。80年代から90年代前半は岐阜地区の縫製業が先駆的に中国に進出し、95年の円高からは糸や生地メーカーも進出を始め、材料の現地調達も急増した。現在では繊維製品の輸入浸透率は90%を超え、国内の製造メーカーは瀬戸際に立ち続ける。
どん底の不況期のこの円高。市場は価格指向から抜け出せず、小売業やアパレルメーカーはコストメリットを求めて海外調達に依存する。残った国内メーカーをさらに追い詰めている。
戦地から帰還し60年。焦土からの奇跡の復興を見てきた軍服の目に、今、何が映っているだろうか。
2010/08/13
低価格競争からの脱却を模索する動きはファッション業界だけではない。外食産業でも、客単価アップに取り組む動きが広がっているようだ。飲食ビジネスの実務情報誌『日経レストラン』8月号に、「ストップ!値下げ競争・こんな時代に客単価を上げる方法」という特集があった。
同誌アンケート調査の一つとして、料理価格の変更後の業績変化をまとめている。値下げした店よりも値上げした店の方が、業績が良くなったと回答する割合が高いという結果が出ていた。単純な値上げではなく、価値が価格を上回っていることが、やはりポイントのようだ。
特集では、値上げテクニックとして「メニューを増やせ」「ボリュームを上げろ」「お客に適正価格を聞け」など五つ提案している。ただ単純に実践して業績が上向くわけではない。例えば、ボリュームを上げる料理の選定がある。また、ボリュームを少なくし、一品単価を下げることで、一人当たりの注文点数増につなげている例もあった。
成果を挙げている事例で感じるのは、競合店など商圏内の動向を考慮して、きめ細かに商品戦略を立てていること、客層や購買(注文)行動の変化を認識して対応していること。加えて、“トレンド”に安易に対応していないことだろうか。
2010/08/12
米国でバスが横転、邦人が死亡した。先月には鉄道先進国と言われるスイスで氷河鉄道が脱線し、邦人ツアー客が巻き込まれる事故があったばかり。公共交通機関の事故が続いている。
事故と言えば、12日は乗員、乗客520人が犠牲になった日本航空墜落事故からちょうど25年目となる。夕刻の羽田発伊丹行きの同便は繊維業界の関係者も多数利用していた。駆け出し記者だった当時、乗客名簿で名前を確認していた時の記憶がよみがえる。
日航機事故から20年たった05年4月にはJR西日本福知山線の事故で107人が犠牲になった。時間に正確で世界的にもトップレベルの安全性を誇ると思われていた日本の鉄道だが、実は乗客の安全よりも金もうけを優先させていたことが引き起こした惨事だった。ずさんな安全対策が露呈しただけでなく、その後の隠ぺい工作などを見ても企業の社会的責任が厳しく問われるものだ。
このころ以降だろうか、日本の品質や安心、安全に対する信頼が大きく揺らぎだしたように思う。リーディング産業であり、そのトップでもあるトヨタ車の大量リコールなどはその象徴だ。
繊維、ファッションにとっても対岸の火事ではない。低価格を追求するあまり、商品の品質を低下させてはいまいか。今こそ世界に誇れる「日本製」を取り戻そうではないか。
2010/08/11
会社更生手続き中の日本航空と管財人の企業再生支援機構が、8000人を超える早期退職者の募集を再生計画案に盛り込む方向で調整しているという報道があった。再建に向けて汗を流している現場の人間からすると、どうにもやるせない話だ。銀行から再融資などの金融支援を求めるには、一層の合理化が欠かせないというのが理由ようだが、日航の疲弊の度合いは想像以上だったということなのだろうか。
会社更生法や民事再生法などの再建型法的整理の場合、運転資金の調達などの資金繰りが再建への決め手になるのは日航の例を見ても明らかだろう。中小企業が選択するケースの多い民事再生法は、支払い不能や債務超過に陥らなくても申請できるが、手続きを開始しても、運転資金の行き詰まりから、破産に移行する例は決して少なくない。
法的手続き後の債権は、優先的に決済されるとはいえ、取引先(債権者)からすると不安、懸念はぬぐえない。仕入れも資金繰りの範囲内に縮小せざるを得ず、短いサイトでの現金決済など条件も厳しくなるからだ。それでなくても、従業員の給料などを考えると、一定の運転資金は必要。
法的整理の申請も資金確保などのタイミングを逸すれば、従業員や債権者の被る負担が大きくなるばかりだろう。
2010/08/10
高速道路でトイレ休憩や食事休憩をとろうとすれば必ず立ち寄るのがSA(サービスエリア)である。どのSAを選ぶのかに積極的な理由はなく、たまたま近くを走行していたから飛び込む。これまでSAといえばどこも似たような施設、扱っている飲食も物販もほとんど同じだった。
そのSAが変わりつつある。地元の特産品や人気の名店など、そこに行かなければ手に入らない、あるいは食べられないという差異化された物販・飲食の導入が進んでいる。施設機能も多様化し、ホテルやシャワールームを併設したSAも増えた。ファッション系ショップの導入も本格化する。SAはたまたま立ち寄るところから、わざわざ行くところに変身しようとしている。
中部地区の高速道路のSAとPA(パーキングエリア)を運営する中日本エクシスによると、管轄する143のSA、PAの立ち寄り客は、1施設当たり平均で年間147万人。143施設合計では2億人が利用している計算になる。人気のSAは平日で1日3万人、休日ともなると4万人が訪れる。
エリアに隣接した一般道沿いに駐車場を設け、高速道路を走行しなくても利用できるような形態も定着している。集客力や施設機能など商業施設としてのポテンシャルは非常に魅力的だ。
2010/08/06
全国百貨店の売り上げは、6月まで28カ月連続で前年割れ。衣料品部門は36カ月連続の減収で、3年前年割れが続いている。単月でも増収に転じるのはまだ先のように思うが、各店単位でみると前年実績を上回る店が増えている。
大手が発表した7月の速報値をみると、三越本店の店頭売り上げや伊勢丹本店、高島屋新宿店、大丸札幌店、阪神百貨店梅田本店などの主要店が前年実績を上回った。なかには数カ月連続で伸ばしている店もある。このほか地方を回ってみると、厳しい経済環境下に置かれているところでも、減収に歯止めがかかりそうな店があった。
健闘している店と前年割れが続く店との違いは、どこにあるのか。競合店の閉鎖など置かれている環境の違いもあるから一概には言えないが、何も手を打たずに増収になることはない。例えば、売り場を楽しめる場に位置づけ、多様なイベントを実施して集客に結びつけている店がある。
また、売り手側が魅力的な商品だと思っていても、多層階かつ広いフロア面積の中では埋もれがち。1階のイベントスペースなどで紹介することで、急激に認知度が高まった事例は少なくない。集客力のあるブランド導入や改装に頼らずとも、少ない投資で売り場を活性化する策はある。店長の裁量で売り場は変わる。
2010/08/05
3月期決算企業の第1四半期(4~6月)業績発表が始まった。素材メーカー大手のうち旭化成は22・2%、帝人は6%、セーレンは19・4%の増収。各社揃って、営業利益段階で前年同期の赤字から黒字化した。
第1四半期は多くの企業で、大幅な増収増益が見込まれる。ただ、前年のこの時期がリーマンショック後の世界同時不況の影響から脱しきれない頃ということを考えると、「大幅増収増益」は手放しで喜べるものではない。ちなみにリーマン前の08年の第1四半期の売上高と比べると、旭化成は9%、帝人は19%、セーレンは23%売上高を落としている。「リーマンショックで世界市場は20~30%ほど縮小した」ことが決算数字からもくっきり浮かび上がってくる。
先行きの見通しも、安泰とはいかない。多くの企業は4~9月、業績回復基調を見込むが、下期予想となると雲行きが怪しくなる。エコカー減税、家電エコポイントなどの政府の経済対策が景気の下支えとなっていたが、下期にはこれが消える。自動車メーカーも下期販売台数は落ち込みを見込んでいる。
世界経済を引っ張っている中国も上海万博後の姿には不安が漂う。ギリシャ問題など抱える欧州経済の復調は当分望めそうもない。不安材料いっぱいの難しい情勢だけに経営のかじ取り、手腕が問われる。
2010/08/04
商業施設の価値を測るものさしといえば、一つは家賃。テナント家賃は高ければ高いほど、施設の価値も高いということになる。ファッションビルなどの収益不動産の賃貸管理・建物管理などを受託するプロパティーマネジメント(PM)も、家賃の最大化が目的だ。それにはディベロッパー自らも施設の集客力を高める取り組みが欠かせない。話題性のある人気テナントの誘致合戦が繰り広げられるのもそのためだ。
もっとも、旬のテナントに依存した集客は、結果的に同質化を招きかねない。集客が低下すれば、売り上げも低迷し、テナントの退店、後継店確保のための無理な穴埋め、それを嫌うテナントのさらなる退店、売り上げの一層の低迷という悪循環にも陥る。
いまの商業施設にとっては消費者に的確な購買動機を提供し、テナントの営業力強化を下支えする自らの“マーケティング機能”が求められている。ファッションビルやSCが乱立する時代だからこそ、独自のテナント発掘や売り場の編集など、単なる不動産管理業ではないマーケティングセンスが欠かせない。
商業施設の乱立による売り場面積の拡大は、売り場効率の低下にもつながるだけに、マーケティングセンスがなければ、施設間競合、地域間競合の中で埋没し、家賃を下げてもテナントを集めるのは難しくなる。
2010/08/03
本紙に執筆している小松博さんが代表の真珠科学研究所が、真珠のネックレスを磨く小型のクリーニングマシンを日本大学工学部と共同開発した。
真珠は1ミクロンのカルシウム層が幾重にも重なってできている。そのため長年、空気や汗に触れると表面が劣化して輝きが鈍くなり、黄ばんだりするが、表皮の1層をむき取るだけで新品の色、つやを取り戻すことができる。既存の手法は一度ばらばらにして磨いて戻すため「他人の真珠が混じった」などの苦情が多かった。
小松さんらが開発したのは研磨剤を入れたブラシで磨く機械。小型・軽量化も実現し、ネックレスのまま目の前で磨ける。使用には事前研修を義務付けているが、すでに美術品などで依頼が増えている。
愛用の真珠を長く使い続けて欲しいというのは小松さんの願いだった。日本は真珠の輸出国で、70年代から国内で市場を拡大してきたため、日本の家庭に眠る真珠は500万本と推定されている。研磨料2000円で1兆円の新需要が見込まれることになる。
クリーニングによって真珠売り場に客足が戻るだけでなく、真珠の魅力を再認識する消費者が増えることを小松さんは期待する。
目先の売り上げばかりでなく、商品の魅力を常に引き上げる努力がなければ市場は衰退していく。
2010/08/02
本紙の調査によると、09年度のメンズアパレルメーカー上位100社の総売上高は前年比6・7%減の6083億円。97年度から13年連続の減少となった。97年度の総売上高は1兆622億円。顔ぶれの入れ替わりはあるが、上位100社の売上高規模はこの間に約4500億円も縮んだ。
97年度は上位100社のうち過半の55社が増収。上位50社では半数の25社が増収だった。しかし09年度の増収は100社中19社、上位50社では8社にとどまる。
メンズアパレルメーカーの苦境が鮮明になるのは10年前。99年度の上位100社の売上高は5・2%減、00年度は7・1%減と90年代初めのバブル崩壊時に並ぶ落ち込み幅となった。00年度の上位100社のうち増収は28社だけだった。その後、減収幅が一時的に改善したが、リーマンショックで再び悪化した。
販路別では、10年ほど前から百貨店での落ち込み幅が大きく、量販店も低迷。一方で直営店比率が高まってきた。しかし09年度は直営店の勢いも失速、唯一伸びたのは無店舗だった。インターネット販売に乗り出す企業が増えていることがうかがえる。ネット販売の規模はまだ小さい。しかし、将来の布石を打ち、試行錯誤でノウハウを蓄積することが、今後に大きな影響を与えるかもしれない。
