繊研新聞掲載のコラム

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視点/2009年07月

2009/07/31
 ショールーム
 「今の日本はショールーム・バブルのような状況です」とショールームの社長から聞いた。5年前はショールームやセールスエージェントもそんなに多くはなかった。その後、デザイナーの起業ブームとともにずいぶん増えた。
 独立したてのデザイナーにとって、社内にPRや営業担当を置くのは大変なこと。セールスやPRを担ってくれる社外の機能を活用することも多い。結果、“ショールーム・バブル”というわけだ。
 「問題は以前とショールームの経営が変わっていること」とその社長。今は、10ブランドくらい扱わないとショールーム経営が難しい。たくさん扱うから目が行き届かない。ブランドを育てるというショールームの基本から離れて、孵化(ふか)機能として問題があるという。日本は卸価格の10~15%がセールスコミッションだが、海外ではもっと高い。だから少ないブランドでも経営が成り立つ。ショールーム本来の役割を考えながら、コミッションの率も見直す時期かもしれない。(拓)

2009/07/30
 掛け率引き上げ
 百貨店に対して、納入掛け率の引き上げを求める声がアパレルメーカーの間で一段と強まっている。この間、百貨店でも加速している価格引き下げの動きが一つのきっかけ。「百貨店に求められる品質を保ちながら、価格を下げるためにはアパレルのコスト削減努力だけでは限界。掛け率を少しでも上げてもらわないと利益が出せない」からだ。実際に価格戦略品や従来よりも価格が安いブランドを納入する条件として掛け率の引き上げを要請するアパレルが増えており、条件を受け入れる百貨店も多いようだ。
 百貨店の値入れ率の高さはかねてから、業界で問題となっている。それだけに、部分的とはいえ、引き下げの動きがあるのは、特にアパレルにとって歓迎すべきことだ。これまで百貨店に出店できなかった企業も取引しやすくなる。
 ただし、その前提にあるのは売れる商品開発と売るための仕掛けだ。掛け率がいくら上がっても、売れなければ利益は出ない。結局は建値消化率を上げることが、百貨店とアパレル双方に利益をもたらす。(有)

2009/07/29
 中折れ人気だが…
 中折れ帽子が売れている。トレンドの甘辛コーディネートにぴったりのアイテムとして男女問わず人気だ。帽子一つでいつもの着こなしに変化を付けられるとして、節約志向の消費者にも受け入れられているようだ。久々のヒットで、帽子業界は好況に沸く。
 ただ、気になったのは、あるメーカーで中折れが売れた理由を聞いたところ、コーディネートの観点から明快な回答を得られなかったこと。これは数年前にキャップがヒットしたときも、同様だった。これでは、精度の高い需要予測ができないのではないか。実際、小売りサイドからは、「在庫があれば中折れはもっと売れた」と販売機会ロスを嘆く声が聞かれた。
 帽子に限らず専業のメーカーや問屋は、扱っているアイテムだけに目が行きがちだ。だからこそ、専門性にたけた商品開発もできる。ただ、せっかく来たチャンスを取りこぼすのはもったいない。ぜひコーディネート研究の励行を呼びかけたい。(潤)

2009/07/28
 欧州の素材コスト
 最近耳にした話だが、イタリアなど欧州から調達する素材コストが下がっているという。一時の円安ユーロ高から円高ユーロ安に一転した為替事情もあるが、それだけが理由ではないらしい。昨年秋以降の世界的な不況で、需給関係が大幅に緩和しているためだ。
 あるブランドの担当者によれば「従来はイタリア製のビスコースを使っていたが、来年の春夏物はシルクに切り替えても、製品の価格は前年と同じレベル」。欧州では有力ブランド、メゾンの破綻(はたん)、工場の休業なども少なくないだけに、現地の生地メーカーも売り先の確保は優先課題。価格もこれまでの強気姿勢から一転しているという。規模の小さいブランドでも、無地物なら現地の素材メーカーと共同開発する形で、ロットを大きくすることもできる。その一部を引き取れば実質の値引き効果が生まれる。
 最近は、購買促進を狙って値ごろ感のあるエントリープライスを導入する海外の有力ブランドも少なくないが、こうした欧州の素材事情も背景にあるのかもしれない。(嘉)

2009/07/27
 人材育成
 大手呉服専門店の苦戦が続いている。過料販売問題に端を発した、和装業界全体にわたる信用の低下により信販の規制が強化され、催事販売の大幅縮小が余儀なくされた。加えて景況感の悪化が追い討ちとなり、店頭での客単価の下落、客数減への打開策が見えない状況だ。
 その中で各社が注目しているのが、店舗スタッフを対象にした人材育成だ。店頭での立ち位置、姿勢や歩き方、来客の迎え方、接客態度や言葉遣い。掃除や商品の並べ方など、基本動作をあらためて徹底する。新人はもちろん、ベテランや中堅スタッフに対しても、基本動作を再徹底することで、消費者の目に映る、呉服専門店のイメージを変えるという視点だ。
 パートやアルバイト中心だった店舗スタッフを正社員化する動きもある。もはや単なる教育の強化や人材の流出防止策ではなく、生き残り策として腰をすえた取り組みがカギと言えそうだ。(沖)

2009/07/25
 タテ割りの崩壊
 アパレル業界が低迷する中、靴下SPA(製造小売業)は好調だ。靴下専門店「靴下屋」などを展開するタビオは、2、3月の売上高が前年同月を下回ったものの、4月以降は回復している。「落ち込んだのは新組織の立ち上げが遅れたため」(越智勝寛社長)だという。
 新組織は社内を斜め軸に動きながら、マーケティング戦略の立案、ジョブローテーションの実施などの目的を持つ。「本当の意味でのセクショナリズムの崩壊を目指した」。適材適所を考えながら、まず目立つところから人事異動を行い、できるだけ多く人を動かすことを心がけた。企画や営業など部門をまたぎ、異動が間違っていると判断したらすぐに戻すと決めた。
 通常、人事異動は一時的な戦力ダウンとなるが、「部署異動は自分磨き。友好的なけんかならどんどんしてもらって結構。フォローはきちんとしますから」と、マイナス面よりも“化学変化”による人の成長が業績好調の一因になると期待している。(正)

2009/07/24
 メード・イン・ハワイ
 ハワイのサンダル工場の社長さんに取材した。戦後間もない頃はハワイ全島で20を数えたサンダル工場は80年代後半には5社に減り、現在はもはや2社しか残っていない。しかも今回取材した以外のもう1社は名前だけが残り、生産は中国に移転した。
 社長さんの工場は現在も「履き心地が良く、丈夫なサンダルを地場雇用、現地生産で売ることにこだわっている」。確かにハワイ伝統の製品がアジア生産なんて悲しいですね、と言うと、「いや、たくさん売ってお金をもうけるにはアジア生産のほうが都合がいいでしょ」と案外さばさばした答えが返ってきた。
 「どの道を選ぶかは経営者次第だよ」と社長さん。「メード・イン・ハワイ」と刻印したこのサンダルの売れ行きは今年も日米双方で順調だ。「たくさんは作れないし、大きなビジネスにもならないけど、うちしか作れないものを提供することに意味がある」。景気の悪い時期だけに、その言葉はやけに響く。(均)

2009/07/23
 BtoEって何?
 EC(電子商取引)の取材をする機会が増えた。「BtoB」「BtoC」といった用語は頻繁に登場するが、最近は「BtoE」という用語も使われるそうだ。「BtoE」のEは、被雇用者を意味する英語「エンプロイー」のEのこと。
 販売員に自社の製品の着用を義務付けている企業は多い。消費者と具体的に接客するわけだから、年に1着でOKというわけにはいかない。必ず複数着を購入する必要がある。では、自社商品を頻繁に購入できる給与をもらっているのかと言えば、「不十分」というケースも少なくない。
プロパーでは買えない、バーゲンでもハードルが高いという従業員向けのECが「BtoE」というわけだ。
 価格はバーゲンよりはるかに安い。だけど、そんな値段で売っていることを消費者には知られたくはないから、サイトは外部からは入れない仕組みだ。
在庫はどんどんさばかなくてはならない、けれど消費者のブランドイメージは落としたくない。そんなニーズは強い。「BtoE」サイトはどんどん増えていくのかも知れない。(育)

2009/07/22
 下取り
 以前、記者仲間で「新しい服は欲しいのだが、もうすでにたんす在庫が多くて買えない」という話をしていた。新しい服を着る楽しみはあるのだが、すでに服がたくさんあり、新規購入には抵抗感、罪悪感がある。
 量販店などでは今春「下取りセール」が一気に広がった。超低迷が続いていた衣料品の集客、売り上げには多少貢献したようだ。そのため秋物の立ち上がり時期にも継続を予定する店が多い。一方で下取りセール割引の利用率が20~30%にとどまるなど「服を処分に来る人が少なくない」という実態も。「割引はいらないので、服を引き取ってほしい」という声も多かった。
 みんなたんす在庫に困っている。なぜか服は捨てにくいという人が少なくない。靴などのように傷みがはっきりしないので、いつか着るかもと、つい残してしまう。ドイツなどでは古着回収システムがあるようだ。日本も行政などが古着回収を行えば、もう少し衣料品業界も買い替え需要が喚起されそうな気もするのだが。(茂)

2009/07/18
 町づくり
 中心市街地や地域商店街の活性化法など、大型SCの攻勢で寂れたエリアを救う法律が目立つ。今さらといった感もあるが、消滅する前に行政と業者、住民が協力して手を打つ最後のチャンスだ。
 カギとなるのは補助金を勝ち取る企画力。地域の特性を理解し、人と人、物、コトとの交流、そして実際に売り上げにつながるようなアイデアが出て採用されることが重要だ。
 しかし、歴史のあるエリアには固定観念と利権に捕らわれた「名士」がおり、新しい人材や方策を否定することが多い。町づくりとは何かを皆で一緒に考える姿勢こそが大切なはずなのに。
 その“障害”を乗り越えるにはエリアや住民、商売人、郷土に愛情を持って最後まで面倒を見る姿勢を持つキーパーソンの存在が不可欠だ。愛知県常滑市で観光と開発に尽力する雑貨メーカーの社長もその一人。
 物作りとマーケットを熟知するから求心力を持つ提案ができる。商売人の底力に期待は大きい。(津)

2009/07/17
 感性を価値に
 国内で開かれた「インテリアライフスタイル・東京」や「デザイン雑貨EXPO」などの見本市で、バッグの出展が目に付いた。既存のメーカー・卸だけでなく、寝装品や畳地、金属パーツなどをメーンに扱う製造業の市場参入が増えつつあるようだ。
 異業種メーカーはいずれも「物作りの技術を生かしたい」とし、デザインや素材、色、柄に伝統などの独自の感性を込めて開発している。「従来にない商品としてバイヤーの関心も高い」という。
 一方、既存のバッグ企業も、モード感や意匠素材の導入などでファッションセンスを重視した付加価値商品の打ち出しを強め、新規販路の獲得に力を入れている。そのため、「ギフト系から生活雑貨系の見本市に乗り換えた」「ファッション系の合同展でアパレル向け販路を強化したい」とする傾向が目立ち始めた。
 消費低迷と価格抑制が続く中、市場打開の糸口として、感性を価値とする物作りと提案がバッグ分野に広がってきた。(阿)

2009/07/16
 祇園祭催事
 7月の京都は祇園祭の月である。17日はクライマックスの山鉾(やまぼこ)巡行当日だ。この日前後には待ち遠しい梅雨明けが宣言される。巡行前夜の宵山では、おはやしに誘われ街中はゆかた姿で彩られるが、梅雨明け時期に見られる突然の意地の悪い夕立で、浮かれ気分で出かけた人たちは散々な気分を味わう羽目になる。しかし、こうしたことが毎年繰り返されても、人々の出足は絶えない。
 祇園祭に絡めた各きもの問屋の販売催事の開催はこの十数年間で定着した感がある。それぞれが得意先小売りの消費者を対象に祭りの雰囲気の中できものを販売するものだ。行き過ぎは駄目だ。かつて、消費者不在のやり方が消費者の反撃に会い排除されてきた経緯がある。半面、徹底した消費者目線で適切に工夫された内容での催事開催は消費者に満足感を与え盛会となる。
 催事販売は外部には現れにくい中身だけに、とりわけ業者の自覚が問われることになる。常に消費者目線での展開が重要だろう。(陰)

2009/07/15
 新しい販売職
 繊研新聞社が来春卒業予定の専門学校生に行った「就職意識調査」で、多くの学生が希望職種にデザイナー、パタンナーを挙げた。しかしアパレル企業の企画職採用は少なく、大半は企画職には就けない。
 「デザイナーになるために専門学校に入ったのに求人がなく、あきらめるしかない」「デザイナーになる夢を捨ててでも、とにかく就職。フリーターでは生活できない」などの書き込みを読むと、就職前から夢をあきらめざるを得ない心境に胸が痛む。しかしデザイナーの必要性が低下した現状で、「もっと企画職を採用しては」と言っても、あまり意味がない。
 一方で、販売職の求人は一定数はあり、企画職志望の学生の多くが販売員になるのだろう。では、店頭で彼らの技術や能力を生かす手はないか。例えば商品の最終加工を客の目の前で行うとか、顧客の服を少しカスタマイズしてあげるとか。何か現実的なアイデアや手法があれば、店頭は、販売する場から、新たな価値を生み出す場に変わるかもしれない。(淳)

2009/07/14
 アイデア次第
 ある講演会に参加した時のこと。話も終盤に差し掛かった頃、講師が「会場のみなさんにプレゼントがあります。座席の下を探ってください」と切り出した。参加者がいすの下に手を伸ばすと、缶バッチ、アメ玉、オンラインショップの案内カードが入った小袋が座面の裏に張られていた。
 講師はジョニー・アール氏という米国の若い起業家で、ケーキ屋のようなTシャツショップ「ジョニーカップケーキ」が当たり、『ビジネスウィークマガジン』で08年の新鋭起業家にも選ばれている。
 プレゼントの中身はそう高価だったわけではないが、意表をついた渡し方にちょっとした感動を味わった。大金をはたかなくてもアイデア次第で人々の心に訴えられるというこの日の講演テーマを身をもって教えてくれた出来事だった。参加者の中にはオンラインショップにアクセスし、実際にTシャツを買った人もいたかもしれない。これもクチコミで広げてきたジョニー氏の戦略である。(恵)

2009/07/13
 曇り顔の理由
 念願のファッションビルに出店した、あるアクセサリー店。しかし、近況を聞くと浮かない顔。原因は、ディベロッパーによるハウスカードの割引セールにある、という。「出店して4カ月で、セールがもう3回あったんです。どうしてもそれに振り回される」と、ため息をつく。
 いくらセールで集客できても「お客さんがその日に財布を開ける回数は決まっている」。数あるテナントが勝ち取るためには、ノベルティーグッズや限定品を作ることが不可欠だという。「結局は、資金力のあるところが勝つんです。うちみたいな小さい店は太刀打ちできない」
 同店は落ち着いた空気感のなかで、思いを込めて商品を作っていることが伝わってくる。こういう店が、弱肉強食のサイクルに飲み込まれ、本来の良さが発揮できていない状況を残念に思う。自力で顧客を増やすのはもちろんだが、ディベロッパー側の協力があれば、可能性はもっと広がるはず。彼女たちに早く笑顔が戻ることを望んでいる。(金)

2009/07/11
 風
 風を感じる時がある。90年代後半、マルキュー系の韓国仕入れが一世を風靡(ふうび)、東大門詣でが話題になった。ところが00年を過ぎた頃に韓国を訪れると、何となく活気がない。不思議に思っていると、中国にバイヤーが殺到していた。明らかに風向きが変わった。
 「アパレル業界はトレンドを追いかけるのが商売。生産地の移転も他産業よりも早い」と言った人がいたが、歴史的にも、繊維、アパレル生産は「より安い場所」を求めて、移動を繰り返してきた。
 そして今、バングラデシュの話題で持ちきりだ。素材、物流の優位性から中国が今後も主役を担うことは否定しないが、バングラデシュへの風が吹きはじめたのが実感できる。
 バングラデシュが注目されるのは、ライバル国と比べた場合のコスト競争力、1億5000万人の人口が示す通りの豊富な労働力だ。低価格がもてはやされる日本市場にとっては大きな魅力に映るのだろう。不安定な電力事情、日本との距離といったデメリットはあるが、風は本物のような気がする。(稲)

2009/07/10
 福岡のコレクション
 3月に行われた第1回「福岡アジアコレクション」は多数の入場者を集め、6月のフォーラムで主催者の福岡アジアファッション拠点推進会議は「日本の4大コレクションの一つに位置づけられる」と報告した。
 ただ主催者の思いとは裏腹に、出展メーカーにはもやもやした不満がある。メーカーを交えた総括会議が開かれた様子はなく、例えば発表された「福岡ブランド」を売る際に、なぜネット販売が優先され、メーカーは解禁日まで待たなければならないのか、あるいはネットやオフィシャルショップでの売り上げがどうだったのか、など知りたいことが明らかにされていないという。
 主催者はすべて説明しているのかもしれないが、それがメーカーの心に届いていないのも事実だ。福岡のコレクションの主役は価値を生み出すメーカーのはず。少なくともコレクションに出展したメーカーが「自分たちの意見は無視された」と感じた運営方法には改善の余地があると思う。(龍)

2009/07/09
 適正価格
 「価格と価値のバランスが大事」「消費者は原価を見抜いている」などと言われる。でもファッション・衣料業界でこの言葉はどこか危うい。
 厳しい今夏の店頭でも売れているアイテムはある。メーカーは1200円の卸売価格で出したのだが、ある専門店では小売価格3900円で販売し、量販店は4900円、別の専門店では7900円や9800円などで並び、どれも順調に売れた。ネームは違うが、どれも同じ商品なのに、これだけ小売価格が違った。
 ショップのブランド力を武器に、仕入れ値が小売価格に占める割合を10%台にできる小売業がある一方で、価格を抑えた店がある。量販店は消費者の求める物を揃え、売り方を工夫すれば、価格訴求に走らなくてもすむことの証左でもある。
 このアイテムは秋も増産の計画だ。原価率10%で適正な小売価格とする理由を聞いてみたい。ファッションならOKなのか。(近)

2009/07/08
 展示会
 マルキュー系のショップ、ブランドで、展示会や内覧会を取りやめるところが出てきた。もともと展示会をしない企業が多かったのが、5、6年ぐらい前からだろうか、するのが当たり前になり、今またやめるという。
 店頭基点で、今売れるものを即作るのがマルキューショップのやり方だった。展示会は女の子たちへの影響力絶大な雑誌との連携をスムーズにするためもあったという。編集者に見てもらい、誌上で仕掛けてヒットにつないできた。
 それをやめるのは、載せれば売れる図式が崩れたということだろう。ネットにしても何にしても、“仕掛け”は単純に効かなくなった。さすがのマルキュー系も在庫の山を抱えるようになり、手法を考え直さざるを得ないという話も聞く。
 ヤングのトレンドをリードするショップが次シーズン何を売るのかは、業界の関心事だ。それは、こんなに売れてるという店頭の活気があってこその話。記者もその取材の方が血が騒ぐ。(赤)

2009/07/07
 トータルワーク
 最近はおしゃれにさほど関心のない人まで、洋服の選択がとても上手になった。しかも、この商品と決めて買い物するのではなく、とりあえず「見たいな」とか「見比べてみるか」という感覚が強い。まずはチェック、そして価格、雰囲気の良さ、そして着る頻度という順で判断して、購入に至る。
 リサイクル古着店では、そんな賢い消費者がいっぱいだ。ふらりと入店してくる顧客は、目当てのアイテムがあるとは限らないのに、ひとしきり物色。自分に合った「価値」を発見する。100円でも買わない一方で、デザインが古くても持っていないものなら、気にせず購入している。
 リサイクル店は宝探しの感覚もあるからいいが、新品店に顧客が求める要望はもっと高い。トレンド感、サイズ、色柄は、あって当然。しかもモノの良さと価格とのバランスがなければ、顧客は手にも取らない。
 商品、売り場、接客、在庫精度、販売員からの意見吸い上げ、そして顧客への伝え方まで、本部から売り場を含めた「トータルワーク」を、顧客が判断する時代になっている。(疋)

2009/07/06
 ヒットメーカー
 小型のキャリーバッグを探していた。出張時に使うものなので、間違わないよう人とかぶらず、軽くシンプルなものがいい。なおかつオジサンぽくないもので、出来ればこのご時世なので価格も抑えめにしたい。
 そんなわがままな条件をクリアしたキャリーバッグをネットで購入。後日、不在時に配達された商品を預かってくれた大家さん宅に取りに行くと、「そのメーカー、私ファンなの。ちょっと見てもいいかしら」と意外な言葉が。大家さんは旅行好きな80代半ばのマダム。聞けば、そのメーカーのバッグは、わずかな力でスムーズに押し運べる工夫があり、なおかつ腰掛けても大丈夫な強度がある。つえ代わりとしても重宝し、足腰の弱いおばあさん仲間はみんな持っているのと、実演つきでレクチャーしてくれた。
 記者は不勉強で、それまでメーカーの存在すら知らなかった。華やかにもてはやされなくても、ニーズに応えた商品は、求める層に確実に受け入れられていると実感した。(維)

2009/07/04
 プリウス
 大手アパレルの社長が、トヨタ・プリウスが好調なのは、価格を引き下げたからではなく、性能や使いやすさなど機能を高めながら、価格を下げたからだと感心していた。プリウスの商品価値を高めたことが消費者を引き付けたといえる。
 アパレル業界ではどうか。品質を下げて、値段を下げた商品があふれかえっている。ブランドイメージなど、お構いなし、価格競争ばかりで、商品価値は下がりっぱなしだ。先の社長も「企画力を高めしっかり作っていくのがアパレルの本来の仕事なのに」と嘆く。安くても価値も下がっては消費者が欲しくないと思うのは当然だ。
 わくわくする売り場や商品というのは、商品価値が高いということだ。プリウスの納車は7カ月先というが、わくわくしながら納車の日を待っていることだろう。
 値段を下げるのが悪いのではなく、商品価値を落とさないという視点が重要だ。トヨタなら「旧型プリウスを半額で売りますー!」というような愚策はしないだろう。(史)

2009/07/03
 バランス
 フェミニン、セクシー、ナチュラルともに売れている――開業半年になる商業施設で聞いたレディスヤングの好調店は3店のテイストが見事に分かれた。同様に、ある百貨店の婦人服ヤング部門でも伸びているブランドは、やはりテイスト軸ではばらついた。
 通常なら、主となるテイストがあるものだが、今春夏商戦は分散が顕著ということだろうか。
 加えてアイテム別売り上げ構成も、ここ数年で大きく変化している。時流やトレンドの反映と言えなくもないが、ある百貨店のヤング部門では、かつては構成比数%に過ぎなかったワンピース品番が6月売り上げの3割を超えた。雑貨品番も着実に増えている。一方で、ニットとブラウス品番は1ケタ台にとどまる。はっきりとした数字は思い浮かばないが、かつてニットの構成比は冷房対策などで6月でも比較的高かったと記憶する。
 ファッションフロアを活性化するためには、低価格対応だけでは不十分ではないか。テイストの偏りやアイテム構成のバランス調整も必要になっていると思うのだが。(勧)

2009/07/02
 原価率
 厳しい経済環境を反映し、衣料品小売市場では客数が減って客単価が下がり、セールを早期化する店が多い。プロパー販売の時期が崩れ、おのずと物作りの対応もこれに追随する。そこで注目されるのが製品原価率。高いプロバー消化率を前提にした原価率なのか、マークダウンした価格帯を織り込んだ原価率を設定するのかは、製品企画の内容に大きく影響する。現状の業界の動きは原価率を下げる傾向が強い。確かにセール販売比率の高さを想定し、これに合わせた低い原価率に設定すれば利益面での大けがは避けられる。
 しかし、それで最終消費者は満足するのだろうか。安値に走るあまり、この業界の利益の源泉である感性付加価値がおざなりにされてはいないだろうか。業界全体が安値、低原価率に傾斜するなかで、感性や品質が駆逐されているように思える。消費者は廉価なお値打ち品は求めているが、事業収益リスクを回避した製品は求めていない。(民)

2009/07/01
 本末転倒
 7月でも早いと感じていたバーゲンが今年は6月後半から始まった。それにしても、梅雨の真っただ中に、夏のクリアランスがいっせいに始まる業界の現状に危機感を覚えてしまう。
 そもそもバーゲンは、じっくり販売するプロパー期間があるから成り立つもの。ブランドの魅力はプロパー販売期間のしっかりした接客でこそ顧客に伝わる。人気の商品はバーゲンを待たずに完売し、売れ残った商品を処分する場がバーゲンだったはずだ。
 しかし今、バーゲンは安売り合戦の場と化してしまった。さらにバーゲン早期化で、夏向けに作った商品を、しっかり接客して販売する機会はほとんどなくなってしまった。プロパー販売期間の喪失はまさに、本末転倒だ。
 プロパー販売の期間があるからこそ接客力も磨かれた。それでもプロパーで売れ残ってしまう商品があるから次の物づくりの教訓に生かせた。プロパーの効用を失わせるバーゲンの早期化は、業界の発展を阻害するおそれがある。(真)