繊研新聞掲載のコラム

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視点/2009年12月

2009/12/28
 腰を据えて
 大型店の前年割れが続いている。そのため、11月の3連休などのカードポイントアップやペイバック、何々感謝祭などの販促強化が目立つ。しかし、イベント期間中はまずまずの売り上げだが、月間ではマイナスの結果だ。
 客数や売り上げ増を狙った販促は、一時的には効果がある。しかし、賢くなり、不要なものを買わなくなった客は「お得感のある期間に集中し、前後の売り上げが減少している」など、店の思惑通りにはなっていない。
 そもそもお得感のある販促でも、その施設に欲しいものがなければ、客は飛びつかない。また、頻発する実質値下げイベントは、客の価格不信感を膨らませるとともに、ブランドや商品価値を下げている。
 厳しい環境やテナント情勢から思うような構成が出来ないディベロッパーの現状もある。しかし、小手先の販促や入れ替えでイメージを低下させるのではなく、腰を据えた改装をすることが、客に選ばれることにつながるのでは。(伸)

2009/12/25
 「関係ない」は禁句
 最近、業界の際がますますなくなったと、強く実感する。
 ファッションビジネス(FB)とは縁遠い存在に思えた手芸材料の専門店は都心進出を果たし、ファッション感度の向上に注力中だった。国内の高級仏壇産地の若手グループは世界的なヨガブームを味方に欧米向けインテリアグッズ開発を模索している。一方、包装関連用品卸の上場企業の社長は「アパレルが次の営業の重点なんですよ」と言っていた。さらに、大手中古書店チェーンが立ち上げた古着ショップは、セレクトショップと見た目はあまり変わらない品揃えで登場した。全国展開している店舗網を生かして日常的に商品を収集し始めたら、従来の業界にとって大きな脅威になることが予想される。
 いずれも「関係ない」と決め付けていたら、変化をつかむことが出来ないところだった。FBの可能性をくみつくすには、広い視野で新たな動きをつかむ必要があり、際限なき好奇心が欠かせない。(吾)

2009/12/24
 気持ちを満たす
 ビオレストランにビオワイン、ビオ食材店。自然や無農薬に徹底した飲食料への注目度は高まる一方だ。デザイナーやバイヤーとの会話の中でも「あそこの食材がいい」「ビオワインは飲みすぎても頭が痛くならない」など、ビオの話題に事欠かない。
 実際、おいしいのだろう。だが、正直言って著しい味の違いが分かるかどうか自信はない。それでも、スーパーやデパ地下で山ほどある商品の中から一つを選ぶ時、体に優しそうな“ビオ”というタイトルが付いているだけで選択候補になる。結局、どれが良いのか迷った時は「これなら、きっと間違いない」ということになる。
 食材に限らず、服やコスメも同じ。オーガニックやビオという文字は、心地良いイメージを膨らませてくれる。実際に使えば、体に良いものを使っているという心地良い気分にも浸れる。物があふれるなか、消費者は気持ちを満たしてくれる商品を探している。(規)

2009/12/22
 最愛のいすは卵型
 北欧のいすには、ポール・ヴォルターのコロナチェアやポール・ケアホルムのPKシリーズなど心ひかれる名作が多いが、一番好きなのは、建築家アルネ・ヤコブセンがデザインしたエッグチェアだ。この卵形のいすは、ホテルのロビーでの固有の空間確保をコンセプトに設計されており、座る者を優しく静かに、まるで子宮の中で守られているかのように包んでくれる。その価格と巨体からくるハードルの高さを除けば、人の母胎回帰の本能を満たしてくれる魅惑的ないすなのだ。
 世相は厳しさを増している。人々の消費も家の中で過ごす“巣ごもり型”にシフトしているそうだ。ファッション業界にとっては、あまりよくない話だが、どんな状況でも“己を美しく飾りたい”という欲望は変わらないはず。レディスではデザイン性の高いルームウエアが売れている。スタイリッシュな冬ごもりスタイルを提案してみるのも、事態打開の一助になるかもしれない。(網)

2009/12/21
 店頭スタッフの時代
 今こそ、販売員、店長の時代だ。商品やサービスを消費者に手渡し、対価をもらう重要な役割を担う。店頭スタッフが指示待ちで、業績悪化から給与も下がり、元気がないから売れないのではないかと指摘する経営者もいる。
 商業施設の開業ラッシュなどで店舗数が増えた企業は多い。店舗増で売り上げも増えた時期はあったが、MD、接客の質など全体のレベルが下がったとはある専門店の社長。店頭スタッフの成長に合わせて出店する方が、効率も、やる気も出ると自戒する。
 客は商品や店より、人に付く。入店客数が少なくても、絶対の信頼で買い上げ率、1回当たりの購入金額を上げて成長する店もある。好調な専門店ほど、一店一店が強い。元気な店の店員は早く声をかけてくるし、在庫確認でも小走り。客に向いて仕事をしている。黙っていて売れる時代ではないし、本当に重要な情報は店頭のスタッフが持っている。本部や経営が、これを生かさない手はない。(窪)

2009/12/18
 中国でのネット活用
 世界的不況の影響が輸出業などで見られたが、総体的に衰えない経済成長に伴い、流通市場の変化が次々と進む中国。そんな中、ネット販売市場が注目される。
 中国人誰もが知るサイト、タオバオには多くのローカル、外資ブランドが、自社公式サイトを持ちながらも出店している。10月には「ユニクロ」のタオバオ旗艦店が、月商1000万元の記録を打ち立てた。国慶節商戦のタオバオは交易額を前年比2・2倍にした。
 中国は一人っ子政策の影響もあり、若い消費者は買い物をする際にネットを活用して情報を集める習慣が強いそうだ。ネット人口もすでに米国を抜いたし、来年度は商務部がEC市場の拡大を奨励している。
 中国内販している日系ブランドも、ブランディングやマーケティングの観点から、もっとネットを活用をすべきではないか。もっとも最近は実店舗で試着し、ネットで安く買い当てる“試着族”も増えているそうだが。(畔)

2009/12/17
 潮目が変わる
 来年はミレニアムから10年。ある取材先の人いわく、「時代の一つの区切りの10年は、ファッションにとっても節目の年。来年は、今年とは違う状況が生まれると思う」。
 80年代のDC、90年代のストリートブームと来て00年代を振り返ると、やはりファストファッションということになるだろうか。不況を追い風に勢いづいた低価格の波に、こつこつと良い物作りをしてきたブランドは苦戦を強いられた。
 しかし、潮目は少しずつ変わってきているようだ。「ファストファッションも、もう少ししたら落ち着く」。こんな言葉を聞く機会が増えた。時々、無性に食べたくなるファストフードも、毎日だと飽きる。
 ただ、消費者はますます賢くなり、価格に対して敏感になっているのは間違いない。企業は今まで以上にファッションに対する本気度を試されるだろう。新しい10年は、再びファッションを自由に楽しむ空気が戻ってくることを期待したい。(佐)

2009/12/16
 ファッションと環境
 デザイナーの岡正子さんが、米国でビジネス界のオスカー賞と言われる「スティービーアワード」の女性大賞を受賞した。ファッションとエコロジーを共存させる真摯(しんし)なビジネスが評価された。
 ファッションと環境の共存は難しい。頭から無理だと決め付ける風潮もある。実際、エコを本気で意識しているブランドがどれだけあるかは疑問だ。ファッションビジネス界では安価がトレンド視され、各社、値段の安さを競っている。消費者にとって安いに越したことはないが、結果、使い捨てが横行することを心配する向きも少なからずある。
 国連気候変動枠組み条約の第15回締約国会議(COP15)がコペンハーゲンで開かれている。各国の思惑はあるにしても、温暖化ガスを少しでも減らそうと、熱のこもった議論が交わされている。そうした動きにファッションブランドはどうかかわっていくのか。岡さんの受賞を機に改めて考えてみたい。(木)

2009/12/15
 肩ひじ張らず
 東京では表参道のイルミネーションが11年ぶりに復活するなど、クリスマスに向けたイベントが各地で行われている。ただ、今年のクリスマスは「家で過ごす」巣ごもり派が多いという。不況の影響も大きいのだろうが、若い世代を中心に「背伸びせず、肩ひじ張らず」というライフスタイルの人が増えている。
 衣料素材では文字通り、「肩ひじ張らず」着られる服作りを狙った、「軽く」「薄く」が共通項だ。ビジネスシーンに欠かせないジャケットやボトムの素材も例外ではない。織物のように見えて実はニット、というジャケットスタイルで通勤する人も増えてきた。
 素材メーカーは来秋冬、「着やすさ」を追求したニットやストレッチ織物を充実させる。展示会ではインナーからジャケット、コート、ボトムまで、全身ニット・ストレッチというコーディネートも多く登場した。
 イベントもファッションも、肩ひじ張らないスタイルで。そんなトレンドが当分続きそうだ。(壁)

2009/12/11
 技術を生かした開発
 基盤技術や研究設備資産などを指す言葉に「技術資産」というものがある。技術資産は売上高と比例関係にあり、技術資産を高めるためには、基礎研究以外に、異業種間連携による技術融合、新規事業創出も有効な手段とされている。
 繊維産業での技術資産は何か。研究施設や工場、産地の生産チームなどがそれに当たろうか。しかし、合繊メーカーや紡績各社は原糸生産からの撤退、海外移転の流れを加速させており、研究開発費の多くは化成品や産業資材などに投入されている。異業種間連携はもちろん、ファッション素材の開発自体、もはや国内でも難しくなりつつある。
 「技術力を生かした商品開発が、国内の物作りでは重要」との声はよく聞かれるが、製品サイクルの短期化やニーズの多様化などで、革新的な商品が出にくいのも事実。低価格が一種の流行のようになっている現状では、価格競争に乗らず、腰を据えて新商品を開発することは勇気がいることかもしれない。(騎)

2009/12/10
 ホルモンヌ
 ホルモンを愛する女性は「ホルモンヌ」と自称するらしい。昔は女性はあまり好まなかった「おやじの食べ物」を、今では大好きと宣言する女性が出てきた。もはや性別を超えた消費はトレンド。
 フェイクレザーのライダーズジャケットは今秋冬、男女でヒットアイテムになっている、あるヤングショップでは、カップルが同じ商品を買っていく光景が頻繁に見られた。
 カップル買いの特徴は、男の方が非常に細いこと。まず男性が試着して体形に合えば、次は女性が羽織る。両者似合えば購入。良い意味ではユニセックスだが、「男の子の体形変化で、シェアも進んでいるよう」とショップマネジャー。部屋や車だけではなく、ウエアもシェアする時代が来たのか。
 ただカップルでの試着はショップでしか出来ない。ネットでの買い物が加速し、リアル店の存在意義や来店する意味が問われているが、カップル消費を改めて見つめ直す必要がある。(疋)

2009/12/09
 服屋の志
 「こういう時代だからこそ、うちは服屋なんだってことを社員に何度も言っています」とあるインポーターの社長。というのも近頃、取引先の店の販売員のスタイルが気になるのだそうだ。
 「昔は買い付けたブランドを売るために、販売員自らがそれを着て、そのスタイルを表現して接客した。でも今は洋服屋なのかコピー機のセールスマンなのか、何だか分からない格好の販売員ばかり」。こうした傾向は東京都内の店やセレクトチェーンに顕著だとも。
 そのブランドの良さを身をもって表現できる販売員の存在が減っているのが、売れない理由の一つだと指摘する。一方、地方で健闘する専門店には、めいっぱい着飾って接客する販売員がまだいる。「昔はそのスタイルに合うように、車まで買い換える販売員もいたよね」と社長は笑う。
 服屋が服屋の見えを忘れてしまっている。同時にプライドまでも。そんな気がしてならない。濃い商品を熱い情熱で売る服屋の志に期待したい。(拓)

2009/12/08
 課題解決
 IT(情報技術)業界でよく使われるソリューションという発想。顧客が抱える課題に着眼した考え方だが、テキスタイルでも、よりこの視点に寄った企画・開発・販売が出来ないか。ここ数シーズンの難題である価格はもちろん、デザイナーやアパレルメーカーは答えを求めて迷っている。
 感性が物を言う服地の世界は、原料にこだわり、とことん手間をかけた職人肌の商品が支持されてきた。しかし今、国内はもとより、トップグレードとされた欧州ビッグメゾンでさえ、容易には採用しなくなった。この課題に取り組むことが、日本のテキスタイルが大きく前進するチャンスにもなる。
 世界を飛び回るある生地メーカーの社長は、日本が誇る技術力を指し、「課題に向かう力さえあれば、日本の繊維はナンバーワンになれる」と言い切る。原料の調達ルート、同業間の人脈などあらゆる材料を総出動させれば、ファッション産業に向けたソリューションを提供できるはずだ。(麻)

2009/12/07
 ファッションとネット
 10年春夏のコレクションでは、今までになくファッションブロガーやツイッターが注目を集めていた。ビッグメゾンが有名ブロガーをショーに招き、いち早くブログを投稿させたからだ。ひと昔前まではコレクション写真が流出してコピー商品が出回ることを恐れていたが、それを逆手にとって宣伝に打って出たのである。
 自社サイトでショーの動画を配信するメゾンも増え、会場を訪れなくてもコレクションを見ることが可能になった。ツイッターでは多くの人がコレクションや展示会の感想や様子を書き込むため、バイヤーが買い付けに活用することもあるという。
 しかし、バイヤーがブロガーやツイッターに惑わされてはいけないと思う。昨今、オリジナルブランドの割合が増えたこともあり、セレクトショップの独自性が薄れつつある。市況が厳しいため、確実に売れる人気の高い商品を置くからだ。セレクトショップには、もっと個性あふれる品揃えを期待したい。(紗)

2009/12/04
 IT技術で縮まる差
 コーディネートのイメージがわきにくい。実店舗での購入と比較した時、ネット販売が持たれるマイナスのイメージだ。ところが、IT(情報技術)の進歩が、そのイメージを一掃しつつある。自分の全身画像を登録し、商品を選択して試着用ボタンをクリックすれば、自分がモデルのコーディネート画像を簡単に楽しめるサイトが出てきた。モバイル販売でも、いくつかのパターンの中から自分に近い髪形や体形を選んで着せ替えが出来るコンテンツも今秋にスタートした。
 今までのネット販売にも仮想コーディネートのソフトはある。ただし、体形はひとつ、顔はのっべらぼうというものが多い。そんなボディーにコーディネートしても、確かにイメージはわきにくかったかも知れない。
 ファッション商品の小売市場での売り上げは、ネット販売よりも圧倒的に実店舗。しかし、いつまでも差が開いたままではなさそうだ。ITのビジュアル技術の進歩が、その差を着実に縮めようとしている。(育)

2009/12/03
 楽しくなければ…
 ファッションで、価格が切り札のように語られている。低価格は更なる低価格を招き、市場は泥沼化している印象だ。ファッションがつまらなくなったとぼやく業界人も多い。
 最近、数軒の新進古着店を取材する機会があった。オーナーはみな25歳前後で、中には20歳になったばかりの人も。取材の中で非常に心に残った言葉の一つが「楽しくなきゃ(店を)やる意味がない」というもの。「ファッションがつまらなくなったって言う人がいるなら、おれが楽しくしてみせる」とも。青臭いせりふだと片付けることも出来るだろう。でも、記者は初心を思い出させられたような気がして心を揺さぶられた。  消費者の価格意識の変化について行くことも大切だ。ただ、ファッションは本来、「楽しいもの」だったはず。業界全体が「低価格でなければいけない」という強迫観念にかられて、初心を忘れているように感じる今、青臭い若者の言葉に耳を傾けてみて欲しい。(五)

2009/12/02
 商品の主張
 久しぶりに即買いした。あるスポーツ売り場にふらっと立ち寄った時のこと。一見、カジュアルなナイロンのベルトだと思ったその商品は、スポーツシーンでの着用を狙った収納機能付きベルトだった。
 普段からランニングをする者にとっては念願の一品。デザインはシンプルでコンパクト。収納個所はジャージー素材のため、見た目よりも物は入る。色数は豊富。久々にわくわくして、良い意味で買い物を迷った気がする。3000円もしないが、もう少し高くても買ったと思う。きっと、手に取っただけで商品の存在意義がはっきりと伝わったからだろう。
 実は、同じような考えで作られた商品は以前からたくさんある。ただ、どれも置いているだけでは購買意欲が刺激されなかった。ある小さな名物セレクトショップの社長が言っていた。「リピーターを作る商品とは、ごたごたと能書きを並べなくても、分かる人には一目で分かるほど、商品の主張がデザインに表れているものだ」と。(嗣)

2009/12/01
 靴下で活性化
 先日、神戸の新開地で全国でも珍しい女性限定の映画祭が開かれた。目玉イベントとして“業界初!”と銘打った男子禁制のストッキングショーが行われ、会場は熱気に包まれた。ショーで使われたストッキングは福助のトップブランド「フェモツィオーネ」で、デザイナーの斎藤誠矢さんは「ストッキングをアピールする場があまりないなか、映画祭の客が福助に関心を持ってくれる層だと考え、今回のショーに期待した」と言う。
 兵庫県靴下工業組合はこのほど、加古川駅前に靴下のアンテナショップを開設し、地場産品を宣伝する。靴下大手の岡本(奈良県)は06年から毎年「手あみ靴下コンテスト」を開き、靴下に関心を抱くきっかけを作るとともに、奈良の靴下産地を全国にアピールする。
 最近ではレギンスやトレンカが華やかに取り上げられる影で、定番商品は中国などの輸入品に押されて厳しい。好調なレッグファッションを牽引(けんいん)役に、靴下業界全体の活性化につながればよいのだが。(正)