繊研新聞掲載のコラム

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視点/2010年02月

2010/02/26
 売る立場で考えて
 ブラジャー単品で2900円を維持してきたレディスインナーメーカーが、2500円の戦略商品を出した。「うちがその価格帯に踏み出していいか迷ったが、店頭を活性化するために」と担当者。低価格のSPA(製造小売業)企業が直営店を増やす中、20代を取り込むには2900円は少し高い、という判断だが、それでは専門店が差別化しきれない。
 一段と安い商品を揃えてブランド力やファッション性で集客するSPAに対し、専門店は品質や機能性などにこだわる客をもてなす。前年実績が取れない状況を打開しようとする中、低単価の商品が増えるのはつらい。デザインで勝負するなら、3300円の顔の商品を2900円にする努力が必要だろう。
 一方で別のメーカーは「これ以上、安売りする意味はない」と2900円を貫く。今年も価格戦略を取らず、代わりに新機能のノンワイヤブラを2型開発した。専門店の立場で考えたら、どちらが自信を持って販売できるだろうか。(渉)

2010/02/25
 アウトレット
 不況、競合激化、低価格志向などプロパー市場が苦戦する中、アウトレット市場の盛況が目立つ。年末年始商戦も「ほとんどの施設が前年実績を上回った」というディベロッパーもある。郊外立地のため、高速道路のETC割引効果も大きかったようだ。都心並みの販売効率を上げている店もある。
 出店するテナント側も元々の在庫処分、プロパー店の鮮度アップなどとともに「集客力のあるSCとして注目した」という声も増えてきた。先行するブランドは、すでにアウトレット専用商品を販売している店も多く、元から二重価格を付けている店もあるようだ。
 しかしアウトレットは、ブランド品が理由があって安く、掘り出し物が見つかるということが魅力だったはず。掛け値のような消費者を欺くような商売では、いつかしっぺ返しが来るだろう。都心の大型店でも年中、閉店セールや改装バーゲンをしているが、消費者は価格信頼感のない店ばかりではやるせない。(茂)

2010/02/24
 百貨店のゆかた
 今夏向け新作ゆかたの提案が一巡した。中堅以上の製造卸の問題意識の中心は百貨店ゆかた売り場の復権である。そのため、格上ゆかたの提案が目立ち、夏きもののような素材や柄意匠提案が増えた。
 既存の大型店のゆかた売り場は「消費者に提供している内容と消費者が百貨店に求めている内容とに大きな隔たりがあるなど、課題が多かった」との指摘がある。量販店ではマスメディアを活用した積極的な消費者向け宣伝に頼ったり、売り場の装飾ばかりに力を入れていた店も見られた。百貨店でもブランド揃えが画一化し、同質化が際立っていたとも言われる。
 量販店や専門店の既存売り場に満足し切れない消費者が『百貨店へ行けば相当違うだろう』と期待感を込めて行っても、がっかりしてしまい、結果的に消費者離れが起こていると考えられる。だから、「ワクワク、ドキドキする売り場作りが今こそ、必要だ」との声が多い。今年こそ、そうした声を前向きに生かせる商戦を期待する。(陰)

2010/02/23
 下着に見る男の変化
 不況でもメンズインナーが元気だ。団塊世代で代理購買から本人買いへと流れが変わったことや、ヤングがおしゃれとして買っている。対応して素材や色・柄、デザインが多様になり、商品開発も活発だ。
 そんなメンズインナーカジュアル化の先駆けとなったのが、98年にデビューしたグンゼの「ボディワイルド」だ。今春夏から企画を大幅に一新し、男も女も楽しめて、はくだけで元気になれるような“エンジョイ・アンダー”を打ち出した。その発想から誕生したのは、100色展開や、アーティストとの協業パンツなど。
 急速に増殖しているメンズインナーは、素材や色・柄などが全体に女性化の傾向がある。パンツだけでなくレギンスや、ついにはブラジャーまで着用する男子が現れており、まだまだ広がりが期待できそうだ。“草食系男子”が注目されるなど、メンズのイメージそのものが大きく変わっている。(近)

2010/02/22
 物々交換の波
 ファッションスワップ(洋服の物々交換)が盛んだ。東京を中心に大小さまざまなイベントが開かれ、おしゃれな消費者が多数押しかける光景を見て、金を介さずに物だけが流通する市場に勢いを感じた。ネット上に広がるとさらに勢いが増すだろう。
 ファッションスワップがこの1年で一気に広がった背景には不況があるが、消費者の「服はなかなか捨てることが出来ない」という思いと、「リスクなしに色々なファッションを楽しみたい」というニーズを満たしているためでもある。
 着なくなった服を簡単に手放し、無料で古着を手に入れることが出来る場を今後、消費者がどう使うかに注目したい。買うことへのハードルが下がり、流行の服はどんどん買って交換するのか、それともベーシックな服はただで手に入れ、本当に欲しい服だけを買うようになるのか。いずれにしても消費者の選別の目はより厳しくなるだろう。金を出して買う服とはどんな服か、真剣に考える必要がある。(淳)

2010/02/19
 動き出すマネキン
 あるファッションビル改装の取材の際、新規出店した店のマネキンが気になった。ポールに足を絡ませ、ダンスを披露してみせる女性。ぱっつん前髪に真っ赤な口紅で、はっきりと個を主張していた。ロックをテーマにした新興メーカーは、ウイスキーや葉巻を手に、気だるくソファに腰掛けるマネキンを見せていた。
 聞くと、「こんな女性に来てほしいという、客層を明確にする取り組みです」との答え。消費者が自身を投影しやすいように、マネキンの顔は、あえて細部まで作り込まないのが主流のなか、その逆を行く仕掛けが面白かった。
 あるヤング向け専門店も、マネキンのポージングを多様化したり、ユニークな化粧を施すなど、マネキンの個性化に力を入れている。それがいずれ「ブランド確立につながる」と信じる。消費者にとっても、ファッションへのわくわくする気持ちを取り戻す起爆剤になるはず。動き出したマネキンに、今後も注目したい。(金)

2010/02/18
 海外市場の開拓
 山口県繊維加工協同組合は1月末、パリの「トラノイ・オム」に出展した。08年から続けている欧州出展だが、岡部泰民理事長は「ファストファッションにはない高付加価値が求められている」ことを実感したそうだ。出品した「友禅の技法をデニムに持ち込んだ」純日本製ジーニングにも多くの関心が集まったという。
 低価格品に注目が集まるのは欧州も日本と同様だが、一方で「良いものを長く着よう」というムードが台頭し始めており、出展した他の国のメーカーも「現状を悲観していなかった」そうだ。こうした動きを岡部理事長は「使い込むことを誇りとする生き方、価値観が広がっている」からと見る。
 日本製に対する信頼は「日本人が考えている以上に高い」という。その上で、日本メーカーの海外展開のポイントを「海外の展示会に出る行動を続けること」と指摘した。良いものでも海外現地に根を張るには、やはり地道な取り組み以外になさそうだ。(龍)

2010/02/17
 FBの魅力とは
 ファッションビジネス(FB)の魅力は何か。大学生にFB業界を解説する機会が増えて考えるようになった。
 以前はパリ・コレクションを頂点とするトレンド発信や、マスメディアを通じて偶像化されたカッコイイ店・ブランドが当然の切り口とされていたが、「ファッションの民主化」が進んだ今、それらはFBの一側面に過ぎず、ここだけを入り口に語るのでは、魅力をくみ尽くせない。
 そこで重視するようになったのは、参入障壁の低さと多面性を、多くの具体例で語る工夫だ。マザーハウスの山口絵理子さんのような存在が次から次へと現れビジネスを軌道に乗せている。それぞれ新しい価値観を市場に投げかけ、話題性にも事欠かない。制度化されたコレクションビジネスの話よりも、学生の反応は良い。結論は「人間の生き方の数だけ多彩に広がるFB。君もチャレンジできる」。若い力を呼び込む仕事は楽しくやりがいがある。(吾)

2010/02/16
 モードの仕掛け人
 ファストファッションが席巻しているが、消費者にはかなりのフラストレーションがたまっているはずだ。
 無駄な支出を避けて新しい服も買わないが、季節の変わり目には春色の商品や東京コレクションブランドなどのセール品を買ってモチベーションを上げる。セールは12、1月の通算では増収とは言えないが、店によっては前年を上回るところも出てきたというのは、そうした消費者心理の反映だろう。
 伝説のロンドンブランド「BIBA」の特集本を買った。ストリートで個性を爆破させた伝説的ブランドの復活は、同じ顔をしたファッションがあふれている現状に、飽き飽きしている人が少なくないことを表している。
 閉塞(へいそく)感がある今こそ、ファッションやアートの発信者が、人々に希望を与える物作りや商品提案をする「モードの仕掛け人」たることが、景気を浮揚させるのではないか。(津)

2010/02/15
 回復の兆しはある
 GMS(総合小売業)の衣料に回復の兆しか。ユニーは昨年秋を底に盛り返しつつある。アパレルメーカーの夏物展示会でも昨対94%や95%の予算を組むGMSが目立ったといい、「商品力さえあれば10%ダウンで収まる」と見る。
 ただ10%減では収益への影響が大き過ぎる。ここ数年で衣料部門が赤字に転落した企業は少なくない。といって、粗利益の稼ぎ頭だった衣料を縮小する戦略は描けない。減少幅を10%よりも縮めなければ、企業の屋台骨に響きかねない。
 日本チェーンストア協会の統計によると、衣料はピーク時の3分の1の規模まで減少した。それでもGMSの売り場の多さ・広さは、回復を軌道に乗せるうえで武器になりうる。百貨店で低価格MDが広がっているが、アパレルからすればGMSでは同じ労力で5~6倍の商いが見込める。商品量が増えればサイズやデザインの種類も増やせ、売れ行きアップも見込める。10%減を数%にとどめる商品がもっともっと要る。(近)

2010/02/12
 変わり続ける
 南船場や堀江、アメリカ村、心斎橋筋商店街など、大阪・心斎橋かいわいを歩いて回った。ファッション消費が低調なこともあり、中心から離れるほど閉鎖店舗が多く、人の姿も少ない。
 とはいえ、南堀江・立花通りにある第1期開業組というべき“老舗”ファッション店は、しっかりと残っている。また、家賃が低下してきたこともあり、新店や再出店の動きもあるという。ラグジュアリー系ブランドが軒を連ねる御堂筋や長堀通りも、5年前と比較すれば店舗数は増えている。
 心斎橋筋商店街では、老舗は減ったものの、中・高校生を含む若い人向けの店が急増しており、最近の通行量は下げ止まっているようだ。昨年秋、商店街に土地建物を持っているオーナーの会が発足し、今後を見据えた街づくりを進める意向だ。
 各地で店舗閉鎖が相次いでいるが、一方では新たな動きもある。人が集う限り、街は変わり続けながらも生きている。(勧)

2010/02/10
 面のパワー
 ことし出席した新年会や賀詞交換会の中で印象に残ったのは、ある地域の商店会主催の新年会だ。
 来場者の顔ぶれの多彩さに驚いた。各商店街の代表や店主はもちろんのこと、全国チェーンの小売業の役員、ゴスロリ界で名を馳(は)せるカワイイ大使から警察署長、経産省の局長に神主さんまで。そのネットワークの広さ、商店街同士の結束の固さから、この街をみんなで盛り上げようという強い思いが伝わってきた。
 以前、違う地域にあるファッションビルの館長が「あの街の結束がうらやましい」とボヤいていたことを思い出す。
 個々の店や施設の魅力があってこそだが、点ではなく面としてのアピールが出来れば、放つパワーは大きい。日頃のコミュニケーションが取れていれば、全体でのイベントにも迅速に取り組める。地域間競争が激しさを増す今、つながりの大切さを改めて感じた。(維)

2010/02/09
 需要創造なき出店
 衣料品不振はオーバースペースが原因という声をよく聞く。百貨店や量販店の店舗閉鎖が相次いでいるとはいえ、衣料品の売り場面積はまだまだ過剰なのかもしれない。以前は、その主張に少なからず同意していた。しかし、本当にそれが要因なのかは疑問だ。売り場を減らせば衣料品の売り上げが回復するという理屈になるからだ。オーバースペースが改善されても売り上げが戻るとは、どうしても考えにくい。
 消費マインドやファッションの好みは、時代背景や雰囲気に左右される。ユニクロが支持されているのは、時代の流れや雰囲気を読むことにたけ、今の消費者が喜びそうなものを上手な演出で提供しているからだ。発熱素材自体は決して目新しいものではなかったが、ユニクロが「ヒートテック」を仕掛けることで需要を創造してしまった。
 大手小売業の衣料品不振は、シェアを奪うことを目的に出店し、需要創造を置き去りにしてしまったことが真の原因ではないだろうか。(史)

2010/02/05
 賢明な判断
 春物の出足が昨年に比べ好調のようだ。「(冬の)セールが早かったからじゃないの」という声が多く複雑な状況だが、「売れてる」という話はやはり元気になる。
 記者はセールにお金を使うより新しい春の服に投資しようという賢明な判断をし、春立ち上がりの真新しい空気の店で思い切り買い物をした。買い物はやっぱり楽しい。
 でも人間には未練というものもある。まだセールを引っ張っていた店では、もしや何かいいものがあるのではと、つい物色してしまう。そんななか、「おっ、こんなところに!」という掘り出し物を見つけた。しばしためらって、ほかの店へ。やはりあれは買っておくべきと戻ったところ、目ざとい人はほかにもいるらしく、すでに消えていた。悔しいような、ほっとしたような。
 「やっぱり女は服が買いたいんです」と、あるデザイナーがニコニコ顔で言っていた。すでに春の売れ筋が見えたと言う。この元気が続いてほしい。記者も次は靴がほしい。買おう。(赤)

2010/02/04
 貫くは日本流
 米国を視察し、用意周到で米国流の大改装を取り入れた百貨店が、想定外の客の流れで改装初日からつまずいた。これは30年も前の話だが、百貨店の規模や地理的条件が異なる米国から学んでも失敗するという教訓を残したエピソードだ。
 米国流と言えば、アウトレットモールもその代表例。発祥の地の米国から学び、10年ほど前に上陸した日本でも一気に広がった。アウトレットモールは郊外が代名詞だったが、その米国流に反し、東京23区内のヴィーナスフォートに誕生した。
 米国流を貫くのか、日本流にアレンジするのか。ヴィーナスフォートは難しい舵(かじ)取りを迫られそうだが、先の百貨店の教訓から学び、日本流のアレンジに果敢に挑戦してもらいたい。
 米国ではアウトレット向けの専用品がはんらんし始めてからモールの売れ行きが落ち込んだ。米国と同じ失敗を繰り返す必要はない。ブランドイメージを損ねず、日本の堅実な消費者から真摯(しんし)に学べば、新たな道は開かれる。(真)

2010/02/03
 明治人の気概
 「坂の上の雲」「龍馬伝」と、幕末、明治のドラマが相次ぐ。ある調査によると、現代の経営者の一番の人気書は『坂の上の雲』だそうだ。強大な帝国主義国家に挟まれた当時のリーダーの言動と、今の日本の危機感とがオーバーラップするのだろう。
 日露戦争時に日本がロンドンで募った外債は国家予算の3倍近く、戦費は7倍。対して、現在の日本の国と地方自治体の借金はGDP(国内総生産)の2倍近い。今年は中国のGDPが日本を抜くことが確実だ。
 ただ、少し冷静に考えれば、極東の貧乏国だった当時と今の国民の基礎体力は歴然と違う。GDPが2位、3位と言っても、順番そのものに大きな意味があるとも思えないし、この間の日中の経済の勢いを見れば、当然の流れでもある。
 最近、懸念しているのは数字ではなく、明治の先達が持っていた気概や気力だ。どうも事業や経営に対する執着心、負けん気が薄れていないか。「負けてたまるか」「死んでもやり遂げる」。こんな言葉はここしばらく聞いてない。(太)

2010/02/02
 困難を前にして
 冷え込む市況の中で地方専門店が活路を模索している。北関東に基盤を置いているある専門店チェーンは、数年前に有力SCに出店したことを契機として、本格的な全国展開に踏み切った。しかし、ここで問題が生じることになる。それまで取引していたアパレルメーカーが難色を示したのだ。
 この専門店の社長にとって全国規模の出店は、会社設立当初からの目標。以前から取引先にはその旨を伝えていた。しかし「いざ始めるとなると、各商圏での商品のバッティング問題などを指摘され、同意を得られなかった」。
 この件をきっかけに同店は、PBの比率向上に向けて大きく舵(かじ)を切った。現在は全商品の約70%をPBが占め、売り場と物作りが直結することで、好調な業績を確保している。店舗は30店にまで拡大した。
 困難を前にした時に、その企業の真価が問われる。厳しい今の経営環境は、業容を変化させる、最大のチャンスかもしれない。(民)

2010/02/01
 早期退職
 百貨店を早期退職した数人と会う機会があった。募集に応じた理由や全く異なる職種に転進した動機は様々だが、共通していたのは前よりも生き生きしていたことと、百貨店の先行きに対する強い危機感だった。
 いずれも退職後のキャリアプランをしっかり立てていたことで、希望する職種や業界に転職できた。それだけに「日々の忙しさに追われ、本当にやりたいことが出来なかった」と百貨店の古い体質への批判は強い。
 そのうちの一人は言う。「売り上げが全社で10%減っても、前年を上回る部門や売り場は必ずある。その芽が小さくて亜流だったとしても、思い切って人と金の経営資源を集中する発想の切り替えが必要」と。
 かつての安定した収益源が衰退の元凶になってしまうのは皮肉な教訓。だが、今こそ過去の成功体験を捨てるチャンスだ。失敗を恐れない精神と再チャレンジできる風土も必要だ。効率化だけでは、正社員、契約社員を問わず、優秀な人材が流失してしまう。(浦)