繊研新聞掲載のコラム
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視点/2010年05月
2010/05/31
可能性を奪わないで
大阪市内の中崎町で土地が売られていた。60平方メートル足らずで5000万円を超える。売れると判断したからこそ、この値段にしたのだろうが、地元の人も「高過ぎるのでは」と首をかしげる。
ファッション関係の若い人たちは中崎町で自分の店を開く。バブルの地上げにも負けなかった古い長屋が多く残る。市の中心、梅田の近くにありながら、著名ブランドの店が並ぶ堀江などに比べ地価や家賃が安く、出店しやすいからだ。これから商業地として開発が進む可能性が高い。そんな需要をひょっとしたら当て込んでいるのかも知れない。
商売なんてネットでもできる、と言う人もいるが、自分が育てたブランド・商品の店を持ち、エンドユーザーと直接ふれあい、生の声で評価してもらう喜びは、何物にも替えられない。不動産は売り買いの対象なのだから仕方ない側面もあるが、値段が上がり過ぎ、店を出したいと思う若い人たちの可能性を奪っているような気がしてならない。(育)
2010/05/28
外国人観光客
先日、鹿児島の専門店を取材した際、外国人観光客の話題が出た。3月下旬、1400人ほどの中国人がクルーズ船で寄港し、買い物を楽しんだという。
一行は、蘇州の大手電動自転車メーカー販売店の社員とその家族で、報奨旅行で訪れた。天文館の地場百貨店や大型電器店、薬局などに殺到したそうだ。彼らが滞在した数時間に使った総額は、推定で約1400万円に上る。
日本を訪れる外国人旅行客は年々増えており、消費額が最も高いのは中国人だ。彼らを地方都市にも取り込むことで、経済効果が期待できる。しかし地方都市は、観光名所が集中する大都市に比べ、通訳や観光ガイドサービスの充実、銀聯カードの導入などの課題がある。これらの課題の克服には、行政や旅行会社の関係者が連動して取り組むことが必要になる。外国人観光客誘致が、地域経済活性化の一役を担うのではないだろうか。(紗)
2010/05/27
大事に見せる
先日、「ガールズアワード」に行ってきた。神戸コレクション、東京ガールズコレクションなどに続く消費者参加型のファッションショーイベントで、今回が初の開催だ。
ファッションショーイベントというより芸能人のコンサートだったというのが感想。各ブランドのショーはお騒がせ女優や人気アイドルのライブに挟まれ、客にファッションのインパクトを残せたかは疑問だ。
既存ショーイベントと同じことをやっても意味が無い。その点で、芸能人ライブを大きく打ち出し集客するガールズアワードの手法もアリなのだろう。でも、もう少しファッションを大事に見せる工夫があってもいい。
企業がお金を稼ぐために始めたイベントだと感じたら、広告に踊らされない今の若者には響かない。「ファッションが楽しいからそれを伝えたい」という作り手の思いが感じられるイベントに“共感世代”の若者の心は動くし、結果的にそれがビジネスにつながると思うのだが。(君)
2010/05/26
メンズも中国へ
急拡大する中国市場に売り込もうと、中小メンズアパレルも今年に入って中国の展示会に出るところが増えた。成功事例があまりないため、自らが現地の好みや商慣習を探ろうとしている。
初めて中国国際服装服飾博覧会に出たヤング向けメーカーは「日本のトレンド商品にどんな反応を示すか心配したが、バイヤーは欲しければブースに入る」と手応えはあったという。
周りの中国ブランドは30~40代が対象で、ヤング向けは見当たらない。その中でアメカジと欧州テイストの二つの商品群を見せたところ、反応があったのは後者で、デザインが利いたものが受けていた。一方、アメカジのベーシック物は見向きもされなかったそうだ。ただオファーは「出店しないか」が多く、「仕入れたい」というところは値下げ交渉を始める。しかも委託を望む。
中国ヤング市場は今ようやくレディスに火が付き始めたところ。メンズは3年先を見据え、売る環境整備など投資が鍵になってきた。(疋)
2010/05/25
成るか“流通改革”
スポーツ業界で「新しい売り場・販路の開発」を早急に進めなければならないという共通認識がようやく出てきた。大手メーカーの決算会見の場や、経営者の談話から、今後の課題として挙げられている。エキナカやドラッグストアという新たな販路開拓を例に挙げるメーカーも数社見られた。従来のスポーツ流通だけでは、多くの消費者を満足させることが出来ないということだろう。
この間、異業種によるスポーツ市場の侵食が顕著で、特に機能肌着といわれる商品は、販売量、売り上げともに圧倒的な差でSPA(製造小売業)に負けている。ただ、この敗戦はスポーツ業界が実は見えていなかった潜在需要の存在を明確に示すこととなった。さらに、業界の意識変革を早める大きな転機になったはず。世界でも認められる高機能・高品質の商品を生み出す日本のスポーツ製品が、スポーツ愛好者のほかにも、もっと多くの消費者の目に届きやすく、手に渡りやすくなる“流通改革”に期待したい。(嗣)
2010/05/25
成るか“流通改革”
スポーツ業界で「新しい売り場・販路の開発」を早急に進めなければならないという共通認識がようやく出てきた。大手メーカーの決算会見の場や、経営者の談話から、今後の課題として挙げられている。エキナカやドラッグストアという新たな販路開拓を例に挙げるメーカーも数社見られた。従来のスポーツ流通だけでは、多くの消費者を満足させることが出来ないということだろう。
この間、異業種によるスポーツ市場の侵食が顕著で、特に機能肌着といわれる商品は、販売量、売り上げともに圧倒的な差でSPA(製造小売業)に負けている。ただ、この敗戦はスポーツ業界が実は見えていなかった潜在需要の存在を明確に示すこととなった。さらに、業界の意識変革を早める大きな転機になったはず。世界でも認められる高機能・高品質の商品を生み出す日本のスポーツ製品が、スポーツ愛好者のほかにも、もっと多くの消費者の目に届きやすく、手に渡りやすくなる“流通改革”に期待したい。(嗣)
2010/05/21
超高齢社会
最近、地方のSCなどを取材していると「この辺りは高齢者が多くて」という話をよく聞く。地方では人口減、少子高齢化が目立ち、「周辺人口の25%を高齢者が占める」とか「婦人服では半分近くが高齢者では」という店もある。昼間にローカル電車に乗ると、高齢社会を実感する。
日本は07年から「超高齢社会」に突入し、世界でも類を見ない高齢化が進んでいる。しかし衣料品では高齢者でも30~40代の装いにあこがれ、気は若く、品質に対する目は厳しい。「ユニクロだけでは物足りない層もいる」と、ある地方百貨店の幹部。
一方、地方では大型店の閉店が相次ぎ、徒歩圏で買い物に行けない「買い物難民」問題も表面化している。大型店は効率だけで閉店を決められるが、すでにシャッター通りになった商店街では買う場所がない。行政ではコンパクトシティー構想を推進しているが、今後も高齢者は増える一方で、数少ない成長市場との見方も出来そうだ。(茂)
2010/05/20
我慢の限界
「景気は回復しているか」との記者の問いに、「景気回復ではなく、消費者の我慢の限界だろう」と複数のアパレルメーカーの社長が口を揃える。天候不順の4月を除いて、年明けから需要の回復を徐々に実感しているようだ。だが、景気の底打ちというよりも、あくまで長期にわたった買い控えへの反動で、心理的な要因との見方が強い。
アパレル各社の10年秋冬の企画で目立つのが、「上質への回帰」だ。ファストファッションの攻勢に、一時はエントリープライスを設けるなど価格を重視したところも、再びブランドオリジナル素材や日本ならではの高度な加工技術を使うなど、デザイナーの世界観を前面に出したアイテムを増やしている。
アパレルにとって価格勝負は「持久戦、消耗戦」で、やはり我慢の限界。「価格が価値」「価格一辺倒」と言われるなか、多くの消費者の目がこうしたこだわりに向くといい。(裕)
2010/05/19
子供服の売り方
「百貨店市場は年間約10%減で縮小すると見ているので、新しいことに挑戦していかないと」と子供服専業メーカーの社長。シックスポケットで高額商品が売れる傾向もあるが、百貨店を主力としていた企業の多くは、新しい母親世代への売り方を模索している。
ある海外デザイナーのライセンスブランドは今夏、東京都内に路面店を出す。スイーツ店や雑貨屋、大人服のセレクトショップが並んでいる一角だ。百貨店で買い物をしない世代に向けた情報発信には格好の立地だろう。また、今秋からの輸入服は、感度の高いママブログへの売り込みを手始めに仕掛けるとしている。
親の納得が購入動機なので、そうした商品の方が通るようだ。実際、繊細なシルクのシフォンをぜいたくに使ったブラウスが展示会に出ていた時、「うちの客層だと本物の方が受ける」と説明された。市場は縮小傾向でも、親世代の価値観やカルチャーを引き付けて発想すれば商機はあると感じた。(渉)
2010/05/18
将来を映す
きもの事業再構築に向けて、業界各段階で前向きの努力が重ねられている。そんな中で、せっかくの尽力に水を差すような状況が発生していると聞く。
厳しい時代だけに少しでも売り上げを作りたい思いは、各企業に共通する。そんな思いを逆手にとって、無理な取引を求めるところが出ていると言われる。
一部ではあるが「得意先から無理な条件を押し付けられて困っている」(メーカー関係者)とか、「小と言えども小売店主は海千山千の熟練者であり、問屋の担当者は社歴が浅い若手。売り上げが少しでも欲しい現状を利用されている。体験の差が出てしまうことがある」(卸関係者)とか。
これらの行為の行き着く先は川上へのしわ寄せであり、物作り段階の疲弊である。さらに、安直な商売は自社と自社事業の到達点も低めることは目に見えている。自分の行いの程度が自社事業の将来の程度を映す鏡になることを肝に銘ずるべきである。(陰)
2010/05/17
違った発想で
「目指すのは大手家電店」――大手インナーメーカーの商品営業部長がこんなことを言った。今の百貨店インナー売り場に面白みがないことを感じての一言だ。同じ百貨店でも、婦人服売り場などは買い回りの楽しさがある。ところがインナー売り場にはそれがなく、客は目的買いが中心になる。新しい売り場作りの発想を持たなければ駄目だと警鐘を鳴らす。
SPA(製造小売業)業態が台頭し、機能性肌着やブラトップなど、本来インナーメーカーが得意とするアイテムにも侵食してきた。この間の決算発表である社長は「ブラトップなど、インナーメーカーの作る商品とは違うものだと認識してきたが、ここまで影響を受けると真剣に向き合わなければ」と語り、また別の社長も「主販路の総合小売りが、この影響で苦戦した」と言う。
売り場も商品も、これまでインナーメーカーの視点で考えてきたが、激変する流通に柔軟に対応するには、全く違った発想が必要なのかもしれない。(正)
2010/05/14
機会損失
大阪・心斎橋筋商店街かいわいが熱い。昨年11月の大阪大丸・心斎橋店北館の開業に始まり、今春はH&M戎橋店や相次ぐセレクト店の開店など話題が集中している。
その心斎橋筋商店街で目立つのは中国人観光客。ドラッグストアでは若い中国人女性グループに中国人スタッフがつきっきりで接客し、レジでは中国語で丁寧に客の質問に答える。店の赤札には中国語表記が目立つ。
それに比べてアパレル店では十分な中国人対策をとる店はまだ少ない。これは中国人を客とみなしていない証しで、わざわざ中国から来てくれているのにもったいない話だ。売り上げをとるだけではなく、今後中国に出店する企業ならマーケティングとしての価値があり、既に中国に店を持つ企業にとっては、認知度を上げ、中国での購買やウェブでの販売につなげることも出来る。
中国人であれ、日本人であれ、店の前を歩く人を客とみなさないのは機会損失に他ならない。まだ客を選べる余裕があるのだろう。(淳)
2010/05/13
濃い関係
展示会場に入るなり、偉そうに座り込むバイヤー。それを見て、商品を手に駆け寄るメーカーの営業担当。そんな光景を見るたびに、専門店とメーカーの関係はこういうものかと幻滅する。
そんな矢先、うれしい話を聞いた。あるメーカーには、同社の商品を見るためだけに、九州から大阪まで10年通い続ける取引先がいるという。大半のバイヤーは、東京展で他社と合わせて発注するが、彼らはデザイナーが日々制作している環境で商品を見て、デザイナーのお気に入りの場所で食事をとる。それらが「ブランドの世界を感じ取る大事な行為」なのだそうだ。「そういう人になら出張費を払ってもいい」とデザイナー。「それでも元が取れる発注をしてもらえる関係だし、そんな店は販売力がある」
不況で、人間関係の大切さに改めて気づいた人は多いだろう。苦しくても、専門店とメーカーのきずながあれば、乗り越えられる壁だってあるはず。これからは、そんな濃い関係が必須だ。(金)
2010/05/12
守り続ける
40代以上を主対象とする婦人服メーカー・小売りのバスコ(福岡)。主力販路の個店のほか、一部百貨店との取引も広がっている。
売り上げを大きく伸ばしているわけではないが、消費者視点に立って物作りし、顧客をじっくり育ててきた成果が出始めている。高橋ひろみ代表は「投げていたボールが返って来た感じ」と言う。ファストファッションが席巻する市場で、その対極に位置する同社のような企業が健闘していることは、同業他社にも自信と希望を与える。
同社の魅力は、さりげない個性、着心地を追求した細身のフリーサイズ、買いやすい価格。消費者のニーズを押さえた商品力だけではない。売れるものではなく、顧客が求めるものを追求する姿勢を長年守り続けた。購入者からは「求めていた服にやっと出会えた」という言葉が返ってくる。最近は出店依頼も増えたが、勢いに乗じた安易な拡大はしない。「返って来たボールに、最高の形で応えたいから」 (高)
2010/05/11
縦横の連携
「顧客の声を形にしました」という商品開発に複数の百貨店が取り組んでいる。すでに一般化している筒回りを選べるブーツ、バッグ・イン・バッグなどは、売り場でつかんだ消費者の声を具現化することで生まれた商品と言われる。
こうした商品開発は、衣食住のほぼ全分野で行われている。各社のホームページや専用カタログでは、ほぼ全商品を知ることが出来る。しかし店頭では、各商品とも当該売り場だけで陳列、販売されることがほとんどで、開発商品としてまとめて見ることは出来ない。
生産数量が少ないものがあるとか、販売体制が取れないなどが、複数売り場では販売できない理由のようだ。その背景には、分野、売り場単位の縦割り組織による横の連携の弱さもある。
この企画は、百貨店の存在感をアピールできる独自企画の一つのはず。潜在需要を引き出す取り組みとしても、せめてテーマごとにまとめた店頭での総合提案ぐらいはあってもよいのでは。(勧)
2010/05/10
プラスワンのその前に
中国で生産する日本向けの今春夏物で、納期遅れが多発している。縫製工場の問題はもちろん、付属品が間に合わないため遅れてしまうこともあった。ゴールデンウイーク商戦に必要な玉を揃えなければと無理をして、不良品が出てさらに遅れたり、航空便の取り合いになったりで、担当者は胃が痛くなる日々を過ごす。上海万博の開幕も輸送に影響した。
一方で、納期遅れは生じたものの、ほとんど問題にならない程度だったアパレルメーカーもある。中国での生産に変化が起きていることは、かねて指摘されていることだった。
解決には、工場とアパレルとの取り組みが大きな鍵になる。取り組みとは何か。工場の設備や従業員を空かせることなく仕事を出すこと。工場とアパレルが情報を共有して計画的に生産すること。採算が合わない低単価の受発注をやめること。これらを実行することだ。バングラデシュでもベトナムでも、同じことが求められるはずだ。(近)
2010/05/07
母のオシャレ熱
埼玉の実家に帰った際、テーブルの上に、珍しくモードミセス系の雑誌が置いてあった。母はもうすぐ長く勤めていた事務仕事を定年退職する。趣味に旅行にと気持ちが膨らみ、おしゃれ熱が高まったようだ。
ページをめくり「このワンピース、素敵」と指差したのは某ラグジュアリーブランドのもの。「母さん、それ20万円を下らないと思うよ」と告げると、しょんぼりしていた。
母は、どこで服を買ったらいいか分からないとこぼす。ミセス売り場に欲しい服は無い。シニアなどもってのほかだ。
以前、百貨店のバイヤーから、ミセス売り場から若い商品を集めたフロアに客が流れていると聞いた。客の感度に、メーカー側がついてきていないのだろう。アラフォー向けくらいのセレクト店ならはまりそうだが、感度と共に価格もぐっと上がる。郊外居住者には百貨店と比べアクセスも悪い。そこにジレンマを感じる女性は多いのでは。ちなみに母は最近、ザラとネットオークションに興味津々のようだ。(維)
