繊研新聞掲載のコラム

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視点/2010年06月

2010/06/30
 回復への手応え
 バッグメーカーが商況回復への手応えを感じ始めている。価格志向一辺倒だった商談が、10年秋冬商戦で変わった。展示会では「従来より数千円高い新商品が支持された」「価格に対するバイヤーの抵抗が少なくなっている」などの声をよく聞く。
 コスト削減による商品の同質化と売り上げ低迷を懸念する企業は以前からあり、ようやく脱・価格競争の方向に動き始めた。もちろんメーカー側は、単なる値上げではなく、先鋭的なデザインや品質への安心感、供給の安定化が同時に問われていることを自覚する。
 こうした物作りのレベルアップへの努力が量的な変化にも結び付き、まとまった数量のOEM(相手先ブランドによる生産)を依頼されるメーカーが、春先から相次いだ。
 しかし経済環境は予断を許さず、閉塞(へいそく)状況から脱しつつあると見る企業でも「メーカーの淘汰(とうた)が進むのでは」と見通す。物作りへの自信を深めながらも、努力の積み重ねが必要だ。(阿)

2010/06/29
 店が育てる
 新進ブランドに特化しているセレクトショップを取材した。まだ無名の作品を「市場にない新しい価値」としてアピールし、地道に店のファンを作っている。「知らないブランドだらけの場所で欲しいものを探すのは、お客さんにとって骨董(こっとう)品屋のような楽しさがある」とオーナー。
 知名度のない商品を売るには、いかに価値を伝えるかが大事。先の店では、商品の側でデザイナーの顔写真やプロフィルまで紹介する。「今の消費者は、多少高くても、素材や技法、コンセプトといった“背景”が伝われば買う」という。
 何より印象的だったのは、ブランドを育てる意識だ。「面白いものを作る若手クリエーターは多いが、大抵がビジネスに結びついていない。そんな小さなブランドにスポットライトを当てることでサポートしたいし、それが店の個性にもなる」
 売り場の同質化が加速する中、店が新進ブランドの価値を伝え、育てることでマーケットを作っていく姿勢の大切さを改めて感じた。(岸)

2010/06/28
 都合のいい時代の終わり
 「ホンダやトヨタの中国工場のストライキは他人事とは思えない」と、トレンド高回転型SPAの経営企画室室長。ほぼ100%を中国からの仕入れに頼り、週別MDで直接発注する同社にとって、操業が1週間でも止まれば死活問題だ。
 長期的な対処法を検討できる人民元の切り上げに比べ、ストはいつ起きるか分からない。電車のストで通勤に困った記憶も薄らぐ日本では、隣国の労働者の主張がまるで天災のように感じられても仕方あるまい。
 「十数年来、都合よく中国を使ってきた時代は終わりだ」。ある中堅専門店は、自社生産の可能性を探りに社員を出向させていた中国工場が、いきなり閉鎖された。激減した国内工場を支える出資までも考えたが、「零細小売業の身では重すぎる」とため息をつく。
 どの国でも「安く、早く、安全に」作ることが容易ではなくなってきた。日本の小売業も、自店の顧客に響く付加価値をどう上げていくのか、いよいよ本気で考える時が来たようだ。(杉)

2010/06/25
 チャレンジ業態
 バロックジャパンリミテッドが「アズールバイマウジー」で、ゼビオと協業して茨城県土浦市にオープンした新業態「AZX」が面白かった。
 アズールのクールさはそのままに、有力スポーツブランドをミックスしたセレクトショップは、まさに新感覚。バスケットゴールなどを使ったダイナミックなディスプレーや、香りに満ちた雰囲気いっぱいの演出も手伝って、足を踏み入れるなりわくわくした。
 「マウジーテイストでスポーツスタイルを提案してみたかった。日本はドゥスポーツに寄っているが、レジャーやファッションとしてのスポーツがもっとあっていい」と担当者。「チャレンジできて楽しかった」との言葉も飛び出した。
 慎重な消費が続くなか、企業側からも手堅い提案が目立ち、最近は売り場で心躍らせることが少なくなった。そろそろ秋に向けての出店が固まってくる。その空間に身を置くだけで気分が高まるような、新しい売り場をぜひ見せて欲しい。(粟)

2010/06/24
 シンプルがいい
 子供服で、シンプルなスタイル提案に踏み出すメーカーが増えている。今秋冬の女児向けでは、白シャツにローゲージニット、カットソーにトラッドなベストといった、大人服同様の単品の重ね着が一例だ。
 リボンやフリルで飾った可愛らしいスタイルが定番であることに変わりはないが、全国展開のカジュアルSPA(製造小売業)の中でもその傾向は見られた。
 狙う親は、セレクトショップの服で育った団塊ジュニア世代以降。派手さはないが上質な服を選び、自分に合った着こなしができる。子供服でも、ツイードや13オンスデニムなど本物志向の素材を求めるという。
 これらの要点を突いている仏ブランドは昨年、既存店の売り上げを伸ばし、郊外の商業施設などで新たなニーズを感じている。フリルスカートよりも、男女兼用のカラーパンツの方が売れ行きが良い。子供服も、客層のライフスタイルを読み、単品の素材や色、ディテールを検証する時代になってきた。(渉)

2010/06/23
 もろ刃の剣
 労働者のストが頻発する中国で、賃金の大幅な引き上げが進んでいる。中国政府も11年からの5カ年計画に、労働者の賃金を現在の2倍にする「所得倍増計画」を盛り込む検討に入った。この流れから見ると、今後も賃金の上昇が進むだろう。
 一個人としては隣国の賃金上昇は歓迎するが、日本の繊維、ファッション業界にとっては、もろ刃の剣でもある。中国から調達する企業には紛れもなくコストアップになる。元相場の弾力化方針も示され、今後、賃金上昇が急ピッチで進めば、アパレル生産のコスト構造に大きな影響をもたらす。ただでさえ出番が少なくなった日本のテキスタイルから、中国調達に乗り換えるケースが増えるのは必至だ。
 逆に賃金アップのメリットは、中国の消費が今以上に活発になると予測できること。中国に進出している日系小売業、アパレル企業にとってはフォローの風となる。いずれにしろ日本の繊維、ファッション業界にとって、中国の動きから逃れられない。(稲)

2010/06/22
 “今ここで”
 先月、たんまりと服を買い込んだ友人は「高い買い物になっても満足できた」と話していた。ルミネが10%オフだからと、いつも以上の点数を買った彼女は、支払いも予算以上だった。でも「安い時に良いものをたくさん買った。そんな賢い買い物をしたのだから気にならない」と言う。
 ファストファッションや古着、アウトレットが人気なのも、人間のこんな心理が遠因にある気がする。大事なことは、値札の安さよりも、今その瞬間に買わなければいけない意味を感じることができるかどうか。その“今ここで”をうまく突いたのが、ファストファッションや、その日にしかない掘り出し物を見つける感覚がある古着とアウトレットなのかもしれない。
 例えば、誕生日や記念日に、ずっと欲しかった一品を買う時の感動。こういう時、誰でも消費に大胆になる。単なる値下げではなく、そんな感動を盛り込む価格と販売政策。これが消費税10%の逆風にも大きな武器になるはずだ。(重)

2010/06/21
 「暗黒大陸」は…
 サッカーワールドカップ南アフリカ大会の開催で、アフリカ大陸が注目されている。かつて「暗黒の大陸」と形容され、貧困や飢餓、内戦といったマイナスイメージが強かったが、今回の大型国際イベントを機に今後の発展・成長が期待される。
 アパレル関連での日本とアフリカのつながりといえば、綿花や獣毛の産地としては思い浮かぶが、製品を売り買いする相手という意識はまだまだ薄いだろう。
 その点、中国はしたたかだ。政府や企業の投資で天然資源の開発などを進めているだけではなく、携帯電話網の整備など、あらゆる業種で経済連携を活発化させ、アフリカでの存在感が際立っている。
 BRICsに次ぐ新興国として注目される南アフリカでさえ治安の悪さが問題になるなど、日本からビジネスに行くには大きな障壁があるが、近い将来、アフリカとの連携も課題になるだろう。(恵)

2010/06/18
 様変わり
 「1年前とは百貨店バイヤーの態度が様変わり」と、あるアパレルメーカー。昨年は「価格を下げろ」という要望ばかりだったが、今年は「誰も言わなくなった。質を高めて価格を上げてくれとの声が大半」と言う。
 低価格化の流れの中で、多くの百貨店向けブランドが昨年、価格を下げた。購買客数を増やして売り上げを確保する狙いだったが、大半が単価下落を補うだけの客数を獲得できずに苦戦した。客数の大幅な増加が見込めない百貨店で、価格戦略が自らの首を絞めることは予想できたことだ。
 昨年末から潮目は変わり、百貨店で高単価商品が売れ始めた。今秋物では質を高めて価格を上げるブランドが多い。上質な商品を求める客が多い百貨店向けの戦略としては妥当と言える。
 気になるのは06年ころも「質を高めて価格を上げろ」と言う百貨店バイヤーが多く、市況が低迷した翌年には手のひらを返すように価格引き下げをアパレルに要求したこと。同じことを繰り返さなければ良いが。(有)

2010/06/17
 日本の物作り
 「新参者」というテレビドラマを見ている。東京の下町で起きた事件を発端として、様々な人間模様が描かれているのだが、興味を引かれたのは、毎回変わる手作りの物が人の真情を伝える重要な役割を担っているように思えたからだ。
 ドラマの初めのころは下町の職人さんが作った物が多かった。何回目かでは時計職人を登場させ、「どんな一流の時計も、名もない職人が作った歯車で動いているんだ」と啖呵(たんか)を切らせた。結末につながる重要な場面だったが、ドラマ全体を通して、小さなことも手抜きしない日本の物作りに対する原作者の愛着のようなものを感じる。
 衣料品の国内生産が転機を迎えている。一方で、この業界に賭ける学生は少なくなく、ある企業が募集した制服デザインに採用された学生は、普通高校を中退し、働いて学費をため、専門学校に入り直した経歴を持つ。日本の物作りの伝統を受け継ぐ可能性を持った学生の夢を、夢で終わらせない業界であり続けて欲しい。(龍)

2010/06/16
 国内製造の危機
 「国内製造のテキスタイルが戦える余地が本当に少なくなった」と、あるテキスタイルメーカー。中国など生産地に輸出してでも必要とされる国内生地は少ない。その代表格が婦人ボトム用のストレッチ生地だった。「ひざの部分が出ない」「ストレッチの戻りが良い」「シルエットや風合いがきれい」など複数の条件を満たす生地が、国内製造しか見当たらなかったからだ。
 ところがここにきて状況が変化した。中国生地の飛躍的な品質向上で中国と日本の品質差が縮まり、「価格差がありすぎると、このゾーンも日本から中国に簡単に移転する」。そこで日本メーカーは「高くても良いもの」では駄目で、「日中間の価格差を考えてコストダウンした生地でなければ戦えない」となった。
 「とにかくコストを下げるしかない」と先のテキスタイルメーカーは悲痛な覚悟だ。だがコストダウンにも限界があり、「国内製造」は存亡の危機にあると言える。(浅)

2010/06/15
 在庫のあり方
 在庫をどこで消化するのか。店頭、アウトレット、ネット販売などの販路や、セールの頻発化、多様化など、在庫をどう振り分け、消化するのかが重要になっている。
 ベースは店頭での消化というアパレルメーカー、専門店は多い。人件費、家賃、内装と投資の大きさから、店頭で売れるのが一番と考える人は多い。ネット販売の構成比が高まる企業では、その効率の良さに気付き始めた。動きの鈍い商品をシーズン中に、アウトレットで割引率の低いうちに消化することも一般的になっている。さらに商業施設の期間限定セールや各店が行う上顧客向けセール、メーカーのファミリーセールなど、在庫を消化する手法は多岐にわたる。
 在庫を取り合っている?などというと、すごく良い話のようだが、衣料品市場の実態は低迷から脱していない。であるなら、商売の前提が変化しているととらえるべきではないだろうか。価格や在庫、販路などのあり方、考え方を見直す時期に来ている。(窪)

2010/06/14
 サステイナビリティー
 サステイナビリティー(持続可能性)やトレーサビリティー(履歴管理)をコンセプトにした商品が増えている。環境や人権を意識した“社会派”の物作りは今やトレンドだが、それだけでは魅力的な商品は生まれないのが現実だ。
 先日取材したジュエリーブランドは、柔らかい曲線を描くデザインがモダンで、さりげないラグジュアリー感が魅力的だった。クオリティーも高く、ハイジュエリーを好む女性も納得できそうだ。立ち上げて1年で卸先を着々と増やしているという。
 そして、そのコンセプトを聞いて驚いた。そもそも金の採掘地の労働条件の改善を目指して何か出来ることはないかと考えた末、ジュエリーブランドを始めたという。
 モダンで女性的なデザインと、骨太な考え方。両極端の性格が2本柱になって、ブランドの存在感を作り出していた。サステイナビリティーやトレーサビリティーを声高に訴えるのではなく、物作りとの両立が市場開拓につながりそうだ。(規)

2010/06/11
 魅力伝える作業まで
 ユニクロの上海グローバル旗艦店を実際に訪れて、VMD訴求力や販売スタッフの接客サービスレベルの高さが予想以上で驚いた。サイズ切れに対する問い合わせに、親切丁寧に応じてくれた。
 マーケティング面で自国に誇りを持つ中国人心理をうまくくすぐった感もあるが、日本のブランドとして、品質だけでなくサービスでも魅力をしっかり提供していく姿勢は、中国内販に取り組む他社にも良い刺激になっていることだろう。
 日本のジーンズ業界では中国市場進出への動きが広がりつつある。上海進出を計画する某メーカーの社長は、今の中国市場は日本ブランドにあこがれる“スポンジ状態”と見る。別のメーカーの社長もトライアル販売を経て、日本で売れるものは中国でも売れると実感し、メード・イン・ジャパンを売り込む考えだ。
 現地でどう流通させるかという段階に入った。ブランドの魅力をどれだけ的確かつ効果的に伝えていくか。進出で一息つかずに、その先も注力して欲しい。(畔)

2010/06/10
 みんなで育てる
 ある紳士靴の展示会で担当者が「最近の若いバイヤーは、靴の見方も知らないんですよ」とぼやいていた。聞くと、ドレスシューズの先端を持つのだという。「バイヤーが物を理解していないようでは、良いものを作っても消費者にまできちんと伝わらないのではと不安になる」とも。
 最近、いくつかのセレクトショップがバイヤーの若返りを図っていると聞く。狙いは、若い感性を生かして、若い消費者に合った売り場を作ること。しかし、きちんとした商品知識を持たないバイヤーに任せてしまったら、良いものを理解する文化がどんどん薄れてしまうだろう。感覚だけで買う靴や服だったら、ファストファッションに任せておけばいい。
 もし「物を知らないバイヤーには売りたくない」となったら、せっかく良いものを作っても消費者に届ける機会を失ってしまう。良いものを伝えていくには、メーカーや小売りなどの垣根を取り払い、業界全体でバイヤーを育てる意識を持つことが大切だ。(佐)

2010/06/09
 日本だけ…
 「日本だけ」とある海外ブランドのマネジャーは言う。「世界経済が底を打っても唯一、回復しない市場が日本。スペイン市場でさえ回復したのに」
 「自業自得」と別のラグジュアリー幹部。「リーマンショック後、どの小売店頭もセールは前倒しで長期化、普段も値下げか低価格の要請ばかり。消費者はいつ正価で買うんだろう」。このブランドは昨年、価格を下げたのに「結局、販売数アップでも減収」。これが日本市場の今か。
 世界不況はもう言い訳にならない。他国の景気が回復している今、日本独自の問題点が浮き彫りになる。思慮のない値下げの果てに販売数量増で減収では、誰も得をしない。
 冒頭のマネジャーは自戒の念を込めて言う。「今年はシーズン品を除いてセールしません。そのぶん販売点数減でも、正価で買ってもらえる商品と顧客と粗利益をしっかり生み出します」。こんな気概を競い合うことが、低価格競争よりも必要なはずだ。(重)

2010/06/08
 生み出す力
 ネットショップ主力のインナー専門店で、「メーカーがSPA(製造小売業)と盛んに言い始めてから、良い商品が生まれてこなくなった。ヒトとカネを商品開発ではなく、店舗運営や販売に割くようになったからだ」と言われた。
 メーカーが面白いもの、これまでなかったものを生み出す力が衰えたことが、モノが売れなくなった要因の一つだと言うのだ。実際に、新しい機能やアイテムが登場した時には、素早く反応を示すと言う。つまり、買わなくなったのではなく、買いたいと思う商品が減っているのが消費不況の原因なのだと。
 あるメーカーやブランドの固定ファンなら、そのメーカーの店やサイトで購入すればいい。しかし、漠然と「インナーが欲しい」という消費者にとっては、品揃え型店の豊富な商品バリエーションが武器になる。苦言を呈しながらもオリジナルを作るという選択肢をとらずに集客力・販売力の向上に力を注ぐのは、メーカーに対する期待の表れなのだろう。(壁)

2010/06/04
 パターン教育
 「東京と世界のクリエーションの差はカッティングにある」と、今秋冬コレクションを見て感じた。もちろんカッティング以外にも足りない部分はたくさんあるのだが、何よりもアイデアを形にする技術が足りないように思う。
 「海外と日本の服を作る工程での違いは、白い作業着を着たモデリスタ(プロダクトデザイナー)と呼ばれる専門職の違い」とあるパタンナー。日本の工場にはモデリスタと呼ばれる専門職はないし、パタンナーを雇うアパレルはあるが、どんどん外部企画するようになっている。そのメゾンに特有のカットを作るパタンナーを育てる環境は、10年前に比べても悪くなっている。
 「技術教育には自信があるので、コンセプトを育てる教育にもっと力を入れる」とある学校関係者。もちろんコンセプトを育てる教育も必要だろうが、今、服作りの現場で問われているのはそこだろうか。今のパターン教育が現場でどれくらい有効なのかをリサーチすることもあっていい。(拓)

2010/06/03
 嫌消費への対処
 「嫌消費世代」という言葉をよく耳にする。バブル後生まれの20代で、就職氷河期を体験し、将来への不安を持つため、身の丈に合った消費行動しかしないという消費者像だ。マーケティングに詳しい松田久一氏によると、そうした世代がモノを買うキーワードは「スマート」らしい。趣味に合って賢いと思われる商品、すなわち割安で品質の良いものが売れるということだ。
 しかし、モノを買う理由はそれだけだろうか。衣料品と同じく消費が落ち込んでいる音楽業界では、アーティストを応援、支援するという意味でCDを買う消費者が出てきたという。彼らを引きつけるものは何か。理由は様々だろうが、アーティストの世界観、価値観に共感している部分はあるだろう。
 高品質・適正価格だから売れるわけではない。企業が消費者に、支えたいと思わせるだけのイメージを打ち出しているだろうか。考えてみてもいいかも知れない。(騎)

2010/06/02
 人材の育成
 国内での物作りがますます危うくなっている。各産地、コンバーターで倒産、廃業が続き、生産の基盤そのものが大幅に縮小してきている。
 だがそれ以上に、流通全体に物作りを知る人材の不足への危機感が指摘されている。アパレルや小売りは、この間の「丸投げ」企画、生産の中で物作りにかかわる人材のコストを削減してきた。テキスタイルコンバーターでもビジネスの縮小に伴い、経験のある人材の多くがファッション業界から離反している。産地では、職人的技量を発揮する場が奪われている。日本を離れ、中国や韓国で技術を生かしている人も少なくない。
 技術も人材も一朝一夕には育たない。世界ビジネスを声高に叫び、ブランドの育成を重視すると言いながら、肝心の物作りは世界で勝負できるレベルなのかが問われている。売れ筋だけではない本質への問いかけと、それをフォローできる人材の育成が、改めて急務になっている。(木)

2010/06/01
 価値探し
 このところ、小売り関係者と共同で物作りを進めているとの話を、素材・製造メーカーから聞く頻度が増えた。旧来の価値が消費者に通用しなくなり、誰もかれも次世代の価値探しに必死だ。「うちみたいな小さいところは癖のあるものを作っていかないと」が信条のニッターに百貨店から発注が来る。問屋を介さず川上に飛び込むのは、道先案内人なしで深い森をさまようのと近かったはず。
 消費者に刺さる価値はどこにあるのか。今伸びている素材の共通項は、メーカーサイドが「変わったもの」と言い放つものや、販売員がお客に向けて“おしゃべり”できるストーリーのあるもの。特に国内メーカーは生き残りをかけて、これらを狙った開発に力を注ぐ。
 製品輸入率の上昇や製造設備の海外移転は、日本のメーカーであることを、改めて価値へと押し上げようとしている。ここまで踏ん張ってきた中小メーカーにとっても、素材や企業名をブランドとして売り出す好機が来ている。(麻)