繊研新聞掲載のコラム

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視点/2010年07月

2010/07/30
 専業の企画力
 レディス専業メーカーを取材していると、セレクト店のOEM(相手先ブランドによる生産)を受けている話が出てくる。記者が知っているところではブラウス専業、スカート専業の企業だ。
 その理由は「セクレト店はジャケットやコートなど、定番的なものは生産背景を持って作り込んでいるが、生地の落ち感やドレープ性でラインが変化するアイテムを作り切れる人材はほとんどいない」という。「前年の売れ筋で、今年も大量に売れると予測できれば自前で作るようになるが、トレンド商品の200枚程度は生産リスクを持ちたがらない」とも。
 実際、専業メーカーの展示会では、パタンナーやデザイナーの発想や応用力に感心する。シャツの応用でワンピースやコンビネゾンまで作ったりする。そこからバイヤーが選ぶので、OEMよりODM(相手先ブランドによる設計・生産)に近い。それで気付いたのは、日本のファッショントレンドを仕掛けているのは専業メーカーだということだった。(渉)

2010/07/29
 カスタマイズ
 過酷な季節を快適に過ごす機能インナーが、大手SPA(製造小売業)やGMS(総合小売業)などから相次ぎ発売され市場をにぎわす一方、本来得意分野であるはずのインナーメーカーは大打撃を受けている。その大きな理由は価格競争力だが、太刀打ちするのが難しいなか、カスタマイズという考え方が浮上してきた。
 グンゼのカジュアルインナー「ボディワイルド」は今年、全面刷新した。100色パンツは、100種類のウエストゴムとポケットを組み合わせることで100万通りの表現が可能で、自分好みにカスタマイズできる。協業パンツはインクジェットプリンターを使用、父の日企画など1枚だけのパンツができると人気を集めた。
 他の大手インナーメーカー社長も「究極は一人ひとりに合う下着を提供すること」と。100万枚を超えるヒット商品はなかなか出てこないかもしれないが、個人の心をつかむカスタマイズ商品を積み上げる方針も良いのではないか。(正)

2010/07/28
 振袖の変化
 振袖の商品作りが二極化して久しい。今年は更に進んだようだ。
 一つは伝統の古典感覚表現で、手作りの商品群。落ち着いた色使いで、セット価格58万円以上のタイプ。もう一つはブランド品で、星やハートやリボン柄、西洋文字などの柄を多用。ブルーやイエロー、ピンクなどカラフルで華やか、キラキラ輝くような表現が特徴だ。こちらは最近、急速に広がっており、インクジェット染色での内容も進化中だ。
 伝統を重んじる大人は孫や子供が、成人式に古典感覚の振袖を着ることを喜びとし、安心感を覚える。一方の自己主張する女性が着る振袖は、大人にとって必ずしも安心できない。「大事な場には格式ある柄意匠表現のきものでないと」と。
 当のお嬢さんは譲らない。何が何でも自分の着たいタイプを選ぶ。しかし、最近はその商品群の中にも古典感覚の表現が求められる場合もあるという。変化の兆しか、注意が必要だ。(陰)

2010/07/27
 起業のすすめ
 服飾系の専門学校生を中心に本紙がこのほど行った「就職意識調査」では、学生の大半がファッション業界への就職を希望した。しかし企業側は、企画職だけでなく販売員の採用も絞り込む傾向を強め、今後も改善する見込みは薄い。就職口が減り続ける中で、学生が就職以外に選択肢を持たないのはリスクだ。
 そこで、簡単ではないが、起業することも選択肢に入れてはどうだろうか。そのためには在学中に服作りの勉強だけではなく、起業して成功できるノウハウを、様々な実験を繰り返して蓄積する必要がある。ネット販売、ブログ、ツイッターなどを活用することで、以前とは比べ物にならないほど個人が勝負できる環境は整ってきた。結果的に就職を選んでも、得た経験は必ず生きる。
 業界が混迷する今、新しい手法やアイデアで抜きん出る若い起業家やデザイナーがもっと出てきてもいい。就職を前提にしない方が成長できるし、自分の新たな可能性を発見できるのではないだろうか。(淳)

2010/07/26
 人材投資
 「あの企業はどうして売れているのですか」。取材をしていると、大抵同じ企業の名前が挙がる。共通するのは、思い切った人材投資だ。
 あるネット販売企業は60%増ペースで売り上げを伸ばしている。その理由を社長は「人がやっと成長した」と言い切る。数年前からセミナーや管理職研修に取り組み、年間数千万円をつぎ込んできた。ある婦人服メーカーは、社員旅行でドバイ、ヨルダンなど世界各国を旅している。「最初はすべてが新鮮だったが、この数年で自分の好みが明確になった」と、30代のチーフデザイナー。それが企画に生き、説得力ある提案が出来るそうだ。
 人材投資は即効性が見込めないため、他を優先する経営者が多い。しかし、前記の社長が口を揃えるのは「モチベーションアップにはすぐにつながる」こと。会社が社員にこれだけかけているという姿勢を見ることも、やる気につながるのだろう。経営者は、社員を信頼する気持ちをもっと形で示すべきだ。(金)

2010/07/23
 決断の時
 「SCの床をとにかく埋めたいというのが見え見えの出店依頼を受けた」という、ある地方専門店社長の話をこの欄で書いたのは08年5月のこと。リーマンショック以前に、専門店は大手も含めて出店を絞り始めており、商業施設のテナント集めが難航する事態が広がっていた。思うようにテナントを集められず、工事を先延ばししたSCも一つや二つではない。
 全国SCの既存店売上高は今年5月まで21カ月連続の前年割れ。入居専門店やSC事業者が効率悪化に悩む一方で、楽天市場やゾゾタウンなどのネット販売は成長が加速している。もはや、消費者が実店舗とネット店を使い分けるのが当たり前の時代だ。
 もうそろそろ、SCの営業時間短縮を決断すべきではないだろうか。時間と空間の制約を受けないネット店に、長時間営業で対抗しても顧客サービスにならないし、コスト上、勝ち目はない。営業時間を短縮し人的サービスを飛躍的に向上させる方が実店舗の優位性につながるはずだ。(青)

2010/07/22
 京都力
 私用で京都を訪れた時、烏丸地区を夜歩くと祗園祭のおはやしが聞こえた。祭り直前に毎夜練習しているのだという。同エリアには呉服や繊維関連のメーカーや工房が集まる。繁華街には石造りのビルを再開発したファッションビルもあり、京都の職人が手がけた商品を販売している。
 京都の産業を支える染め織りを取り巻く状況は変化している。きものを着る人口も減ったが、日本の伝統文化を発信する京都の存在価値は依然として大きい。年間5000万人を超える観光客がその魅力を物語る。  物作りは一朝一夕に出来るものではない。京都が発する魅力も、根底には格子戸の続く街に息づく手業が生み出す「京都力」が守られているからこそだ。
 だが、物作りの現場と職人を守るためには際を超えた製造と流通のプロジェクトが必要だろう。“メード・イン・ジャパン”のために残された時間は短いが、やりがいはある。(津)

2010/07/21
 本末転倒
 中国の人手不足でスキルの足りない縫製工員が多くなったことも一因となって、アパレル製品の品質トラブルが増えている。今年の旧正月後の生産工場で顕著になった状況は、今後も続くと予想される。不良品の流入を水際で防ぐために、中国での検品の重要度が高まり、日系の検品工場の数は増え続けている。
 商社やアパレルメーカーが検品の必要性を認識しつつも、検品にかかる費用を抑えたくなるのは、小売価格を上げにくい中では理解も出来る。検品価格をケチって、「表だけをチェックし、裏は省略する」ことでお互いに了解して検品したところ、その裏側に問題が発生したケースがあったという。品質と安全を確保するための検品がコスト削減によって機能しなかったわけだ。
 検品価格を値切って自社の利益をひねり出そうとしたとは思いたくない。メーカーと検品企業は利益を奪い合う敵同士でもないはず。コスト削減が出来ても、品質不良を防げないのでは、本末転倒でしかない。(近)

2010/07/20
 ミックス消費
 「消費が戻ってきた」と取材先で耳にすることが多くなった。売り場で「そろそろ何かいいものがあれば買いたい」という購買意欲を感じるそうだ。ただし長い間、財布のひもを絞っていただけに客の選択眼は厳しく、価値を感じないと買わないという。
 例えば、こだわり素材で作った着回しが利く服や、秋にはやりそうで今から使えるスエードのフリンジバッグなど。先物買いも戻っており、ある百貨店では、昨年は9月まで動かなかった革ジャケットが4月から動いたという。一足早い秋のトレンドの雑貨や上質な本物の服、老舗ブランドの定番品など、1点で自分の格を上げられるものに需要が出てきているようだ。ファストファッションの店で買ったマキシ丈のドレスなど、流行ど真ん中の服とミックスして楽しむ人が多いとか。
 自店に求められているものは何か、店を使い分ける賢い消費者に何を提案するかが問われるが、需要を消費に変えるチャンスの兆しは見えてきたようだ。(陽)

2010/07/16
 チャンスのタネ
 ハイジュエラー各社が、インターネットを使った販売やPRに積極的に取り組んでいる。ネット販売はもちろん、ブロガー向けイベント、スマートホン対応のサイト作りなど、バリエーションも多岐にわたる。
 取材する前は、ネットで商品をチェックするのも、ジュエリーだけに圧倒的に女性が多いだろうと思っていた。しかし、ギフト需要で男性も多く見ていると言う。
 中でもブライダル向けサイトは男性の視聴率が高い。「エンゲージって何?」からスタートしなければならない男性たちにとって、彼女が好みそうなブランドやデザイン、そして何より相場をリサーチするのに、ネットはもってこいのツールなのだ。店をのぞくのも、ブライダル雑誌を見比べるのも、男性にはややハードルが高い。その需要に応えてブライダルサイトには、イメージよりもスペック紹介に重点を置くブランドもあった。
 不自由はチャンスのタネ。改めてそう思った。(維)

2010/07/15
 暗黙知
 言葉で伝えにくい技術やノウハウを暗黙知というらしい。ファッション業界に当てはめると、さしずめカリスマ販売員やすご腕バイヤー、営業マンの仕事といったところか。カリスマ販売員の「いらっしゃいませー」は、無意識のうちに客を引き付ける何かを持っているのかもしれない。その何かを教えない限り、普通の販売員に「いらっしゃいませー」を教えても、客の心に響かない。
 しかし多くのカリスマ販売員は、無意識にその接客ノウハウを蓄積している。だから、後輩を指導する時も、自らの接客の専門性に気付かず、「特別なことはやってないよ」「元気よく、笑顔でね」といった抽象的な話をしてしまうのではないか。名選手が名監督に必ずしもなれないのは、自分の暗黙知を教える技術を持たないからだ。
 カリスマ販売員をもてはやすよりも、その接客の専門性を理論化することが大切だ。誰もが理解しやすい言葉で指導できる環境を作ることが、販売や営業の専門性を向上させるはずだ。(史)

2010/07/14
 日本一の気概
 「駅ビルの全面改装の最中、他のテナントの内装業者が逐一、見学に訪れた」と、千葉の駅ビルに出店する化粧品専門店の社長。それもそのはず、改装には「日本で唯一の技術を持つタイル職人を岐阜県からわざわざ招いた」からだ。
 日本一の技術で内装業者をうならせた専門店だが、「全国の化粧品の個店専門店の中で一番の売上高と月坪効率」と言うから、本業の実力もお墨付き。日本一の店は内装も日本一にこだわる。
 「改装経費は8200万円」と、さらっと話すが、果たしてファッション業界で駅ビルのショップ改装にこれだけの経費をかけられるところは何社あるだろうか。個店専門店では皆無に等しいのでは。
 売れない時代。原価や工賃を抑えた粗利益の確保、人件費や光熱費の削減など、涙ぐましい経費削減の話題は尽きないが、「うちは給与も他には負けていないと自負している」とも。こうした気概を持った専門店がファッション業界にも求められる。(真)

2010/07/13
 ヤングの服
 「安い」ことが若い人にとっては相変わらず服を選ぶ基準のようだ。というか、いいものはそれなりの価格になるということを理解していないのでは。服について学習したり服に対する感覚を磨いたりする機会が、昔に比べて極端に少なくなっているからだろう。
 服作りの現場が身近にあった時代は、洋服が今よりもっと文化として大事にされていたし、服を知ることは教養を身に着けることだった。
 「売れてる」とか「安カワ」とかに流されていては、コレクションに登場する服を見て、その洗練されたクリエーションに感動することもないだろう。物作りの背景に思いが及ぶことも。
 あるデザイナーが「ヤングの服は作りたくない」と言っていた。伝わらない人に向かって努力してもむなしいからだ。しかしそれでは産業もクリエーションもさらに先細ってしまう。服の文化と物作りを知ってもらい、もっと服を着ることに挑戦してもらうにはどうしたらいいだろうか。(赤)

2010/07/12
 変化する受注
 アパレルメーカーの展示会受注率が減少している。最終消費者の実需買い比率が高まる市場環境で、小売りサイドがリスク回避を意識して、先物発注を手控える動きが顕著になっている。
 あるインポーターは「市場の動きと展示会サイクルが、かみ合わない状況だ。一定のロットを早期に本国(輸入先)にオーダーしなければならない我々の業態にとっては悩ましい」と吐露する。一方、あるプレタメーカーは「良い商品を展示会に並べ、腕利きの営業マンに任せていれば売れるような単純な時代ではない」と言い切る。
 従来の商形態が通用しなくなっているなかで、先行と期近展の併催、期中対応でリピート重視、卸商品とセットアップできるODM(相手先ブランドによる設計・生産)企画との並行提案など、企業としての包括的な戦略、戦術が決め手になる。
 “個”の力量だけでは突破するが難しくなり、組織力が試されるのは、フットボールだけの話ではなさそうだ。(民)

2010/07/09
 平場軽視
 百貨店の単品平場は危機的だ。メンズフロアでは供給元の専業メーカーが、大手からどんどん消えていった。シャツやニットなどでも大手の経営破綻(はたん)が続いた。供給元の減少は百貨店の首を絞めることにもなる。
 売り場が埋まらない状況で、地方百貨店を中心に量販店主力のメーカーが参入している。OEM(相手先ブランドによる生産)メーカーの新規参入も目立つ。それだけでは収まらず、平場をつぶして専門店を導入する動きも出てきた。
 販売員については、小売店が自前でリスクを負う例は少ない。最近、自前の販売員を強化する動きがある。ただし、百貨店の店舗閉鎖が相次ぎ、その余剰人員を店頭に回しているとのこと。メーカーの派遣店員を断る分、掛け率低下の要請が増えている。
 「後ろ向きの自前販売員化」にメーカー側から疑問の声が多い。本来、差別化にとって重要な役割を担うはずの平場の軽視は、百貨店の未来を暗くすることになるのでは。(臣)

2010/07/08
 中国進出
 国内アパレルに続き、雑貨、とりわけバッグ企業の中国進出が盛んだ。ラグジュアリーブランドやアパレルの雑貨参入などによる競争激化が背景にあるが、何より国内市場の成長性に疑問を感じたことも根底にあるだろう。
 しかし、中国本土に出た企業にヒアリングすると、成果を上げているところはごくわずか。とりわけパートナーに恵まれず、出店が思うように進まなかったり、きちんと店舗を管理・運営してくれずに報告も不十分という事態が起きているようだ。すでに撤退を決めた企業もあった。いかにパートナー選びが重要か、認識を新たにした。
 やはり、資金力に制限がある企業の場合、日本市場との親和性が強い台湾など、本土周辺の地域・国からまず足場を築くべきではないか。そこを拠点に中国人との仕事のやり方を学んだり、人的を含むネットワークを広げるなどし、その後に広大な市場へ挑戦するというプロセスを経る方が、リスクも少なく、現実的なように思える。(潤)

2010/07/07
 スタンダード
 中国向けネット販売を始めようとする企業向けのセミナーで、これを支援するある企業は「日本国内の物流サービスの水準を前提にしてはいけない。欧米に比べてもサービス水準が高い日本の物流ではなく、中国の物流インフラをベースに事業を組み立てることが大事」と強調していた。
 一方、あるフォワーダーは、グローバルな物流の中心になりつつある「中国の物流がユニバーサルなものに変わるのか、チャイナスタンダードを言い出すのか」が気がかりと言う。今後、中国の物流インフラがどういう形で整備されていくか、多くの日本企業にとっても関心事だろう。逆に日本水準の物流サービスネットワークを中国で整えようとしている日系物流企業も少なくない。
 物流業でも流通業でも、中国市場で成功するには、急成長の下で変わりつつあるインフラや中国企業・消費者のニーズを見極めつつ、チャイナスタンダードづくりにどうかかわるか、自社の強みをそこに生かせるかがカギになりそうだ。(監)

2010/07/06
 前倒し
 百貨店のクリアランスセールがスタートした。一方で、本セールの日程は変えず、地域や企業によっては多様なプレセールを実施する店が増えている。6月からプレセールを実施している地方百貨店の社長は「本来はセールの前倒しはやりたくなかった」という。エリア内の競合店に引きずられて早期化せざるを得なかった。「実需期にセールをするのはやはりおかしい」と心情を吐露する。
 セールの前倒しは、値下げ期間の長期化、プロパー販売期の短縮を意味する。セール自体のインパクトやパワーも弱める。何よりも価格に対する顧客の信頼感を失いかねない。
 別の地方百貨店では、セールを前倒しした年もあったが、7月1日に戻した。競合店より開始が遅くなっても、集客と売り上げは落ちなかったという。「セールの早期化は、売り手、買い手ともに必ずしも得をしていない」という。実需期にプロパーで売り切る意志や体制の重要性が改めて問われている。(浦)

2010/07/05
 レイヤード
 スポーツ向け素材の展示会場でのこと。スポーツウエアのレイヤードに身を包んだマネキンたちが並ぶ前で、「最終製品を意識して素材を提案しようと心がけている」と担当者。
 近年、スポーツのファッション化とともにレイヤードスタイルが一気に広がった。長袖のぴったりとしたアンダーウエアを着るなら、合わせるミドラーやアウターにはどんな機能が必要か、という視点で素材を見るのも興味深い。重ね着して初めてそこに生まれる機能もありそうだ。
 各社の11年秋冬素材展では、ダウンの表地など引き続き「軽量化」がキーワードになっている。これも、表地だけが軽量ではあまり意味がないし、体の動きを妨げず重さを感じさせないパターンなど、総合的な軽量化があって初めて価値が生まれる。
 製品開発はそもそもアパレルメーカーの仕事。でも、素材メーカー自身も消費の現場にもっと近づけば、アパレルにはない新しい発想の素材が増える気がする。(石)

2010/07/02
 価値を伝えて
 不況は人を買い物上手にする。ワンシーズンで着られなくなるトレンド服や、何枚も欲しいカットソーは、ファストファッションやユニクロで十分。節約したお金で、ちょっと高くても愛着が持てる逸品を買い求めたい消費者は増えている。百貨店で高額品が動き始めたのもその証拠のひとつだ。
 「中途半端なものはいらない」。こうした消費の傾向は、百貨店向けアパレルメーカーに自社ブランドの強みを再認識させてくれたようだ。今秋冬展は原点回帰、単品力、ブランドらしさといった声が多く聞かれる。昨年までの低価格路線から一転、価値を重視するMDに切り替え、見ごたえある商品を並べた。素材や縫製の良さや手の込んだ加工は見て楽しく聞いて興味深い。
 洋服の価値は袖を通してこそ伝わるもの。パソコンの画面や誌面だけでは不十分だし、何よりもったいない。百貨店も連携して消費者にアピールし、来店につなげる取り組みに期待したい。(本)

2010/07/01
 ブランドの分
 「消費者の尊敬を得るには、企業もブランドも拡大均衡のポイントを早めに設定すべき。ブランドにもそれ相応の分というものがある」とあるスニーカーメーカーの経営者は語る。同社は売り上げや販路の拡大で、過去にはコントロールできていた(と思っていた)顧客の支持が今は得られなくなったという。
 現状維持さえ難しい時代。もう一度、足元を見直し、規模縮小の中でブランド再生に挑む企業は多い。イメージはブランドにとって重要だが、一度下がったイメージを回復することは難しい。売上高が3分の2や半分になっても、中身を磨き、明確な個性がキラリと光るブランドになることが、各社の落とし所となるだろう。
 過剰な選択肢の中で暮らす消費者は、自分にとって特別な意味や価値が見いだせない商品には反応しない。消費者が「背伸びをやめて“身の丈消費”に変化するより速いスピード」で、企業やブランドも自身の身の丈を見直す必要に迫られている。(水)