繊研新聞掲載のコラム

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視点/2012年01月

2012/01/31
 日本のCSR
 EU(欧州連合)がCSR(企業の社会的責任)の新たな定義を昨年10月に発表した。リスク管理という側面の強かったCSRはおよそ10年の時を経て、人権・労働、環境、組織統治、社会貢献など多岐にわたる項目を統合してきた。
 日本企業の海外生産は避けられず、海外での責任を免れない。しかし日本と欧米の企業ではCSRへのアプローチの方法がやや異なるようだ。欧米企業が数値や期限を定めて有害物質の不使用などの宣言をするのに対し、日本企業は実現が明確でない段階で期限などの約束をしない傾向にある。物事への厳密さや慎重さは日本企業の特徴だが、有識者は「“観客”は海外におり日本のこの姿勢が理解されるか疑問」と語る。
 日本のCSRは日本の美意識を反映する。しかし、それは一方で様々な関係者から企業への評価のチャンスを奪ってはいないだろうか。新たな定義のもとで、日本らしさを失わず、企業の成長に貢献するCSRの登場に期待したい。(水)

2012/01/30
 出会いの場
 女友達に「下着を普段どこで買うか」と尋ねると、少し考えてから「セールでまとめて」と返ってきた。本来は女性の体に最も近いはずなのに、日常生活では下着売り場との接点が少ないようだ。
 目的買い以外にも女性と下着の出会いの場を増やすため、業界はいろんな工夫をしている。ある大手百貨店がアウター売り場の試着室に下着のサンプルを置いた際には、アウターを美しく着こなす、という下着の基本の役割に改めて気づかされた。
 同様に、化粧品や食料品を買いに来た女性にも、出会いを提供するチャンスはあるだろう。専門店でも、下着と親和性のあるリラックス雑貨などを一緒に並べた売り場は、楽しそうでつい立ち寄りたくなる。
 別の友人は先日、奮発して高価な下着を購入したという。予算オーバーだったが、「お店に行ったら、ちゃんとしたものが欲しくなった」のだとか。良い出会いさえあれば、女性をもっと美しくできそうだ。(石)

2012/01/27
 次の一手
 福岡市の服飾雑貨メーカー、ヒデトレーディングが専門学校生のデザインを生かした商品開発に乗り出している。構想したのは3年前。環境変化を踏まえた成長戦略と言える取り組みだ。
 今年が創業20周年。社員の平均年齢も26歳と若い会社だが、社長は「(メーカーとしての)新しい発想が生まれてこない」と危機感を持つ。30歳の幹部も「挑戦した企画の中からしかバカ売れする商品は出てこない」と語る。こうした現状認識が業界の固定観念に染まっていない専門学校生と協業した背景にある。
 今回はデザインを提供した学生が商品化する前に卒業するためサンプル製作を中心に進める模様だが、次回は4月から取り掛かれば「12月には完成品が出来上がる」としている。
 目指すのは斬新さや面白さを売りとする商品の開発。そのための販路も「時間をかけて開拓する」という。まさに新規事業に等しい取り組み。不透明な経営環境にあって、次の一手を打ち出せる企業は強い。(龍)

2012/01/26
 コーディネートの価値
 最近、若い世代のコーディネート情報への関心の高さを感じる。彼らはブログやEC(電子商取引)サイトを閲覧するだけでなく、新しいツールを取り入れて積極的に情報を集める。あるセレクト店ではコーディネートが見られるスマートフォン用アプリを配信すると、すぐに10万ダウンロードを超えたという。
 店頭でデジタルサイネージ(電子看板)などに反応するのも同じ流れだ。チームラボ社が開発したセンサー内蔵のハンガーは、ハンガーを手に取ると表示されるコーディネートが「価値」になって客の興味を引きつける。
 なぜコーディネート情報に価値を感じるのか。ある専門店の店長は「何を着れば良いのか判断できない子が増えたのでは」と言う。間違えたくないという意識も強く、リアルに参考になる情報を集めていると。
 ファッションへの興味が薄いと言われてきた世代だが、実際はコーディネートに迷っている。様々なツールを駆使してその悩みを解決すれば、購買意欲を引き出せるかもしれない。(岸)

2012/01/25
 貧困層を視野に
 「これからは、世界の圧倒的多数を占める貧困層の生活の質を上げることで利益を生み出していく」。日本を代表する小売業、ファーストリテイリング(FR)と良品計画のトップから、同じビジョンを聞いた。持続可能なグローバル企業をめざす上で、貧困層を視野に入れることは欠かせない要素となってきた。
 政治や法律よりも、企業や消費行動が、社会を変えていく比重が強まっている。FRは、国連難民高等弁務官事務所とグローバルパートナーシップを結び、世界の難民4300万人に毎年1枚ずつ服を贈ることを目指す。無印良品は、将来的にはGDP(国内総生産)などの指標だけでなく、困っている地域の役に立つという視点で海外出店を進めたいという。
 CSR(企業の社会的責任)はビジネスになると考える企業は多い。しかし、ビジネスになるからCSRに取り組む企業が、成長を果たせるとは思えない。徹底した顧客視点に立つからこそ、そこから見える人々の願いや人々の望む社会のあり方に関わろうとするのだろう。(杉)

2012/01/24
 普通のハッピー
 「新ブランドのスタートを遅らせることにしました」と語るメーカー社長がうれしそうだ。社内の30歳前後の有志が集まり、新しいプロジェクトを始めるはずだったが、そのリーダーが妊娠したと言う。責任者であるために、社長に申し出るには勇気がいったようだが、社長は大いに喜び、「復帰を応援するから頑張るように」と伝えた。
 同社に出産を経験した社員はいない。法律の順守はもちろん、制度もしっかりしたいと考えてきたが、小さな会社の中で今まで対象者がいなかった。社長にとっても手探りの新しい仕事になる。
 ちょうど、今後の経営について考えていたところで「仕事を一緒にする若い人たちがハッピーになること。一人ひとりの人生が普通に、しっかりと成り立つことが自分の仕事の目的なのでは」と思い始めていた。育児をしながらの若いリーダーを支える空気は「人の働き方を魅力的にし、会社も商品も店舗も元気になるはず」と明るい。聞いている側までハッピーな気分になった。(純)

2012/01/23
 趣味の多様化
 「レジ客数が減少し、レジ客単価が若干向上している」。ファッションビルの営業責任者はセールを含めた最近の傾向をそう話す。要因は、複数店舗を買い回る人が減ったためだとみている。1店でしか買い物しない客が増えればレジ客数は減る。レジ客単価が伸びているのは、1店で複数商品を購入した客が増えているからと分析しているが、わずかな増加のため、全館売り上げの前年割れが続いている。
 買い回る客の減少には、景気の影響もあるだろうが、ファッションに対する価値観の多様化も背景にある。『下流社会第3章・オヤジ系女子の時代』(三浦展著)は、純粋にファッションを楽しむ女性が減り、“オヤジ”のような趣味を持ち、消費行動をする女性が増えていると分析している。
 もっとも、ファッションが最大の関心事ではない女性でも、おしゃれ心を全くなくしたわけではない。趣味の多様化に対応した総合的なライフスタイル提案が求められている。(勧)

2012/01/20
 実需とセール期
 1月のプロパー販売が順調だ。百貨店向け婦人服ブランドでは冬物のコートや春色を使った冬素材のニット製品などが売れている。売れ筋の多くは価格を通常のプロパー品よりも若干下げた商品だが、通常と価格が変わらない商品も売れているようだ。いずれも寒さに対応できて、セール品よりも新鮮な商品である点が支持されている。
 昨年7月も盛夏物のプロパー販売が全体に好調だった。今年1月の売れ方を見ても、セールを実施する月が実需最盛期であることを示している。しかし、セール時期の見直しには至っていない。
 こうした中、今夏からセール開始時期を従来よりも遅らせることを検討する大手百貨店が出てきた。「プロパー販売が拡大できる」として、その実現を期待するアパレルは多い。セール時期が変われば、アパレルのシーズンMDの組み立て方も変わる。その意味でも、百貨店に限らず、小売業の今夏のセール時期の設定を注視したい。(有)

2012/01/19
 正念場の年
 新年を迎え、寝具メーカー各社のトップは社員の気を引き締め直している。ある有力メーカー社長は社内の年頭訓示で「実力が問われる年」と訴えた。
 昨年は震災や原発事故の影響で、接触冷感寝具など節電支援商品がヒットし、久々に各社の業績を底上げした。さらに、「ボリューム品が被災地に回ったことで、品薄となった店頭は国産の需要が増えた」と言う。市場の流れを一過性に終わらせず、加速する取り組みを現場に求めた。
 一方、別のメーカー社長は「震災を境に消費者の買う機会が減少し、その分、質重視の傾向が強まっている」と昨年を振り返った。「需要の掘り起こしが必要」とし、付加価値戦略を強める構えを鮮明にしている。
 こうした環境変化から、当面の春夏商戦で各社は天然繊維の涼感寝具を仕掛けた。既に小売りが関心を示し、商談が本格化する2月を前に手応えを得ている。機能商品の異業種参入も強まっているだけに、正念場の1年となりそうだ。(阿)

2012/01/18
 施設らしさ
 ファッションビルのイムズは12月31日と元日の2日間を休館した。2連休は開業以来続けており、2月にも実施する。年中無休の郊外SCや、売り上げ増を狙った都心商業施設の休館日減などから見ると、連休は珍しい。  今年は昨年開業したJR博多シティが元日に初売りを実施したため、近距離にある天神地区でも影響を懸念して元日営業を検討した施設もあったようだ。実際、元日初売りは開店前からお客が列を作るなど盛況で、2日から影響を受けた施設が見られた。
 時代が変わり競合が激化し、イズムも「危機感はある」という。年間12日の休館を減らす方法もあったが変えなかった。一定の休館は、情報発信のイベント仕込みに必要で、何よりES(従業員満足)につながるからだ。連休だから、旅行やリフレッシュができる。テナントの評判も高い。
 目先の売り上げを追う体力勝負は長続きしない。各施設の“らしさ”で競うことが、競合に埋没しないのでは。(伸)

2012/01/17
 伝える力
 昨年はソーシャルメディア元年と言われ、情報の流れと共有の仕方が大きく変わった年だった。趣味や嗜好(しこう)、目的でつながるコミュニティーでは情報の伝わりが速く深くなった。
 日本通信販売協会が調査した「インターネット通販利用実態調査2011」は、クチコミサイトなどCGM(消費者生成メディア)の重要性を指摘している。消費者が商品を知ったり購買を決定する際に重視する情報はこれまでメールマガジンが主流だったが、クチコミサイトがこれに取って代わったからだ。
 今年は、スマートフォンの普及などで、情報へのアクセスはもっと簡単に、直感的になるだろう。一方で情報過多は更に進む。正しく分かりやすく、楽しくコミュニケーションをとらなければ、消費者から共感が得られないし、印象に残らない。どんな情報を伝え、それに見合ったサービスや商品をどう提供するか。企業も一人ひとりの従業員も伝える力が問われる。(窪)

2012/01/16
 価格競争力
 超円高でも価格競争力がある日本製生地があるという。
 日本と中国で生地開発をしている尾州産地のニット生地メーカーは、その代表例としてウール100%の梳毛ジャージー生地をあげる。60番手双糸使いで目付け300グラムでは中国が1メートル当たり860円、日本は925円。だが、「日本に輸入すると中国生地は輸入経費を加えて990円。日本生地より高くなる」と指摘する。
 背景には「中国内の物価上昇と日本の行き過ぎたデフレ」がある。大多数の素材品種は中国の方が安い。「ここにきて急速に中国内の生地価格は上昇している」とニットメーカーは指摘するが、円高でコスト増が吸収され中国生地の値頃感が維持されている。
 日中で生産される生地は急速に価格差を縮めている。円高は永遠ではない。円安に転じれば中国調達の生地値はさらに上がる。生地調達コストを見直す時期に差しかかっている。(浅)

2012/01/13
 本物への挑戦
 11年秋冬は天候の影響で苦戦した服地コンバーター。それでも年間を通してみれば、東日本大震災を乗り越えて、前年を上回る企業が多い。
 高級素材を開発、提案するコンバーターの中には2ケタ増で推移するケースも出ている。定番品を中心に常時在庫して即納するコンバーターでも売り上げ増は、上質化による単価アップが要因だ。素材の良さ、オリジナル性を求めるブランドが増えており「そういうブランドが店頭でも結果を出している」(外村)という。
 今後の国内市況はもっと厳しくなるというコンバーターは少なくない。しかし、一方では先に価格ありきの企画では通用しなくなっていることに目を向け、「本物の提案に力を注ぐ」(クリスタルクロス)コンバーターも増えている。
 服地コンバーターも欧米、中国への輸出を本格化しつつあり、「本物への挑戦こそが世界市場で勝負できる」(テラカーザ)とみている。(英)

2012/01/12
 私も皆も幸せ
 フランスに「ゴールデンフック」という、おもしろいネットショップがあると聞いた。ニットアイテム専門で、編物好きのおばあちゃんたちが作っていて、好きなおばあちゃんに注文することもできるという。
 ニット帽作りをしていた青年が、退職し家で時間を持て余しているおばあちゃんたちに着目した。彼女たちを組織して手伝ってもらおうと。編物を楽しんでもらいながら、収入も得てもらえると考えたそうだ。
 消費者はハンドメードの帽子やスヌードが買え、購入後のお礼メールなどで交流もでき、温かい気持ちになれる。おばあちゃんたちも自らのスキルを生かしながら生きがいを持って暮らせる。商品を介して人と人をつなぎ社会を活性化する意義あるビジネスモデルのように思う。
 「私も皆も幸せ」な消費がさらに本格化しそうな12年。日本でもどんな新しいビジネスが生まれるのか楽しみにしている。(粟)

2012/01/11
 節目の年
 今年は日本と中国の国交正常化40周年であり、日本とインドの国交樹立60周年でもある。二つの大国と日本は様々な分野で緊密な関係を保っているが、ファッションビジネスの面でも重要性は増すばかりだ。
 まずは中国。生産面での混乱はひとまず終息。日本ブランドの販売も大手から中小企業、百貨店アパレルからSPA(製造小売業)、お兄系まで出揃った感さえある。全てがうまくいっている訳ではないが、いくつか芽が出始めている。
 小売市場の開放を加速させようとしているインド。政府の規制緩和は野党の反対などで一時棚上げとなっているが、全体の流れとして外資依存が進むだろう。30年ごろには中国を抜いて世界一の人口になると予測されるだけに、外資企業にとっては、インドの成長をどう取り込むかが重要だ。
 中国とインド。二つの大国と節目の年を迎える12年は、日本企業にとってこれまで以上にチャンスだと言ってもよい。日本企業の成功例が増えることを期待する。(稲)

2012/01/10
 作り手の時代
 セレクトショップで買いたい物が見つからない人が増えたようだ、という話題で取材先と盛り上がった。
 昨年とさほど変わらない商品が並び、「おっ」と消費者に響くモノが少ない、という点で一致した。そんな商品があったとしても在庫を積まず、すぐ完売したのか、値頃なオリジナル商品ばかりが並んでいる気がする。
 セレクトショップの社長は「昔は職人が店舗の後ろで作った物を、そのまま店頭でこだわりを伝えながら売っていた。社会の成熟化に沿って、再び元に戻っていくのでは」と話していた。
 自社ブランドも手掛ける縫製工場長は「作り手にスポットライトが当たっている。物作りの本質的な部分が重視され、作り手と買い手が直線でつながっていくのでは」と語る。作り手の時代と表現すると言い過ぎかも知れないが、モノだけでなく、もっと作り手の姿や思いを、響くように伝えることが必要ではないだろうか。(畔)

2012/01/06
 小さな積み重ね
 ブラックフォーマル専業の昭和ドレスの採用や人材教育はユニークだ。
 パタンナーの採用試験は、ベテランでも難しい課題を与えるのだが、そこで見るのは、段取りの組み方、道具を大切に使えるか、整理整頓ができるか、質問ができるか、など、マナーや人柄。技術は入社してから教えればいいという考えだ。
 入社後も仕事だけをしていればいいわけではない。社内の清掃はもちろん、社外の清掃も全社員が参加する。朝礼のスピーチも全社員が持ち回り。人と協力して作業を行うことや、自分の興味関心や考えを人に伝える力をつけることが、仕事を円滑に進める上で役に立つようになる。
 特に業績が良くないときは、コミュニケーションが不足し、どの組織を見ても、とかく人のせいにしがち。同社はそれを避けるために、社内外で小さなコミュニケーションの積み重ねを大事にしてきた。
 簡単なコミュニケーションであっても、面倒くさいと避けてしまうこともある。小さなことの積み重ねが大切だと気づかされた。(壁)

2012/01/05
 生産シフト
 中国から他のアジア諸国へ、どれくらいアパレル生産がシフトしていくのかという質問を取材先でよく受ける。記者は日本向けでは10%から多くても20%と答えている。
 縫製技術の高さ、日本までの距離と納期、小ロット対応、素材や副資材の現地調達など、中国の優位性を考えれば、一気に他国へシフトするとは考えにくい。
 アジアではどの国が有望かという質問もよく受ける。取材先での見方を総合するとベトナムとインドネシア。バングラデシュは、視察したが断念したという話をよく聞く。ただ、ベトナムは人件費の高騰であと5年ぐらいしか続かないという声もちらほら。インドネシアは検品会社の進出計画もいくつか進行中のようで、日本向けが増えていることを裏付ける。
 先日、異業種の集まりに出席した。産業界全体では最大の関心国はインドなのだそうだ。外資への小売り開放や将来中国を超える人口増など期待が大きい。他業種はアパレルよりもずっと先をみているのだろうか。(尊)