繊研新聞掲載のコラム

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提言/2012年

2012/03/09
〈提言〉 被災地支援 もっと仕事を、もっと関心を
 東北地方は繊維ファッション業界と密接な関係がある。テキスタイルやニットの産地であり、縫製委託加工業も多数ある。それだけに、被災や原発事故の影響でいまだに苦しんでいる会社は数多い。
 事故原発に近い縫製工場の集積地・福島県の相双地区は、大手アパレルが継ぎ目なく仕事の注文を出しているため何とかやりくり出来ているが、県内陸部では放射線に伴う風評もあって日を追うごとに注文が減り、「時間が3・11から止まったまま」と嘆く工場もある。県境の別の縫製工場は、工場ごと他県に移ることも検討している。相双地区とて環境が悪化すれば大手が発注を控える可能性も否定できない。ファッション業界にとっては、メーカーへの発注の継続が平時以上に求められる。
 原発事故の影響は根深い。宮城県の沿岸部で塩害で稲作が出来ない田にコットンを育てる東北コットンプロジェクト。採れたコットンから製品を作りこの春から一般販売するが、「安全性が担保されているのか」などインターネット上で騒がれた。
 国や東京電力への不信感から放射能に対する過敏な反応が広がり、東北の繊維企業のビジネスの足を縛る。経済産業省は原発事故の後、福島県内の繊維製品の放射線量調査をし「他地域の製品と有意な差はない」としたが、一般への認知は不足しており、行政には正確な情報の周知が求められる。
 震災から1年、関心の薄れも目立ってきた。被災地の惨状に心を痛めた首都圏の住民も、脱原発や消費増税に関心が移る人もあり、被災地では震災の風化が懸念されている。ユナイテッドアローズは昨年3月以降、グループ企業とともにチャリティープロジェクトを通じ各種支援団体に寄付金を寄せているが、月を追うごとに金額が減少していたため企画を練り、10~12月で寄付金額を増やした。息の長い支援は欠かせない。
 震災からわずか1年で、復興のハードルは高くなってきたように映る。
 震災によって多くの被災企業と取引先が気付いたことがある。商売の「原点」だ。顧客との結びつきの強さや取引先の思いやり。ある意味、ビジネス度外視の非常時の結びつきという原点は、新しいビジネスの創出を予感させたほどインパクトがあった。被災地の実情に関心を寄せ続け、ビジネスを再興させることを通じ、ファッション業界全体の未来につなげたい。