繊研新聞掲載のコラム
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ボイス/2009年07月
2009/07/31
個店の輝き
「昨年まで空き店舗がなかったのに今年に入って埋まらないのが残念」と話すのは、盛岡市肴町商店街振興組合副理事長で婦人服専門店若松本店の若松裕幸社長。城下町の商人町として発展した肴町商店街は「百貨店の中三も加盟するポイントカード事業や宅配サービスなどをいち早く取り入れ、中小企業庁のがんばる商店街77選にも選ばれた」。子供連れや高齢者などの地域住人に愛されてきたが、「イオンの郊外SCが開業してからは人通りが減り、売上高も落ちている」。それでも周辺には新しいマンションもでき、商店街の存在感は色あせない。「中心市街地活性化が進む中、これからは加盟する個店の輝きによって商店街全体の活気につなげたい」と力を込める。
2009/07/30
投資対効果
「ICタグ(1枚)はいくらか、と聞くのは日本だけ。他国では、ICタグはどう使うとどんなメリットが出るか、を尋ねる。発想が違う」というのはUPMキュメネ・ジャパンの相馬一彦セールス・マネージャー。現在、世界的に広がりつつあるUHF帯のタグは5~10円程度とも聞くが、商品一点一点に付けるとなれば小さな金額ではない。システム全体を考えればなおさら。不況下で新たな投資に二の足踏むのも当然だろう。しかし、不況だからこそ、既存事業のコスト削減だけでは生き残れない。新しい顧客、新しい市場を獲得し、収益を拡大するために、新しい技術・手法を活用する発想が経営者には必要だ。
2009/07/29
閉店した百貨店
「昨年閉店した百貨店の中で取引があったのは1店だけだった」とは、赤ちゃんの城(福岡県久留米市)の秋吉謙一社長。こうした事実を踏まえて「ベビー子供服の売り場を重視しない百貨店は衰退する」と指摘する。同社の新生児向け商品はコンサルティング販売の比重が高く、地域に応じた売り場作りも大切という。こうした特性を持つベビー子供服は「百貨店らしさをはっきりと打ち出せる商品」であり、同時に「出産準備品などを通じて百貨店は新しい客を呼び込める」利点もあると説く。ベビー子供服売り場からの撤退や縮小が当該の百貨店の力を弱めるという指摘には、売り上げ効率だけでは語れない説得力がある。
2009/07/28
知ってもらいたい
「既存販売先との関係をさらに強める一方で、販路開拓に取り組みたい」と話すのはバッグメーカー、ウィズの嶋崎栄社長。6月も前年同月比7%増で推移するなど売り上げは順調だが、さらに業績を伸ばすためにはアパレル系専門店への販売が不可欠と考える。現状は、既存の販売先との兼務で営業マンが新規開拓に取り組んでいるが、今後はアパレル専門店向け営業の専任体制を目指している。また、09年秋冬物からはミセス向けに国産でロープライスの新ブランド「ガナハ・ドゥー」を立ち上げ、商品力向上にも力を入れる。「上質なものを買いやすい価格で提供できる強みを多くの方に知ってもらいたい」と販路開拓に意欲を燃やす。
2009/07/27
古着の楽しみ方
「味のあるキャラクタープリントが新品にはない古着の強み」と語るのは、東京・原宿のレディス古着店ソルの千崎理枝オーナー。新品でも古着風の加工をしたプリントアイテムはあるが、「本物の古着の持つ独特のニュアンスにはかなわない」。今春夏、ギャル層を中心に古着スタイルがヒットしており、店は様々なファッション誌の古着紹介企画でひっぱりだこだ。最初は「古着特有のウンチクを気にせず、ジーパンを見ても何を見ても“カワイイ”と表現する今の若い子たちに驚いた」というが、「今のお客さんには、こういう気軽な楽しみ方が合っているんでしょうね」。
2009/07/25
危機はチャンス
「危機はチャンス」と話すのは英国のネックウエアメーカー、ペッカム・ライのマーティン・ブライトリーCEO(最高経営責任者)。英国の自社工場で生産し、同名の自社ブランドは8カ国で販売、サビルローのテーラーの下請けも担う公認メーカーでもある。「売上高は今年も前年比4%増ペース。不況でスーツを節約する分、Vゾーンを変化させるから」。若い世代向けのナロータイやスカーフなどのラインが伸びている。「若い人にはポロシャツにタイを合わせたり、新しい着こなしが広がっている。不況もカジュアル化も発想を変えれば好機」と、日本でも正規代理店を探して拡販する。
2009/07/24
クリエーション大事に
「クリエーションを大事にしたい」と話すのは、レディスブランド「アウラアイラ」を手がけるコードナインの社長兼デザイナーの川島幸美さん。「商社は通さない。自分で開拓した工場と何度もやりとりしながら、うちのブランドにしかない商品を作っていく」。秋には、「クローゼットにないもの」として企画したラムレザーのジレ、総フェザーのスカートなど、「卸先にとっては堅くない商品にオーダーが集まった」という。「今はマーチャンダイザーがいれば服が作れる時代。最近では、生地屋が洋服の見本を作ってデザイナーに提案している。ただ、それでは街中に同じようなものがあふれることになり、いずれはマーケットを停滞させる」と危惧(きぐ)する。
2009/07/23
不況を楽しむ
「この大不況を世界で一番、楽しんでいる」とは桜井明ハートマーケット社長。この数年間、順調に業績を伸ばしてきたために、ハートマーケットらしくないことがあっても、多少のことには目をつぶってきた。しかし、今年の初め、2カ月連続で既存店割れし、大不況に巻き込まれた。そこで始めたのは毎朝、幹部に向けたハッピーメール。「すべては笑顔のために」と自分たちの目指すもの、やるべきこと、すべてを見直そうと働きかけた。現実から目を背けない、あきらめない、受け止めて考えれば、必ず夢につながる道があると問う。すぐに効果が表れ、共感した店長から自主的に行動が生まれ、既存店も復調してきたという。
2009/07/22
プロパーMD
「マークダウンを想定して高めの価格に設定するよりも、その価格で売り切ることを前提とした価格こそ適正価格ではないか。セールを意識しない商品政策に努めたい」というのはセットモームの飯田潔専務。シーズンを見直すMDを進めてきた。今年は4月に晩夏初秋展を行い、5月展の秋物は薄手に絞り込んだ。いわば夏場のMDとして組む。「冬も同じことが言える。年明けの冬場に着る鮮度あるものをどう企画してプロパー販売を活性化するか」。業界全体にはインナーや4月まで着られる薄物に集中しているが「アウターを含めて開発したい」と求められる物作りを力を入れる。
2009/07/18
企画力
「ネクタイ市場を活性化するには、服飾雑貨全体をトータルで提案できるモノづくりの知識や感性が必要」と話すのはネクタイメーカー、和商の是枝浩平社長。同社は服飾雑貨の総合企業を目指してネクタイ以外の分野への進出を続けており、今秋冬には新しく革小物の自社ブランドを立ち上げる。こうした事業の多角化の一番の目的は「メーカーとしての企画力の向上」。新事業で得た経験を共有し、ネクタイの新商品開発や販路の開拓につなげる考えだ。「ネクタイは配色や長さなど既存の常識にとらわれている部分が多い。より魅力的な商品を生み出す柔軟な発想や企画には、他分野での経験が生きてくる」
2009/07/17
99.9%守れる納期
「評判と信頼が大切」と言うのは、スコットランドの高級カシミヤ製品メーカー、アレックス・ベグのダグラス・L・マカリスター営業部長。今年9月に定年退職を迎える予定で、これまで納期と品質に厳しい日本市場を25年間担当してきた。「堅実に生き残っている理由は」との問いに、「いつもムラなくクオリティーが高いことと、99・9%守れる納期を含めたサービス、そしてデザインと品の良い色の組み合わせが私たちの存在価値」とのこと。そして、もうひとつの理由は「自分がハンサムだったから」。25年間かけて培ってきた信頼を後任に引き継いでいく。
2009/07/16
革本来の良さ
婦人靴を中心に合皮が増える中、「もっと革本来の良さをアピールする必要がある」と語るのは、久保田清人協同組合資材連理事長。軽くて発色のきれいな合皮に対して、「革には革にしか出せない味がある」。ここ10年間で、インテリアや服、帽子など、革の用途はぐっと広がった。さらに需要を喚起するため、「一般消費者にも、もっと革のことを知ってもらえるようなキャンペーンをやっていきたい」。さらに、今後は「新しい素材の開発が大切」と指摘する。例えば、植物タンニンなめしのエコレザー。従来と同じような考え方で革を作って売っていくのではなく、付加価値を付けた革を提案する。
2009/07/15
ママとイコール
「今の女の子が目指すおしゃれはお母さんとイコール」というのは、小学生向けファッション誌『ニコ☆プチ』の山元琢治編集長。「カワイイと思う感覚が同じ」だから、子供のスタイルは「母のアイデアと娘のアイデアを盛りに盛ってつくられる」という。雑誌の人気ページ“小学生コーディネート選手権”は、テーマに合わせた着こなしを披露する特集。「母と娘でいろいろデコって、まったく新しいスタイルを見せてくれる」そうだ。「大人が着たら怖いけれど、子供だとバランスがいい。今しかできないファッションを楽しんでいる」と読み取る。「日本ほど子供服がおもしろい国はない」
2009/07/14
60年代をイメージ
「いろんなものがあふれている時代だから、自分が本当に好きで着たいものを作りました」と話すのは、「スライ」を手掛けるバロックジャパンリミテッドの植田みずき執行役員カンパニークリエイティブディレクター。今秋冬物は自身がリスペクトしてやまないという60年代をイメージ。ジーン・シュリンプトンやヴェルーシュカ、イーディー・セジウィックなどをアイコンに、ビンテージ感あふれるセクシーなウエアを揃えた。いつもは他ブランドと合同で展示会を開いているが、今回は一周年を迎えた渋谷の「ホテルスライ」内での単独開催。パーティー形式でふるまいながら空間とともに発信し、改めて存在感をアピールした。
2009/07/13
生命線
「スピードこそがアパレルメーカーの生命線だと思う」と、ゴールドウインの斉藤茂取締役執行役員アスレチックスタイル事業本部長。展示会偏重型の生産計画を長年の課題としてきたが、この間、「半年前の展示会ではなくお客様が来る売り場を見て、売れ筋をタイムリーに投入する実需適応型」への移行を進めている。バスケットボールやテニスといった各ブランドのコアイメージの確立、品番のさらなる絞り込みと集中も進める。「商品企画力とプロモーションを連動させ、ブランドのあこがれや感動を伝えていく」。まだ取り組みの途中だが、「あるべき姿を見て信念を持ってやっていかなければならない」と、競争力の高い事業への意欲を見せた。
2009/07/11
後ろ向きじゃない
「あくまで物資と一体となってリテール分野を攻めるということ」とは双日の大村義朗物資・繊維本部長。4月1日付の機構改革で、旧繊維・物資本部を物資・繊維本部に改称したが、「繊維にとって後ろ向きな意味合いは全くない」と言い切る。繊維分野の再構築についても「ここ数年で低採算の取引、人員、体制を見直し、今期はそれがすべて完了した」。今後は「新たな展望を立てつつやっていく」。対日取引は自社の機能が生きる客先に特化した。「中国にはすでにテキスタイルから染色、縫製までの拠点はある」として、対日だけでなく「中国内販、欧米向けの取引拡大に乗り出す」のが当面の課題だ。
2009/07/10
「中堅」でも
「中堅でもキラリと光る存在の企業でありたい」とレナウンの北畑稔社長。かつては大手総合アパレルの雄だったが、長引く業績の悪化とリストラによる事業規模縮小で、ある全国紙から「再建中の中堅アパレル」と形容されるようになった。米国法人の社長も務めるなど海外を含めて過去のレナウン隆盛期を知っているだけに、「中堅」とされるのはやや不本意のようだが、「今はチャレンジャーの立場」と言う。社長就任初年度の今期は収益を大幅に改善させ、「早期の黒字化と復配につなげる」のが最重要課題。同時に、小売事業を軸とした新規販路開拓など新しい成長モデルをいかに早く構築できるかが「リーディングカンパニーへの復活」に向けた大きな鍵となる。
2009/07/09
素人目線で
「実用衣料ですが、それ以上の価値を考えてきました」とは、インナーのプロビジョンの五味純一社長。金融業から転職して8年程前に創業、若者向けのパンツと靴下の企画で急成長している。既存の専業メーカーと異なるのは、細かい物作りよりも「どこに市場があるか、業種を問わずに消費者動向や売り場の調査に徹する」ことだ。下着を扱っていなくても「面白いと感じる店にはMDの図表を持ち込み、他の商品を含めた陳列面を作れることを提案」してきた。売るところまで「素人目線で」取り組んだ結果、全国チェーンの雑貨店販路も開拓した。
2009/07/08
誇り
「もうけたければ他の仕事をしているよ。洋服が好きだからやってるんだ」と語るのは、横浜元町の婦人服専門店オハラの小原信俊社長。安易な価格引き下げで品質を落とすメーカー、小売りが増える中で、「うちは価格を下げようとは思わない。うちのスタイルに合わない」ときっぱり。高品質でかっこいいファッションを顧客に提供するというブティック本来の姿勢を崩さない。その分、店舗の女性販売員を仕入れに起用するなど、「もっと現場寄りの改革を進める」。もうけることよりも、望みは「従業員みんなが、自分がこの店で働くことに誇りを持てるような店、仕事、会社にすること」という。
2009/07/07
基本は商品
「この5年で流通が大きく様変わりした。これからは無店舗販売の時代」と話すのは、バッグメーカーのヤマト屋で代表取締役会長を務める正田喜代松さん。同社も7年前に通販事業に本格参入し、現在は売り上げの半分を占める。ただ、「テレビ通販であっても、基本は商品力。お客様に受け入れられないと1回で終わってしまう」と警鐘を鳴らす。同時に「お客様の声に合わせて進化できるかどうかも重要」として、クレームなどを元に商品を改良し続けた、同社を例に出して説明する。「お客様に必要とされなければ長くは続かない。当事者意識が大事。見せかけではダメ」と強調する。
2009/07/06
満足しない男性
「ファストファッションで満足しない男性は多いはず」と言うのは、メンズセレクトショップ「オクテット」を運営する林商店の林啓成社長。大人のムードを演出した店舗デザインとBGMで落ち着いた雰囲気を演出しながら、上質な海外ブランドを買いやすい価格で販売する。5月の売り上げはネット販売が6%増、直営店は10%増だった。「消費者目線で、価格と価値のバランスを保てば買ってくれる」と好調の要因を分析する。対象とするヤングアダルト~アダルト世代の服に費やせるお金が減っているため、「大人の男性が着たい服を安く提供したい」と話す。
2009/07/04
引き継ぐ
「引き継いだ事業をそのままの形で伸ばしたい」というのはアルプスシャツの渡辺聡社長。今月、プレパッケージ型民事再生で大郷カネタの事業を継承しオーダーシャツ事業を傘下に収めた。ビスポークシャツ専門店「コルテーゼ」のシャツは型がシンプルで生産管理・店舗運営が効率的。出店と黒字化までの時間は「名簿商売のためテンポが異なるが、現状でも十分採算がとれる仕組み」ができている。国内シャツ市場は品揃え不安がある一方で「コモディティー(日用品)のため単価下落は避けられない」。オーダーシャツは高価格帯に変化はあっても2着1万円以下は想定されず、「企業文化を生かしながら」安定的な事業が期待できる。
2009/07/03
対等な立場で
「職人気質のマーチャンダイザーを育てなければならない」と話すのはニットが主力の婦人服メーカー、三澤のヴァントゥルワ事業部、延原数一取締役部長。「デザイナーはもちろん、マーチャンダイザーも編み機のことや、紡績、染色などの知識が絶対に必要」と強調する。同社にとっても今後の課題だ。各生産過程を具体的に理解できれば、「手間と原価のバランスを念頭に置いたうえでの企画、生産、販売の計画が立てやすい」という。アパレルメーカーがニットのOEM(相手先ブランドによる生産)メーカーに委託している現状を嘆く。「メーカーもプロフェッショナルとして工場と対等な立場で物作りをしなければ、売れる物は作れない」
2009/07/02
基本、原点に戻る
「厳しい時代だからこそ、あいさつやテナント、お客とのコミュニケーション作りなど、基本が重要」とは、西日本鉄道が運営する都市型SC、チャチャタウン小倉(北九州市)の津岡卓央館長。1日にファッションビル・ソラリアステージから異動、「(福岡の)天神にはお客が集まってくるが、SCは施設の魅力がないとお客は来ない」という。09年3月期は売上高が前期比4%減の89億6700万円で、客数も5%減となった。10年の開業10周年を控え、“チャチャならでは”の再構築を進める。テナントに好調なユニクロがあり、「運営などでヒントがある。他のテナントも巻き込み、施設を盛り上げていく」考えだ。
2009/07/01
本末転倒
7月でも早いと感じていたバーゲンが今年は6月後半から始まった。それにしても、梅雨の真っただ中に、夏のクリアランスがいっせいに始まる業界の現状に危機感を覚えてしまう。
そもそもバーゲンは、じっくり販売するプロパー期間があるから成り立つもの。ブランドの魅力はプロパー販売期間のしっかりした接客でこそ顧客に伝わる。人気の商品はバーゲンを待たずに完売し、売れ残った商品を処分する場がバーゲンだったはずだ。
しかし今、バーゲンは安売り合戦の場と化してしまった。さらにバーゲン早期化で、夏向けに作った商品を、しっかり接客して販売する機会はほとんどなくなってしまった。プロパー販売期間の喪失はまさに、本末転倒だ。
プロパー販売の期間があるからこそ接客力も磨かれた。それでもプロパーで売れ残ってしまう商品があるから次の物づくりの教訓に生かせた。プロパーの効用を失わせるバーゲンの早期化は、業界の発展を阻害するおそれがある。(真)
