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繊研流通広告賞(1983年~)

 ビジネスを推進する効果的な流通広告の開発のため、専門家で構成する審査会で審査し、毎年優れた広告を表彰しています。

2008年度 繊研流通広告賞    (作品集はここをクリックしてください)

大 賞

  フォルムアイ(10段)

準大賞

  東急モールズデベロップメント(15段)

特別賞

  東光オーエーシステム(5段)

  ストロベリージャム(5段)

第1部門
 金 賞    サンメリー、帝人ファイバー
 銀 賞    オルドスジャパン
 奨励賞    東レ
第2部門
 金 賞    伊藤忠商事、フランドル
 銀 賞    ブルックス ブラザーズ ジャパン、ファイブフォックス
 奨励賞    ワコール、ゼロインターナショナル
第3部門
 金 賞    鹿児島ターミナルビル
 銀 賞    三越(本店)
 奨励賞    伊勢丹、三越(ラシック)、イムズ
第4部門
 金 賞    佐川急便
 銀 賞    浅葉デザイン室
 奨励賞    プルミエールヴィジョン、YKK、佐川急便

2007年度 繊研流通広告賞

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2008/06/21

07年度(第25回)繊研流通広告賞 各部門入賞広告 07年4月~08年3月掲載

総評 審査委員長 清水啓一郎 トリの目。ムシの目 進化を続ける流通広告
 優れた流通広告を的確に評価するには、コミュニケーション活動として巨視的にとらえるトリの目と、広告表現を微視的にとらえるムシの目、この二つが欠かせません。トリの目は流通広告としての戦略性や情報性、出稿の形態、メディアミックスなどの企画性を見つめるのに対して、ムシの目はコピー、デザインなど表現の創造性を見つめるものです。
 繊研流通広告賞が創設されて四半世紀。今年は7部門から4部門への変更、準大賞の新設などの改訂はありましたが、評価の基本的なフレームに変化はありません。進化を続ける流通広告の新しい姿を、9人の審査員が二つの目で見て判断した結果をご覧ください。
◎大賞
 210以上の国からドア・ツー・ドアで集荷・通関・配送の輸入業務を受け持つDHLの姿がこんなシンプルな形で表現されています。スピーディーなサービスを象徴するような思い切りの良さに圧倒されました。
◎準大賞
 最後まで対象を争いながら、票数の差で惜しくも準となったのが、ユニチカ、アシックス、ルミネです。十数個の丸いアクセサリーが写真あり、文字あり、線画あり、大きいものあり、小さいものあり。思わず一つ一つ見たくなるユニチカは、多様性の中の統一という離れ業の企業広告です。アシックスは力感あふれるヨコ長の写真をタテに使用する大胆なレイアウトで、製品のストライプデザインを強く印象づけていました。ルミネは「女の子たちがおしゃれなのが、ホントの美しい国だと思う」というメッセージを視覚化したあたたかみのある表現でした。
◎特別賞
 今年度の特別賞に選ばれたのは、ポロラルフローレンジャパンのラッピングです。広告の内容も重要ですが、その外形や体裁もそれに劣らぬ意味を持つことを改めて感じさせます。
◎第1部門
 金賞=サンメリーは、テキスタイルづくりがワインづくりと共通することを伝える広告。昨年に続いての入賞ですが、表現にまとめ上げる手際の良さが光っていました。
 金賞=東レは、最先端エコロジーの実現のために最先端テクノロジーが活躍していることを総合的に訴求。扱いの難しいテーマを各論の細部に入り込まず、巧みに演出していました。
 銀賞=帝人もエコロジーがらみですが、こちらはポリエステル製品の新しいリサイクルシステムの提案。矢印を利用した、ちょっと意表を突く表現です。
 銀賞=小松精練は、新しい形状保持素材が主題。「主張するシワ」というキャッチフレーズが自信にあふれた世界を牽引(けんいん)していました。
◎第2部門
 金賞=ファイブフォックスの新しいダウンコートの広告。ひとくせもふたくせもある視覚表現の強さは今年度も健在です。
 銀賞=三共生興の見開き全ページ。大きなスペースにクオリティーの高いカラー写真を堂々と扱い、文字の要素を極限まで抑えた表現は、ビジュアル時代の王道を行くものかもしれません。
 銀賞=ボルサリーノジャパンは150周年告知。半5段というサイズも、使い方しだいでこんなにおシャレになるという典型ではないでしょうか。
 銀賞=ファイブフォックスのジャージー製品の広告。不思議な雰囲気のある写真がよく効いています。
◎第3部門
 金賞=伊勢丹は、新年のごあいさつ。過激に走りすぎることがなく、平凡に埋もれることもない、程の良さにあふれた表現。昨年に続いて入賞でした。
 銀賞=阪急阪神ビルマネジメントは、統合の告知。青を基調にしたさわやかな写真は、再編が進む時代への決意を象徴しているようです。
 銀賞=東急グループは、「ビューティフル・ショッピング」の提案。夢と期待感のあるカラフルな表現は、ここにも小売業界の新しい風が吹いていることを感じさせます。
◎第4部門
 金賞=YKKも昨年に続いての入賞ですが、表現に様々な形で製品が登場する路線に変わりはありません。広告表現における持続ということの大切さを考えさせられる例でしょう。
 銀賞=イタリア貿易振興会は、コレクションの告知。モダンなアルファベットのタイトル文字と墨絵の繊細な味わいが、静かな調和をつくり出しています。
 銀賞=ブラジル貿易振興局もコレクションの広告ですが、こちらはブラジルの熱狂をシンボライズするような色彩の饗宴が楽しい表現でした。

 選評 審査副委員長 浅葉克己 新聞広告を見ると、快感を覚えるという次元まで高めるのが次の課題
 繊研新聞の流通広告賞も25周年1/4世紀を迎えた。終わることなく永年に渡り繰り返し求められるであろう作品審査。それをする快感とはなんだろうと考えている。時代を読む。見たこともない表現の発見。思考を重ねる。智恵を絞り。テレビと連動して世界中を駆けめぐり、新聞広告で定着を決めた大型キャンペーンの時代は去り、深くその一点に力を入れ込む日本を意識した広告づくりへと変化してきた。人の心を動かす表現の変化に驚くものがある。「新聞広告とは何か」。僕が関係している審査会には朝日広告賞があり、毎日広告デザイン賞があり、プロがもつその先の表現を探求している審査会に東京ADC、日本グラフィックデザイナー協会、国際展に発展した東京TDCがある。グランプリや受賞作の中から、新人が現われ、その作品が放つ輝きや快感が、次の作品を生むのだと思っている。
 眠れぬ夜どころか、尻に火がついてきた。地球文字探検家浅葉克己ディレクションによる21_21 DESIGN SIGHTの「祈りの痕跡。」展のオープニングが7月18日と迫ってきた。誰が最初に痕をつけたのか。僕の頭の中はいつもその疑問から離れることはない。最初の文字たちの誕生である。5000年前にシュメール人が粘土板に楔形文字を記した。その瞬間に考えや感情や人間の情熱や才能、芸術や科学は永遠の命を持った。「書く」ということほど人類に大きな影響を与えた発明はないと思う。
 広告も企業にとっての「祈りの痕跡」である。三千四百年前に中国の殷王朝で記された甲骨文字。現在台湾故宮にある一番美しいとされている甲骨文字を読み解いてみると、そこには、「私たちは実りを得ることができるか?(右)できないか?(左)」と左右対称に5回も問いかけ占っている。広告を打つことによって、実りを得ることが出来ると信じる現在の私たちは、三千四百年前の殷王朝の人たちと同じではないか。一番重要なことは、実りを得られるかどうかだ。
 今年の審査会は7年ぶりに一部審査員が入れ替り、奇数の9人で5月20日に行われた。部門も7部門から4部門に整理された。そしてグランプリ1、準グランプリ3、特別賞、4部門の金賞、銀賞、奨励賞を選び、銅賞はなしとなった。
 審査会の一番の中心、グランプリ決定へ。グランプリ決戦は、DHLとルミネ。5対4の一票差でDHLに決定。
 束にしんにゅうを入れて速の一文字。筆文字でなくマジックペンで書かれた速の文字はスピード感もあり、納得のいく表現だ。「輸入にまつわる書類の束を1枚に。輸入業務はよりスピーディーになる」と左スミに小さく書かれたヘッドコピーで国際流通の簡素化を狙った機能がすぐに伝わってきた。漢字の中でも一番むずかしいシンニュウの表現をうまく使った。
 準グランプリはルミネ。日本の正月広告らしい写真表現。椿と南天の実と雪。機能と情緒。国際と日本。僅差(きんさ)で国際に決まった。ルミネの写真表現は新しさと強さを感じたが「女の子たちがおしゃれなのが、ホントの美しい国だと思う」というコピー表現とタイポグラフィにもうひと工夫あれば、グランプリに輝いたと思う。
 準グランプリ、ユニチカ。女性の胸のたくさんの缶バッチにメッセージをツメ込んだエディトリアルな表現。缶バッチをカラーにしたらもっとインパクトがあったと思う。
 準グランプリ、アシックス。般若の仮面を付けた男が空中を飛んでいる。I'm TIGERと強烈なタイポグラフィ。未来に向かう企業の宣言広告。
 特別賞には、ラッピングという方法を使った、ラルフローレンジャパン。帽子をかぶったラルフローレン、砂目製版による荒々しい表現。40年間の代表的スタイルの数々を収めた限定記念本の発売告知。ブックデザインに注目が集まるデザイン界に一石を投じた。時間、空間を越えた、記憶と記録の厚みを感じさせてくれる。
 第1部門金賞、サンメリー。ていねいに作られた5段のシリーズ広告、「布のソムリエ」ワインと布の表現。オーソドックスだがボディーコピーを読ませる工夫があった。第2部門金賞、ファイブフォックス。写楽の浮世絵、「日本の力をみせよう」日本の感性に再び注目が集まる現在日本をどう表現するかが問題だ。浮世絵のなぞもその一つだ。第3部門金賞、伊勢丹。「まず笑みが、語りだす」ファッション広告が元気を取りもどす日も近いとの期待を予測させる広告。第4部門金賞、YKK。若者のスポーツ表現にファスナーをからませた表現。写真にもう一歩説得力が欲しかった。
 60周年を迎える繊研新聞。養老孟司さんは、「脳にかかる負荷が文化の源のひとつに」と題して、クリエーティブは、納得がいくものに仕上がった時の快感が次の作品を生むと教えてくれた。新聞広告を見ると快感を覚えるという次元まで高めることが、次の課題になると思う。


審査会場から コーディネーター 仁瓶賢三 大賞はDHL。広告表現もスピーディーかつシンプル
 25回目の今回の流通広告賞は、事務局によるノミネート作品総数603点の中から審査会で慎重に審査した結果、入賞作品として最終的に26点が選ばれた。
 今回は、賞の内容のリニューアル、選考方法の改定、審査委員の大幅な入れ替りなどあって、審査過程に多少の混乱も予想されたが、その心配も全くなく、終始滞りなくスムースに進行した。なお、今回から大賞、準大賞の選考には、より厳正を期するために審査員全員による記名投票の方法を採用した。そのためか、これまでに増して熱の入った大賞選びが行われた。
 大賞はDHLのインポートエクスプレスを訴えたもの。集荷から通関、配送までの輸入業務を中間業者を使わないで1社で行うDHLを使えば、輸入にまつわる書類の束を1枚の書類で済ませることが出来、輸入業務はよりスピーディーになる。しかも210以上の国からドア・ツー・ドア。このシンプルで速さが売りだという。この広告のすごいところは、切れ味の良さ。キャッチコピーを単刀直入「速」の一文字で表現。それも速の文字を色で二分割して、束(たば)の字が赤。進むを意味する■(しんにゅう)が黒、しかも語尾のところで筆がかすれてはやさを表わしている。表音表意の漢字の国・日本だからダイレクトにその驚きが伝わる。さらにレタリングに使った小道具のマジックボールペンとコーポレートカラーの赤のラインを効かせて、DHLのインポートエクスプレスを印象づけている。大賞にふさわしい見応えのある切れ味のいい広告だ。
 準大賞は、ユニチカ、アシックス、ルミネの三作品だ。ユニチカは「シルキーは進化を続ける」で呼びかける新素材「ソフィアン」シルミーファイブの広告。いい服にはいい素材が必要ということで、上品な光沢とタッチの「ソフィアン」のタンクトップに大小14個のバッジが光る誇らしげな女の勲章。メッセージをバッジの中にちりばめて色々な角度から表現したところが新しい。アシックスは、般若の面とイメージが重なるタイガーマスクをかぶったアイムタイガーが雲海の上を颯爽と駆ける勇壮のビジュアル表現。日本の伝統の幽玄の世界を彷彿とさせるバーチャル表現。アシックス・オニツカタイガーのシューズのストライプデザインを強烈に印象づけている。ルミネは年賀広告で、春を告げる椿の花と南天の赤い実。紙面いっぱいに拡大された花と実のコラボ表現が絶妙。キャッチコピーを加えて、従来のヤング路線から大人のルミネへのステップアップが感じられるさわやかな広告だ。

審査委員
 審査は次の方々によって行われました。
 審査委員長=清水啓一郎氏(コピーライター)、審査副委員長=浅葉克己氏(アートディレクター、浅葉デザイン室代表)、コーディネーター=仁瓶賢三氏、審査委員=石川満良氏(ワコール総合企画室宣伝部部長)、幼方聡子氏(東レ宣伝室長)、川■和則氏(レナウン宣伝・販促グループマネージャー)、坂井正志氏(オギツ常務取締役)、菅沼健二氏(伊勢丹営業本部営業政策部販売促進担当部長)、松本栄治氏(松本宣伝研究所代表)=五十音順

大賞
ディー・エイチ・エル・ジャパン(15段)
準大賞
ユニチカ(15段、5段2回)
アシックス(15段)
ルミネ(15段)
特別賞
ポロラルフローレンジャパン(ラッピング)
第1部門(合繊、紡績など)
金賞 サンメリー(5段4回)
金賞 東レ(15段3回)
銀賞 帝人ファイバー(15段)
銀賞 小松精練(15段)
奨励賞 東レ(変形タテ1/3、3回)
第2部門(アパレル、SPAなど)
金賞 ファイブフォックス(15段)
銀賞 三共生興(30段)
銀賞 >ボルサリーノジャパン(5段1/2)
銀賞 ファイブフォックス(15段)
奨励賞 泰道リビング(5段21)
奨励賞 ムーンスター(5段)
第3部門(小売り、流通など)
金賞 伊勢丹(15段)
銀賞 阪急阪神ビルマネジメント(15段)
銀賞 東急グループ(15段)
奨励賞 一畑百貨店(5段)
奨励賞 鹿児島ターミナルビル(5段)
第4部門(産業広告、団体など)
金賞 YKK(15段4回)
銀賞 イタリア貿易振興会(5段2回)
銀賞 ブラジル輸出・投資振興庁(15段2回)
奨励賞 メリーチョコレートカムパニー(7段)
奨励賞 イタリア貿易振興会(5段)

2006年度 繊研流通広告賞

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2007/06/22

06年度(第24回)繊研流通広告賞各部門入賞広告(06年4月~07年3月掲載)

総評 審査委員長 清水啓一郎 進化する流通広告 アイサス時代の広告表現
 広告に関する仮設として、行動心理学を背景にしたAIDMAは、永年にわたり折にふれて引用されてきました。ATTENTION(注目)、INTEREST(関心)、DESIRE(欲求)、MEMORY(記憶)、ACTION(行動)と続くモデルです。ところが、ここにきて事情が変わりました。その発展型AISASが現れたからです。A(注目)、I(関心)までは同じですが、次にSEARCH(探索)、ACTION(行動)、SHARE(共有)と続きます。前のSはインターネットの情報検索を指し、後のSはネット上での情報共有、意見交換というわけです。現在のメディア環境をどのように判断し、どのような広告戦略につなげるか、今年もさまざまな表現対応が見られました。
◎大賞
 大賞になった広告の有無をいわせぬ強さは、知名度を上げようとする戦略と抜きん出た表現技術がダイレクトに結びついた結果でしょう。視覚表現は素朴でありながら平凡に堕さず、ユーモアさえ漂わせています。ここまで単純化できたのは、新聞広告は「注目」と「関心」に徹するという思い切りの良さがあったからだと思われます。
◎第1部門
 金賞=サンメリーは、布のプロであることを訴求した、切れ味のいい表現。昨年も入賞しましたが、的をはずさないうまさは今年も変わりません。
 銀賞=旭化成は、「本日は、裏が表舞台に立ちます」という意外性のあるヘッドラインによる正統派の構成で、服の裏地について語る手際の良さが光っていました。
 銀賞=Biella The Art of Excellence財団は、陰影をきかせた写真とパートカラーの活用によって、イタリア製品の品質を巧みに演出していました。
 銅賞=小松精練は、交通標識のような極限までの単純化がさわやか。プルミエール・ヴィジョンの視覚表現は、いつも力があります。
◎第2部門
 金賞=三陽商会の洗練されたインパクトの強さは無類です。シンプルな表現は、クロスメディア環境で新聞を活用する典型の一つであることを思わせます。大賞に準ずる秀作でしょう。
 銀賞=キングのアンティークな雰囲気の写真表現もクオリティーの高さで印象に残りました。
 銀賞=ヤマトドレスは、簡潔なフォーマットやイラストの使い方など、いつも変わらぬアイデンティティーに貫かれています。
 銅賞=ワコールは、「下着というジャンルを脱ぎました」というキャッチフレーズが効いていました。
 銅賞=大西は、75年前の写真の不思議なリアリティーに、ついつい目を奪われてしまいます。
◎第3部門
 金賞=なし
 銀賞=千趣会は、おやっと思わせるマジック風の仕掛け。見るエンターテインメントというテクニックもあるのですね。
 銅賞=伊勢丹は、伝統的なものへの配慮と新しい時代への視線を感じさせる、懐の深い正月広告でした。
 銅賞=パーソンズは、イラストレーションの面白さをブランド名の強調に結びつけたアイデアにご注目ください。
◎第4部門
 金賞=東レの、写真表現によるナノ・テクノロジーの成果をリポートする3点。
 銀賞=日本毛織物等工業組合連合会の、明確なコピーメッセージで産地を印象づける2点。
 銅賞=三陽商会の、季節にあわせたライフスタイル紹介を着るものに結びつけたエディトリアル調の4点。
 いずれも、点の力を線の強さに発展させるシナジーに工夫のあるシリーズでした。
◎第5部門
 金賞=トリンプは、注意を引く見出しの表現、文章を読みたくなる写真、よく練られた本文。隅々まできめ細かく配慮が行き届いています。
 銀賞=UFOは、読者への手紙というスタイルで全体のデザインから文章のトーンまで統一したユニークな表現でした。
 銅賞=インビスタは、動きのある写真を中心に組み立てられた紙面は、リズム感にあふれています。
◎第6部門
 金賞=小松精練の、訴求点を絞り込み、カラーを活用したパワフルな表現は、広告という枠をはみ出しそうに元気です。
 銀賞=三陽商事は、風呂敷をテーマに、具体的な提案と写真によるイメージ表現の対照的な2点でした。
 銅賞=クリーデンスは、題字下という極小サイズも、こんなふうに活用できますという好例だと思われます。
◎第7部門
 金賞=スタートトゥデイは、新聞全ページに大きな文字でいっぱいに組まれたメッセージは、強い意欲を感じさせます。
 銀賞=プルミエール・ヴィジョンは、ひとくせもふたくせもある視覚表現は、名前の記憶にきっと結びつくはずです。
 銅賞=YKKは、生活シーンと商品のクローズアップを組み合わせた、世界シェア首位の自信にあふれた表現でした。
 メディア環境の読みを基にして、広告戦略と表現技術のいっそう強い連結へ。表現がどのように進化するか楽しみです。

選評 審査副委員長 浅葉克己 未来につながる新しい信号探し
 このところ連続して海外の旅が続いている。地球文字探検家の浅葉克己としてはうれしいかぎりだ。文字あるいは通信の本質は、「いつでも、どこでも、誰とでも、会話するように意思疎通できること」と解いてくれたのは、「腕木通信」の著者、中野明さんだ。現在地球上に生きている文字は56種類あるが、すべての文字がデザイン的に優れ意思疎通に適しているわけではなく、クリエーティブする心やタイポグラフィーする心があれば、手と頭脳によって時代性、空間性の中で解決策を見つけ出すことができると思う。2003年に朝日選書から出版された中野明著の「腕木通信―ナポレオンが見たインターネットの夜明け」は、その辺の示唆に富む名著だ。腕木通信はフランスを中心に発達したもので、日本にはまったく入って来ていない。タイポグラフィー&グラフィックデザインの本の中で発見して驚いた。

 この春、ダイヤモンド社から出版された、リチャード・フロリダ著の「クリエイティブ・クラスの世紀」(井口典夫訳)に推薦文を書いた。「クリエイティブが国境を越えて都市と都市、人と人を新たに結びつける。未来は、そこにある」。
 このところの僕の行動がフロリダの予言通りになっているのが不思議だ。(1)メルボルンでは会員のジョン・ワーウィッカー氏が東京TDCの20周年展を企画、実現してくれた。ラテン文字圏のメルボルンで漢字文化圏のデザインのすごいところを講演した。(2)ミラノ・サローネ、世界のデザイン界から30万人が集まる熱気と狂気の大イベント。スーパースタジオ中央入り口の門に井上雄彦の「バガボンド・18巻」の中から、武蔵と小次郎が一瞬、触れ合うシーンを6メートルに拡大してデザインした。10万人がこの門をくぐって中に入った。(3)バンコク、ジム・トンプソンを中心にタイシルクの素材探しの旅。(4)香港、書とデザイン―文字、書体を超えてのワークショップ、書道の実演をする。

 このような環境の中で、第24回繊研流通広告賞の審査に立ち合った。未来につながる広告を探した。7部門から金賞作品が集められグランプリが決定した。「おーッこれはすごい」というものはなかったが、今年の大賞は伊藤忠商事のSUPERGA、イタリアの物作りの伝統と車の上にしっかと結ばれたゴム底靴。百年変わらず現在も履きつがれているのは奥が深い。広告の原点のような商品広告が審査員の目をとらえた。

 第1部門金賞のサンメリー。「プロの感性」「プロの領域」「プロの創意」「プロの原点」繊維をクローズアップした写真は美しい。4月に、原研哉さんが中心になってスパイラルホールで開催したTOKYO FIBERをみたばっかりだったので目が繊維を追ってしまう。TOKYO FIBERのキャッチは「知らなかった。日本の繊維はすごい。」だった。サンメリーの広告と重なった。

 第2部門金賞は三陽商会のJohanna,hoは、映画「キャバレー」を彷彿(ほうふつ)させるような、魅惑的な写真に注目が集まった。視覚言語としての写真に未来を感じた。理屈抜きに吸い込まれてしまった。銀賞のヤマトドレス5段の小スペースだが魅力的なイラストレーションを応援したい。

 第3部門はめずらしく該当作なし。銀賞に千趣会ベルメゾンの、マークBに合わせた空豆状の種Bと種とがマッチしたほほえましい広告。銅賞に伊勢丹、「一期一会一美」の美しい新年広告。伊勢丹は広告づくりの名門だ。80年代の「こんにちは、土曜日くん」のような生活提案や女性の生き方を表現するような広告の復活はないのか。

 第4部門金賞、東レ全ページ広告3本。〈超〉 に挑戦する東レ。3本の中では「難問は、黒板より黒い学生服の黒でした。」が写真もよく説得力がある。ここでも1メートルの10億分の1超微細なナノレベルを教えている。TOKYO FIBER07の会場でセイコーエプソン出展の布、浮、歩で白い超薄の繊維の中を巨大な金魚が泳いでいたのを思い出す。ナノレベルとはあのことですか? この展示は6月にパリに巡回される。国際的に発信できるものこそが、本当のクリエーティブだと強く思う。

 第5部門トリンプ5段3本。「下着は精密機器である」「肌のためには肌でつくれ」「品質は人に宿る」質の高いヌード写真。静かに語るヘッドコピー、ていねいに読ませるボディーコピー、広告のつくり方のお手本のような広告だ。

 第6部門金賞は小松精練。15段1/3のスペースを生かした、宣言広告。「えっ!? 何これ、見たことない!」世界に向けて発信される二つのブランドの実体を見てみたい。銀賞は三陽商事。半5段と小スペースだが、道路にポツンと置かれた風呂敷が不思議だ。去年環境大臣だった小池百合子さんが先頭に立って、リクルートのG8ギャラリーで風呂敷展をやったことを思い出した。環境問題には風呂敷が一番だと思う。西洋はかばんだが東洋は風呂敷だ。

 第7部門金賞は、スタートトゥデイの全ページ広告、インターネットで好きな洋服を売りたい……で始まる宣言広告。行間がつまりすぎていて少し読みづらいが言いたいことがはっきり伝わって来る。日本地図と不思議な建物のたつ岬は何だろう。銅賞のプルミエール・ヴィジョン、今年も質の高い女性の笑顔のイラストレーションは好感度だ。広告の質の高さこそ、クリエーティブ都市東京の顔になるのだ。

審査会場から コーディネーター 仁瓶賢三 さらなる進化に期待
 24回目の今年度の繊研流通広告賞は、事務局によるノミネート作品総数803点の中から審査会で慎重に審査した結果、入賞作品として47点が選ばれた。
 今回の特徴は、全体として作品のレベルは上がってきているが、例年と比べると特に抜きん出たものが少なく、賞を決めるに当たって、評価が分かれ、優劣決め難く、何度も投票が繰り返され、結果として僅差(きんさ)で入賞が決定するケースが多かった。
 来年度はこの広告賞も25周年を迎える。的確な広告表現と効果的な出稿で流通広告の更なる進化を期待したい。
 大賞は、伊藤忠商事の「スペルガ」のブランド広告。イタリアのトリノで1929年発売以来、いまも飽きの来ないデザインでロングセラーを続ける「SUPERGA」の「2750」モデルのスニーカー。靴ひもでビンテージのミニカーに結びつけてブランドと企業の年輪をシンプルに表現。広告としてはきわめてオーソドックスな手法だが、ユーモアと余裕を感じさせる一枚の写真がすべてを伝えてくれるさわやかな広告だ。
 第1部門金賞のサンメリーの広告は「プロの創意」「プロの感性」「プロの領域」「プロの原点」のヘッドラインとダイナミックで迫力のあるテキスタイルのディテール写真でボディーコピーまで読ませてしまう。布づくりに取り組むプロの心意気が伝わってくる。
 第2部門の金賞は三陽商会のジョアンナ・ホーのブランドイメージ広告。スタイリッシュでシュールな一枚のモデル写真でジョアンナの世界を表現。一度目に焼き付いたら記憶に鮮明に残る。このビジュアルにコピーは要らない。印象的でインパクトの強い広告だ。
 第4部門金賞の東レのシリーズ広告「〈超〉 に挑戦する東レ」は、最先端のナノレベルの技術から生まれた新素材と東レの技術力を訴える商品企業折衷型の広告。コピーとビジュアルが実にうまく融合している見ごたえのある広告表現だ。
 第5部門金賞はトリンプの「120年、人間勢。トリンプ」。同社のものづくりにかける思いとこだわり、お客様への感謝と販売の仕事に対する誇りを開発から販売までのそれぞれの部署を担当するスタッフのナマの声をまじえて記事構成し、まっかなロゴマークに彼らの情勢の色を巧に象徴させている。

審査委員
 審査は次の方々によって行われました。
 審査委員長=清水啓一郎氏(コピーライター)、審査副委員長=浅葉克己氏(アートディレクター、浅葉デザイン室代表)、コーディネーター=仁瓶賢三氏(ネットワーク代表)、審査委員=目黒由紀子氏(サンモトヤマ取締役銀座本店長)、宮井雅史氏(オンワード樫山レディス商品開発室室長)、松本栄治氏(松本宣伝研究所代表)、永田数人氏(キングマーケティング部次長兼東京広告宣伝課長)、山縣哲氏(18℃代表)、大澤保夫氏(沢保デザイン研究所主宰)、長谷川功氏(長谷川企画代表)、原亮一氏(フィールドドリーム代表)

大賞 伊藤忠商事(15段モノクロ)
第1部門(合繊、紡績、加工、機屋産地、テキスタイル卸、関連他)
金賞 サンメリー(5段4回)
銀賞 旭化成せんい(15段カラー) Biella The Art of Excellence財団(7段カラー)
銅賞 小松精練(5段)
奨励賞 クラレ(5段) 帝人ファイバー(15段) 東レ(15段)
第2部門(アパレル、服飾グッズ、インテリア、リビング、呉服、関連他)
金賞 三陽商会(15段モノクロ・カラー)
銀賞 キング(15段カラー) ヤマトドレス(5段カラー4回)
銅賞 大西(15段) ワコール(15段、5段モノクロ・カラー、7段)
奨励賞 栗原(5段カラー) ムーンスター(5段) ジュン(5段4回) オギツ(5段カラー) デサント(15段) エドウイン(15段カラー)
第3部門(小売り流通、商社、通販、マネキン、店装、補修、関連他)
金賞 該当なし
銀賞 千趣会(5段) 伊勢丹(15段カラー)
銅賞 パーソンズ(15段カラー)
奨励賞 清原(5段) ポイント(15段) ファイブフォックス(7段カラー、30段カラー、30段モノクロ)
第4部門(シリーズ広告 各産業、業種共通)
金賞 東レ(15段3回)
銀賞 日本毛織物等工業組合連合会(15段2回)
銅賞 三陽商会(15段カラー4回)
奨励賞 ユニチカテキスタイル(5段3回) 帝人ファイバー(15段3分の1、6回)
第5部門(記事体広告 各産業、業種共通)
金賞 トリンプ・インターナショナル・ジャパン(5段モノクロ・カラー3回)
銀賞 U.F.O.(5段8回)
銅賞 インビスタジャパン(15段カラー2回)
奨励賞 GSIクレオス(15段) 帝人ファイバー(30段) 帝人ファイバー(15段2回)
第6部門(小型、変形、マルチ 各産業、業種共通)
金賞 小松精練(15段3分の1カラー3回)
銀賞 三陽商事(5段2分の1、2回)
銅賞 クリーデンス(題字下カラー)
奨励賞 ピープ(5段2分の1) ファッション戦略会議(ジャパンファッションウィーク5段2分の1カラー) アミコ(突き出し14回)
第7部門(産業、サービス、情報、出版、学校、団体、関連他)
金賞 スタートトゥデイ(15段カラー)
銀賞 プルミエール・ヴィジョン(5段カラー2回)
銅賞 YKK(15段カラー12回)
奨励賞 ファッション戦略会議(2007新人デザイナーファッション大賞、15段) 山本寛斎事務所(15段カラー) イタリア貿易振興会(5段カラー5回)

2005年度 繊研流通広告賞

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2006/06/24

05年度(第23回)繊研流通広告賞各部門入賞広告

選考経過と審査委員会
 05年度・第23回繊研新聞社流通広告賞(広告主参加部門)は05年4月~06年3月の1年間に発行された繊研新聞本紙、同第2部に掲載された広告(記事広告、雑報広告含む)四千四百余点すべてを審査しました。審査委員会のコーディネーターと事務局担当者による推薦、選考により各部門合計791点に絞り、5月17日の第1次審査、続く本審査で各部門の入賞を決定しました。
 全部門の金賞を対象にした大賞選考で帝人ファイバーが選ばれました。
 なお部門別候補広告の点数は第1部門128点、第2部門353点、第3部門74点、第4部門6点、第5部門33点、第6部門40点、第7部門157点でした。
     ◇
 第1次審査、本審査は次の方々によって行われました。
 審査委員長=清水啓一郎氏(コピーライター)、審査副委員長=浅葉克己氏(アートディレクター、浅葉デザイン室代表)、コーディネーター=仁瓶賢三氏(ネットワーク代表)、委員=目黒由紀子氏(サンモトヤマ取締役銀座本店長)、松本栄治氏(アドクリエイション代表)、山縣哲氏(18℃代表)、永田数人氏(キングマーケティング部次長)、宮井雅史氏(オンワード樫山レディスNR推進室、レディス商品開発室室長)、大澤保夫氏(沢保デザイン研究所主宰)、原亮一氏(フィールドドリーム代表)、長谷川功氏(長谷川企画代表)。

総評 審査委員長 清水啓一郎 “点”を結びシナジー活用 一層効果のある流通広告へ
 “相乗効果”と訳されることの多い「シナジー」という言葉。生理学などでは二つ以上の神経や筋肉の“共力作用”を指し、薬学では二つ以上の薬品の“相乗作用”を指す場合に使われたりするようですが、企業活動に関しては、一つ一つの活動が孤立してその場限りにならないように、資財の有効活用を配慮する上で最も重要なキーワードの一つだと思われます。
 広告に即していえば、まず強い表現の出稿によって確かな点をつくり出す。1回だけの出しっ放しにせず、点を線にして結びつける工夫をする。他の活動との連携によって線を面に広げる努力をする。こうした展開が可能な新しい点づくりを常に心掛ける。ということでしょう。今年度の審査会でも、さまざまな方向のシナジー活用の例を見ることができました。
◎大賞  大賞になった帝人ファイバー。具体的に出ているのは、シャツの一部分だけという思い切りの良さ。ブランドのタグに入っている「エコサークル」という文字の簡潔さ。エコサークルって何だろう? という疑問に対しては、紙面のいちばん下で「テイジンのポリエステル完全循環型リサイクルシステムです」と言葉の意味を説明する一方、目立ちすぎないボディーコピーで「この新聞が新聞紙として再生されるように、このシャツはシャツに生まれ変わります」と中身を語る手際の良さ。
 この広告を見る人は、何の抵抗もなく多くのメッセージを受け取ることができます。大げさな仕掛けのない、省エネ表現のキレの良さに脱帽です。
◎第1部門
 銀賞=東レは、キャッチフレーズをキッチリと立てて、それに対応する要素を巧みに添えた正統派ですが、バランスの良さで有無をいわせません。
 銅賞=クラレが扱っているテーマは、決して表現の容易なものではないのに、ピンボケの白黒写真にパートカラーという不思議なビジュアルについつい目を奪われます。
◎第2部門
 金賞=リーバイ・ストラウス ジャパンは、ジーンズのアップを背景に、「責任」の一語を立てて製品の品質についての責任からエイズと闘う責任までを語る、きっぱりした表現が強い訴求力を生み出していました。
 銀賞=オンワード樫山は、見開き30段という大スペースに写真なしで英語のキーワードだけが躍る大胆なデザイン処理によって展示会への感心を高め、次には同じ見開き30段に具体的な写真入りでフォローする堅密な二段構成にインパクトを感じました。
 銅賞=ファイブフォックスは、俵屋宗達の風神雷神図を模したイラストレーションが目をひき、麻の説明に導入される構成。これまでにも、花札モチーフの広告や写楽を利用した表現で受賞しましたが、伝統的な視覚要素という路線は、今回もつながっています。これも、シナジー活用の一例でしょう。
◎第3部門
 金賞=シャルルジョルダンは、クオリティーの高いデザイン処理にご注目ください。商品のモノ情報だけでなく、ココロ情報まで伝えることに成功している例ではないでしょうか。
 銀賞=阪急百貨店は、「とことん話す」「とことん歩く」「とことん惚れる」と言葉へのこだわりをカギとして、さまざまなセクションの活動を説明し、類型を抜け出した表現になりました。
 銅賞=伊勢丹は、「もうひとり、好きになってみる」という、ちょっと気になるヘッドラインと、女性2人がほおを寄せ合う、ちょっと気になる写真の組み合わせによって、企業の提案にスムーズに結びつけるテクニシャンぶりが注目されました。
◎第4部門
 1回の広告出稿を1回だけの点として孤立させないようにするための最もポピュラーな手法は、何らかのフォーマットを設定して、そのフォーマットを他の広告にも共通させることです。
 銀賞=ヤマトドレスは、全5段を二等分する同じレイアウト、同じテーストのイラストレーションを使用する典型的なシリーズ広告。イラストの面白さが光りました。
 銀賞=サンメリーも、レイアウトが共通ということでは同じですが、毎回、新しいキーワードを出して別のストーリーを展開する、ふくらみのつくり方に独特の味があります。
 銅賞=インビスタ ジャパンは、右肩上がりの曲線を活用してレイアウトに個性をつくり出し、印象の持続を狙っていました。
 特別賞=東レは、ムービングというキーワードの書体を毎回変化させるなど、視覚的な共通性にとらわれない新しいシリーズ広告の可能性を感じさせる意欲作です。
◎第5部門
 銀賞=ジョイックスコーポレーションは、動きのある写真を大きく扱うことによって、紙面にダイナミックなリズムをまずつくり出し、それが線のイラストや小さな写真による別のリズムに受けつがれ、記事を思わず読みたくなるように、きめ細かい配慮がなされていました。
 銅賞=三陽商会は、ソフトな調子の写真とともに紡ぎ出される、香り高いエッセイのような美しいトーンが紙面の隅々まで行き渡っています。銀賞の作品が変化を基調とした交響曲のような表現であるとすれば、これは典雅なモチーフが持続する夜想曲のような表現ということができるかもしれません。
◎第6部門
 金賞=ポロ・ラルフローレンジャパンは、東京で最も話題のスポットである表参道に世界最大のラルフローレン・ブティックが誕生したことを告知する広告。カラー4ページのラッピングという形式が、表参道と漢字で書くよりローマ字のほうが似合う場所にふさわしい、またこのブランドの大型店にふさわしい雰囲気を演出していました。
 銀賞=杉野学園は、15段2本と5段2本を組み合わせて、学園の現在の姿、これまで歩んできた道を具体的に紹介する広告。こうした内容を短時間に理解させてしまう手際の良さは並々ではありません。
 銅賞=福井県織物構造改善工業組合は、15段タテ3分の1というスペースを活用して、難しい問題を抱える織物業界の明日を開くために、どのような活動を行っているかを伝える熱意にあふれた表現です。
 特別賞=レナウンは、カラー30段をはじめとして、記事主体の15段、写真主体の5段多数という具合いに、まるで連合艦隊のような堂々たるマルチでした。
◎第7部門
 金賞=プレタポルテパリは、コレクションの告知ですが、春夏物のときも秋冬物のときも、基本的なテーストは変わりません。写真にイラスト的なデザイン処理を加えたおシャレな雰囲気が、点でなく線として機能しているはずです。
 銀賞=YKKは、全5段というスペースを使いながら、まるで半5段を二つ並べたような表現構成をすることによって、独特のオリジナリティーを感じさせました。
 銅賞=プルミエールヴィジョンは、手の映像が不思議な魅力を放って、見る人の目を奪います。写真のようでもありイラストのようでもある幻妙な手が、記憶に焼きついて離れません。

選評 審査副委員長 浅葉克己 再びデザインの力信じる動き 次の段階に進んでいく時
 今一番の関心事は、18年ぶりに日本で開催されるAGI、国際グラフィック連盟の日本大会だ。1952年にヨーロッパで創立され、グラフィックデザイン界では一番古く信頼できる国際的な団体だ。320人の会員によって構成され、31カ国が加盟し、本部をスイスに置く。なかなか会員になれない。うわさでは成功したグラフィックデザイナーの会と言われている。日本の会員は、これだけデザインの盛んな国なのに24人しかいない。毎年どこかの国の都市で開催。今までに53の都市で開催されている。ぼくは18年前の東京、10年前のオーストラリアのケアンズ、04年の北京、05年のベルリンと4回しか参加していないが、今年の東京と京都の二つの都市で開催されるTO KYO TOでは実行委員長を務める。四つの展覧会と二つのシンポジウム。9月26~30日までの5日間。資金集めと演出に燃えている。AGIに参加する一番の意義は、文化、文明、伝統の違いを乗り越えてデザインという思想に照らし合わせ、考え方や表現力を交換し、次に自分がやるべきデザインを発見することにある。
 この2、3年一般雑誌がデザインの特集を組むことが多い。AERA・DESIGNは「ニッポンのデザイナー100人」や「ニッポンをデザインした巨匠たち」のアエラムックを出版した。朝日新聞社が新聞紙面デザインの研究会を発足させたり、年1回の広告賞の審査だけではない、毎月1回の月間朝日広告賞をスタートさせた。そんな状況の中で、第23回繊研流通広告賞の審査会に出席した。
 人間の諸根は、眼(め)でみる、耳で聴(き)く、鼻で嗅(か)ぐ、舌で味わう、身体で行う、意識して考える。広告・デザインの行為は最後の意識して考えるところから始まるようだ。ダ・ヴィンチコードではないが広告やビジュアル表現に現れるシンボルや言葉を読みとく知性は最高の快楽だ。
 審査会で、現代のデザイン、未来のデザインが見えるものを発見することが一番だと思っている。今回一番注目したのは、第7部門銅賞のプルミエールヴィジョンの5段広告のイラストレーションだ。両手からあふれ出す水か光か。手の写真と微粒子。どうやって制作したのか謎だ。Daniele Buettiのサインが見えるが、これはすごい表現だと感じた。テキスタイル見本市の広告だが、この人の作品をたくさん見たいと思った。全体のデザインはオーソドックスなのが残念。しかし未来の広告デザインの表現を感じさせてくれた。
 もう1点は、第7部門金賞の第100回プレタポルテ・パリの5段カラー広告のイラストレーション。写真とドローイングの組み合わせに新鮮さを感じた。全ページ広告やポスターにしたらすごいことになる。人間の手による表現は強い。
 今年の大賞、帝人ファイバーのシャツの広告の意味するものは、なんだろうか。洗濯され、自然にポツと置かれたシャツ布の持つやわらかい美しいシワ。もうこれ以上、シンプルになれない表現。TEIJINのロゴとECOCIRCLE○(R)のタグ。「この新聞が新聞紙として再生されるように、このシャツはシャツに生まれ変わります。下着やカーテンにだって生まれ変わります。しかも何度でも。」と小声でささやくようなメッセージ。福岡伸一さんが提唱する「ロハスの思考」、健康と持続可能性に配慮したライフスタイルや稲本正さんが叫び続けている「化石資源文明は危ない」や、水野誠一さんが提案する「マイナスのデザイン」無自覚の醜景、などをこの全ページ広告をじっと見つめていると思い起こす。今の時点を静かにとらえた。大賞にふさわしい。
 第1部門、銀賞の東レも「最近、エコのつく言葉が増えてきた。」と地球環境保護をうたっている。第2部門、金賞のリーバイ・ストラウス ジャパンのジーンズの広告もポケットに入っているコンドームのシルエットで、最近マスコミはあまり取り上げないが確実に世界で増え続けるエイズ問題に焦点を当てている。
 第2部門、銀賞のオンワード樫山、最近の若者たちの表現のひとつに花柄が目立ちはじめている。写真と花柄、唐草模様の大胆な組み合わせに好感が持てる。
 第2部門、銅賞のファイブフォックスの風神雷神のイラスト表現や、第4部門、ヤマトドレスの不思議なイラストの登場にも好感を持った。
 また、部門中金賞該当なしが3部門もあった。めずらしい年でもある。審査員の間で、もう一度部門設定を考え直そうという問題提起もあった。全体を見通すと第5部門の記事体広告に進展を見いだすことができなかった。情報量も一番多いし大変なことは分かるが、この部門こそデザインとタイポグラフィーの新機軸が必要だと思った。
 再びデザインの力を信じる動きが、世界中で起きている。ヨーロッパのデザイン思考、アジアのデザイン思考、をもう一度絡めて、次の段階に進んで行く時が来ている。

審査会場から コーディネーター 仁瓶賢三 言葉の力をもっと大切にしてほしい
 今回(23回)の流通広告賞は、事務局審査でノミネートされた791点の対象作品より、本審査会で慎重に審査した結果、入賞作品として特別賞を入れて最終的に39点が選ばれた。なかでも最大のノミネート数の第2部門は前回より94点を超える353点。そのため他部門の数倍も時間をかけて審査が行われた。
 今年の特徴は、第1部門、第4部門、第5部門の三つの部門で金賞に該当する作品が無かったこと。ノミネート作品全体を通しての感想だが、写真やイラストなどビジュアル表現を中心にした特定のブランドのイメージ広告に優れたものが多かった半面、BtoB広告としてコピー表現力に優れた広告が少なかった。ひねりや切れのあるコピー、インフォーマティブで説得力のあるコピー、言葉の力のある広告が少ないのは、なぜだろうか。
 大賞は、帝人ファイバーのポリエステル素材の完全循環システム・エコサイクル(R)のブランド広告。澄み切った青空のようにさわやかなブルーの上質なニットシャツが紙面いっぱいに部分アップ写真で素材感を印象づける。時代のニーズとしてのエコロジー、リサイクル。1枚のシャツで何度でも生まれ変わる素材を端的に表している。これまでの大賞の作品にみられる重さはないが、さわやかな空気感の漂う逸作だ。
 第2部門の金賞はリーバイ・ストラウス ジャパンの広告。現在でもベスト・セラーを続けるハイパーヒットモデル・リーバイス501のビンテージジーンズ。ヒップポケットにつけられたLevi’sマークの入った赤タブとアーキュエット・ステッチ。ジーンズ・マニアなら誰でも知っているこのブランドと企業の年輪を表わすきわめつきのビジュアルに世界の若者とこれからもともに歩み続けるために、エイズの撲滅と闘っていると宣言。これがリーバイスの企業とブランドの責任だと社会性に訴えたコピーが見事に表現されている。
 第3部門の金賞の伊藤忠商事のシャルルジョルダンのブランド広告は、1枚の合成写真からブランドの感性、品格、プレステージなど、自由に読み取って欲しいという、コピーを一切排除したノンバーバル広告の典型だ。
 第6部門の金賞はポロ・ラルフローレンジャパンの表参道店オープンの告知広告。新聞全体を包み込むラッピング形式の広告の初登場で話題を呼ぶ。
 第7部門の金賞のプレタポルテパリは、ファッショナブルな魅力ある写真とデザイン処理が見事。広告クリエーターの署名入りの広告で、その手法自体も新しい。

大賞 帝人ファイバー(15段、カラー)
第1部門(合繊、紡績、加工、機屋産地、テキスタイル卸、関連他)
金賞 該当なし
銀賞 東レ(15段)
銅賞 クラレ(5段、カラー)
奨励賞 サンメリー(5段) 東洋紡績(5段)
第2部門(アパレル、服飾グッズ・インテリア、リビング、呉服、関連他)
金賞 リーバイ・ストラウス ジャパン(15段、カラー)
銀賞 オンワード樫山(2連版カラー、見開き2連版)
銅賞 ファイブフォックス(30段見開き、カラー)
奨励賞 ミズノ(15段) ナイガイ(15段、カラー) クルーズカンパニー(15段)
第3部門(小売り流通、商社、通販、マネキン、店装、補修、関連他)
金賞 伊藤忠商事(シャルルジョルダンのシューズ、15段)
銀賞 阪急百貨店(15段)
銅賞 伊勢丹(15段、カラー)
奨励賞 ダイエー(5段、カラー) スープリームス インコーポレーテッド(5段、カラー) イムズ(5段、カラー) JR東日本ステーションリテイリング(5段)
第4部門(シリーズ広告 各産業、業種共通)
金賞 該当なし
銀賞 サンメリー(5段3回) ヤマトドレス(5段5回、カラー)
銅賞 インビスタ ジャパン(5段7回、カラー)
特別賞 東レ(15段1回、5段10回)
第5部門(記事体広告 各産業、業種共通)
銀賞 ジョイックスコーポレーション(15段)
銅賞 三陽商会(15段、カラー)
奨励賞 グルッポ ラペルラ(伊藤忠商事、15段、カラー) クリーデンス(15段、カラー) ユー・エフ・オー(5段、6回)
第6部門(小型、変形、マルチ 各産業、業種共通)
金賞 ポロ・ラルフローレンジャパン(ラッピング、カラー)
銀賞 杉野学園(5段2回、15段2回、カラー)
銅賞 福井県織物構造改善工業組合(タテ3分の1、3回、カラー)
奨励賞 KBセーレン(10段3分の1)
特別賞 レナウン(マルチ広告、カラー)
第7部門(産業、サービス、情報、出版、学校、団体、関連他)
金賞 プレタポルテパリ(5段2回、カラー)
銀賞 YKK(全5段見開き12回、カラー)
銅賞 プルミエールヴィジョン(5段)
奨励賞 主婦と生活社(15段、カラー) 財団法人日本ファッション協会(15段) ジェイ・エム・エス(15段、カラー) ディー・エイチ・エル・ジャパン(7段4回、カラー)

2004年度 繊研流通広告賞

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2005/06/25

04年度(第22回)繊研流通広告賞 各部門入賞広告

選考経過と審査委員会

 04年度・第22回繊研流通広告賞(広告主参加)は04年4月~05年3月の1年間に発行され繊研新聞本紙、同第2部に掲載された広告五千百余点すべてを審査しました。各部門合計636点に候補を絞り5月19日の本審査会で選考されました。
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 審査委員は、次の方々です。
 審査委員長=清水啓一郎氏(コピーライター)、審査副委員長=浅葉克己氏(アートディレクター、ADC会員、浅葉デザイン室代表)、コーディネーター=仁瓶賢三氏(ネットワーク代表)、委員=目黒由紀子氏(サンモトヤマ取締役銀座本店長)、松本栄治氏(カネボウファッション研究所クリエイティブプロデューサー)、山縣哲氏(18℃代表)、今井博氏(オンワード樫山取締役兼常務執行役員事業本部統轄)、大澤保夫氏(澤保デザイン研究所主宰)、原亮一氏(アトリエ・原主宰)、長谷川功氏(長谷川企画主宰)。

総評 審査委員長 清水啓一郎 強さの二つの典型示す――流通広告の明日へ――
 新聞というメディアで流通広告の表現を企画する際の具体的な留意点は1回の広告でいかに大きな効果をあげるか、そして1回の効果をいかにつなげていくかでしょう。今回の審査では表現の企画の二つの典型が大賞と準大賞に選ばれました。
◎大賞
 的確なメッセージに巧みなバリエーションを加えて大きな累積効果をあげたのがYKKです。ブレのない繰り返しの強さは見事というほかありません。「精密連射型」の企画です。
◎準大賞
 わずかな差で準大賞となったオンワード樫山の広告は、シンプルな力強い映像と意表をつくヘッドラインの組み合わせで鮮やかな印象を残しました。「一発必中型」と呼ぶにふさわしい企画です。
◎第1部門
 残念ではありますが今回は金賞なしという結果になりました。
 銀賞=帝人ファイバー 繊維から繊維を再生させる技術。この表現しにくいテーマを、簡単に分かりやすく伝えることに成功していました。
 銀賞=リバティジャパン クラシックなプリント柄をそのまま広告の視覚表現として活用した読みに拍手です。
 銅賞=サンメリー 比喩をうまく使うと複雑な事柄でも伝わりやすいということを実証している表現でした。
 銅賞=旭化成せんい 心を満たすエコロジー繊維という扱いの難しい主題を視覚化することにチャレンジした意欲的な広告です。
◎第2部門
 この部門は今年も予選投票、本選投票を何回も繰り返す激戦区でした。
 金賞=ファイブフォックス 写楽の大首絵を巧みにアレンジしたイラストレーションは有無をいわせぬ迫力でした。
 銀賞=アディダスジャパン 全5段というスペースでは考えられないほど手の込んだ写真が、不思議なアピールを生み出しています。
 銅賞=コンバースジャパン 高名な画家の顔を思わせるようなユーモアとアイデアにあふれたデザイン処理に脱帽です。
◎第3部門
 金賞=東急商業開発 よく練られたコピーと周到に構成された写真による、手際の良さが際立っていました。
 銀賞=ルミネ クリスマスのキャンペーンをトランプのカード風に仕立てたアイデアが、強いアイキャッチング効果をあげています。
 銀賞=伊勢丹 正月をはなやかに演出しながらテーストの良さからはずれない巧みさに票が集まりました。
 銅賞=アニエスベーサンライズ 細かい文字で印刷された日本語の文章と手書きのフランス語。それだけで構成したおしゃれな表現です。
◎第4部門
 金賞=東レ ミライセンイというデザイン化された文字の明るい感じが広告全体のメッセージを統合するテクニシャンぶりにご注目を。
 銀賞=ヤマトドレス 真ん中でニ分割したシンプルなフォーマット、右側の描き込んだイラストの対象の妙。
 銅賞=ユニチカ それぞれが別の広告のように見えて実は同一テーマの展開という、全5段の個性的な使い方への挑戦。いずれも一点一点の工夫と全体の統一バランスが見事なシリーズでした。
◎第5部門
 金賞=小松精練 大見出しの立て方から小見出しの処理にいたるまで全体の流れが大変よく、自然に目が誘導されます。
 銀賞=インビスタジャパン 写真などの視覚的要素のレイアウトが、新鮮な感覚をつくり出していました。
 銀賞=ニューバランスジャパン 時代の鼓動が感じられるようなジャーナリスティックな雰囲気を感じさせます。
 銅賞=トリンプ・インターナショナル・ジャパン 文章と写真のスペースのレイアウトを工夫することで読みやすくすることに成功しました。
◎第6部門
〈小型〉
 銀賞=キシ 商品を一点だけ白く浮き上がらせた単純なアイデアですが、類型をスリルと抜け出しました。
 銀賞=アミコ 思い切りのいいデザインで、突出しや横長などの極小スペースを見事に活用しています。
 銅賞=ボルサリーノ よく考えられた味のある写真は、それだけで強いメッセージになることの実証でしょう。
〈変形〉
 金賞=クラウンクリエイティブ タテ長の写真、タテ長のモチーフの活用が変形スペースの効果と結びつきました。
 銀賞=帝人ファイバー 動詞を大きく扱って見出しにした、イラスト入りの読物仕立て。それを四日連続出稿というキメ細かい構成です。
 銅賞=東レ 見開き面の左と右に人物を配した大胆なデザインが印象に残る表現でした。
◎第7部門
 金賞=フォルムアイ 斜めに大きく置かれたハサミにヘッドラインを添える単純な構成が、強いインパクトを生んでいます。
 銀賞=LAC 昨年の入賞作もそうでしたが、広告表現に一定の雰囲気を持ち続けることの重要性を再確認させてくれる表現です。
 銀賞=プルミエールヴィジョン 不思議な感覚のイラストを中心に組み立てられた表現が、個性的なメッセージを発信していました。

選評 審査副委員長 浅葉克己 新聞全体のデザイン視野に 記事面と広告面が一体となる新しい新聞作りを
 選評の前に、今、僕の一番の感心事は、新聞の記事面をデザインできないか、もっと魅力あるものにならないか、ということだ。地球文字探検家として世界の街を歩いてみるとその国で新聞が発刊されているか、いないかということが重要になってくる。新聞が発刊されているということは、多くの人が読むものだから、その文字は生きているということにつながる。
 僕の先輩の文字研究家、京都の中西亮さんは生涯をかけて108の国を訪ね、直筆で書かれた文字を集め新聞をコレクションしていた。
 10年前に東京タイポディレクターズクラブが「熱いアジアのタイポグラフィ」展を開催した時に、その中西さんの新聞コレクションを展示させていただいた。文字の違い、写真の違い、デザインの違い、民族の違いが活字という英知に囲まれて、地球と人間の関係が浮彫りにされ迫ってくるものを感じた。
 新聞広告のデザインは作り続けてきたけれど、記事面のデザインとなるとわずかに正月の特集版などを作った記憶が残っているだけだ。
 驚いたことに、僕が38年前にデザインした新聞が見つかった。1967年6月24日(土)の朝日新聞だ。僕はライトパブリシティに勤務していて、日宣美(日本宣伝美術家協会)の会員になったばかりだった。ライトには13人の会員がいて、日宣美展に新聞紙面のデザインを提案し、その年の会員賞に輝いた作品だ。東京オリンピックのすぐ後のことで、欧・米から多くのデザインを学んでいた頃だ。ヨーロッパでは、ニューグラフィックデザイン誌が創刊され、みごとに整理された新ゴシック活字書体とそれで組まれた紙面に圧倒された。今、その新聞を見ると整理されすぎているかなとも思えるし、広告も一緒に制作したのでやはり広告面が勝ちすぎているようにも思える。
 やはり記事面は意味のあるメッセージを言葉・活字で伝えなければならない。びっしりと活字の森で埋めつくす宿命を持った存在なのだ。
 さて、広告の選評。やはり広告デザインの一番のポイントは新しい価値観や未知の世界観を知らせてくれるものを評価したいと思う。
 大賞はYKK。新聞を縦割りにしたチャックのビジョンが目に飛び込んで来る。「つなげていく……」という言葉が説得力を持つ。顔のアップとその人の行動のダブルイメージが地上から宇宙まで広がっていく。垂直ではなしにやや斜めにチャックが開かれているところが有機的だ。
 準大賞はオンワード樫山。ギリギリまで追い込んだ人間のカタチが美しい。「人は、外見です」と思い切って言っているのも伝わって来る。
 第2部門=金賞のファイブフォックス。写楽の絵が子供を背負って、襟巻きをしている。思わずホッとさせてくれる。こういうアプローチを続けてほしいと思う。
 銅賞のコンバースジャパン。製品ロゴをダリの顔に見たてたユーモアが目を引く。
 第3部門=金賞の東急商業開発。「だれにも似てない。じぶんに会いたい」一人ひとりを1冊の本にして、全体を本箱にしてしまうというアイデアが迫力を増している。
 銀賞の伊勢丹。「私から、笑おう」スタイリストのがんばりが新しいファッション写真の可能性を見せてくれたところを評価したい。
 第4部門=金賞の東レ。ミライセンイのカタカナ表現が本文を読んでみたくなる期待感を持っている。
 銀賞のヤマトドレス。街角の風景の中に展開するイラストレーションに不思議な魅力が秘められている。
 変形広告に期待したい。もっと変形してしまってもいいのではないか。
 第7部門=金賞のフォルムアイ。オーソドックスな表現だが強さと説得力は抜群だ。
 新聞全体のデザインを考える時が来たようだ。記者、整理部、デザイナーが総力を結集すれば、新聞全体の表現は必ず時代を動かすことが出来ると信じている。

審査会場から 大賞、準大賞は甲乙つけ難く僅差で決定
 22回目の今年度の流通広告賞の事務局審査によるノミネート作品数は636点。この中から慎重に審査を重ねた結果、入賞作品として44点が選ばれました。
 今回の入賞作品は全体として、広告表現の創造性の点で優れたものが多く、やや低調だった昨年に比べて質的レベルが向上したことは喜ばしい。ただ第1部門と第6部門に金賞の該当なしということは残念だった。また、第6部門の記事広告は、コンテンツはともかく、例年話題にのぼる表現面の工夫という点でもう少し力を入れて欲しかったというのが審査委員の大方の意見だった。
 大賞と準大賞は、いずれも見ごたえのある広告表現で、一方は企業理念、一方は商品哲学。両賞ともコピーもビジュアルも計算し尽され、洗練された秀逸な作品だ。今回の広告大賞の決定には優劣つけ難く、慎重に論議を重ねた上で投票に委ねたが、最後まで参加した審査委員の沈黙で悩まされた。こんな出来事は広告賞創設以来初めてのことだ。
 大賞はYKKの全15段のカラーで6回にわたるシリーズの企業広告で、テーマは「つなげていく……」。初回が創造力、続いてエネルギー、夢、情熱、可能性、最終回が総集編になっていて「いろんなものをつなげていく」で完了している。ビジュアルはCG(コンピューターグラフィックス)による写真合成のテクニックを駆使して、画面のセンターに、ジッパー、バックル、ボタンなど同社のファスニング商品をもってきて、左右にそのターゲットのアップとテーマのロングの写真を配して商品イメージを際立たせ、ボディーコピーも格調高く、いかにもYKKらしいオーソドックスなスタイルの優れた企業広告だ。
 準大賞のオンワード樫山の広告は全30段で「ヒトのカタチをカタチにしています」と「人は、外見です」の2点セット。前者は若い女性のヒップラインの美しいフォルムの写真で広告スペースの左半分を独占、そこにオンワードのロゴネームをさりげなく扱い、右半分にはコピーを中心に、3Dオリジナルボトムボディーの開発の成果として生まれたスタイリッシュアップパンツ(美脚パンツ)のデビューを知らせる広告になっている。後者はキャッチコピーと写真のみで、同社のスーツのショルダーラインのシルエットの美しさを視覚に訴えるイメージ広告だ。両者ともシンプルな中にも印象度の高いビジュアル構成が光る。

大賞 ブランド構築の努力実る 井上輝男・副社長ファスニング事業本部長
 YKKでは、グローバル展開が成熟した90年代半ばからブランド戦略を本格的にスタートし、世界統一のロゴを使うようになったのは2000年に入ってからのことです。この度、伝統ある繊研流通広告賞大賞をいただけたのは、YKKブランド構築への努力が実った結果と思い、大変光栄に思っております。ダグライン“Little Parts.Big Difference.”の名にふさわしいYKKであるよう、今後とも邁進(まいしん)して参ります。

準大賞 今後も話題性ある流通広告に挑戦 大沼勉・取締役兼専務執行役員営業担当兼宣伝担当
 この度は、栄えある繊研流通広告賞準大賞をいただき心より感謝を申しあげます。
 オンワード樫山の技術力と商品開発力から生まれたスタイリッシュ・アップ・パンツ(美脚パンツ)の魅力をストレートに、かつインパクトのある表現で伝えたいという意図で制作いたしました。今回の受賞を励みにして、より一層話題性のある広告制作にチャレンジしていきたいと思います。

大賞 YKK(全15段、4色カラー、シリーズ)
準大賞 オンワード樫山(全30段)
第1部門(合繊、紡績、加工、機屋、産地、テキスタイル卸、関連他)
金賞 該当なし
銀賞 帝人ファイバー(全15段)、リバティジャパン(全15段、全7段)
銅賞 サンメリー(全5段)、旭化成せんい(全15段、4色カラー)
奨励賞 御幸ホールディングス(全15段)、東亜紡織(全5段)
第2部門(アパレル、服飾グッズ、インテリア、リビング、呉服、関連他)
金賞 ファイブフォックス(全15段×2、4色カラー)
銀賞 アディダスジャパン(全5段)
銅賞 コンバースジャパン(全15段)
奨励賞 ファイブフォックス(全5段、4色カラー)、エドウイン(全15段、4色カラー)、栗原(全5段)
第3部門(小売り流通、商社、通販、マネキン、店装、補修、関連他)
金賞 東急商業開発(全15段)
銀賞 ルミネ(全5段)、伊勢丹(全15段、4色カラー)
銅賞 アニエスベーサンライズ(全15段、2色カラー)
奨励賞 新宿ステーションビルディング(全5段)、デリカ(全15段)、伊藤忠商事、ライカ(全15段)
第4部門(シリーズ広告 各産業、業種共通)
金賞 東レ(全15段)
銀賞 ヤマトドレス(全5段、モノクロ、4色カラー)
銅賞 ユニチカ(全5段)
第5部門(記事体広告 各産業、業種共通)
金賞 小松精練(全30段)
銀賞 インビスタジャパン(全15段、4色カラー)、ニューバランスジャパン(全15段)
銅賞 トリンプ・インターナショナル・ジャパン(全15段)
奨励賞 ナイスクラップ(全15段)、ユー・エフ・オー(全15段)
第6部門(小型、変形広告 各産業、業種共通)
小型広告
金賞 該当なし
銀賞 キシ(半5段)、アミコ(突き出し、横長)
銅賞 コルドナータ(半5段)
奨励賞 シェイクハンド(題字下、4色カラー)、香港貿易発展局(半5段、4色カラー)
変形広告
金賞 クラウンクリエイティブ(15段タテ1/3、4色カラー)
銀賞 帝人ファイバー(15段タテ1/3)
銅賞 東レ(15段タテ1/2)
第7部門(産業、サービス、情報、出版、学校、団体、関連他)
金賞 フォルムアイ(全15段)
銀賞 LAC(全15段、4色カラー)、ケイアンドコー(全5段)
奨励賞 日本アパレル産業協会(全15段)、島精機製作所(全15段、4色カラー)、日本ファッション協会(全15段、4色カラー)

2003年度 繊研流通広告賞

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2004/06/17

03年度(第21回)繊研流通広告賞 各部門入賞広告

選考経過と審査委員会
 03年度・第21回繊研流通広告賞(広告主参加)は03年4月~04年3月の1年間に発行された繊研新聞本紙、同第2部に掲載された広告(記事広告、雑報広告含む)5200余点すべてを審査しました。審査委員会コーディネーターと事務局担当者による推薦、選考により各部門合計629点に候補広告を絞り、5月18日の第1次審査、続く本審査会で各部門の金賞以下を決定しました。
 全部門の金賞を対象にした大賞選考では今回該当はありませんでした。
 なお、部門別候補広告の点数は第1部門106点、第2部門275点、第3部門51点、第4部門6点、第5部門30点、第6部門56点、第7部門105点でした。
   ◇
 第1次審査、本審査は次の方々によって行われました。
 審査委員長=清水啓一郎氏(コピーライター・東京コピーライターズクラブ副会長)、審査副委員長=浅葉克己氏(アートディレクター、ADC会員、浅葉デザイン室代表)、コーディネーター=仁瓶賢三氏(ネットワーク代表)、委員=目黒由紀子氏(サンモトヤマ販売促進部長)、松本栄治氏(カネボウファッション研究所クリエイティブプロデューサー)、山縣哲氏(18℃代表)、永田数人氏(キングマーケティング部次長)、今井博氏(オンワード樫山執行役員ICB事業本部長、ポールスミス事業本部長、宣伝部長)、大澤保夫氏(澤保デザイン研究所主宰)、原亮一氏(アトリエ・原主宰)。

総評 審査委員長 清水啓一郎 今年は踊り場現象か流通広告の方個性を求めて
 残念ながら、今年は大賞なしという結果になりました。階段の途中に設けられた小さい平らな所を「踊り場」と呼ぶことがありますが、広告表現の新しい流れの方向が生まれる前の、ちょっとした踊り場。今回は、そうだったのかもしれません。しかし、受賞作はいずれも様々な果敢な試みを見せてくれました。
◎第1部門
 金賞=サンメリー 比較的小スペースでありながら、短いキャッチフレーズと単純な視覚表現という極めてオーソドックスな組み合わせが、読ませる広告として強い訴求力を生んでいます。
 銀賞=東レ 竹を原料とするエコロジカルな複合繊維を紹介する手際の良さが光る秀作でした。
 銅賞=リバティジャパン プリント柄の連続パターンをスペースいっぱいに広げた大胆なデザイン処理で成功した表現です。
 銅賞=ユニチカファイバー イラストレーションに写真を組み合わせることによって不思議なアピール力を生み出していました。

◎第2部門
 第2部門は、予選投票を数回くり返した後に、本選投票も更に数回重ねるという激戦区でした。
 金賞=エヌ・エフ・シー 全体を黒く抑えた中に足が浮かび上がるドラマチックな映像によって有無を言わせぬ力強さを感じさせる表現。
 銀賞=ワコールの、イマジネーションを喚起するシルエット写真が「では、夢で逢いましょう」というメッセージを巧みに支える構成。
 銀賞=ライカ 芽吹く春に出稿され、季節感あふれるデザインによって実現された「ころもがえ」の演出。
 銅賞=ダナキャランジャパン きめ細かな配慮がすみずみまで行き届いた美しいトーンの写真によるイメージ・ビルディング。
 銅賞=ファイブフォックス 中国の工場の雰囲気を伝えるドキュメンタリーな写真がもたらす時代の鼓動。
 どの受賞作を取り上げても、この激戦区を勝ち抜くにふさわしい広告だったといえます。

◎第3部門
 金賞=ETRO ちょっとユーモアを感じさせる写真とイラストレーションを巧みに構成した表現がおシャレな感覚世界をつくり出していました。
 銀賞=ミレニアムリテイリング 漢字をイラストレーションの一部分に仕立て上げるというアイデアで、ヌケヌケとゴールに達した表現です。
 銅賞=松坂屋 じっくり撮影した顔のクローズアップによって新店舗の開店を告知する、バランスのとれたソツのなさが評価されました。
 銅賞=伊勢丹 「わたしが、ワタシの、自信作」という意表をつくヘッドラインを中心に構成されたインパクトのある表現に拍手です。

◎第4部門
 今回は残念ながら金賞なしという結果になりました。
 銀賞=イング 7段・5段・15段とスペースの大きさを変化させながら展開した、ちょっと異色のシリーズ広告にこれからのシリーズの新しい匂いを感じたいと思うのは私だけでしょうか。
 銅賞=ヤマトドレス メルヘン調のイラストレーションで展開した全5段5回シリーズは言葉よりもデザインの力に大きな期待をかけるデザイン・オリエンテッド広告として目をひきました。

◎第5部門  金賞=インジィオ 新聞の編集ページには広告ページと異なる語りかけの「間」がありますが、こうした間をつくり出す重要な要素の一つは視覚的なツラです。この広告は編集のツラを巧みに活用しています。
 銀賞=東レ 伝えたい情報がかなり多い場合、それを分りやすく読みやすく表現し、しかもメリハリのきいたものに仕上げることは決してやすしくありません。この広告は、それに成功しました。
 銅賞=阪急百貨店 紙面に登場する30人ほどの人物の写真が絶妙です。さりがなく自然でありながら、雑になっていないこと、トリミングがいいこと。それが、この広告を読んでみたくなる仕掛けでしょう。

◎第6部門
 金賞=ファイブフォックス カメラの専門化がパーフォレーションと呼ぶ、35ミリフィルムの両側に付けられた穴のパターン。これがアクセントになって物語が展開する意欲的な表現。小型広告の秀作でした。
 銀賞=三陽商事 紙上の広告でありながら、ネット上のような感覚。表現がゲームのようになっている異色作です。
 銀賞=シーコム 目玉という超小型ですが、部分的な変化をつけて5日間連続出稿。メディアの特性を活用する企画性にあふれた広告でした。
 銅賞=リバーストーン 突き出しという小スペースの中に、これだけの情報を盛り込んでしまうテクニシャンぶりに大拍手!スモール・バット・パワフルです。
 銅賞=ブレイクスルー 写楽の大首絵風イラストを効果的に使って展示会の告知に結びつけた、手練の業は見事というほかありません。

◎第7部門  金賞=文化服装学院 伝えるべきことを整理して、短い言葉、シンプルなモチーフに凝縮する。この基本ステップをきちんと踏んでつくり出した力強い表現です。
 銀賞=DHL 国際航空貨物を速く効率よく、というコンセプトを映像化した写真の勝利です。
 銀賞=LAC 「遊ばないと生まれない」というコピーとシンボリックな視覚表現が展示会や名称変更の告知に結びついていく、印象に残る広告でした。
 銅賞=上海スーパーエクスプレス 上海から日本各地へ3日で運ぶ船便の告知を分りやすくまとめ上げた手際の良さが票を集めたようです。

選評 審査副委員長 浅葉克己
“情報の美”を考えよう 文字の新しい顔づくりはタイポグラフィックデザインの中核

 ついに大賞が出なかった。広告デザインの審査会はたくさんあるが大賞が出ない時は淋しいものだ。では、こういう時はどうしたらいいのか。鳥瞰(ちょうかん)するのも一つの方法だ。デザイン界を鳥瞰してみたい。
 グラフィックデザイン界にとって、03年は大きな動きがあった年だ。60年に世界デザイン会議が東京で開催されてから、なんど40年ぶりに、世界グラフィックデザイン会議が名古屋で開かれた。名古屋は90年にもデザイン博をやり、デザイン都市宣言をしている。Icogradaという世界のグラフィックデザインの団体が2年に1度、世界各地で開催している会議で、アジアでは初めてだった。強力な企画委員会が考え出したテーマは「VISUALOGUE」。訳すと「情報の美」。
 分科会のテーマは(1)分りやすさ(2)笑い(3)独創性。これからのデザインを動かす指針になるような重要な会議だった。記念講演は杉浦康平さん。宇宙を叩く―デザインプラスコスモロジー視覚化される二つの太鼓。建鼓と火焔太鼓。古代アジアより伝えられる二つの太鼓の謎をひも解くという深いテーマ。僕は西田龍雄言語学博士と組んで、(3)の独創性の分科会で、博士の原稿を基にビジュアル製作と対話を行った。「文字の本質と発展―岩画から文字へ」―その中で西田博士の文字研究の三つの立場での発言は、これからの自分の進む道を照らし出してくれた。(1)鑑賞的な文字学。文字の表面を鑑賞してその作品を味わう。(2)言語学的文字学。文字の骨格を分析して言葉と文字の相互関係を探求する。文字の系譜を考える。(3)芸術的文字学。芸術家の創造意欲を促し文字の新しい顔を創(つく)り出す。特に(3)の文字の新しい顔を創り出すは、これからのタイポグラフィックデザインの中核になる言葉だ。
 ここで繊研新聞に二つの提案をしたい。繊研広告賞に新人の表現者の発想をめざして公募部門を創ってもらいたい。繊研の広告に風を起こしたい。朝・毎・読・日経各社でも公募部門にすごく力を入れているし、学生賞もあったりして門戸が増々広がっている。企業もきっと気づかなかった考え方や視点を生かせると思う。もうひとつは、新聞紙面への提案だ。僕が会長をしている東京タイポディレクターズクラブがある。年1回の展覧会と年1冊の年鑑を出版している。世界中の文字が集まってくる日本では数少ない国際展だ。そこに1年で1番大きなニュースがあった日の第1面を集めて、コンクールをしたいと思っている。広告の審査会はたくさんあるが紙面の審査は初めてだ。新聞は記事面と広告でなり立っている。両輪の発展こそが新聞の生きる道だと思うからだ。

審査会場から コーディネーター二瓶賢三
 初めての大賞該当なし なんとしてもさびしい

 21回目の今回の事務局によるノミネート作品数は629点、この中から入賞作品39点が選ばれた。
 今回ほど審査に時間をかけ、慎重かつ丁寧に行われたことはなかった。理由は、例年になく低調で光る作品が少なかったからだ。ひねりを感じるもの、新しさを感じる作品が少なく、全体にレベルの低下は否定できない。なぜだろう、次回はぜひ巻き返して優れた広告がたくさん紙面に登場することを期待したい。
 第1部門金賞のサンメリーの「考える布」「スローな布」は、経済中心から人間中心の価値観への意識転換を訴え、同社の素材開発への取り組みの姿勢を企業広告にして訴えたもの。布地の写真を中央に据えて余白を生かしたオーソドックスなレイアウトで04年にかけた心構えを表現した逸作だ。
 第2部門金賞のエヌ・エフ・シーの「N is for fit」の広告は、同社のアパレル関連商品の販売活動のスタートを知らせる広告で、いまスタートを切った黒人のひきしまった足にニューバランスのNの頭文字をフィットさせたダイナミックで躍動感あるれるモノクロの写真が、この広告のインパクトの強さを決定づけている。
 第3部門の金賞の三喜商事の「エトロ」の広告は、写真とイラストを使った9カットのビジュアル表現でエトロのロゴマークをユーモラスにシンボライズさせたおしゃれな広告になっている。
 第4部門の金賞は該当者なし。銀賞のイングの広告は、繊研新聞主催テナント大賞のベストセラー賞受賞の理由を解明したシリーズ広告で、企画性が評価された。
 第5部門の金賞のインジオの全30段の広告は、片面はパブリシティー記事風、片面はヒューマンタッチの子供を使ったイメージ広告と硬軟対象の絶妙のコンビネーションで、この広告をきわだたせている。
 第6部門の金賞のファイブフォックスの「ジャージー今昔物語」は、秋にデビューするコムサイズムのジャージー発売予告広告で、映画の予告編風にコマ撮りでセールスポイントを訴えて、期待をもたせるアナログ手法の広告表現。新しい変形スペースをうまく利用して面白い。
 第7部門の金賞の文化服装学院の生徒募集の広告は、「進化し続けます。」のコピーとコレクション会場のワンシーンの写真で、今デビューする自分を想像させる効果的な広告表現だ。

第1部門(合繊、紡績、加工、機屋、産地、テキスタイル卸、関連他)
金賞 サンメリー(全5段)
銀賞 東レ(全15段)
銅賞 リバティジャパン(全7段) ユニチカファイバー(全15段)
奨励賞 帝人ファイバー(全15段)
第2部門(アパレル、服飾グッズ、インテリア、リビング、呉服、関連他)
金賞 エヌ・エフ・シー(全15段)
銀賞 ワコール(全15段) ライカ(全15段4色カラー)
銅賞 ダナキャランジャパン(全15段4色カラー) ファイブフォックス(全30段4色カラー)
奨励賞 ジュンコシマダジャパン(全15段)
第3部門(小売流通、商社、通販、マネキン、店装、補修、関連他)
金賞 三喜商事(全15段)
銀賞 ミレニアムリテイリング(全15段)
銅賞 松坂屋(全15段) 伊勢丹(全15段4色カラー)
奨励賞 八木通商(全5段4色カラー) 住友商事(全5段) レリアン(全7段)
第4部門(シリーズ広告 各産業、業種共通)
銀賞 イング(全7段4色カラー)
銅賞 ヤマトドレス(全5段)
奨励賞 あぶち(全5段4色カラー)
第5部門(記事体広告 各産業、業種共通)
金賞 カーギル・ダウLLC(全15段×2)
銀賞 東レ(全30段×2)
銅賞 阪急百貨店(全15段)
奨励賞 オリゾンティ(全15段) デサント(全15段)
第6部門(小型広告 各産業、業種共通)
金賞 ファイブフォックス(変形4色カラー)
銀賞 三陽商事(半5段) シーコム(目玉)
銅賞 リバーストーン(突き出し) ブレイクスルー(半5段)
奨励賞 海援隊(突き出し4色カラー)
第7部門(産業、サービス、情報、出版、学校、団体、関連他)
金賞 文化服装学院(全15段4色カラー)
銀賞 ディー・エイチ・エル・ジャパン(全15段4色カラー) LAC(全15段4色カラー)
銅賞 上海スーパーエクスプレス(全15段)
奨励賞 YKK(全15段4色カラー) 三景(全15段4色カラー)

2002年度 繊研流通広告賞

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2003/06/18

02年度(第20回)繊研流通広告賞大賞・各部門入賞広告

総評 審査委員長 清水啓一郎 
「S・A・R・S」な広告は強い 流通広告の新しい可能性

 今年の前半の世界を揺るがしたのはSARSでした。SARSは重症急性呼吸器症候群を意味する英語の頭文字ですが、第20回を数える今年の繊研流通広告賞の審査会を揺るがしたのも、新型肺炎とは別の意味のSARSではなかったかという思いがあります。  SHARP=物事が伝わりにくいコミュニケーション状況を切り開くメッセージの鋭さ。ADEQUATE=広告目的に合致した適切さ。REAL=現実の新しいあり方を予感させる真実性。SYNTHESIS=さまざまな要素を見事にまとめる統合性。この四つの頭文字を合わせたSARSな広告です。

◎大賞
 「いちばん耳の良いブランドを目指します」というメッセージの明快さ。それを受けて、ジーンズのリベットをピアスにしたビジュアルの強さ。リーバイ・ストラウスジャパンの広告は、まさしくSARSです。生き生きしたキャッチフレーズと目を引きつける視覚表現の掛け算こそ、パワーのある広告表現に到達するための特急券なのだということを、改めて再確認させてくれます。大賞に推すにふさわしい、堂々たる横綱相撲の表現というべきでしょう。

◎第1部門
 金賞=ユニチカファイバーは、女性の瞬間的な姿を巧みにとらえた写真とソフトな書き文字の組み合わせが個性的。
 銀賞=カネボウ合繊は、赤ちゃんの髪の毛のやわらかさを強調する写真による直球勝負。
 銅賞=御幸ホールディングスは、アンダーな調子でまとめた名古屋城の威容を正面にとらえた構成。
 いずれも、写真を効果的に使って、アピールポイントにつながる世界を表現することに成功していました。

◎第2部門  候補点数で今年も最大の激戦区でした。
 金賞=ワールドは、大胆なデザイン処理で見る人の視線をとらえて放さない、有無をいわせぬ強さをつくり出しています。
 銀賞=ファイブフォックスは、見開き30段という大スペースを思う存分に使った、力技の表現が印象に残りました。
 銅賞=月星化成は、全5段の横長スペースが持つ潜在的なパワーを引き出した読みの深さに注目していただきたいと思います。

◎第3部門
 金賞=伊藤忠商事は、トーンの美しさが圧倒的。どうすれば掲載紙面で原稿の美しさが再現されるか、審査員の間で話題になったほどです。
 銀賞=ユナイテッドアローズは、ユニークなイラストレーションを中心にていねいに制作されていることが高く評価されました。
 銅賞=ルミネは、書き文字のヘッドラインと独特のイラストによって、分かりやすく力強い表現になっていることが票を集めました。

◎第4部門
 金賞=東レは、全15段のスペースをゆったり使って、2人の人物の関係を紹介するヒューマンなシリーズ。
 銀賞=レリアンは、周囲にホワイトスペースをたっぷりとり、視覚的なモチーフを印象づけるデザイン的なシリーズ。
 銅賞=ポロクラブジャパンは、商品の組み合わせにロゴタイプを大きくあしらった伝統的なシリーズ。
 いずれも一点一点の工夫と、シリーズとしての統一感のバランスがとれている点が見事です。

◎第5部門  金賞=ライカは、細かい配慮がなされたことによって類型を抜け出した記事体広告。知らず知らず小さい文字を読んでしまいます。
 銀賞=メンズビギは、ドラマチックな写真とジャーナリスティックな感覚のヘッドラインを組み合わせた切れ味のいい表現。
 銅賞=イギンは、文字の大きさ、写真の扱いなど、隅々まで手際の良さが感じられる記事体でした。

◎第6部門  金賞=アルファキュービックは、突き出しという極小スペースでありながら、インパクトの強いイラストと思い切ったデザインで、メガトン級の訴求力を生み出した広告。審査の途中経過では、大賞の可能性もあったほどです。
 銀賞=栗原は半5段のスペースにこれほどの情報量が盛り込めるのか、と拍手したくなるほどのテクニシャンぶり。
 銅賞=富士紡績は、商品の特徴をスピーディーに理解させるためのソツのなさが光っていました。

◎第7部門  金賞=YKKは、伝えにくい複雑なテーマを整理してシンプルな表現構成にまとめ上げた、意欲的な広告です。
 銀賞=ディー・エイチ・エル・ジャパンは、さまざまな文字をイラストレーションの材料に使って、不思議なアピールをつくり出していました。
 銅賞=ラッフルズ・豊島は、野性的なモチーフを野性的にレイアウトしたことによって、強い印象を残す表現です。

◎特別賞  題字下、突き出し、全5段、そしてさらに大きなスペースにいたるまで、1日の広告スペースのすべてを利用して、それぞれのスペースに応じた表現展開を1社で行う。この壮大な試みにチャレンジしたオンワード樫山が企画賞に決まりました。
 小さなスペースでも、使い方によっては予想もできない訴求力を生み出します。大きなスペースにはさらに大きな潜在力があります。それらを巧みに統合すれば、途方もない効果を発揮するはずです。
 鋭角性、適切性、真実性を特性とするSARSな広告。その入り口は、スペースの新しい活用方法を見つけることからも見つかりそうです。

選評 審査副委員長 浅葉克己
 キラキラ輝き続ける宿命が

 繊研流通広告賞も20年という節目を迎えた。
 80年代、90年代、00年代を駆け抜けたことになる。審査とは重要な意味を内包している。授賞という評価によって、時代に生き続けるのだ。特に大賞はその時代の代表作であり、次の年を予見させてくれる強い方向性を持っている。せっかくの節目の年だから入賞作、大賞作を一堂に並べて見るという別企画もあった方が、繊研流通広告のあるべき姿を確実に確かめることができたと思う。
 広告全般に言えることだが、驚くような表現、本能的というか野性的な表現に出会っていない。ちょっと引いた計算通りの表現がやたらと目に付くのは僕だけなのか。03年の受賞作の僕なりの評価をしてみたい。
 大賞のリーバイス。「いちばん耳の良いブランドを目指します」。ジーンズが出来て150年。僕たちが日本でGパンを最初にはいた世代だ。アメ横で朝鮮戦争の米軍の放出品のジーンズを手にしたのが最初だ。それからずーっと関心を持ち続けている不思議なパンツだ。
 耳のイヤリングがジーンズのボタンというのがアイデアだが、ボディーコピーの、創業者であるリーバイ・ストラウスはとても耳の良い人でした。彼は、金鉱で働く人々の「丈夫なパンツが必要だ」と聞き……智恵というものはこういうところに隠れているのかと実感させられた。オーソドックスな広告表現だが今年の一番だ。
 特別賞企画賞、オンワード樫山のマルチ広告。鉄棒を中心に展開する男女。中央見開きの看板によるブランド表記は見るものがあった。一番驚いたのは、繊研新聞の題字下にデングリ返ししている女の子のビジョン。この迫力が全ページを通じて出て来るともっと驚く広告になったと思う。
 第1部門金賞のユニチカファイバー。若々しい写真表現と、「できること、まだまだたくさん。」というボールペンの筆蝕表現が楽しい。若い制作者の間で書き文字表現がはやりだした。文字は歴史を作る表現なので応援したいと思う。
 第3部門金賞の伊藤忠商事のBALLYのバッグと靴。新聞広告のカラー表現が品質の良さとマッチした広告に新鮮な驚きを感じた。銀賞のユナイテッドアローズ。トツカボンドの魅力的なイラストレーションが繊研新聞初登場だ。
 第2部門金賞のワールドの赤いビル。銀賞のファイブフォックス。大根の写真に、「ああ日本の生活。」。日本を考えさせてくれた。
 第6部門金賞のアルファキュービック。小型広告ながら強烈なイラスト表現。繊研流通広告賞のめざすものは、これからだと思った。広告はキラキラ輝きつづける宿命を持っている。

審査会場から コーディネーター 二瓶賢三
 アナログ感覚の表現が主流占める

 恒例の繊研流通広告賞は、今回で節目の20回を迎えた。この賞を立ち上げた仕掛け人の一人として感無量だ。どことなく審査会場の雰囲気も例年になく張りつめたものが感じられた。
 今回の事務局によるノミネート作品数は701点。この中から慎重に審査した結果、入賞作品として41点が選ばれた。
 今年の特徴は、優しさ、手触り、ぬくもり、癒やし、急がずゆっくり、といった切り口。ハイテクよりハイタッチ、デジタルよりもアナログといった感覚の広告表現が数多くみられた点にある。今日のように先行きが不透明な時代には、より人間味を感じさせるものが広告に求められているということだろう。ラジカルなものや近未来的なものは見当たらない。
 大賞は、リーバイスの創業150周年の企業広告。リベットのピアスをつけた耳の写真にデニム地をダブらせたビジュアルに、「いちばん耳の良いブランドを目指します」というヘッドラインで決めた広告表現。リーバイスブランドの150年の歴史と今をひとことで言い表している。「耳の良いブランド」とは言い得て妙。生活者の声を聞いて自己変革をはかることの大切さを教えている。大賞にふさわしい、シンプルで、それでいて計算された精度の高い見ごたえのある広告だ。
 特別賞のオンワード樫山の3月11日付の1日の全広告紙面を完全買い切りで掲載したマルチプル広告は、メディア利用の企画性、戦略性が評価された。グローバルなかたちで数多くのブランドを展開する総合アパレルとしての同社の存在を示す企業広告としては効果的な手法といえよう。
 第1部門の金賞のユニチカファイバーの「ゼットテン―N」の広告は、マーケットインで素材開発にかける企業姿勢を生活者の声をかりて表現したもので、落書き風の手描きのキャッチコピーが際立つ、アナログ感覚のぬくもりを感じさせる優れた広告だ。
 第2部門金賞のワールドのオゾック原宿店のオープン告知の覆面広告は、ビル全体を赤一色であざやかに塗りつぶしたインパクトの強い表現が決め手となっている。
 第3部門金賞の伊藤忠商事のバリーのブランドイメージ広告は、写真、印刷を含めて、ビジュアル処理のうまさを評価。
 第4部門金賞の東レは、素材開発による社会貢献を時代の気分を表現するほのぼの感のベッドとイラストで巧みに表現したインフォーマティブ広告だ。

大賞受賞の声 リーバイ・ストラウスジャパン社長 マリア・メルセデス・エム・コラーレス 
「耳」を持つことは必須です

 リーバイ・ストラウスが19世紀にジーンズを生み出したきっかけは、丈夫なパンツを必要としている消費者の声を聞き取る、優れた「耳」を持っていたからです。消費者、そして消費者と接する小売店の方々が、リーバイスブランドに求めているものをきちんと聞き取る「耳」を持つことは、21世紀にビジネスを展開する私たちにとっても必須です。その当たり前のことを、きちんと行える企業であり、ブランドでありたい。
 こうしたメッセージを込めた今回の広告が、栄えある繊研流通広告賞大賞をいただき、大いに喜びと名誉を感じています。

大賞  リーバイ・ストラウスジャパン(全15段4色カラー)
 
第1部門(合繊、紡績、加工、機屋、テキスタイル卸、関連ほか)
金賞  ユニチカファイバー(全15段)
銀賞  カネボウ合繊(全5段)
銅賞  御幸ホールディングス(全15段)
奨励賞 小松精練(全15段)
    東洋紡績(全7段2色カラー)
第2部門(アパレル、服飾グッズ、インテリア、リビング、呉服、関連ほか)
金賞   ワールド(全15段)
銀賞   ファイブフォックス(全30段)
銅賞   月星化成(全5段)
奨励賞  エース(全7段)
     YKK(全5段)
     ユアーズアーミー(全5段)
第3部門(小売り、流通、商社、通販、マネキン、店装、補修、関連ほか)
金賞   伊藤忠商事(全30段4色カラー)
銀賞   ユナイテッドアローズ(全15段4色カラー)
銅賞   ルミネ(全5段)
奨励賞  三井物産(全15段)
     伊勢丹(全15段)
     住友商事(全15段)
第4部門(シリーズ広告 各産業・業種共通)
金賞   東レ(全15段3回)
銀賞   レリアン(全7段3回)
銅賞   ポロクラブジャパン(全10段4回)
奨励賞  伊藤忠ファッションシステム(全5段5回)
第5部門(記事体広告 各産業・業種共通)
金賞   ライカ(全7段4色カラー)
銀賞   メンズビギ(全7段)
銅賞   イギン(全15段4色カラー)
奨励賞  東レ・デュポン(全7段)
     東レ(全30段)
     モリト(全15段)
第6部門(小型広告 各産業・業種共通)
金賞   テクニカル・インターナショナル(突き出し)
銀賞   栗原(半5段)
銅賞   富士紡績(半5段、突き出し)
奨励賞  社団法人日本衣料管理協会(突き出し)
     海援隊(突き出し)
     三陽商事(半5段)
第7部門(産業、サービス、情報、出版、学校、団体、関連ほか)
金賞   YKK(全15段4色カラー)
銀賞   デイー・エイチ・エル・ジャパン(全5段4色カラー)
銅賞   ラッフルズ・豊島(全5段)
奨励賞  ミチココシノジャパン(全5段)
     トライアングルコーポレーション(全15段2色カラー)
     社団法人日本衣料管理協会(突き出し)
     日本ユニシス(全5段)
特別賞  《企画賞》オンワード樫山
(マルチ広告、4色カラー・モノクロ)

2001年度 繊研流通広告賞

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2002/06/14

2001年度(第19回)繊研流通広告賞大賞・各部門入賞広告紹介

 2001年度繊研流通広告賞の審査会が5月10日開かれ、大賞以下各部門の優秀広告を選定しました。(繊研新聞社・繊研流通広告賞事務局)
〈選考経過と審査委員会〉
 2001年度(19回)繊研流通広告賞(広告主参加)は、01年4月~02年3月の1年間に発行された繊研新聞本紙、同第2部に掲載された広告(記事広告、カラー、2色、雑報広告を含む)5700余点すべてを審査しました。
 審査委員と事務局担当者による推薦、選考により、各部門合計で751点に候補広告を絞り、5月10日の第1次審査、続く本審査会で各部門の金賞をはじめ、入賞が決定しました。全部門を通じての大賞は金賞7点の中から選定しました。
 なお、部門別候補広告の点数は第1部門が123点、第2部門が304点、第3部門が46点、第4部門が57点、第5部門が30点、第6部門が80点、第7部門が111点でした。

 第1次審査、本審査は、次の審査員の方々によって行われました。
 審査委員長=清水啓一郎氏(コピーライター、ADC会員、東京コピーライターズクラブ会員)、審査副委員長=浅葉克己氏(アートディレクター、ADC会員、浅葉デザイン室代表)、コーディネーター=仁瓶賢三氏(ネットワーク代表)、委員=長谷川功氏(長谷川企画代表)、大澤保夫氏(澤保デザイン研究所代表)。目黒由紀子氏(サンモトヤマ宣伝広報室長)、山縣哲氏(18℃代表)、坂井正志氏(オギツ常務取締役)、永田数人氏(キングマーケティング部次長)、原亮一氏(東京ブラウス商品企画部担当課長)、松本栄治氏(カネボウファッション研究所クリエイティブプロデューサー)

清水啓一郎審査委員長
スペースの潜在力 活用の仕方に可能性

 今回の審査で最も印象的だったのは、小さなスペースの広告に力作が多かったことです。平面のスペースをどのように利用するかという広告デザインの重要性もさることながら、もっと別の問題も示唆しているように思われました。現代のメディア状況の中で新聞の広告スペースが持つ潜在的な力をどのように引き出すか。潜在的なベクトルといってもいい力をできるだけ大きくする方法を見つけることが、広告表現の可能性を拡大することにつながるのではないかということです。
 ◎大賞 大賞を受賞したファイブフォックスの広告は、日本の伝統的な花札のモチーフを利用したユニークな視覚構成によってライバルを突き放し、跳ね飛ばしてゴールに飛び込んだ力強さで群を抜いていました。このことは、いま思想的な問題に関してもポストモダンがかげりを見せ、古典的、伝統的なものが見直されていることとも関係があるのかもしれません。

◎第1部門
 金賞=帝人は、一見なにげない群像のようですが、古典落語の「あくび指南」を想像させるような新鮮なビジュアルは強いアピール・パワーがあります。
 銀賞=小松精練の海外製品に対抗して戦う日本の繊維業界にエールを送る広告は、人形の表情とヘッドラインの書体が不思議な世界をつくり出しています。
 銅賞=瀧定大阪は、5段という限られたスペースでありながら、軽妙なイラストレーションを使った巧みなデザイン処理で、強い訴求力を生み出しました。

◎第2部門
 質的にも量的にも最大の激戦区となったので、銀賞・銅賞ともに2点入賞となりました。
 金賞=御幸毛織は、メンズ・オンリーのミユキから誕生したレディス・ブランドの広告ですが、自立した女性をシンボライズするような単純化した映像の力強さが高く評価されました。
 銀賞=ユアーズアーミーは、十分なゆとりのあるホワイトスペースを横切る小さなアリの列という意外性が、見る者を思わず凝視させてしまいます。
 銀賞=タカヤ商事は、核武装撤廃の英語イニシャルNとDの手旗信号をデザイン化したピースマークを活用。古くて新しいこのマークをジーンズに重ねたテクニシャンぶりにご注目ください。
 銅賞=ワールドは、オペークが大阪に開店することを知らせる広告ですが、時代を反映した“不透明”を意味する名前のイメージを発展させながら、ビジュアル・ショックをつくり出すことに成功しました。
 銅賞=リーガルは、シンプルな写真、シンプルなデザインがスローガンの真実性に結びつく表現。写真表現の完成度の高さが、そのすべてを支えています。

◎第3部門
 金賞=八木通商は、ユニークなイラストレーションを大きく扱うレイアウトが生み出したノックアウト・パンチ。ユーモラスでありながらデザイン性の高いイラストレーションが光ります。
 銀賞=ユナイテッドアローズは、保温ポットをデザイン化した不思議な映像がヘッドラインに導かれて強いインパクトをつくり出しました。
 銅賞=東京ますいわ屋は、裾だけをクローズアップして他の部分を切り捨てた思い切りの良さが印象に残る広告です。
 ◎第4部門 金賞=東レは、漢字4文字のヘッドラインのほのぼのとしたイラストレーションを組み合わせて、おもしろい効果を発揮したシリーズ。
 銀賞=ポロクラブジャパンは、展開の上で3段階の変化をつけた高度構成シリーズ。
 銅賞=東洋紡は、中央に丸いパターンを設けて新素材を説明する分かりやすいシリーズでした。

◎第5部門
 金賞=イトキンは、店長インタビューの記事とイメージ写真の融合のさせ方に巧みなコントロールがある表現。
 銀賞=さが美は、自然な組み、自然な書体を用いながら、きめ細かな配慮が感じられる広告。
 銅賞=杉野学園は、ジャーナリスティックな感覚にあふれたレイアウト。記事広告にも様々な手法と様々な工夫が見えます。

◎第6部門
 金賞=フォルムアイは、こんな小スペースでも、これだけ手の込んだことができるという高度な読みを結実させた広告でしょう。
 銀賞=一宮地場産業ファッションデザインセンターは、魚1匹だけで時代のゆらぎを感じさせてしまう、小さくてもキラリと光る表現です。
 銅賞=ザ・ドッグ・プロジェクトは、犬の写真を大胆にカットしたデザイン処理がなんとも爽快です。

◎第7部門
 金賞=エス企画は、表現しにくいテーマを見事に表現化した点が評価されました。
 銀賞=ディック・ブルーナ・ジャパンは、ブルーナの描くイラストレーションの可愛さ、面白さが息づいています。
 銅賞=本物タウンは、複雑な表現内容を単純化した手際が鮮やかです。
 なお今回は、大覚寺で撮影されたファイブフォックスのすばらしい写真表現と日本アパレル産業協会の時宜を得たメッセージに特別賞が決まりました。

浅葉克己審査副委員長
希望

 広告の本質を見極めるひとつの方法に「希望」ということがある。いまの日本には希望がはっきりしたカタチで見えていないということもあって、希望という言葉に引かれている。現在撮影中の篠田正浩監督の映画「スパイ・ゾルゲ」の美術を担当している。監督は最後の作品と言って、製作・脚本・監督すべてひとりで作り上げた。台本がすばらしく、台本の扉に魯迅の希望という言葉が選ばれている。
 「思うに希望とは、もともとあるものともいえぬし、ないともいえない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になる」(魯迅)
 モノづくりの一番厳しいところを突いていて、希望とはこういうものだとハッキリ理解することができる。
 僕は今年の審査の眼にこの言葉を思い浮かべていた。写真表現でもコピー表現でも、この枠にひっかかればチップを投入した。
 大賞は、ファイブフォックス。言葉も何もないが花札風の絵柄が心をとらえた。蛙が跳ねたり、鳥が飛んだり、実に時空を超えた気持ちよさがある。1960年代に世界デザイン会議があり、その後、粟津潔さんの表現に花札が登場して僕たちを驚かせた。伝統のデザインを生かした勝利だ。
 第1部門金賞は、帝人のコルティコ。芝生の丘に並んでいるモデルたちが、全員、欠伸をしている。こんなシチュエーションを考えた人はいったい誰なんだろうと思わせるユーモアが伝わってきた。一番驚いたのは外国人モデル達だったかも知れない。
 第2部門金賞、御幸毛織「お店であいましょう」朝靄の平原にスックと立つ女。気持ちいい写真表現だ。なにもしないで女が立っているだけという、やさしそうで難しいシチュエーションが成功している。
 第2部門銀賞、ユアーズアーミー「緑の下から、ニュースをつくろう」。黒い丸の中から蟻が登場している。そういう知恵のある表現が好きだ。バーッと大きな写真にロゴタイプひとつという表現の時代は終わり、小型スペースでもアイデアのある表現に注目が集まる。
 第3部門、ユナイテッドアローズのアテハカ。「こういうモノが突然出てくる。この国はそういう国なんだ」。不思議なコピーと、不思議な写真。理解できないものの新しさがあった。広告づくりの根底に、「希望」の2文字を生かしてほしい。

仁瓶賢三コーディネーター
受賞クライアントの幅が広がった

 今回の流通広告賞は、事務局によるノミネート作品数で昨年を上回る751点の中から審査会で慎重に審査した結果、入賞作品として特別賞を入れて42点が選ばれた。中でも最大のノミネート数を得た第2部門は、300点を超え、昨年同様、同一のテーブルにのりきれず、一度粗選びを行って173点に絞り、改めて本審査に入るという作業を必要とした。
 今年の特徴は、受賞クライアントの幅が広がったこと、着物が健闘したこと、小スペース広告に優れたものが見られたこと、トレンドとして「和」が依然として健在ということ、急がずゆっくりのスローリズムが広告表現の主流を占めたことだろう。
 大賞は、コムサデモードのブランドイメージ広告。日本の四季がシンボリックに表現されている名作中の名作である伝統の花札の2カット(春の桜、初夏の菖蒲)をアレンジして何の術もなく広告に借用した大胆不敵な手法には、誰も文句の付けようもない。先手必勝という感じだ。この手を使われると二番煎の後追いは通用しない。それくらい印象が強烈だ。和の心、和の感性をもって日本の洋服をクリエートするファイブフォックスの優れた広告表現といえよう。さすがに満票を集めた。
 第1部門の金賞の帝人の「快適同窓会」は、テレビCMの手法を使ったユーモア広告。7人7様の欠伸の合唱が面白い。第2部門金賞の御幸毛織の「お店で会いましょう」は、メンズ素材を使ったレディスブランドの広告で、凛々しくて女らしい服のイメージを巧みにドラマチックに表現している。
 第3部門金賞の八木通商「ポールフランク」の展示会広告は、サルのアイキャッチャーを全面に扱ったポスター的なしゃれた表現が成功している。
 第4部門金賞の東レの「介護シリーズ」は、快適4素材を訴えた優れたインフォーマティブ広告。ほのぼのとしたユーモラスなイラストとのハーモニーが実にいい。
 第5部門金賞のイトキンの「MKミッシェルクラン」は、販売の現場のホットな情報をリアルタイムで立体的に伝える取材記事スタイルの広告として、媒体特性を生かした流通広告となっている。
 第6部門金賞のフォルムアイの突き出し広告は、犬を主役にして目を引きつけ、セールスポイントをしっかり訴え、小スペースを実にうまく使いこなしている。
 第7部門金賞のエス企画の「ソフピタッ」は、その商品特性をユーモアタッチで巧みに表現している。

大賞 ファイブフォックス(全7段4色カラー)
 
第1部門(合繊、紡績、加工、機屋テキスタイル卸ほか)
金賞 帝人(全15段)
銀賞 小松精練(全15段)
銅賞 瀧定大阪(全5段)
奨励賞 帝人(全15段)
奨励賞 旭化成(全7段)
第2部門(アパレル、服飾グッズ、呉服インテリア、リビングほか)
金賞 御幸毛織(全15段)
銀賞 ユアーズアーミー(全5段)
銀賞 タカヤ商事(全15段)
銅賞 ワールド(全15段4色カラー)
銅賞 リーガルコーポレーション(全15段2色)
奨励賞 デサント(全15段4色カラー)
奨励賞 ピエールバルマン(全15段4色カラー)
奨励賞 ピエール・カルダンジャパン(全10段)
奨励賞 オンワード樫山(全30段4色カラー)
第3部門(小売流通、商社、通販マネキン、店舗、補修ほか)
金賞 八木通商(全15段4色カラー)
銀賞 ユナイテッドアローズ(全10段)
銅賞 東京ますいわ屋(全5段)
奨励賞 松屋(全15段)
奨励賞 西武百貨店(全5段)
奨励賞 阪急ファイブ(全5段)
第4部門(シリーズ広告各産業・業種共通)
金賞 東レ(全15段3回)
銀賞 ポロクラブジャパン(全10段6回)
銅賞 東洋紡績(全5段3回2色)
第5部門(記事体広告各産業・業種共通)
金賞 イトキン(全7段8回)
銀賞 さが美(全15段2回)
奨励賞 杉野学園(全15段3回)
奨励賞 レリアン(全15段2回、全7段)
第6部門(小型広告各産業・業種共通)
金賞 フォルムアイ(突き出し5回)
銀賞 一宮地場産業ファッションデザインセンター(全5段)
銅賞 ドッグプロジェクト(半5段)
奨励賞 イスト(半5段)
奨励賞 栗原(半5段)
奨励賞 オフィスミツキ(突き出し2回)
奨励賞 シーコム(半5段)
第7部門(産業、サービス、情報出版、学校、団体ほか)
金賞 エス企画(全5段)
銀賞 ディック・ブルーナ・ジャパン(全5段)
銅賞 HONMONO TOWN(全5段)
奨励賞 ディー・エイチ・エル・ジャパン(全5段)
奨励賞 日本ユニシス(全5段)
特別賞 ファイブフォックス(全15段4色カラー)
特別賞 日本アパレル産業協会(全15段2回)

2000年度 繊研流通広告賞

2001/06/18

2000年度(第18回)繊研流通広告賞大賞・各部門入賞広告紹介

 2000年度(第18回)繊研流通広告賞の審査会が5月9日開かれ、大賞以下各部門の優秀広告を選定しました。今回の審査は、7部門別に、それぞれ優秀広告を審査、各部門の金賞のなかから大賞を選びました。(繊研新聞社・繊研流通広告賞事務局)

 「二〇〇〇年度繊研流通広告賞(広告主参加)」は二〇〇〇年四月~二〇〇一年三月の一年間に発行された繊研新聞本紙、同第二部に掲載された広告(記事広告、カラー、二色広告、雑報広告を含む)五千九百余点すべてを対象に審査しました。
 審査委員と事務局担当者による推薦、選考により、各部門で合計五百九十点に絞り、五月九日の第一次審査、続く本審査会で各部門の金賞をはじめ入賞を決定しました。全部門を通しての大賞は金賞の七点から選定しました。
 なお、部門別候補広告の点数は、第一部門が百点、第二部門が二百十点、第三部門が五十点、第四部門が三十八点、第六部門が九十五点でした。
     ◇
 第一次審査、本審査は次の審査委員の方々により行われました。
 審査委員長=清水啓一郎氏(コピーライター、ADC会員、東京コピーライターズクラブ会員)、審査副委員長=浅葉克己氏(アートディレクター、ADC会員、浅葉デザイン室代表)、コーディネーター=仁瓶賢三氏(ネットワーク代表)、委員=長谷川功氏(長谷川企画代表)、大澤保夫氏(前東京ロマン宣伝部長)、目黒由紀子氏(サンモトヤマ宣伝広報室長)、山縣哲氏(18度C代表)、坂井正志氏(オギツ常務取締役)、永田数人氏(キングマーケティング部次長兼広告宣伝課長)、原亮一氏(東京ブラウス商品開発部担当課長兼プレス担当)

総評 清水啓一郎審査委員長
言葉の力、映像の力 多様性が増している流通広告

 生活のなかのデジタルなメディアの拡大によって、言葉のあり方、特に紙に印刷された情報のあり方は、新しい次元に入っていることが指摘されています。
 今回の審査を終えて感じることは、企業が提供する情報のうち、ある部分はインターネットに任せて、言葉にしろ映像にしろ、新聞広告という形で伝えるにふさわしい情報を巧みに処理したものが、やはり選ばれたということです。

◎大賞
 大賞=三陽商会の広告は、企業が目指す方向を明確に定着させたものとして極めて完成度の高い表現です。四点それぞれのコピー、視覚表現がよく練り上げられ、シリーズとしてのまとまりも見事だと思いました。

◎第一部門
 金賞=ユニチカファイバーは、女性の姿態と型紙のようなパターンの重ね合わせによる新鮮なアピールが強く印象に残りました。
 銀賞=クラボウは、記事広告十段の下に普通の広告五段が掲載されたものですが、五段の広告に使われている力強いビジュアル・シンボルが全体を締めくくった鮮やかさが高く評価されました。
 銅賞=クラレは、紙面の白黒を光の明暗に置き換えるアイデアによって、商品の特徴を分かりやすく表現していました。

◎第二部門
 金賞=レナウン、銀賞=ワールドは、ともにレベルの高い写真表現が強い訴求力に結びついたものです。CG(コンピューター・グラフィック)の発展で何でもつくり出せるだけに、新鮮な映像の創造は逆に難しくなっていますが、この入賞作はカメラの個人的なまなざしが普遍性を獲得したといえるでしょう。
 銅賞=ワコールは、これとは対照的に、様々な女性の顔を軽やかなイラストレーションで描いた楽しい表現。写真とイラストレーションという、視覚表現の代表的な方法を巧みに利用した表現が顔を並べる結果となりました。

◎第三部門
 金賞=ルミネは、ユーモアタッチのキャッチフレーズと、それに雰囲気を合わせたイラストレーションの組み合わせが強い訴求力を生み出していました。
 銀賞=三喜商事は、極端に細長くデフォルメされた女性たちと、デフォルメされない女性との組み合わせによるインパクトのある映像。
 銅賞=オンリーは、アルファベット四文字をデザイン化したものと英文スローガンの組み合わせによって明快なメッセージがくみ取れる表現。組み合わせの技は三者三様です。  ◎第四部門 金賞=東レは、数字をフックにして、いろいろな素材にまつわるストーリーをドラマチックな写真とともに表現した全十五段シリーズ。
 銀賞=クラウンファンシーグッヅは、一面に掲載された矢印入りの全五段を後の全十五段への導入とする構成を持ったシリーズ。
 銅賞=ポロクラブは、大きくレイアウトされたロゴタイプと美しい写真表現が印象に残る全十段シリーズ。いずれも、一点の広告表現のパワーとシリーズ全体のアンサンブルを巧みに併せ持っている点で共通していました。

◎第五部門
 金賞のカネボウ合繊は、スペースを斜めに切って上半分を記事体表現、下半分をグラフィック表現にするという、思い切ったデザインの全五段を見開きで使った大変な意欲作です。
 銀賞=イトキンは、シンプルで緊密な構成によってブランド名を印象づけながら、ブランドの詳しい情報を伝えることに成功していると思われます。
 銅賞=シティヒルは、多くの情報を大胆なデザイン処理でまとめた力技が注目されました。

◎第六部門
 金賞のフランスベッドは、手際の良さで、とても半五段とは思えないほどの余裕を感じさせる秀作です。
 銀賞=栗原は、いろいろな帽子を小さなスペースに二十四個も並べることによって目立つ広告になりましたが、よく見ると、並べ方に細かい配慮がなされています。
 銅賞=三陽商事は、言いたいことがキッチリと伝わる、分かりやすくて力強い表現。文字も線画も何一つ無駄なものやあいまいなものがありません。三作品いずれも、単純なアイデアを基に、丁寧に制作されていました。

◎第七部門
 金賞=ユニパックホールディングは、人物などの具体的なモチーフを出さずに想像力にゆだねた。これが企業誕生広告の類型を抜け出す表現になった最大のカギでしょう。
 銀賞=エス企画は、ダブルミーニングになっているヘッドラインから商品の細かい説明まで抵抗なく読まされてしまう、テクニシャンぶりが印象的。
 銅賞=本屋さんは、連合広告風の形式で四つものことを伝えようとする抜け抜けした表現で、乾いたユーモアさえ感じられました。

選評 浅葉克己審査副委員長
2001年の視点は和心、清魂、洋才

 風水や風穴という言葉が気になりだした。気の流れはどこから来るのか、広告デザインの世界でも、気の流れは重要なことだ。
 それは、広告デザインの表現者が、気をどこから求めているかにもつながっている。
 最近、日本が元気がないのは、「氣」の字の「米」の部分を「メ」に変えたからだ、と韓国の学者から指摘された。そう言えば、日本人の一番大切なものは米だなぁと思った。「気」を「氣」に戻すことはできないものなのだろうか。
 二〇〇一年の浅葉克己の視点を決めた。そのひとつは、和心、清魂、洋才だ。明治のころは和魂、洋才と言われていたが、どうも日本人には魂はない。漢字を創(つく)り出した古代中国にもう一度学びたいという気持ちと、デザインという言葉を創り出した洋とを、和の心でつないでみたいという思いが強い。そんな視点で審査会に臨んだ。
 繊研新聞の審査は七部門で成り立っている。いきなり全ぼうを俯瞰(ふかん)することはできない。各部門から評価は丁寧に進められていく。七部門の評価が定まったところで、一気にグランプリの決定に持っていくという方法だ。映像だけのもの、言葉だけのもの、映像と言葉がみごとに融け合った広告の王道を行くもの。審査員の目は常に風穴を開けたいと思っている。理念に風穴でもいいし、ビジュアルな風穴でもいい。
 グランプリは、三陽商会「女性の方が、過去を忘れるのがうまい。」ほか四作品。新聞媒体を知り尽くしたプロらしい仕上がり、写真とCGをみごとに連動させた強烈な美しいビジョン。さりげないメッセージを融け込ませている。第四部門・シリーズ広告の東レ、素材の探求を続ける理念にはすごいものがある。記録と数字と動きのあるビジョン。難しいところに挑戦した力作五点を評価したい。第五部門・記事体広告は、カネボウ。広告面を三角にしただけで紙面全体に活力が出るのは不思議だ。斜めの構成という方法をもう一度見直してもいいと思った。第七部門・日本ユニバックホールディングの全面広告。パソコンのモニター画面に慣れてきたとはいえ、本を開けて、白い頁が現れる気持ち良さとは何だろう。紙の重さを教えてくれた優作。広告デザインに社会を変える力があるという哲学を信じている。あきらめずに、何度も何度も繰り返すのだ。

審査会場から 仁瓶賢三コーディネーター
豊かな表現。進化する流通広告

 今回の流通広告賞は、事務局によるノミネート作品数で昨年を上回る五百九十点のなかから、審査会で慎重に審査した結果、入賞作品として三十七点が選ばれた。なかでも最大のノミネート数を得た第二部門は、二百十点を数え、同一のテーブルに載りきれず、一度粗選びをして、半数以下に絞り、改めて本審査に入るという作業を必要とした。同部門は一番の激戦区で賞の選考を巡って得票が分散し、最終決定をみるまでに数度の投票が重ねられた。
 大賞は三陽商会の企業広告シリーズ。CGのテクニックを巧みに使ったイラストと女性を引き付ける語りかけるようなソフトなコピーで、広告の受け手もさることながら審査員全員を捕らえて放さなかった秀作である。
 第一部門金賞のユニチカファイバーは、ソリューション型広告の典型。開発素材のインフォーマティブ広告で、モデルとモデルが着ている服の型紙をダブらせたビジュアルと明解な説得コピーが、うまくハーモニーしている。
 第二部門金賞は、レナウンの「レベッカテーラー」のブランドイメージ広告。一枚の写真がすべてを語るノンヴァーバル・コミュニケーション広告の逸品。
 第三部門金賞は、ルミネの買い物カードの広告。ヘタウマの女の子のイラストと幼児っぽい言葉を使ったキャッチコピーが、ほのぼのとした親しみを感じさせる。
 第四部門金賞は、東レの鮮意・スポーツシリーズ全五回で、オリンピック開催中に掲載したもの。それぞれのスポーツの現場をほうふつとさせる、臨場感あふれるリアルなアスリートの写真とシンボリックに具体的な数字をあげて素材の新記録に挑んでいる東レの企業姿勢を披れきした、見ごたえ、読みごたえのある広告。
 第五部門金賞のカネボウ合繊は、全五段見開きをVカットのシンメトリーのレイアウトで分割構成した変則形の記事広告で、それ自体が注目された。
 第六部門金賞のフランスベッドは、サプリメント(栄養補助食品)ブームにあやかり、容器に錠剤の代わりにベッドを入れた「ネムリ・イズ・ビタミン」の広告で、小スペースを巧みに使ったパロディー広告として優れている。
 第七部門金賞は、日本ユニパックホールディングの新会社発足の告知広告。一ページ目は製紙会社らしいニュートラルな白紙で好感がもたれる。

大賞 三陽商会(全15段4回シリーズ)
 
第1部門(合繊、紡績、加工、機屋テキスタイル卸ほか)
金賞 ユニチカファイバー(全15段3回)
銀賞 クラボウ(全5段)
銅賞 クラレ(全15段)
奨励賞 東洋紡(全7段4色カラー)
奨励賞 東洋紡(全15段)
奨励賞 帝人(全15段4色カラー)
第2部門(アパレル、服飾グッズ、呉服インテリア、リビングほか)
金賞 レナウン(全15段4色カラー)
銀賞 ワールド(全15段4色カラー)
銅賞 ワコール(全15段)
奨励賞 ファイブフォックス(30段見開き4色カラー)
奨励賞 ミズノ(全10段)
第3部門(小売流通、商社、通販マネキン、店装、補修ほか)
金賞 ルミネ(全10段)
銀賞 三喜商事(全15段)
銅賞 オンリー(全15段)
奨励賞 伊勢丹(全15段)
奨励賞 もくもく(全15段4色カラー)
第4部門(シリーズ広告各産業・業種共通)
金賞 東レ(全15段5回)
銀賞 クラウンファンシーグッヅ(全5段+全15段5回)
銅賞 ポロクラブ(全10段6回)
奨励賞 伊藤忠ファッションシステム(全15段3回)
奨励賞 小松精練(全5段12回)
第5部門(記事体広告各産業・業種共通)
金賞 カネボウ合繊(全5段見開き)
銀賞 イトキン(全15段)
銅賞 シティーヒル(30段見開き)
奨励賞 ティンカーベル(全15段)
奨励賞 東映(全5段)
第6部門(小型広告各産業・業種共通)
金賞 フランスベッド(半5段)
銀賞 栗原(半5段)
銅賞 三陽商事(半5段)
奨励賞 久保商事(半5段)
奨励賞 バジル(突出し)
第7部門(産業、サービス、情報出版、学校、団体ほか)
金賞 日本ユニパックホールディング(全15段4色カラー)
銀賞 エス企画(全5段)
銅賞 本屋さん(全5段)
奨励賞 プルミエールビジョン(全5段見開き)
奨励賞 大阪ラック(全7段4色カラー)

1999年度繊研賞受賞者

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2000/06/27

1999年度(第17回)繊研流通広告賞

 1999年度(第17回)繊研流通広告賞の審査会が5月25日開かれ、大賞以下各部門の優秀広告を選定しました。今回の審査は、昨年度に改定した7部門別にそれぞれ優秀広告を審査、各部門の金賞の中から大賞を選びました。(繊研新聞社・繊研流通広告賞事務局)

総評 清水啓一郎・審査委員長
 時代を切り開く意欲的な試み

 急激な変化が世の中の様々な面で進行する時代は、先を見通すことが極めて難しい時代です。変化は、いつの時代にもつきものですが、社会構造そのものの変化、各分野の変化の度合いの大きさなど、現代ほど激しい時代は少ないでしょう。光の見えない大不透明時代ということができると思われます。
 しかし、広告の表現はある程度の見通しを立てることなしでは、強いものになり得ません。今回の繊研流通広告賞の入賞作には、時代を切り開く様々な意欲的な試みが見られました。

大賞
=フランドル。人材募集がテーマですが、単なる募集広告のレベルを超えて、企業の文化を感じさせる高度な企業広告にまで昇華されています。いや、そう言ってしまっては正確でないかもしれません。この不透明な時代にあっては、企業文化を語ることなしに企業のアイデンティティーを明らかにすることは困難ですから、企業文化を表現し得たことによって強い募集広告になった、と言うべきでしょう。大賞にふさわしい骨太な広告だと思います。

第一部門
金賞=カネボウ合繊は、千切った新聞記事を広告の一部分として巧みに合成することに成功。
銀賞=クラボウは、和歌と平安時代風の人物のイラストレーションによるバランスの良い構成。
銅賞=帝人は、ナチュラル感を印象づける雰囲気あふれる写真。それぞれ表現の方向は異なりますが、視覚表現にはっきりしたアイデアがあり、そのアイデアを定着させる技術が優れている点で共通しています。

第二部門
金賞=タカヤ商事は、ジーンズを脱ぎ捨てた瞬間のスナップショット風。
銀賞=三陽商会は、髪の毛が顔にかかるポートレート風。
銅賞=インパクト21は、ナスカの地上絵のドキュメンタリー風。期せずして、写真の代表的な方法論を利用した表現が顔をそろえました。いずれも、仕上げの良さが広告にパワーを生み出しました。

第三部門
金賞=ファーストリテイリング。写真やイラストといった視覚的な要素を排して、文字だけによるノングラフィック表現の強いインパクト。
銀賞=エス企画。ヘッドラインと単純なビジュアル表現との組み合わせで、商品の特性をパッと分からせてしまう手際の良さ。
銅賞=レリアン。企業の考え方を伝える上で、単純な形のシンボルを持つことの強み。「シンプル・イズ・ベスト」の表現ばかりが、選ばれる結果となりました。

第四部門
金賞=東洋紡は、ユーモラスなイラストを使った全五段広告を毎月で六回出稿したもの。
銀賞=東レは、大きな写真による全十五段広告を四回掲載。
銅賞=小松精練は、細かく説明したボディーコピーが特色の全五段広告の七回シリーズ。いずれも、一点一点の表現の内容とシリーズ全体の構成を考慮して選ばれた入賞作です。

第五部門
金賞=さきぞう。思わず読んでみたくなるような小見出しと、読みやすいレイアウト。
銀賞=ゼビオ。大きな写真と小さな写真、角版写真と切り抜き写真を巧みに組み合わせたダイナミックなデザイン。
銅賞=オッジインターナショナル。様々な要素を紹介しながら、雑然とした感じにならないようにスッキリまとめた技術。どれをとっても、優れた記事体広告のお手本のような表現です。

第六部門
金賞=あぶち。突き出しという小さな小さなスペースに込められた、細かい配慮の輝き。
銀賞=ノグチファブリック。研ぎ澄まされたナイフでスパッと切ったような鋭いデザイン。
銅賞=オッジインターナショナル。全一段でも、これくらい目立たせることができるという証明。小さなスペースが、アイデア次第で生きることを実感します。

第七部門
金賞=WGSN。インターネットによる情報提供を前提にした新しい表現。今後この方向のものは増えるでしょう。
銀賞=京都スコープ会。全十五段を横長に使った大胆なデザインが目を引きました。
銅賞=ドレスメーカー学院。よく考えられたヘッドラインと質の高い写真との結びつきが、魅力ある世界をつくり出しました。
 確実な進化を示す流通広告の今後が、ますます楽しみです。

選評 浅葉克己・審査副委員長
 FBがますます盛況になる予感

 人間は、カタチを変えて物事の本質を伝えてゆく。カタチを変えてのところに広告デザインの本質が見え隠れしている。
 広告デザインは、われわれが知りたいこと、伝えたいこと、残したいことが全面に表現されている。
 大賞は、フランドル。凛(りん)とした女性にかなうものなし。正座した女性は何をしているのだろうか。お茶をいただいているのだろうか。書をしたためているのだろうか。「作法はルールより美しい」という言葉に、精神性の高さを読みとることができる。
 第一部門金賞は、カネボウ合繊。全面広告の紙面を生かした、新聞記事と広告面を見事にミックスした発想が評価された。新聞記事でたっぷり内容を読ませてくれる。大賞に僅差で破れた。
 第二部門金賞は、タカヤ商事。美しい足とジーンズの表現を一歩進めた、ビジュアル・ショックが評価された。
 第三部門金賞は、ユニクロの求人広告。一般紙でもテレビ媒体でも、今、一番勢いのある広告表現をしているユニクロに、その残像が評価された。
 第四部門金賞は、東洋紡のシリーズ広告。ユニークなイラストレーションが、「抗菌防臭のお話」「消臭のお話」「防カビのお話」「防ダニのお話」「スキンケアのお話」「抗菌のお話」――と見事にリレーして、分かりやすいユーモラスな表現が評価された。
 第五部門金賞は、さきぞうの記事体広告。京都・木屋町ストーリー、魁(さきがけ)の都・先駈けの道。雑誌のエディトリアル風ながら、写真とイラストレーションのバランスもよく、文字数も多いが、しっかり読ませる工夫が評価された。
 第六部門金賞は、あぶちの突出し広告。手書き文字を生かした、手作りの暖かみのある広告群が評価された。
 第七部門金賞は、WGSN。この部門は産業、サービス、情報、出版、学校、団体と、表現が豊かなものが多かったが、時代の流れはインターネットか。女性の背中のアクセサリーがマウスと、しゃれているところが評価された。
 部門数も増えたし、三十八個の作品が評価され受賞したことは、ファッションビジネスがますます盛況になる予感がする。うっかりすると、吉永小百合さんにふろしきに包まれて、おいていかれたりしないように注意したいものだ。

審査会場から 仁瓶賢三・コーディネーター
 新しい時代を感じさせる何かが

 今回の審査会は、新たに三人の審査委員が加わったこともあって、前回以上に時間をかけた熱心な審査がなされ、大いに盛り上がった。ノミネート作品五百六十点から、入賞作品として三十八点が選ばれた。
 大賞のフランドルの「作法はルールより美しい」は、日本人の美意識に訴える、和服で正座した女性の後ろ姿の写真のアップと左右いっぱいに使った社名のロゴタイプでビジュアル構成し、企業文化を共に育てる人を募集するという、ハートに訴えるボディーコピーにつなげる表現は素晴らしい。
 金賞は、第一部門がカネボウ合繊。一つの広告スペースの中に広告スタイルと記事スタイルを巧みに合体させ、センセーショナルに新素材をクローズアップ。第二部門のタカヤ商事は、美しい素足の色気と、足下にさりげなくずり落ちたジーンズのショッキングなビジュアル表現で、うわさのあしながジーンズに期待をもたせている。第三部門のユニクロの「求人広告。」は、文字だけで読ませるノングラフィック広告の典型的成功例。第四部門の東洋紡は、コミカルタッチのイラストとキャッチコピーが光る。第五部門のさきぞうは、歴史物語でちりめん洋服に厚みをもたせた。第六部門のあぶちは、自分たちの言葉で語る手づくり感覚が新鮮。第七部門のWGSNは、女性の美しい背中にパソコンのマウスをぶら下げているシーンで、IT革命時代のいまをシンボライズしている。
 今回の入賞作品を通じていえることは、全体的におとなしめであるが、二十一世紀を前にして、流通広告に新しい時代の息吹を感じさせる何かが芽吹きはじめている。次回が楽しみになってきた。

大賞 フランドル(3月27日・15段カラー)
 
 第一部門(合繊メーカーなど)
金賞=カネボウ合繊(3月22日・15段2色)
銀賞=クラボウ(3月9日・5段)
銅賞=帝人1月4日・15段カラー)
第二部門(アパレルなど)
金賞=タカヤ商事(9月17日・15段)
銀賞=三陽商会(9月1日・15段2色)
銅賞=インパクト21(8月2日・15段カラー)
第三部門(小売流通など)
金賞=ファーストリテイリング(1月11日・15段2色)
銀賞=エス企画(11月12日・10段2色)
銅賞=レリアン(3月29日・7段)
第四部門(シリーズ広告)
金賞=東洋紡(4月26日、5月20日、6月8日、7月22日、8月23日、9月24日・各5段)
銀賞=東レ(10月19日、11月1日、11月16日、11月22日・各15段)
銀賞=小松精練(4月15日、7月22日、9月17日、10月21日、11月18日、12月20日、2月24日・各5段)
第五部門(記事広告)
金賞=さきぞう(6月28日、9月27日、1月7日・15段)
銀賞=ゼビオ(11月4日・30段)
銅賞=オッジインターナショナル(8月2日・15段)
第六部門(小型広告)
金賞=あぶち(毎週の突き出し広告シリーズ)
銀賞=ノグチファブリック(8月20日・半5段)
銅賞=オッジインターナショナル(2月24日、3月1日・全1段2色)
第七部門(産業広告など)
金賞=ワースグローバルスタイルネットワーク(1月14日・7段)
銀賞=京都スコープ会(5月10日・15段)
銅賞=ドレスメーカー学院(1月1日・15段カラー)
部門別奨励賞
第一部門=ユニチカ(3月22日・15段)、小松精練(3月22日・15段)、YKK(5月24日・5段)
第二部門=レナウンルック(1月1日・15段カラー)、テイジンエヴォルテ(8月26日・15段カラー)
第三部門=フォルムアイ(9月1日・15段)、千趣会(7月9日・5段)
第四部門=ポロクラブ(8月3日、10月4日、12月7日、3月6日・10段)
第五部門=リバティジャパン(1月27日・15段)、イトキン(1月31日15段)
第六部門=パブロクリエーション(11月26日・半5段)、ジョンブル(3月17・半5段)、東商(突き出しシリーズ)、ハスキー(9月9日・記事中)
第七部門=島精機製作所(9月1日・15段)、スタイリングオフィスコア(6月25日・5段)、ユナイテッドメディア(1月11日・5段)

1998年度 繊研流通広告賞

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1999/06/07

1998年度(第16回)繊研流通広告賞

 一九九八年度(第十六回)繊研流通広告賞の審査会が五月十一日行われ、大賞以下各部門の優秀広告を選定しました。
 今回から選考の部門内容を改めると同時に、従来の五部門から七部門に増やしました。改定の大きな点は、これまでのスペース別選考から業種・業態別広告での審査に重点を置いたことです。
 新しい部門設定と内容は次の通りです。
 第一部門(合繊、紡績、加工、機屋、産地、テキスタイル卸、関連他)▽第二部門(アパレル、服飾グッズ、インテリア、リビング、関連他)▽第三部門(小売流通、商社、関連他)▽第四部門(シリーズ広告)▽第五部門(記事広告)▽第六部門(小型広告)▽第七部門(産業広告、サービス、情報、出版)
 繊研新聞社 繊研流通広告賞事務局

総評 清水啓一郎・審査委員長
 流通広告の広がりと深まり示す

 今年は、繊研流通広告賞で大きな改革が行われました。審査の際の部門の分け方が、従来のスペースの大小を中心にした物理的なものから、クライアントの業容を中心にした内容重視のものに変わったことを、まず挙げなければなりません。
 これは、広告主の業容が異なれば広告の課題も異なるのが当然であり、その部分に十分に目を向けなければならないという考え方からきたものです。
 同時に、大きなスペースの広告だけでなく小さなスペースの広告にも光を当てるために、小型広告の部門が新設されました。
 こうした改革に伴って、流通広告を多角的に評価するため、審査に当たっては三つの視点に留意していただくようお願いいたしました。流通広告としての戦略性、出稿の形態やメディア・ミックスなど媒体利用の企画性、コピーやデザインなど表現の創造性――の三つです。
     ◇
大賞
=軽くて涼しいスーツがテーマの御幸毛織。コピーがシンプル、視覚表現もシンプル。それでいて「暑くても暑くても、脱げない皆さまへ」というヘッドラインは、「頑張っても頑張っても、先が見えない皆さまへ」と読みかえて受け取りたくなり、古風な映像は現代の裏側を考えさせる。そんな巧みさが審査員の共感を呼んだようです。時代の隠喩(いんゆ)になっている表現は、大賞にふさわしい振りの大きさだと思われます。

第一部門(合繊、紡績、テキスタイル、加工他)
金賞=省エネ温度対応シャツのエコシス28度Cは写真。
銀賞=繊維製品リサイクルの東レはイラスト。
銅賞=テトロンはグラフィックパターン。それぞれ手法は違いますが、強い視覚表現が訴求点に結びついていることでは共通しています。

第二部門(アパレル、服飾グッズ、インテリア他)
金賞=リーバイスは、ボディーコピーの組み方を視覚化しました。
銀賞=ラピーヌは、写真のテーストが目をひきます。
銅賞=トリンプは、キャッチフレーズを看板仕立てにしています。こうしたビジュアルなアイデアが、ひと味違うアピールをつくり出していました。

第三部門(小売流通、商社他)
=審査員のディスカッションによって、金銀銅いずれも該当作なしという結果になりました。これまでの繊研流通広告賞を振り返っても、こんなことはなかったはずです。たいへん残念ではありますが、やむを得ません。来年度以降に期待したいということです。

第四部門(シリーズ広告、各業種・産業共通)
金賞=ポロクラブは、ロゴタイプを効果的に活用。
銀賞=キャラ・オ・クルスは、写真を中心に構成。
銅賞=ディーゼルは、レイアウト・フォーマットを統一。シリーズの組み立て方はさまざまですが、いずれも、よく配慮されたつくり方が評価されたようです。

第五部門(記事広告、各業種・産業共通)
金賞=デサントは、質の高い写真を使った読みやすいレイアウトで、紙面を生き生きとさせていました。
銀賞=シティーヒルは、視覚的な材料を中央に集めた意欲的なデザインが魅力です。
銅賞=さきぞうは、内容にふさわしい調和のとれたレイアウトが注目されました。

第六部門(小型広告、各業種・産業共通)
金賞=サンワは、絞り込んだ訴求ポイントを強調。
銀賞=SBAは、目をひく視覚要素で勝負。
銅賞=京都印刷は、漢字四文字の造形力を利用。小さなスペースを生かすには、思い切った割り切りが大切であることを入賞作は物語っているのではないでしょうか。

第七部門(産業広告、サービス、出版他)
金賞=ACCSは、アパレル専門店POSシステムの意味性を、ヌードという映像に大胆に転換。
銀賞=宝島社は、意表をつく写真表現を創造。
銅賞=東京アートは、商品性格の適切な伝達に成功。

 このような各部門の入賞作を眺めてみると、流通広告の広がりと深まりが確実に進んでいることを実感します。

選評 浅葉克己・審査副委員長
 「魅力」をひとつの基準に

 広告がどんな方向へすすんでゆくのか、すすんでゆかねばならぬのか判断がむずかしい時期にきている。審査会というのは、その日の勢いもあるので、スポーツ試合の当日のような感じもする。応募された多くの作品を前に、瞬時に判断が迫られる。一本のモノサシでは計り切れないものがあるのだ。広告というのは言葉と映像の溶け込み合いだと常々思っているし、この二つの結びつきが輝く別の世界を生み出すところに広告の持つパワーが潜んでいるのだ。
 僕は今回のモノサシのひとつを、「魅力的なもの」と決めた。魅力あるものしか二十一世紀に残っていかぬような気がしたからだ。
 総評としては、やさしく、しなやかで、芯のあるものが受賞した。評価され、受賞した作品だけが時代の証明として残ってゆくと思うと、審査するという意味の大切さと責任が審査員全員の背にのしかかってくるのだ。
 大賞の御幸毛織は、「暑くても暑くても、脱げない皆さまへ」と語りかける手紙の書き出しのような語り口と、今の日本人が失ってしまったもの――行水と蚊帳の中からの視点――は予選の段階から心を打った。そしてスルスルと大賞に輝いた。
 第一部門金賞の日清紡、帝人は、二十八度Cという温度の設定のコンセプトのシャツ。沸騰するヤカンの映像が、「暑いから、シャツを着よう」という言葉を引き立てている。
 第二部門金賞のリーバイス。百二十五年の歴史が、Gパンの中に、タイポグラフィックに織り込められていて、視覚的に強く切れのある広告に仕上がっている。銀賞のラピーヌは、写真家の視点を生かした見開き三十段。「モダンで、行きます」と主張する思想が、気持ちよく伝わってくる。
 第三部門は金、銀、銅の該当作品なし。十五段という大きなスペースに一枚の写真とロゴタイプだけでは、ひとつ伝わってこないものがある。
 第四部門金賞はポロクラブ。商品写真とポロクラブのロゴだけのシリーズ広告だが、製品の良さが強く印象づけられた。
 第五部門。情報量の多さを、いかに視覚化するかが大きなテーマだ。
 第六部門。小型広告にこそ広告の原点がある。
 第七部門。この部門には、異質な思い切った表現が見られた。
 今年から七部門に変わって、きめ細かい審査ができた。表彰状も浅葉克己のデザインで新しくなった。繊研流通広告賞も次の段階に入ったことを示す。

審査会場から 仁瓶賢三・コーディネーター
 時代とともに流通広告は進化している

 第十六回目に当たる今回の繊研流通広告賞の審査会は、小林委員長療養のため、清水啓一郎新委員長のもとに行われました。今回から、市場を取り巻く状況、流通広告を取り巻く状況が大きく変化していることから、広告賞の部門別枠組みを従来のスペース中心から業態別に思い切って改定し、審査基準も戦略性、企画性、表現性の三つの視点による評価基準を導入、また新たに審査委員の増員もあって、審査会場はかつてなく新鮮で、緊張した雰囲気が張りつめていました。選考経過は、事務局審査でノミネートされた四百六十点の対象作品を慎重に審査した結果、今年度の入賞作品として最終的に三十四点が選ばれました。
 大賞は、御幸毛織の「暑くても暑くても、脱げない皆様へ」で、日本の夏の涼しさを感じさせるシズル広告表現。言葉に表せないアナログ的写真の持つリアリティーが理屈抜きに見る人をとらえるところが心にくい。コピーはストレートですが、自信に満ちた製品説明で説得力のある素晴らしい広告でした。
 部門賞で印象に残ったのは、時代を反映した優れた作品が数ある中で、第三部門に金、銀、銅三賞該当作品がなかったことで、とても残念です。この部門の広告クライアントの今後の努力と奮起を期待したいと思います。また、今回から設けられた第六部門の小型広告は小スペースの有効利用を推奨するもので、今後の発展が楽しみです。

大賞 御幸毛織(5月13日・15段)
 
第一部門(合繊メーカーなど)
金賞=日清紡・帝人(3月17日・15段)
銀賞=東レ(3月24日・15段)
銅賞=東レ・帝人(4月1日・15段)
第二部門(アパレルなど)
金賞=リーバイス(5月20日・15段カラー)
銀賞=ラピーヌ(10月19日・30段カラー)
銅賞=トリンプ・インターナショナル・ジャパン(4月10日・15段)
第三部門(小売流通など)
本賞入選なし
第四部門(シリーズ広告)
金賞=ポロクラブ(4月12日・5段・10段)
銀賞=レリアン(5月18日、9月7日、11月10日、3月31日・10段カラー)
銅賞=パンドラ(9月3日、4日、8日、10月6日・5段)
第五部門(記事広告)
金賞=デサント(2月22日・30段)
銀賞=シティーヒル(3月30日・15段)
銅賞=さきぞう(3月31日・15段)
第六部門(小型広告)
金賞=サンワ(3月30日・半5段)
銀賞=SBA(3月3日・半5段)
銅賞=京都印刷(8月27日・半5段)
第七部門(産業広告など)
金賞=ACCS(9月14日・15段・5段)
銀賞=宝島社(2月23日・5段)
銅賞=東京アート(11月30日・15段)
部門別奨励賞
第一部門=クラボウ(1月27日・5段)、東洋紡・三菱商事(6月4日・5段)、カネボウ合繊(9月3日・5段)
第二部門=三陽商会(10月14日・15段)、ファイブフォックス(3月30日・15段)、デサント(1月13日・15段)
第三部門=伊藤忠商事(GUESS3月30日・15段)、もくもく(1月1日・15段カラー)、伊藤忠商事(キャサリンハムネット1月4日・15段)
第四部門=ブラックフォーマル共同キャンペーン委員会(11月19日、27日、12月16日・15段)
第五部門=ティンカーベル(2月22日・15段)
第六部門=川島織物(1月8日・半5段)、ブラザー工業(7月22日・半5段)
第七部門=プライムコーポレーション(1月18日・5段)、杉野学園・ドレメ(2月22日・15段)

1997年 繊研流通広告賞

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1998/06/05

97年度第15回繊研流通広告賞 大賞にワコール
 繊研新聞社はこのほど「九七年度繊研流通広告賞」(広告主参加)の審査会を開き、優秀作品を選定しました。今回の選考は、九七年四月一日から九八年三月三十一日までの一年間に、繊研新聞本紙、第二部に掲載された純広告、記事広告(いずれも二色、カラーを含む)を審査対象に、清水啓一郎氏(コピーライター)、浅葉克己氏(アートディレクター)ら七人で構成する審査委員会で行いました。

大賞 ワコール(97年9月11日付全10段)
 
第一部門(全8段以上)
金賞=ボブソン(97年12月19日付全15段)
銀賞=三陽商会(98年2月19日付全15段)
銅賞=東京婦人子供服工業組合(97年10月20日付全30段2色)
第二部門(全1~7段)
金賞=三陽商会(97年11月14日付全7段)
銀賞=日本ボディファッション協会(97年9月9日付全7段)
銅賞=ジョイックスコーポレーション(97年5月30日付全5段)
第三部門(シリーズ広告)
金賞=東京ブラウス(97年8月19日、8月26日、9月2日、9月9日、9月16日、9月30日、10月7日、10月14日、10月21日、10月28日、11月4日、11月11日付全1段12回シリーズ)
銀賞=あぶち(97年7月28日~98年3月26日付2段突き出し、63回シリーズ)▽銅賞=サンメリー(97年5月26日、7月28日、9月29日、11月25日付全5段4回シリーズ)
第四部門(記事広告)
金賞=エスカーダジャパン(97年8月11日付全30段)
銀賞=ティンカーベル(97年8月19日付全15段)
銅賞=イトキン(97年10月30日付全15段)
第五部門(産業広告)
金賞=日立製作所(98年3月16日付全5段)
銀賞=日本アイビーエム(97年6月6日付全15段)
銅賞=プレシャススリーエフ(97年10月2日付全5段)
部門別奨励賞
 第一部門=三陽商会(98年1月1日付全30段)、御幸毛織(97年5月22日付全15段)
 第二部門=ユアーズアーミー(98年2月23日付全5段)、御幸毛織(97年10月16日付全5段)
 第三部門=ユニチカ(97年8月27日、11月27日、98年1月13日、2月2日、3月25日付全15段5回シリーズ)、インパクト21(97年12月24日、98年1月13日、1月28日、2月10日、2月25日、3月11日、3月25日付全7段7回シリーズ)
 第四部門=大沢商会(97年9月24日付全15段)、ニュージーランド羊毛公社(97年10月28日付全15段)、伊藤忠商事(98年1月30日付全15段)
 第五部門=コクヨ(98年1月7日付全5段)、住商エレクトロニクス(97年9月5日付全15段)
特別賞
カネボウ合繊(97年5月29日付全7段×2、2色)、東洋紡績(97年12月8日、12月9日、12月10日、12月11日付全7段、全15段4回シリーズ)

1996年 繊研流通広告賞

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1997/05/19

96年度第14回繊研流通広告賞 大賞に東京婦人子工組
 繊研新聞社はこのほど、「九六年度繊研流通広告賞」(広告主参加)の審査会を開き、優秀作品を選定しました。今回の選考は、九六年四月一日~九七年三月三十一日までの一年間に、繊研新聞本紙、第二部に掲載された全一段以上の純広告、記事広告(いずれも二色、カラーを含む)を審査対象に、小林太三郎委員長(早稲田大学名誉教授、日本広告学会会長)、清水啓一郎副委員長(コピーライター)、浅葉克己副委員長(アートディレクター)ら九人で構成する審査委員会で行いました。

大賞 東京婦人子供服工業組合(96年10月14日付30段2色)
 
第一部門(全8段以上)
金賞・リーバイストラウスジャパン(96年6月21日付全15段4色)
銀賞・ナイキジャパン(96年8月7日付全15段)
銅賞・ムーンバット(96年6月28日付全15段)
第二部門(全1~7段)
金賞・エス企画(96年10月8日付全5段2色)
銀賞・デビッド(96年5月21日付全7段)
銅賞・倉敷紡績(97年3月13日付全5段)
第三部門(シリーズ広告)
金賞・ダイキン工業(96年11月13日、11月19日付全15段2回シリーズ)
銀賞・トライアルカンパニー(97年3月3日、3月4日、3月5日、3月7日付全15段4回シリーズ1色、2色)
銅賞・レナウン(96年4月26日、9月6日、9月27日、10月25日、97年3月7日付30段5回シリーズ)
第四部門(記事広告)
金賞・康貿易商事(97年2月7日付全15段2色)
銀賞・ベネトングループジャパン(96年7月31日付全15段)
銅賞・レナウン(96年6月12日付30段)
第五部門(産業広告)
金賞・クボタセキュリティ(96年6月17日付全5段)
銀賞・JUKI(96年12月13日付全15段)
銅賞・バルダン(97年3月31日付全15段)
部門別奨励賞
第一部門=伊藤忠商事(97年3月31日付30段)、ジョイックスコーポレーション(96年5月20日付全15段)
第二部門=クラレ(96年7月5日付全5段)、CHOYA(96年8月14日付全5段)、アサヒコーポレーション(97年2月7日付全5段)
第三部門=ポイントアップ(97年3月3日、3月10日、3月17日、3月24日付全5段4回シリーズ)、ムーンバット(96年10月11日、10月14日、10月15日、10月16日、10月17日、10月18日、10月21日付全7段×2、全15段、30段7回シリーズ1色、2色、4色)
第四部門=ダンヒルグループジャパン(96年9月26日付30段4色)、東洋紡績(97年3月17日付30段)
第五部門=日本コパック(96年4月12日付全15段)、オカベマーキングシステム(97年3月18日付全5段)
特別賞
鐘紡(96年5月27日~6月28日付突き出し25回シリーズ)