素材を学ぶ《化学繊維・高機能繊維−2》
キュプラ、リヨセル−パルプから化学的に取り出す
2000/09/12
前号で「レーヨン」を解説したが、木材パルプ中のセルロースを化学的に取り出し、繊維に再生させたセルロース系繊維に「キュプラ」と「リヨセル」がある。
キュプラは「綿花」の種の周りに付着している短繊維(コットンリンター)を原料としており、これを銅アンモニア法と呼ばれる製法によって繊維に再生したものである。日本では、原料の銅の回収技術に優れる旭化成工業だけが生産している。一方、リヨセルはISO(国際標準化機構)及び日本のJIS(日本工業規格)で定めている繊維用語では「誘導体をへずに、直接、セルロースを有機溶剤に溶解させて紡糸して得られるセルロース繊維」とされている。原料は木材パルプで、パルプ中のセルロースをアミンオキサイドと呼ばれる有機溶剤に直接溶解させ、薄い同溶液中で紡糸して繊維に再生したものである。
リヨセルは1988年、英国コートルズ社が試験生産を始めた。1892年のビスコースレーヨンの生産開始からちょうど100年後に、新しいセルロース繊維が誕生したことになる。現在ではオーストリアのレンチング社も生産している。
レーヨンやキュプラがセルロース誘導体を経由して製造するのに対し、リヨセルはセルロースのままで有機溶媒に溶解させて繊維状に再生する。そのためリヨセルはセルロース分子の重合度低下の少ないまま分子が再配向されることになり、綿よりも強度が強くなる。しかし紡糸時に繊維軸方向に分子がきれいに並び過ぎるので、繊維軸方向に繊維が裂ける(フィブリル化)という欠点が生じる。綿と同じ天然セルロース系繊維の「麻」も、綿より強いがフィブリル化を起こしやすい欠点を持つ。
セルロース系繊維の強度とフィブリル化の起こりやすさとの関係を図に示す。リヨセルのフィブリル化の欠点を補うべく、旧大森企画などの考案した方法が酵素減量加工だ。もみ・たたきの操作を織物に加えて繊維にフィブリル化を起こさせ、さらに表面のミクロの毛羽をセルロース分解酵素(セルラーゼなど)で処理して削り取る方法である。この加工によってソフトでしなやかな、いわゆる「テンセルの風合い」(注=「テンセル」はコートルズ社のリヨセルの商標)を発現させられたのである。
(日本化学繊維協会大阪事務局技術グループ担当部長=山崎義一)
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