FB基礎講座/宝飾編
2001/08/07
《ジュエリースタイル−3》
パート・ド・ヴェール−微妙な色調のコンビネーション
アール・ヌーボーを代表する技術のひとつに「パート・ド・ヴェール」があります。これはガラスの分野で顕著で、ドームの工房である時期、盛んに作られました。つい先日まで上野の都美術館で開催されていた、「アール・ヌーボー」展でも一点だけ展示してありました。このパート・ド・ヴェールは、すでに古代メソポタミアやエジプトなどで宝飾品に使われていた記録がありますが、その後断絶。十九世紀の終わりになって、フランスのアンリ・クロが再発見してから広まった技法です。
「パート・ド・ヴェールはフランス語でガラスの練り粉という意味を持つ。粉末にしたガラスを石こう型に詰め、そのまま窯の中で焼き上げる。熔融したガラスが固化してから型を割り、取り出して細部を研磨して仕上げる。部分的に彩色を施す場合は、色ガラス粉を定位置に固着させるために、らん科植物の根から作った植物性の糊料(現在は高分子系の合成糊を使う)を加えて練ったものを型に塗る。糊を加えてペースト状に練ったガラス粉を型に詰めて焼く」と飛騨高山美術館のカタログに紹介されています。日本でもパート・ド・ヴェールの技法を使って、ジュエリーに挑戦している作家が何人かいますが、なかなかジュエリーに適したレベルに達する所まではいっていないようです。ガラスと違い、ジュエリーに用いるガラスは四百ミクロンという微細な粉末を使います。そうすることにより独特のマットでやわらかい質感が表現できるのです。
また、パート・ド・ヴェールの特長のひとつに自由な色使いがあります。微妙な色調のコンビネーションはパート・ド・ヴェールならではの味わいがあり、この色調の再現ができて初めてパート・ド・ヴェールといえるのです。
ここに掲載のパート・ド・ヴェールのブローチは、日本のジュエリー作家、塩島敏彦氏の作品です。彼は十八〜十九世紀のジュエリー技法であった「ピクウェ」を現代によみがえらせました。そしていまパート・ド・ヴェールに挑戦、アンティークジュエリーを超えたレベルで、現代のジュエリーとして十分通用するジュエリーの可能性を試みている一人です。
(資料協力=株式会社東峰/増渕邦治=宝飾品評論家)
|