FB基礎講座/宝飾編
2001/09/25
《ジュエリースタイル−10》
アール・デコ−色彩のマジック
二十世紀初頭、ヨーロッパの国際関係は全く新しい段階を迎えます。そしてそれまでの貴族社会が崩壊し、資本主義経済社会が生まれるのです。
宝飾品も、イギリスにおいてはヴィクトリアンジュエリーから、エドワーディアン様式、アーツ・アンド・クラフツ運動を経てアール・ヌーボー様式のジュエリーが一世を風靡(ふうび)します。フランスにおいては、ベル・エポック時代のガーランド様式を経てアール・デコ様式が確立されます。
アール・デコは、一般的には一九二五年のパリで開催された現代装飾・工業美術国際展の折に、そのテーマである「アール・デコラティヴ(装飾芸術)」にちなんで生まれた呼称です。この時期には、アール・デコはすでに成熟期にさしかかっており、一九〇七年ごろからさまざまな分野で、アール・デコの特徴である直線的な幾何学性は随所に見られました。そのデザインはモダン様式であり、それまでの様式とは一線を画す新しい感覚のものといえます。
ジュエリーにおけるアール・デコの代表といえば、ルイ・カルティエのジュエリーに顕著ですが、アール・デコの特徴は二つあります。ひとつは直線の使い方です。一九二〇年代の偉大なクチュリエール、ココ・シャネルは「直線は表現の手段である」と言い切っています。
そしてもう一つの特徴は色使いにあります。プラチナとダイヤモンドの白、そして黒エナメルとオニキスのコントラストは実に見事としか言いようがありません。
それに加えてエメラルド、サファイア、トルコ石、翡翠(ひすい)、珊瑚(さんご)、真珠母貝など、実に多彩なカラーの組み合わせが、アール・デコ様式を不動のものにしているのです。
確かにアール・ヌーボーも、さまざまな宝石を使って独特の色世界をつくりあげています。そういった意味では直線と曲線の違いはあっても、アール・デコとアール・ヌーボーは二十世紀初頭のジュエリー界を二分した色彩の様式であるといえます。
アール・ヌーボーが装飾に走っていったのに対し、実用性を追求したのがアール・デコでした。カルティエが女性との緊密な関係の中で「ジュエリーの重要なポイントは着用性である」といっていることでもわかるでしょう。
(資料協力=ギャラリー・トイダ・ギンザ/増渕邦治=宝飾品評論家)
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