Learn - ファッションビジネス講座

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FB基礎講座/宝飾編

2001/10/01

《ジュエリースタイル−11》

トレンブラン−揺れる女心を映し出す

 女心というものは、その対象が何であれ、幾つになっても微妙に揺れるものだそうです。だからこそ恋をしている女性は美しいとも言えるのでしょう。
 19世紀の前半、美術・工芸の分野では、イギリスやドイツを中心に、ロマン主義運動が起こります。自然と人間の交歓をうたい、ジュエリーも花、鳥、木の枝、昆虫など、自然に存在するものをモチーフにして作られます。やがてこのロマン主義運動は、19世紀半ばの自然主義運動へと続いていきます。
 ここに掲載したジュエリーは、花をデザインしたブローチですが「トレンブラン」と呼ばれるものです。花の一部にスプリングが施され、ブローチ本体に取り付けられています。胸元に着けて歩くと、花びらの部分だけが揺れて動くように作られているのです。
 トレンブランという言葉は、フランス語の“ぶるぶる震える”という意味からきています。この時代、プラチナはまだ登場しておらず、ダイヤモンドを留めている地金は銀です。銀は黒く変色するので、ジュエリーの裏側や針は金で作られており、これは洋服を汚すのを避けるためなのです。なんと繊細な心配りをしたジュエリーでしょう。だから、“揺れる”いう仕掛けが、モチーフである花のデザインと相まって、女性の繊細な心の揺れを表現し、ジュエリーとして鮮やかに生きてくるのかも知れません。
 このブローチにはたくさんのダイヤが使われていますが、南アフリカで最初のダイヤ鉱山が発見されたのは1867年のことです。それまでは、インド産のダイヤが広く流通していました。
 またダイヤのカットは、薔薇(ばら)のつぼみに似たローズ・カットやブリリアント・カットの初期の様式のオールド・マイン・カット、オールド・ヨーロピアン・カットなどが全盛です。現在のようなモダン・ブリリアント・カットが登場してくるのはもう少し後になってからです。
 いずれにしても、ジュエリーが権力の象徴であった時代から、女性の身を美しく飾る、装飾的な要素を帯びてくる時代への移り変わりが19世紀といえるでしょう。

(資料協力=アンティークジュエリーミュージアム/増渕邦治=宝飾品評論家)
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