FB基礎講座/宝飾編
2001/10/29
《ジュエリースタイル−13》
ブラッカムーア−欧州人の異国趣味
ヨーロッパ人の異国趣味は昔からありました。ナポレオンがエジプト遠征によってもたらした「エジプシアン」や、古代遺跡の発掘による「考古学趣味」などです。しかし何といっても、グランドツアーほど、異国趣味の流行をもたらしたものはないでしょう。
イギリスのグランドツアーは16世紀ころからありましたが、これは現代の修学旅行ともいうべきものです。その範囲は、東はイタリアからギリシャ、小アジアに、またエジプトにも強くひかれました。それぞれの土地で作られた土産品(スーベニール)を求め、それらを持ち帰って、自分たちの好きなジュエリーへと昇華させました。そのなかでも「ブラッカムーア」と呼ばれるジュエリーは、ベニスの土産品としてイギリス人に親しまれました。その素材の多くは、ハードストーンのカメオです。
カメオは今も昔もベニスが顕著な生産地ですが、男性または女性の頭部をかたどったカメオで作られたブラッカムーアは、16〜18世紀にかけて各地でも生産されました。
写真のブローチは、厚みのあるメノウで彫られています。そしてイギリスのロバート・フィリップス製による、考古学スタイルのゴールド枠にセットされています。
カメオのモチーフとなっている黒人は、北アフリカのモロッコ周辺に住んでいたムーア人と呼ばれる民族です。ムーア人は、古代ギリシャやローマ時代、またルネサンス期のカメオや彫刻にもモチーフになっています。よほどヨーロッパの人たちに気に入られたようです。なるほど子細に見ると、どれもチャーミングな顔立ちになっているのがうなずけます。そういえば日本でも、若い人たちは知りませんが、50代前後の世代で「だっこちゃん」ブームがあったのを思い出しました。その当時の若い女性がペット代わりに、ビニール製の黒人の人形の「だっこちゃん」を腕に巻き付け、街を闊歩(かっぽ)していたものです。
(資料協力=英国骨董宝飾店・ボンドストリート/増淵邦治=宝飾品評論家)
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