大阪の雑貨メーカーに若手が集まるワケ | 繊研plus

大阪の雑貨メーカーに若手が集まるワケ

  • 2017年2月13日 6時30分更新

仕事の後に社内設備を自由に使いながら自分の靴作りに没頭する(左端が伴さん)

仕事の後に社内設備を自由に使いながら自分の靴作りに没頭する(左端が伴さん)

 「次々と若い人たちが集まっている」と注目される工場がある。ファッション雑貨メーカー、アリック(大阪府吹田市)だ。吉原則雄社長の「来るものは拒まず」のスタンスがあらゆる方面から人を呼び、物作りの化学反応が起きている。

 本社近くのサンプル工場、「商品開発ラボ」。日が暮れると、仕事を終えた社員たちが、思い思いに〝自分の靴〟を作り始める。「結婚する、いとこのために白い靴を作りたくて」と話すのは、入社1年目の伴彩葉さん。同期や先輩と相談しながら、靴作りに没頭する。ラボと兵庫県丹波市の量産工場では、コンピューターミシンや無縫製編み機「ホールガーメント」、刺繍機、転写プリント機、インクジェットプリンター、3Dプリンター、レザー彫刻機など、最終製品まで一貫生産できる設備が整う。自分の靴を作る時にも自由に使え、新しい素材作りに試行錯誤する様子は、まさに研究所(ラボ)のようだ。

好きなこともやってもらう

②

社外との技術交流も盛ん。靴デザイナーの小松さん(右)から若手社員も学ぶ

 国内外の有名セレクトショップで販売している同社のスニーカーブランド「バディ」が誕生したのも、ラボでの積み重ねから。「仕事の単純作業ばかりだと面白くない。だから、自分の好きなこともやってもらう。好きこそものの上手なれでないと、技術も習得できないですからね」。若手が製作する光景を見ながら、吉原社長はうれしそうだ。

 もともとは雑貨のOEM(相手先ブランドによる生産)が主力。中国の協力工場で製造し、国内に製造拠点はなかった。中国のコストアップで事業が赤字に陥り、日本で物作りを模索し始めた。日本の物作りといえば、手作業の良さがクローズアップされてきたが、「次の時代に合った物作り」として、ハンドメイドと機械を適材適所で使い分けることを重視し、惜しみなく設備投資した。初めは職人を招いたが、機械への苦手意識が拭えず失敗。それならばと、未経験の若い世代を集めて再スタートした。

 丹波工場を設立したのは11年。先行投資として人員を多めに採用したため、赤字が続いたが、年月をかけて生産効率が上昇し、社員も育ってきた。今期(17年7月期)には黒字化する見込みだ。中国事業も譲渡し、丹波工場は年々規模を拡張している。「助成金にも頼らず、自力でここまでやってきた。設備投資さえすればうまくいくと考える人もいるけれど、それは勘違い。この機械たちを動かせる人を育てていくことが大事なんです」と力を込める。

 設備投資は、自社のためだけを考えてのことではない。「お金をかけられない人たちに、自分たちの設備を使ってもらいたい。外部の人にも役立ちたい」という強い思いがある。ラボや丹波工場には、メーカーや百貨店などから見学希望の声が絶えない。「うちのサンプルも丸見えなんですよ。ほかだったらあり得ない」と、転職組は笑う。そんなところにも、吉原社長のオープンマインドな姿勢が表れる。

社内外で助け合えたら

②優先

 社外でも力があると思ったデザイナーには、社員を学びに行かせたり、自社の技術を伝えたりと、交流も盛んだ。社内外を問わず、物作りが高め合える関係作りを大切にしている。

 オーダー革靴「竜太靴」を運営するシューズデザイナー、小松竜太さんもその一人。小松さんは今月、卸ブランド「タタロウ」を引っさげて、アリックとともにパリの展示会に出展する。吉原社長が声を掛けて実現し、タタロウの海外販売はアリックが担う。小松さんも「海外展に出展するなんて、自分だけでは考えられなかった。こんな機会をいただけてうれしい」と感激している。

 吉原社長が考え続けているのは、「中小企業が自信を持って働ける仕組みづくり」だ。「社内外の独立した小さいグループが、互いにメリットを感じ、助け合うことが出来たら」。そこには、閉塞感の漂う日本のファッション業界に対する危機感がある。「社内だけを考えて視野を狭くするのではなく、もう少し広い目で、業界にとって何かできればと考えているんですよ」。そんな開かれた物作りを目指し、挑戦は続く。







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