せきとく、“いなか”でこそできる商売 | 繊研plus

せきとく、“いなか”でこそできる商売

  • 2017年1月4日 6時32分更新

漁師の晴れ着“万祝(まいわい)”をモチーフにした大漁Tシャツ

漁師の晴れ着“万祝(まいわい)”をモチーフにした大漁Tシャツ

地元の人間関係に深く入り込む

 大手量販店やカジュアルチェーンが台頭し、人口減少の著しい千葉県勝浦市で、老舗洋品店せきとくが、地域に根ざした商売で、生き残りを図っている。勝浦らしさを前面に出したオリジナルのTシャツなどを製作して販売するとともに、市や漁港といった団体からも注文を受ける。「“いなか”だからこそ発信できるものがある」という関政司社長のスタンスから、学ぶことは多い。

方言Tがきっかけ

 オリジナル品を作り出すようになったのは、ひょんなことから。静岡出身で、せきとくを運営する関家に婿養子に入った政司さんにとって、「おいねぇ(駄目だ)」「にし(あなた)」「あじょにもかじょにも(どうにもこうにも)」といった勝浦の方言は興味をひくものだった。そこで趣味のパソコンを駆使して前身ごろや後ろ身ごろに方言をプリントしたTシャツを試作。02年に店頭で発売すると、翌年にテレビ番組が取り上げ、瞬く間に火が付いた。その後も、寄港する漁師や外国人観光客などに根強い人気を誇り、夏場には1枚1500円のTシャツが2000枚以上売れる。

 ベストセラー品が出る一方、せきとくも他の地方専門店と同様、大手専門店チェーンとの競合の影響を受ける。加えて勝浦市は、65歳以上の人口比率が約4割を占め(16年4月、県内4位の水準)、人口減少も進む地域。店の主要客は高齢者で、老人ホームに入ったり、亡くなられたりして、客数は「何もしないと普通に毎年1割ずつ減ってしまう」状況。そうした中で重視してきたのは、地元の人的ネットワークを生かしたビジネスだ。

 例えば、漁協組合との仕事。勝浦は国内有数のカツオの水揚げ港として有名で、水揚げの多い優秀船には漁協組合から記念品を贈呈する慣習がある。せきとくはその記念品となるオリジナル衣料の企画・製造を請け負っている。初めに手掛けたトレーナーが好評で、次にTシャツ、ジャンパーと広がった。

漁師の晴れ着“万祝(まいわい)”をモチーフにした大漁Tシャツ

健康関連を強化

 市役所や学校、イベント主催者などからも数百枚から数千枚単位の大口注文も受けている。仕様の細かい要望もあるが、店内奥のカウンターで客にパソコン画面を見せながら直接やり取りするため、話が早い。「少量でも丁寧に対応していると、そのうちにどかんと大きな仕事を振られたりする」という。

デザインは関さん自身が手掛ける。漁師町・勝浦の独特な空気感をうまく表現したTシャツは、漁港に入港するマグロ船・カツオ船の漁師たちの心をつかむ

デザインは関さん自身が手掛ける。漁師町・勝浦の独特な空気感をうまく表現したTシャツは、漁港に入港するマグロ船・カツオ船の漁師たちの心をつかむ

 

 

 地元の人間関係に深く入り込むこうしたビジネスは、チェーン店にはできない手法だ。関さんは「ここではこうしたやり方が通じる。“いなか”の商売」と強調する。

 もっとも、団体関係者とのコネクションを維持できているのは、生産コストをきちんと抑えているから。「特に自治体は税金を使っているので、適正な見積もりを出さないと、商談の遡上にも上がらない」。そのため、仕入れ先はたえず開拓する。「最近は問屋の力が弱まっているため、メーカーとダイレクトに取引しやすくなっている」のも追い風だ。

 今後、力を入れていくのは、健康関連の取り組み。関社長自身、ノルディックウォークのインストラクター資格を持っており、その普及に向けて市内名所を歩くイベントを開催している。「定年退職した団塊世代でウォーキングしている人は多いが、ポールを使う人はまだ少ない。正しい歩き方、靴の選び方・履き方を伝え、健康に歩く習慣作りを植え付けたい」と話す。イベント開催を通じ、ポールはもちろん、サポーターや吸汗速乾インナー、着圧の肌着など関連グッズの拡販にもつなげる。

 せきとく

 以前は赤ちゃんからお年寄り向けまで幅広い商品を扱っていたが、少子化と大手専門店チェーンの進出により、年配者向けの婦人衣料品の比重を高めた。現在売り上げの40%が婦人衣料、15%がオリジナルのTシャツ類、10%が学販などで占める。売り場面積は約300平方㍍で、年商は約9000万円。健康シューズ「アサヒメディカルウォーク」など2万円ほどの高単価品も売れる。

店舗外観






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